憤怒とセルナの性格と本性
「どういうことなんですか!!!!エルム様!!!」
向けられた怒り、大好きで一緒に生きていたいと思う人に殺してくれと言われること
なのにその本人は未だに覚醒めない
ギリッ
「なんか言ってください!!!こんなのふざけてたとしても、そうじないとしても、こんなのは許しませんから!!!絶対に!!」
「ど、どうしたの急に!?」
「なんか変なことが書いてありましたか!?」
「…何でもない…です……すみません………はぁ……
フィア…頼みがあります」
「……何でしょう?」
「私を…エルム様の共通心界に行かせてください」
「どうしてです?さっきからなにかおかしいですし」
「いいから!!」
「…すみませんがフィアには出来ません」
「どうして!!……ぁっ…ごめん…なさい」
「そもそも心界には招き入れないと入ることはできないといわれているのです
心界は…誰にでも存在します。心という名で
心界は人としてもっとも脆く、もっとも弱い
それでいて、もっとも大事な場所なんです
頭よりも、心臓よりも……何処よりも
頭や心臓は治すことができます、
回復魔術があれば禁術ですが蘇生も出来ます
ですが、心界は違う
傷つけば治せない、治らない、無くならない、
それが心の闇、フラッシュバックやトラウマ等ととして現れるのです
深ければ深いほど心の闇と呼ばれるものは心界に反映され広く穏やかな心界は徐々に狭く、そして、白く染められていく
……本来ならもっとも汚れやすい白に
全て染められた人間は…壊れ、それが廃人となるのです
例えどんなに魔術であらゆることが出来るようになるとしてもそんな、人を廃人にもできる心界に外部から入ることはフィアの魔術では絶対に不可能…です」
「………ぅぅ…なんなんですか、私にこんなの出来るわけがないのに…
何が目覚めるですか、直接言ってくださいよ。なんで起きてくれないんですか、なんで……私にそんなことを言うのか……
言ってよ………言いなさいよぉ……」
先程までの勢いは消え、残るものは嗚咽と涙……
そして唐突にセルナの状態が一変したことに困惑する二人
「……よくわからないんだけど…」
「フィアもですが……恐らく、なにかしら不味いことになっている……のかと…あんなマスターに怒りを向けるセルナさんをフィアは見たことがありません…」
「どうやらその指輪になにか細工があったみたいね…ウチらには見えないように」
「そうみたいです…しかし何が……」
「確かめるしかないけど、ウチらに見えなかったということはウチらの出番でないということだからなぁ……」
「出番じゃない……といっても、そもそも確かめるって…?」
「魔術がダメならまあ、異能しかない…ってことよ
ねぇ、セルナさん…いや、セルナ
貴女はエルっちに会いたいのか、会わなければいけないのか
どっち?」
「………どっちもに決まってます
会わなきゃいけない……でも、今私は…エルム様に会いたい……」
「……よし、分かった
ウチが会わしてあげる」
「えっ?それならフィアたちも…」
「それは違うよ、ウチらには見えない時点でウチらが行くべきではないってこと」
「……わかり…ました」
「納得はしないでしょうけどそこは我慢しなさい、
じゃあセルナ、貴女はここに座って」
芽音はソファーから立ち上がるとセルナを優しく立たせ自らのいた場所に座らせた。
「な…なにを…?」
「貴女はウチに全てを任せてウチが言うことをしてくれればいいの」
「……はぁ…?」
「んじゃあ……はい
エルっちとキスして」
…………
……ん?
「はい?」
涙や嗚咽を忘れそんな素っ頓狂な声がセルナから発せられる
流石に予想外すぎたらしい
しかし、そんなことをお構い無しと続けるのが芽音のやり方である
「ほら、キスだって、接吻ってやつ
許嫁なら一回や二回…いや百回くらいしてるでしょ」
「してませんよ!?」
「……え?してないの?」
「…やっぱりそういうのは両者の合意の上で……」
「お嬢様系かっ!そんなの守ってるからエルっちも女ったらしになっちゃうんでしょ!………いやまあウチもその一人だけど
しかもこんなにかっこよく………可愛く育っちゃったらそりゃあもうみんなエルっちをほっとかないとかもあるんだから」
「……エルム様は格好いいんですから」
「知ってるよそんなことは
………ほら、もう落ち着いたでしょ?」
「落ち着いたというより一方的に否定されれただけの気がしますけど……でも、ありがとうございます?」
「そこは疑問系なんだ?素直に感謝してくれてもいいのに
あ、ついでにウチはエルっちとキス位ならしたことあるよ?」
「……エルム様に会えたらちゃんとあとでぶっ殺します」
「やるだけ無駄だと思うけどね、ウチはそこのフィアにすら負ける気がしないのだか…」
「フィアのスペックはマスターのコピーみたいなものですけど?」
「うん無理、ごめん盛った」
「………………」
「フィアに勝てるのはマスターだけだとおもいますよ?」
「多分そうでもないのが異世界でありエルっちに堕とされた人たちなんだなー
気を付けた方がいいよフィアもセルナも
エルっちがなんで尽神っていう神名なのか
そして、今のエルっちの状態を知った特定の人たちがどう出るかはウチから見れば火を見るよりも明らかだから」
「……フィアも知らないこと…?」
「ということはエルム様自身も知らないこと…自身が神であるという事実………でも尽神エルム、その尽神の由来は私でも知らない
貴女は…知っていると言うの?それに特定の人たちって……」
「由来が知りたければ叔父さん叔母さんに聴いてみればわかる…かもね………教えてくれればだけど」
「わかりました、この事が済んだら聴きに行ってみることにします」
「行ってらー」
「それでは………本題に戻りましょう
……なぜキスなんですか」
「気にしたら負けだよっ!」
「……………」
「いちいち無言になんないでよ、本当にその目は色々ヤバイから!
でも…キスが必要なのは本当
あ、貴女がエルっちと結婚してるんなら話は別だけど?」
「………無かったことになってます」
「なにがあったんだか、まあいいや、つまり貴女とエルっちには繋がりがないと言うこと、オーケー?」
「繋がりならあります、血縁関係がありますし」
「遠すぎ、まあ、エルっちもおかしいっちゃおかしいんだけどさ
えっと、成神エイムズスと治神ディアリスとの子供の末裔、14代目の
それで、エルムは成神エイムズスと回復神レイルとの実子
そしてこれは知ってるよね、ギール家はエイムズスとレイルの末裔っことを」
「………どういう意味です?」
「さぁ?どういうことでしょう?」
「マスターは本当はエイムズスとレイルの子供じゃない…?」
「その辺は貴女方で調べるといいんじゃない、
話が逸れてくから戻すとして、とまあ、セルナとエルっちは繋がりが繋がりと呼べないほど、糸みたいな繋がりってこと
だとすると、しっかりとした繋がりを作るしかない
一瞬だとしても糸としてじゃなく紐として繋げさえすればウチが少しの間紐としての繋がりを定着させることができるの」
「その一瞬の繋がりが………キス…」
「そゆこと」
「でもっ………突然そんなの…」
「可愛いからくねくねしながら恥ずかしがるな!可愛いから!」
「どうして二回言ったんですか…」
「まあ可愛いから、全くデレデレなのに奥手って…いい属性を持ってるね、とまあ、そんないい属性なんだけど今はそんなことをいってる場合じゃないんでしょ?」
「…あぅ…」
「じれったい!」
「そもそも、セルナさんって合意なしに襲おうとしてましたよね?」
「ええっ!?なに!?清純ぶってるけどめっちゃ肉食系!!?こわっ!?」
「……はて、なんのことやら…」
「何て恐ろしい娘っ!」
「まってください!襲おうとしてたんじゃないんです!」
「急な弁明だね、まあいいや、面白そうだし聴くよ?」
「私はただエルム様を感じたかっただけです!つい襲っちゃったとかじゃないんですから!!」
「とのことだけど?フィア、どう?」
「簡潔に説明しますと、エルム様の着替えをセルナさんに頼んだところ、嬉々として了承し、着替えさせている最中に我慢できなくなり手や腕、胸部や首元に至るまで色々してた、ということです」
「色々はいわゆる色々だね、わかった、なるほどなるほど
それではこの事を踏まえてもう一度言うね
エルっちとキスして?」
「………はい」
完全に逃げ道を精神的に封鎖されたセルナは項垂れるように了承した。
満面の笑みを浮かべ
うまくいきましたね……
元々予想外であったのだ。
芽音にエルムとキスしろと言われたときのことは
目覚めたあと存分にするつもりだったのだが、このチャンスを逃すセルナではない
そもそも覚えているだろうか
エルムが18歳になった日を
そのときセルナはエルムを襲いキスをしているのである
そしてエルムを自らの館に連れて帰りエルムにこんなことを思わせたことを
エロかったのは俺じゃない、彼女の方だったのだ………と
最初の状態でキスをしたとしてもセルナには物足りなかったのだ
なぜなら芽音が自分の性格を知らないことにより体裁というものが発生してしまうからである
でも今は違う
自分の本性も知られ、催促までされる
セルナはそのままゆっくりとエルムに近づきエルムの頭の後ろに腕を回した。
そして………両者の唇と唇が合わさる
その瞬間にセルナは舌をエルムの口に侵入させた
この瞬間を待ってたかのように
まあ、待っていたんだが
腕の力も上げ絶対に離さないとでもいうかのようである
「はぁ、完全に肉食系ね……そのまま離さないでね
心を繋ぎ想いを響かせ彼のものをその心界へと届かせよ
……会ってきなさい、全てを届かせるために……
…『心音』」
芽音のそんな言葉を最後に強制的に意識を闇に落とされセルナはエルムに抱きつくように倒れ込んだのだった……