緊急事態
今回はエルムは出てきません
連れ去られたときの四人の話です。
関係ない話ではないことはご了承ください。
夜の郊外に二人の女の子が町に向かって走っている。
彼女たちの様子を見るものがいればどれだけ非常事態かを人目でわかるぐらいに彼女たちは鬼気迫っていた。
彼女たちはエルムの運搬役の
活発系の女の子はリア=シール=フロスト
温厚系の女の子はラナ=ノルア=シャルト
ラルとニルの化け物的スピードほどではないが二人の走る速度はその辺の冒険者らより倍以上のの速度を誇っている。
そのお陰あってか予想以上に早く町に着いたよう。
「すいません!だれか!だれかいませんか!!」
「私は先にギルド行って報告してくるよ!」
「お願い!ラナ!」
ついてすぐに別行動を始める。
リアは町を守る衛兵や自衛団の人々に応援要請をし、ラナはギルドに行きクエスト発注届けと報告をするためだった。
しかし、リアは少し戸惑っていた。
「なんで、町の入り口なのに門衛が誰もいないの……?」
そう、絶対にいなくてはならない門衛が一人も見つからない。
通常、門衛は最低二人は常についていなくてはならない。
それはビスルトが女王として最初に制定した法律のひとつだった。
それが守られていない。それとも……
いや、さすがに考えすぎだよね。
最悪な状況を思い浮かべてしまうのも仕方がないだろう。なんせ数分前に魔竜という畏怖の存在をみてしまったのだから。
すると、全速力でこっちに走ってるラナの姿が目にはいった。
「リアーー!!」
「どう!?発注できた!?」
「今は、それどころじゃないの!! いいから走って!!」
ラナは走りなからリアの手をつかみそのまま走る。
「ちょっ!?ラナどうしたの!?」
「あの魔竜!きっと偽竜の大群を引き連れて来てたのよ!」
「なんですって!?ってことは……町の人たちは!」
「たぶん想像道理だと思う。走ってすぐに血の臭いがして、そっちの方にいったら偽竜が町の人たちを食ってて……」
「思い出しちゃダメ!今は女王陛下とあの三人にこれを伝えないと!」
「う、うん!」
二人は追いかけてくる偽竜の大群から持ち前のスピードで徐々に引き離しながら町のそとに出る。
しかし、応援要請もクエスト発注もできなかったということで二人で
魔竜に挑まなくてはいけないという事実が彼女らの中に恐怖として残っていた。
しかし、破壊された馬車のあるところに戻るとそこには壊れた馬車以外何も残っていなかった。
「えっ?な、なんで誰もいないのよ!」
「嘘……そんな……」
「エルム君!!どこにいるの!帰ってきたからもう、出、てきて
大丈、夫……なんで、なんで出てこないの……」
「うぅ……」
「持ちこたえるっていったじゃな…い…」
そこでリアはあることに気づいた。
血の臭いがしない。と
「ねえ、ラナ」
「……な、に?」
「血の臭いがしないのよ」
「え?……そういえば確かに、ってことは!生きてる可能性がある!」
そう、血の臭いがしないということはここでは彼は攻撃されてない可能性が高い。
よって、連れ去られた、または、丸飲みされた。
そのどちらかだろう、しかし、竜にはあらゆるものを砕くため歯が発達しているので丸飲みはあり得ない。
なので、連れ去られた可能性が有力なのだ。
「だったら早く王城に連絡をいれないと!」
「確か近くに王城直通の隠し通路があるはずよ!そこを通れば三時間ぐらいでつくはず!」
そう、壊された馬車の近くには運よく王城へ続く隠し通路があるところだった。
しかし、下手したらここも壊されてたかと思うとほんとに運がよかったしとかおもえなかった。
だが、隠し通路は王城まで行けるってことは、実際はかなり遠い
それは普通の人であれば一日丸々歩いて着くぐらいだ。
それを彼女たちは三時間でつく。といっているのだ。
もちろん休憩なんかしない、という意味も含めているため二人も色々とおかしいと思う。
しかし、二人にはこのくらいなら余裕とまではいかないがそこまで苦ではないらしい。
「確か目印が一本の造花が植えてある場所だったよね!」
「そう!……ッてあれね!」
「花の近くにある石を押し込んでっと」
ガコッ、という音と共に造花が植えてある一帯が沈みスライドして直径二メートルほどの穴が現れる。
その穴は底はもちろん見えない。
さながら井戸のようだ。
その現れた穴に慣れたように飛び込む二人。
実際は全然慣れておらず、絶叫がその穴に木霊した。
その後その穴は自動的にもとある姿へと戻っていった。
「「きゃあああぁぁぁぁ!!」」
そう、
絶叫である。
その穴は井戸のように縦に続いているわけではない。
スライダーのようになっていてある部屋に続いている。
しかし、それまでは真っ暗の中半端ないスピードでくねくねと滑るという恐怖体験が5分間続く。
なので5分間、彼女らの絶叫は続いた。
「うう、やっぱりあれ大っ嫌い」
「私も……」
5分間の恐怖体験が終わりとある部屋に放り出された二人は今の出来事を思いだし少し身体を震えさせた。
「ふぅ、でも今はそれどころじゃないわ、早く報告しにいかないと」
「ちょっと待って、この部屋に伝昌石があるはずなんだけど」
「そういえば、そんなことを女王陛下もいってたわね……ってこれかしら?」
「うん、それだと思う、ちょっと貸して」
「はいっ」
「これに魔力を少し送って……『緊急事態発生!こちら造花の間!エルム輸送係、ラナ=ノルア=シャルトです。魔竜に馬車を襲われエルムが恐らく連れ去られました!そして、第2の町、リュアルが偽竜の大群に襲われ町は町として機能を失いました!今からそちらに向かいます!捜索隊と討伐隊を編成し待機してください!』」
「『こちら王城伝昌室、了解しました!』」
「『ブツン……』、これで報告は完了したから早く王城に戻ろう!」
「ええ、いそごう!」
「もうひとつ忘れてた、強風自動継続展開!」
ラナが展開させたのは部屋の壁にある一つの魔石だった。
それは、前にエルムにたいして教師が使った、風魔術の強風を断片的ではなく継続的に起こすことができる魔石だった。
なぜ、彼女はこれを起動させたか、
それは、ほとんど一直線の道を走るんであれば風の力をも利用してより早く移動しようという意味があったからだ。
「もういい!?、行くよ!」
「一応、躓いたり転んだりしないようにね!そのまま転がることになるから!」
「大丈夫よ!ともかく、急ぐわよ!」
「ええ!」
そして、その場違いな強風が彼女たちのスピードを手助けし一瞬にして見えなくなった。
「報告します!造花の間から非常事態発生とのことです!内容は輸送対象のエルムが魔竜に連れ去られた可能性が高く、更に第2の町、リュアルが偽竜の大群に襲われた模様です!」
そんな悲報が会議をしていた四人に届いた。
その四人とは、女王ビスルト、そして、ラル、ニル、アリスだった。
「なんですって!?なんで急にそんなことが!?」
最初に反応したのはラルだった。
「わかりません!突如魔竜に馬車を襲われたと、」
伝達係の表情や挙動等を冷静に分析したアリスは一つの可能性を否定する。
「ドッキリを仕掛けたのを見破って、仕返してきたんなら笑い話だけどこれは、ほんとにやばそうね」
「そうだよねぇ……そうだぁ、もう隊は組んであるぅ?」
「はい!ラナ様が先に指示を出していたので!」
「流石だねぇ、あらかた、捜索隊と討伐隊ってとこかねぇ」
「はい、出撃可能ですが!」
「じゃぁ、討伐隊を全て捜索隊に回して出撃しなさぃ」
「え?あっはい!わかりました!」
そして、伝達係は会議室からでてった。
「町を見捨てるってことなのかしら?」
「いやいや、見捨てるわけないじゃないかぁ、私たちが行くのよぉ?」
「なんで!?だったら逆にしてよかったじゃん!!」
「捜索なら人数がものをいうし、何よりも偽竜を魔竜が引き連れてきたなら偽竜なら魔竜の居場所が分かるかもしれないじゃなぃ?それに、怒りに燃えてる人が二人もいるし」
怒りに燃えてる二人→ラル、ニル
「成る程、一理あるわね、なら、早くいきましょう。町の場所は分かる?ビーナ?」
「さすがに覚えてるわよぉ」
「なら行けるわね、ラル、ニル、絶対助けよう!」
「もちろんよ!」
「だね!」
「けど、どうやっていくのかしらぁ?」
「私を誰だと思っているのよ?」
「へっ?」
意外なアリスの性格が判明した。
結構な自信家らしい
「うぇええええええ!!ちょ、落ちぃ!落ちるぅ!!」
「落ちないわよ!うるさいわね!」
「いやぁ、だってぇ!空飛ぶの初めてだしぃ!!」
現在、四人で空を“高速”で移動中
案の定、移動はアリスの魔術だ
アリスの風系魔術は色々と万能のようです。
意外にもビスルトは絶叫系は苦手なようでずっと叫んでいた。
一方、こちらも初めて空を飛ぶラル、ニルだが、こちらはちょっと楽しそうだ、
「へぇー空を飛ぶのって結構いいわね」
「なんか、心がスーッとなるから癖になりそうだよ~」
初めての飛行なのに熟練を思わせる飛びっぷりを見せる彼女たち。
天才にはそういうのはわかってしまうのだろうか
実際、アリスも飛行に苦労をしていないらしい
え?ビスルトは?
まあ、はい、才能が皆無ですかね
彼女はとにかく浮いていればいいとのことでアリスが、風系浮遊魔術を掛けその後『風操』と呼ばれる風系操作魔術を掛けられ遊ばれていた。
「なぁーーー!!もうちょいぃ!!落としてぇ!!」
「落とす?…ほい」
落とすと聞いたアリスはビスルトにかけた風系浮遊魔術を解く。
「え?おわあああ落ちるううぅ、助け、助けてぇ!」
直後すごいスピードで離されたビスルトは地面に向けて斜めに落下していく。
「本格的に落ちるぅ!いや!いやぁあああ!!」
「フフフフ!アハハハ!あー!面白っ!」
アリスはあらかた笑ったあとまた浮遊魔術をかけた。
「ふふ!どっちなのよ!ふふっ!ふぅー………『レビテーション』!」
地面に墜落しそうになったビスルトの体が重力が消えたかのように浮き上がる。
その瞬間のホッとした顔をするビスルト
そして、アリスの方をキッと向く。
「落とすって私をじゃなくてスピードをよぉ!」
「知ってるわよ~、でも、これ以上スピードだけは落とせないわよ?時間が惜しいんだから、ほんとはこんなこともしてる暇なんかないんだから。それに見なさい、あの二人はもうあんなに遠くに………やっぱり本気を出そうかしら?」
「えっ!?ちょまってぇ!」
空中であわてふためくビスルトを見てため息をつく。
めんどくさいとでもいうかのように。
「めんどくさいわね~」
「結局言うのぉ!?」
「私にどれだけ魔力を使わせる気よ、まあ、こんなんじゃなくなるわけないけどね」
「じゃあ、なんとかしてくれてもいいじゃないかぁ!」
「仕方ないわね~、やればいいんでしょ、『レダクション』!」
するとビスルトの体が縮小し手のひらサイズの二頭身の可愛らしい姿になった。
まるでマスコットのようだ。
「なぁっ!?なにぃ?なんなのこのからだぁ!?」
「それなら連れていきやすいから、ね!」
「それもそうだけどぉ、このからだ頭が重くてぇ…」
「我慢して、あと、肩と背中どっちがいい?」
「えぇ?じゃあ背中でぇ」
「おっけ!じゃあ、背中に捕まってね!」
「マジでぇ!?」
「はい、早く!ちゃんと足引っ掻ける場所ぐらいあるから!」
「わかったよぉ!」
渋々、アリスの服のデザインとして作られている紐に足をかけ、さらに服をつかむ二頭身のビスルト
「『バインド』!じゃあ、これで落ちないから安心して!レッツゴー!」
「えぇ?からだがうごかないぃいいいい!!きゃあああああ!!」
ビスルトも女の子らしい声が出るようだ…(絶叫だけど)
本気を出したアリスはみるみるラルとニルと離れた差を縮める。
地上から見ていても気づく人はいないだろう。
「おっ!はやっ!!さすがアリスね、結構離したと思ったんだけど………まさか数秒で追い付くとはね………」
「いいなぁ、エルム君助けおわったら練習させてよ~」
「いいわよ?その時はエルム君と一緒に遊ぼうね」
「それ楽しそうだね!」
「私も賛成だわ」
エルムにとてつもなく憎まれていることに全く気づいていない三人は助けたあとのことをワイワイと話していると突如おっとりした声が何処からか聞こえてくる。
まあ、もちろん背中でビスルトなんだけど
「私も一緒に練習させてぇ」
いきなり聞こえてきたビスルトの声に存在を忘れていた二人は今更ながら存在を思い出す。
「えっ?ビスルト?そういえばどこ?」
「ここだよぉ」
ここだよといっても見えないんだから普通は分かりにくいんだが、そこは最強の剣士、気配でわかるようだ。
「アリスの………背中?」
「そうだよぉ、というかアリスぅバインドといてぇ」
「はいはい」
アリスがビスルトにかけた魔術を掻き消す。
そして、解放されたビスルトは背中をよじ登る
「え?アリス背中にでっかい虫が………あっ、ビスルト………ちがうか」
「いやいや本物だよぉ!!」
「あ~!可愛い!!いいなぁ!アリス!それちょうだい!」
そして、二頭身のビスルトを見たニルは目を輝かせていった。
どうやら、可愛いものに目がないらしい。
「いいわよ、ちょっとうるさくて……ね」
「ほんと!!?やったぁ!」
「ちょっとぉ!アリスぅ!?何私“物”扱いして、さらにあげてんのぉ!?」
「本物でもなんでも、可愛いければなんでもいいよ!」
「ま、まぁ、可愛いって言われて嬉しくない訳じゃないけどぉ」
「本人もデレたことだし早くいくわよ!」
「デレてなにがわるいのよぉ!」
「否定しないんだ……てか、肯定派かい!」
「そうそぅ、あと三キロくらいで着くと思うわよぉ?」
「そうなの?じゃあそろそろ準備運動しとかないとね」
そして、そこまで速度を出してなかった三人のうちラルが先にとばした。
「そうね、『バインド』!、じゃあ、ニルそれ落とさないでね?」
アリスもそれに続いた。バインドをかけて
「落とすわけないじゃん!こんな可愛いもの!」
それを追いかけるようにニルも続く。
「ちょぉ!?今完全に物扱いしたよねぇ!!しかもちゃっかりバインド掛けられてるしぃいいいいい!」
そして、ビスルトの声は絶叫以外は誰にも聞こえなかった。
「わ~これはグロいなぁ」
「そうね………」
「まだ誰か生きてるといいけど……」
私たちが降り立ったのはリアとラナが助けを呼びに来た方の門と逆の門だ。
しかし、こちら側は門の付近におびただしい血の量と誰の物かもわからない………腕、足、さらに、頭
どんな死に方をしたのか、その表情は苦痛や絶望そのものだった。
それを見た四人の中の一人、ビスルトだけその苦痛をその身に少しでも感じようとしていた。
「アリス、もとに戻してくれないかな………?」
「えっ?あっうん」
いつもとは全く印象を持たせる二頭身はアリスによってもとの体型に戻る。
「すまない」
「いや、気にしないで、」
もとに戻ったビスルトはおぼつかない足取りで前に進んだ。
そして、たおれこむように手を付いた
「………ごめんなさい…私が、私が無能だったばかりに、こんな目に遭ってしまって、苦しかったよね、死にたくなかったよね。
そんなときに私は、なにも知らずにぬくぬくと過ごしていたんだ。
こんなに国民がが苦しんでいると言うのに!
私は、何ておろかで無能な王なんだ。
こんな私は王を失格だけでですむわけがない、
あなたたちに恨まれ憎まれ呪われても仕方がないんだ!
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………」
それは女王ビスルトとしての懺悔だった。
ビスルトは自分が町の人になにもしてやれなかった後悔と無知な自分にたいしての罰。
「ビーナ………」
「ごめんなざい、ごめんなざい、ごめん、な、ざい、…うぁあああん!う、うぅ、ひっ、うぁああ、ごめんなざい………」
「アリス、ちょっとビスルトをお願い」
「僕からも、頼むよ」
「え?………わかった」
突然ビスルトを見捨てるかのようにラルとニルはアリスにビスルトを任せた。
それに、ビックリしたアリスはラルとニルの方を向いて意味がわかった。
彼女たちは怒っている。私じゃあ手をつけられないくらいに。
そして、二人はビスルトの前にいくと…
「ごめんねビスルト、僕、これまで君のことを女王と肩書きを持ったただのお気楽な女の子としか思ってなかったよ。でも、君はしっかりと女王だったんだね。
僕たちにも責任はあるんだ、君をドッキリを手伝わせたせいで女王としての仕事ができなかったときもあったんでしょ?
だったら、せめてもの償いに、『敵をぶっ殺してくるよ』」
最後にニルの口から発せられた言葉は絶対に仲間に向けられることはない異常なほどの殺気を含んでいた。
それこそ、近くに魔物でもいたら一瞬で気絶、もしくは、即死
それぐらいのレベルだった。
「私も『殺らせてもらうよ』」
ラルからも同等の殺気を含んでいる言葉が発せられる。
ビスルトの方を向いていた二人は門のある方へ歩き出す。
それはさながら王者の進行のようであった。
「ねえラル、ここからは別行動しない?」
「ちょうど私もそう思ってたわ」
「じゃあ次会うのは殲滅がおわったらね」
「ええ、」
二人は門を潜るとすぐに二手に別れた。
彼女らにとってここは戦場ではない。
ただの道だ。
ただの通過点。
なにもない道と変わらない、ただの道。
なのでなんの危険もなんの障害もない、
だから一人で行っても変わらない。ただそれだけなのだ
しかし、二手に別れた直後に二人の背後に隠密行動に長けた2頭の偽竜が二人を襲った。
「「ギャオアアア、ア」」
襲いかかろうと奇声を発する偽竜
直後、偽竜はただの肉塊となった。
振り向きもしない二人によって首を両断され地面に肉が落ちる音
「不意をついて襲いかかっても無駄だっての、お前らは私たちを前に生きて変えれるとか思ってねえだろうなぁ!!」
ラルが入っていった道の方からの豹変したラルの怒声がとぶ。
「全くラルってば、いつもいつも目立つことばっかりして、まあ、僕はバレないように始末していくかな」
そして、ニルの方からは何も聞こえなかった。
二人の侵入には全ての偽竜も気づいていた。
なので二手に別れた侵入者を別々に隠密行動にたけた2頭の偽竜に始末させに行ったのだが……
しかも、そのあとのラルの声はその近くに潜んでいた何十頭もの偽竜に恐怖を与えた。
結果、恐怖を掻き消すかのようにラルに突っ込んだ偽竜たちも直ちに肉塊となった。
それらのことがあったせいか、侵入者の一人の気配が無くなったことにはラル以外には誰も知る由がなかった。
「その程度か!?ていうかそんだけしかこないんなら私からいってやるよぉ!!」
何十頭もの偽竜を数秒で蹴散らしたラルは足りないとでもいうかのように町の中心部へと走っていく。
時々屋根や空、家の中にまで隠れている偽竜はラルの光弾によって次々に絶命していく。
ラルの進行を止められるものは誰もいない。
「僕だって派手に暴れたいのにな」
ボソッと呟いたのは通算68頭目を屠ったニルだった。
彼女の獲物は大剣なはずなのに恐ろしいほど剣筋は速く重いため敵は切られたことに気づいた瞬間にはもう手遅れとかしている
「………!そっか!別に暴れてもいいのか!なら、………シッ!」
別に暴れてもいいということを今知ったニルは気配で感じた家の裏などに潜んでいる最も偽竜が集まっているところに向けて横凪ぎをした。
まだ数十メートルほどの距離があるのに
横凪ぎといったが、実際は剣の芯はまるで見えなかった。
それほどまでに速かったのだ。
しかし、次の瞬間には前方にあった家は真っ二つに両断されその後ろにいた偽竜の気配はすべて消えていた。
それどころかその後ろの家々をも真っ二つに成り果てている。
この技は光閃といい剣筋を翔ばすというニルが遠距離での戦いに備えて編み出した技のひとつだった。
威力は剣を振った時の速度に比例する。
なので彼女の光閃は絶対の力を持っていた。
ラルの光弾も、原理はこれとほとんど変わらない。
突きか横か縦か
それの違いでしかないのだ。
別々に行動しているはずの二人が同時に異変に気がついた。
「偽竜が一ヶ所に集まりだした?」
そう、ラルやニルへの攻撃が突如無くなり、その代わり偽竜の気配が町の中心部に集まり出したのだ。
嫌な予感がする。
二人はそう感じた。
ラルたちが入っていった町の前でビスルトを慰め待機していたアリスの目にも異変を察することができた。
「なっなに、あれ?」
それは町の上空に何千何万という偽竜の大群がそこにはあった。
まるでその光景は黒い隕石が浮いているかのようだった。
「あれは、なんなの………ねえ、ビスルト、ちょっと様子を見てるくけど、ここにいる?、それとも……」
「ついていかせて、私には逃げた人たちのために町を救わなくてはいけないという義務があるのだから」
「例えいなくとも?」
「今度こそ、この町を救えるのなら!」
「わかったわ」
ビスルトの決意
そこにはこれまでの弱々しい女王とは違う覚悟をした強い女王がいた。
そして彼女たちは町に入っていく……
一方町では異変に気がついた二人は合流をしていた。
「どう思うよあれ」
「さすがに厳しいと思うんだけど」
「だっだよね」
いつもの彼女たちらしからぬ発言をしてしまうほど危険なようだ。
「てか、こんな数どこにいたのかな」
「うーん、さあ?」
「ちょっと攻撃してみようか………シッ!!」
ラルがその偽竜の大群めがけて光閃を放つ
しかし、捉えたのは数頭程度で上から落ちてくるのがわかる。
「おー、全然減らないね」
「突っ込んでもいいんだけど、相手が何をしてくるかわからない以上下手に手を出して変なことになったら困るし…」
遠距離攻撃系をあまり持たない二人は行き詰まっていた。
「ちょうど都合よく来るのが私ってもんね」
「アリス!」
「はいはーい、早速なんだけど、あれはどういう状況かわかる?」
「いや、ただ狩ってたら突然ああなり始めて、」
「そっか、攻撃はしてみた?」
「うん、ここから倒せたのは三頭ぐらいだけど」
「ほむほむ、これは……一端あれを耐えきるしかないわね」
そういってアリスは偽竜の大群の方を指差す。
そこにあったのは大群が見えなくなるほどの巨大な火の玉だった
「あれ?………って、わ!何あれ!?」
「やっぱりあれは、避けるわけにもいかないし…」
「やるしかないんならやるしかないよ!アリス!何か案はあるんでしょ?」
「あるけど、それだと二人にも手伝ってもらわないと……」
「私はいいわよ?別に攻撃だけが楽しい訳じゃないし?」
「そうなの?ならよかったわ、でっかい盾作るから抑える役よろしくね!」
「抑える役?」
「見ればわかると思うから、異級氷系盾魔術『アイスシールド!』」
異級は魔力の入れ具合で大きさを自由に変えられる。
通常のアイスシールドなら人が持つぐらいのちょうどいいぐらいの魔術なのだが異級によってそれは町を覆いつくすぐらいの大きさで、さらにとてつもなく分厚くなっていた。
「『レビテーション』!」
さらにアリスは作った盾を浮き上がらせる。
この魔術は単体で浮き上がらせる魔術のため大きさもなにもないのな異級はない。
「ぜぇぜぇ、さすがに魔力がきついわよ……、じゃああとは任せたわよ」
「ちょまって!私たちには!!?」
「なにいってるの?もうかけてあるわよ?」
「へ?あ、ホントだ!」
「じゃあ、がんばってね」
「私からもお願いします」
アリスとビスルト
二人の応援を受けた二人は胸を張っていいはなった。
「「任せなさい(てよ)!」」
そういって、二人は巨大な氷盾へ向かっていった。
「あの火の玉って速いのかな?」
「さあ?まあ、この盾がアリス製だからあとは私たちにかかってるってことはわかってればいいと思うわよ?」
「そっか、じゃあ、逆に押し返すぐらいで頑張ろっと!」
「それいいわね!おっと、そろそろくるわよ!」
「うん!」
その火の玉は存外ゆっくりだったが近づくにつれてその熱力は見てとれるぐらいにやばそうなものだった。
まあ、氷盾があるお陰で下には全然変わらないのだが。
徐々に氷盾との距離が縮まる。
二十メートル、
十五メートル
十メートル
七、六、五、四、三、二、一
そして、遂に相対するもの同士がぶつかった。
二人にとてつもない負荷が掛かる。
「ぐぅうううう!!」
「うぉおああああ!!?」
重っ!!!
なぜゆっくり落ちてきていたのにここまでの重みがあるんだよ!
そう、二人は思った。
だが、考えながらでは徐々に押されていくこの状況を確認したらしい彼女たちは全身全霊をもって押し返す。
ただ、それでも状況は拮抗していた。
「いやぁあああああ!! 」
「うぉおおおおおお!!」
がんばってはいるんだけど、
しかし、状況が拮抗しているのは押し合いだけだ
魔術としてであれば話は別だったのだ
氷盾も熱の影響で溶けてはいるんだが逆に火の玉はそれ以上に少しずつ小さくなっていっていた。
それを察した魔力切れのせいで動けないアリスはその事を伝える。
「ラル!ニル!もうちょっと耐えて!そうすれば終わるから!」
「了解よぉおおおお!!」
「わかったぁあああ!!」
その拮抗の十数分後火の玉は完全に消滅する。
最終的に残った氷盾は通常のものとたいして変わらないぐらいのものになっていた。
「ふぅふぅ、疲れたぁ」
「僕も、こんなに頑張ったの久しぶりだよ…」
十数分間もの間全力をだし続けて疲れただけ、という二人はやはり化け物だね。
そう思ったアリスは、多少魔力が回復したことによって動けるようになっていることに気づき立ち上がろうとするが立ちくらみがしてまた倒れてしまう。
そして、空を見上げた瞬間に驚愕に襲われた。
「ダメ!!二人ともまだ、終わってない!!」
「えっ!?あとは偽竜だけじゃ………」
「………はぁ…そりゃそうよね、効くとわかったものを使わない手はないものね」
そう、偽竜の大群はもう一度火の玉を放とうとしていた。
一発目でアリスの魔力の大半が無くなったのに
二発目はもう耐えきれない、
「ごめん、私が耐えるなんていったから……」
「いやー仕方ないよ、まだまだだったってことでしょ私たちが」
「そうだね………」
ああ、これで終わりなのか
ドゴォオオオオオオオン!!
………あれ?近づいてくる音にしてはさっきと違うっていうか、これは………爆発音!!?
瞑っていた目を開けるとそこには何事もなかったかのように真っ青な空が広がっていた。
いったい何が!!?
体を起こし辺りを見回してみると、一頭の竜がいた。
その竜の色は黒
そして、この竜の種類は魔竜
それに至った瞬間あの言葉が頭のなかで繰り返された。
『魔竜に馬車を襲われエルムをさらわれた』
「起きなさい!二人とも!」
「ん?あれ?僕たち生きてる?」
「私も、」
「今はそんなこと言ってる場合じゃない!!あれを見なさい!!」
「また、あれって……ま、ま、りゅう、」
「エルムをさらったの魔竜だったよね…」
「そうよ!」
「ってことはアイツがエルム君を!!」
二人は跳ねるように起き上がるとすぐさま臨戦態勢に入った。
「オイ!そこの魔竜!!エルムをどこにやった!!」
『おお、この俺を見て逃げ出さないとは勇気あるな、お主』
「いいから質問に答えろ!!」
『何を勘違いしてるかわからんが俺は、人の子なんぞさらっておらんぞ?』
「嘘をつくなぁ!!」
『嘘じゃねえんだが、まあ、そのエルムってやつは知ってるぞ?』
「やっぱり嘘じゃねえか!!」
「ちょっと、ラル、下がってて」
「なんで!?こいつがさらったかもしれないんだぞ!!?」
「いいから………ほんとにさらっていないの?」
話にならないラルをさげ、魔竜に核心を聞くアリス
『お主の方が話がわかりそうだな、ああ、竜の名の元に嘘、偽りはない』
「じゃあ何でエルム君を知っているので?」
『契約したからな』
「契約!?」
『てか、お主らやつの知り合いなら連れてってやるぞ?やつの元に』
「ほんとに!?」
『嘘、偽りはないて』
「なら、つれてってください、」
『全く、お主らは態度がなっておらんなぁ』
「………つれてってください、お願いします」
「アリス!何でそいつを信用してんの!?嘘を言わないって自分で言ってるだけかも知れないじゃない!」
『ハァ、そうか、わかった。じゃあお主らは自分等で探しだすのだな、それならそれでいいんだけど、まあいいか、じゃあな』
「ラル!黙ってなさい!この竜は嘘をつかないし理由もなければ私たちを攻撃しないから!!、すいません。あなた様の気分を損ねるそうなことをしてしまい」
『まあ、そんなことでは、怒らんよ、で?そっちの暴走娘は来るのか?来ないのか?』
「あれ?僕には?」
『お主は大丈夫だろう?』
「なにがって言うのは野暮ですね」
『やはりわかってるなら大丈夫だ』
「……二人が大丈夫と思うなら、私も行かせて」
『お主はわかっておらんな』
「なっ!?なにがよ!!」
『仕方がない、言ってやろう、強者にたいしてその言い分は失礼ではないのか?弱者よ』
「弱者!?私が?」
「ハァ、そうよ、私たちはこの竜の足元にも及ばない。」
『そういうことだ』
「ふざけるな!やはり信用できるか!」
『…ちょっとそこの二人?』
「何でしょう…」
「はい?」
『お主たちだけにした方が楽なんだが、あやつもつれていった方がいいのか?』
「お願いします。あれでも私たちの大事な仲間なんです。」
『そうか………おい、そこの暴走娘』
「暴走娘じゃない!私の名前はラルよ!」
『じゃあ、ラルよ、今度相手してやるからじっとしてろ』
「『バインド』」
「なっ!?アリス!?」
『おお、助かる、そういえば、もう一人いたな?この国の若き女王よ、お主はどうする?
これまでずっと落ち込んでいたビスルトにも黒い魔竜はきく。
「ひとつよろしいですか?黒魔王竜よ」
『おお、俺のことを知ってたか!で?何が聞きたい?』
自分を知っているものがいたことが嬉しかったのか、何でも聞いてくれとでもいうかのようだった。
しかし、ビスルトが聞きたいのは今回のこと。
「この偽竜は貴方の差し金ですか?」
『あんな偽物を使うほど落ちぶれてはおらんよ』
「さようですか…でしたら私は王城に戻ります。」
『そうか、なら、送ってやろう、若き女王よ、(転送)!』
するとビスルトの体が一瞬にして消える。
『では、いくとするか。(転移)!』
これで、エルム君を助け出せる!
そう、思っていた。
どーもクロ課長です!
こんなに長くなってしまってすいません!
ほんとは分ける予定だったんですけど、どこで分けるかわかんなくなっちゃってそのまま投稿してしまいました。
今話はリア、ラナの判断、アリスたちの飛行、ビスルト二頭身化、そして懺悔、偽竜の必殺技?、そして違う魔竜。
という色々なことが起こってしまいました!
やっぱり分ければよかった………
まあ、また書けばいいだけですね!
そうそう、ビスルトの口調はもとに戻すので分かりにくいのはすいません
話が変わりますけど、ほんとに嬉しい出来事があったんですよ!
始めて、始めて!感想をもらったんです!!
もう、嬉しすぎてほんとにやばかったぐらい嬉しかったです!
感想をくれた方!本当にありがとございます!
それこそ、がんばってかいていきます!
最後に、今話も最後までお読みくださってありがとうございました!
誤字脱字があれば報告してくれると助かります!




