指と学校と女王と
「………ぅうん……」
目を覚ますとアリスとグラグの重要な話とやらは終わっていた。
というか、そんなに時間はたっていないようだ。
アリスを見ると真剣な表情をしてなにかを考えている。
……気になるけどまた眠らされそうだからやめとこう、
それにしても……
暇だ
どうしようか
選択肢1
まだ倒れてる3人を起こす
選択肢2
アリスに話しかける
選択肢3
なにもしない
……三人とも幸せそうに倒れてるし、アリスは悩んでるし……
……なにもしないがいいか
そう決めてぼおっとしようと座った瞬間、目の前に現れるソワラス
「おわあ!お姉ちゃん!?」
「エルちゃーん!!」
なんだかすごく嬉しそうな顔をしている。
そして俺は嫌な予感がする。
「結婚してもいいって!!」
「……え?」
「だから!エルちゃんと結婚してもいいって!!!」
「……」
「条件があるっていわれたけど!」
……まて、俺の意思は?
しかもあのクソ両親、姉と弟を結婚するのを了承するってどういうことだよ!!
「っていうか条件?」
「まあまあ!とにかくセルナちゃんと双子ちゃん!起きて!!」
「…はい、なんですか?ソワラス姉様?」
「……うーん!よし!」
「……エルムくぅん可愛ぃ~」
若干一名起きれてない
「よし!みんな!学院の理事長に会いに行くよ~!」
「……なんでですか?」
「ちょっと聞きたいことがあってね、エルちゃんのことで」
「エルム君のこと!!?」
あ、起きた。
「てか、俺?なに?なんかやらかした?
「まあ、いったらわかるよ!きっとね!」
「えー私たちにも教えてくれないの?」
「なにしに行くのかは聞いておきたいのですが……」
「まあまあ、ずっと疑問に思っていたことが解けると思うよー?」
「「「ずっと疑問に思ってたこと?」」」
……思ってなかったことなのか?
それとも忘れてるだけ?
「えー、あなた逹、忘れてるの?ずっと守ってきてたことなのに?」
「……学院での疑問……」
「守ってきていた?と言うと……エルム君?」
「エルムを守るための疑問?何であんなにいじめられていたか、とか?でもそれは」
「私たちのせいってことに落ち着いたと思うけど……」
「少しはそれもあるかもしれないけど、本当は全然違うのよ?」
「全然違う?だってほかには……」
「アリスちゃん、ちょっと来て?」
「……っえ?あっはい、どうしたんです?お姉ちゃん?」
あっ戻ってきた
「アリスちゃん今の話は……」
「大丈夫です、聞いていましたから」
「じゃあみんな聞いていたわね、ここまでの話でわかった人は?」
少し悩んだあとにみんな首を横に振った……いや、セリィだけ、振ってない
「おっ?セルナちゃんはわかったのかしら?」
「……可能性があるってレベルのものですが」
「どんなの?」
「ここまでの話を整理するとエルム君は学園でありえないくらいの人たちからいじめを受けていた。
そして、それを表で守っていたラルとニル、裏で守っていたアリス
彼女逹は自分等のせいでエルム君は虐められていると思っていたが、ソワラス姉様の話だとそれは違うといった。
……ということは、恐らく第三者がいる、しかも、貴族……」
「惜しい!!惜しいなぁセルナちゃん!アリスちゃん、キャラとられちゃうぞ!」
「お姉ちゃん、キャラって……」
「というかソワラス姉様?真面目な話をしているのでは……?」
「ごめんなさい」
お姉ちゃんらしいな
「まって、セリィ、なんで俺が貴族に虐められていたってことに?」
「はいーエルちゃんはちょっと黙ってようねー?」
「ちょ!また眠らさせる気じゃ!?」
「大丈夫だよー寝ている間に何かする何てことしないからね?」
「待ってお姉ちゃん!!それわざといってるよね!絶対何かする気だよね!!?意地でも寝てなるもの…」
「催眠」
「えっ!?それ睡眠系じゃな……い……」
紡がれた魔術は睡眠系魔術ではなく催眠系魔術だった。何をされるかという俺はそんな恐怖を抱えながら意識を闇に落としていった
………最近出番が………
「ソワラス姉様、なぜ睡眠じゃなく催眠にしたんです?」
「ほら?エルちゃん契約とか何だかんだでやらなそうじゃない?」
「契約?…あっ……まさか!!」
「そのまさかだーー!!」
「あの、なんの話を?」
「双子ちゃん?あなたたちもしたいんじゃないの?」
「したい?………なにを?」
「け、っ、こ、ん、よ!」
「「出来るの!!?」」
ラルとニル、二人は双子らしく見事にハモっていた。
「待ってください!ソワラス姉様!前提がおかしいじゃないですか!?催眠魔術は簡単な動作しかできないしエルム様なら解ける……」
「セルナちゃん?私を誰だと?」
「エルム様のお姉様ですよね?」
「私の功績は?」
「………なんかありましたでしょうか?」
「えっ?ちょっ!!セルナちゃん!!?私だよ!?
このソワラス=レイル=ギールだよ!!?」
「……ちょっと存じ上げておりませんが……」
「ほんとに!!?私そんなに知名度低かったっけ!!?」
「嘘です、たぶんこの大陸中の人達が知っているとおもいますよ?」
「そんなに!?」
自分の予想以上の知名度を言われて驚いていたが、ここには知らなかった人たちがいる。
そう、ラルとニルだ
「私達は知らなかったけどね」
「いやいや、僕達は山奥で修行してたからだと思うよ?」
……何歳から修行していたのだろう?
こちらには予想以上の知名度を言われて信じきれてない人が……
「た、大陸中は言い過ぎじゃないかな……?」
「特殊な人たちを除けば過言ではないかと」
「さ、さいですか、いやまあ、その私が催眠魔術をつかったんだよ?しかも、今の私は死神となっている、となれば…」
「ほとんど解けることのないなんでも言うことを聞く人形?」
「になるってことだね!」
「そういうことか!!」
「そういうことだ!!ということで!」
ソワラスがどこからともなく出したのは一本のナイフ
そして、立った状態で微動だにしないエルムの右腕をとり、そのナイフを人差し指に軽い切り傷をつける
「じゃあ、私がもらってもいいよね?」
「ダメに決まってるじゃない!!」
「そうだよ!!」
「ここは許嫁の私では!!?」
「魔術かけたの私なんだから私でいいじゃない!!」
「いやいや!ずっとエルムを守ってきたわた…」
「そんなのラルだけじゃないで僕だって守ってたもん!!」
「もう、それなら今のエルム様に聞けば早いんじゃないんですか?」
セルナの提案に他の三人は固まった。
「「「いや…ちょっそれは……」」」
「なんでですか!?」
「選ばれなかったらって思うと…」
「僕も……」
「私もきついわ……」
「意気地無しですね!!」
「「「なっ!!」」」
「エルム様!人差し指は誰がいいですか!!?」
「「「あっ!!」」」
ゆっくりと腕が上がり
意識のないエルムは血が出ている指である方向を指した
そして先にいるのは……
アリス
唯一エルムの最初に結婚するかしないかの論争に参加せずあの事について思案していたのだが。
「え?……私?」
「……これはしょうがないね…エルちゃんが選んだんなら……」
「…そう…ですね、エルム様が選んだのですから」
「……僕も……」
「あー!アリス!ズルイ!」
皆、未練たらたら感が出まくっているが
仕方がない、といった感じで認めているようだった……かな?
しかし
アリスは少し悩み、こう口にする
「すいません、私はまだ、エルム君と結婚しません」
「「「「……は(え)?」」」」
アリスの答えは他の四人を数秒間固まらせるほどの威力を秘めていた。
「……な、なんで!?アリス!前にしようっていったときにはするっていってたじゃない!!」
「私は、まだっていったの、しないとは言ってないわ」
「……理由を聞かせてもらってもいいかしら?」
セルナの声色に黒いものが混じっているように聞こえる。
「……ごめんなさい、それは、言えないわ」
「そう、なら仕方がないわね」
セルナの返答は実にあっさりしていた。
「仕方がない!?どうして!」
「本人が言えないって言ってるのよ?ということは今はかしらないけど言わない方がいいっていう彼女の判断でしょう?ならいいじゃない」
「でも!!」
「何かあるんじゃないの?アリスにも…さ?」
「……」
話そうとはしないようだ。
「アリスちゃん」
「……なんですか?お姉ちゃん?」
「今は……なのよね?」
「……う、うん」
「わかったわ、でも、エルちゃんが最初にって選んだのはアリスちゃんなんだってことは忘れないでよ?」
「……はい」
「ならよし!この人差し指はアリスちゃんにとっといてあげる!」
「なんでよ!おかしいじゃな…」
「ラル!いい加減にして!さっきから自分のことしか考えてないことばっかり!!エルム君が選んだのはアリスだったんだから!!」
「っ!!」
「ラルはエルム君の意思を無視してまで…!」
ラルの自分勝手な行動を戒めていると、ソワラスが遮った。
「はい、もうおしまい!貴方がエルちゃんのことを好きっていうことはわかったから!それにもう貴方もわかったでしょ?」
「……」
「じゃあ、全員妥協したところで……どの指がいい?」
「……私は最後でいい」
「あら、そう?じゃあ、ボクっ娘ちゃんとセルナちゃんはどれがいいかしら?」
「ソワラス姉様は選ばないのですか?」
「いいえ?選んではあるけど、被らないなら被らないでいいじゃない?」
「そう、ですね、じゃあ僕は小指をもらいます」
「セルナちゃんは?」
「私は薬指を」
「じゃあ、ラルちゃん?だったかしら?」
「……はい」
「あなたはどうするの?」
「私は……最後で……」
「まったく、くよくよしてないの!私たちはエルちゃんの家族になるのよ?それなのに始めっから遠慮なんてしていたら……
置いていっちゃうからね?」
「……それは…いやだ……」
「だったらほら、選んじゃいなさい」
「……中指…が」
「おー誰も被らずにすんだわね、じゃあ、始めましょうか?」
「「はい!」」
「……はい」
すべてが決まったところで、ナイフを持っていたソワラスがエルムの親指に軽く刃先を当てるとそのまま滑らして軽い傷を作る。
そして、その親指ごと口に含み血を体内に取り込む
それを三人もそれぞれの指で行った。
「「「「私の心身は夫となる貴方と共に!」」」」
「あ、先走っちゃった」
「え?」
「条件をクリアしないで結婚しちゃった!」
「そういえば……」
「まあ、今からクリアしにいきましょうよ、ソワラスさん」
「もう家族なんだからソワラスでいいわよ?それとも、お姉ちゃんが良いかな?ニルちゃん?」
「いえ、僕には本物のお姉ちゃんがいますから、ね?ラル」
「……ありがとうね、ニル」
「どういたしまして!」
「ソワラス姉様、条件ってたしか、学院にいくとか言うやつですか?」
「そう!ちょっと学院の理事長に話があってね?」
「理事長?どうしてです?」
「まあ、先にいこうか」
どうしても本題に触れると避けるソワラス
「まあ、そこまで言いたくないのなら聞きませんが」
「ありがと、今言っちゃうとちょっとね、じゃみんな行ける?」
「「「はい」」」
「じゃあ……ってアリスちゃんは?」
「……あっごめんなさい!行けます!」
「ならよし!じゃあ、私の転移で……」
「グラグさんお願いします。」
『お、おう……いいのか?』
「いいんです、ソワラス姉様の転移よりグラグさんの転送の方が安心できますから」
その言葉を聞いたソワラスは相当ショックを受けたようで、さっきの高めのテンションから一転してとても落ち込んでいる。
『おい、セルナ、あとでフォローしとけよ?さすがにかわいそうだ』
「大丈夫ですよ、ソワラス姉様ですもの」
『まあ、その辺は任せた……と、そういえば、理事長室か?それとも、理事長かいるところか?』
「どっちにします?ソワラス姉様?」
「……いる方でお願いします」
『ちょ!ほんとに大丈夫か!?』
「……大丈夫です、エルちゃんで補充しますから……」
『……うーん、なんなんだ、まあいいが』
「そういえばグラグさん、理事長は何を?」
『来客があったようでな、応接室とやらでなんか話してるぞ』
「……来客…まあ、いいですよね?」
「…ええ」
『わかった、それじゃあ、
……転送』
転送されてついた場所は少し広めの部屋
そこで、何やら話している男と女、そして、待機している二人の従者
「ーーーでーーなーー」
まだこちらに転送されてきたことに気づいていないようだ
そこでソワラスは唐突に出ていくことにした。
話の主導権をとれるからだろうか
「ハーイ!理事長!ちょっと話があるんだけど!!」
「「誰です!!?」」
まず反応したのは従者の二人
そしてそのまま抜刀する素振りを見せた時にはこちらの双子は自らの獲物で動きを強制的に制止させていた。
さっきまで持っていなかったのに……
「「なっ!?」」
「動いちゃダメだよ?」
「ちょっとそこの理事長に話があるだけだから」
双子はそんなことを言い理事長を指差す
「リア、ラナ、動いちゃダメよぉ?今は言うことを聞きましょ……ってぇあれぇ?ラル?ニル?」
「「……ビスルト?」」
「久しぶりぃ!」
ビスルトは自らの親衛隊であるリア=シール=フロストとラナ=ノルア=シャルトにいった動いちゃダメという言葉を自分で破って二人のもとへ飛び込んだ。
「会いたかったよぉー!!」
「久しぶりだね!えっと、一週間ぶりぐらい?」
「久しぶりでもなかったかなぁ?」
「そうね、最近ほんとに濃い一日一日を過ごしていたから」
「ほんとに長い長い一日一日だったよ……」
「そんな遠い目をされてもぉ……」
「あ、あの!」
「ん?えっと……」
「ウチの名前はリアっていいます!」
「どうしたの?リアさん?」
「あの!エルム様は!」
「エルム君ならそこにいるよ?」
「え?えっと……本物ですか?」
「本物?ああ、そっか、まだソワラスの魔術が解けてないんだっけ?」
「まだだめよー?意識のないところで済ませた方が楽なんだから」
「そうなの?まあ、本物のエルム君だから、今ならなにしてもなにも言われないよー?」
「「ほんとですか!!?」」
「んー?その言い方ぁ……とういうことはぁ…」
「そうよ!私たちはエルちゃんと結婚したのよ!!ビーナ!久しぶりね!!」
「……だれぇ?」
「ちょっ!ひど!!いくら7年と半年ぶりだからって親友を忘れるのは酷すぎるんじゃないの!?」
「いや、7年と半年って……というか、ソワラス……やっぱり言いにくいね、ソーラでいい?」
「いいね!!」
「……7年半ぶりでぇ……ソワラス……」
「えっ!?ちょほんとに忘れちゃったの!!?なに?そんなに私って忘れやすい存在!!?」
「……えっとぉ……」
「あんなに遊んだじゃない!!エルちゃんとも!」
「……一緒に遊んだ……?」
「一緒にエルちゃんに私たちの持ってた服を着させたり!そこのセルナちゃんとも一緒にエルちゃんを追いかけ回したり!!」
エルムはここでも悲惨だったようだ
意識がないはずのエルムだが意識がなくとも覚えていたようで少し震えている。
「ああぁぁあああああ!!!もしかして!そーちゃんとセリィ!!?」
「やっと思い出したわね!」
「お久しぶりです、ビスルト姉様」
ここに来てから想定外のことが多すぎて当初の目的の理事長が逃げていることに気がつかない一行だった。




