予知夢?正夢?どうか何もありませんように
〔アリス視点〕
「ねえ、二人とも」
「うん?どうしたの?アリス?」
「なんか思い付いたとか?」
「まあ、そんな感じ」
「ほー、どんなの?」
「まあまあ、ちょっと集まって…………」
まだ目覚めないエルムの近くで秘密の会談が行われた。
〔エルム視点〕
俺はどうしてか女装した状態で手足を縛られている。
口は塞がれてないようだ。
そして、どこかに運ばれている。
この揺れかたは……馬車かな?
うん、どうしてこうなった?。
いままで、女装した記憶も拐われた記憶も……いや、無くはないわ。
マジで、どうなってんの?
そんな危機感のないことを考えていると、外から二人の女性の声が聞こえた。
御者かな?
「ねぇ!こいつ、今まで売られてきた中でも一番の上玉じゃね!?」
「そうだよな!?やっべ!今回は超運いいわ!!」
「これなら今回はあれに出そうよ!?めっちゃ高くなるよ!」
「当分遊んで暮らせそうだね!アハハハハ!」
………!?
奴隷商につかまった!?
まじかよ!
いやまて、それこそ女装した状態で外なんか出たことないし、売られるなんて意味がわからないんですけど!!?
あの3人の目を掻い潜り、俺を連れ去るとは思えないし、3人と戦ったならなおさらだ。勝てるわけないし、三人が俺を売るわけないし……
経緯は忘れよう。
こいつらなんていってた?
今回はあれに出そう、
あれってのはなんなんだ?
今回はってことはいままでは普通の奴隷として売ってたのか?
それが今回はちがう……
そして、高くなる可能性がある。
ってことは……
そして、自分が出た結論を脳内で発表しようとしたときにまたもやさっきの奴隷商の声が聞こえた。
「オークションなら王族か変態貴族が高く買ってくれるもんね!」
そうそう……
「って、先言うなよ!」
ああ!
ミスった!つい突っ込んでしまった!
しかし、返ってきたのは俺を突っ込ました女性の普通の対応だった。
「ん?やっと目が覚めたわね。どう気分は?」
「いや、最悪」
「まあ、そりゃそうね」
「一応どこにいくか聞いても?」
「オークション会場」
「何しに?」
「あんたを売りに」
「……逃がして?」
「ダーメ」
「……」
「……」
「マジで?」
「マジで」
「……」
「……」
沈黙のなか馬車が動く音だけが聞こえる。
よし、バラそう。男と言うことを
逃がしてもらえるかもしれない。
「なあ、俺ほんとは……」
「男の子なんでしょ?」
「……」
「大丈夫、どっちに転んでも高く売れるから!」
要約
どっちに転んでもって、女として売られても、男の娘として売られても、高くなるから安心して
ってことだろ
…………詰んだ。
ばれてるばれてない以前の問題だ
こんなの問題じゃない。答えがないじゃないか!!
よし、諦めた。
俺の人生がどうなろうと明日は明日の俺が考えてくれ。
「おやすみなさい」
「へ?いや、寝るんだ……」
「こんなの初めてののケースね。暴れるでもなく泣き叫ぶわけでもなく、寝るなんて」
「そんなに褒めるんだったら逃がしてくれ。」
「「大丈夫、褒めてない」」
「チッ!」
「では、ついたら起こしてください」
「オッケー」
俺は揺れる馬車になにげ寝やすさを感じながら落ちていった。
どこか似たような経験をした気が──
「はい起きてー」
「……ん……」
何やら声が聞こえるが眠たい俺は多少の反応だけ示し再び寝ようと……
「今起きなかったら襲っちゃうよ?」
「大丈夫です!今眠気が吹っ飛びました!」
……?あれ?ラル?
「おはよ」
「あ、うん、おはよ」
あれは……夢?
ここも、あの家の俺の部屋だし……
「なんか、ずいぶんとはっきり寝言を言ってたけど大丈夫?
『って先いうなよ!』とか、寝てるのに『おやすみなさい』だとか、ツッコミありの独り言みたいだった」
「ま、まあ、気にしないでくれ」
「で?どうな夢を見てたの?」
「んと、奴隷商になぜか女装している俺を商品としてオークションにかけられそうになる夢」
「なんだか物騒な夢だね」
「まったくだよ……」
「まあ、オークションでエルムが出品されてたら、絶対に落札するけどね」
「怖いこと言わないでくれ、俺がラルの奴隷として働かなくちゃいけないのかよ」
「いや、一切働かせないよ?」
「なんで?」
「ずっと私とイチャイチャさせるから」
…… すこしでも悪くはないと思ってしまった俺を許してくれ
「まあ、妄想の話はここまでにしよう」
「ふっふっふ、妄想じゃなくて実際にできなくはないけどね……」
「いや、怖いわ!」
「はいはい、さあ、朝ごはんを食べに行こう!」
俺を引っ張るラルの顔がとてつもなく危ない笑いかたをしていた。
「おっ!やっと起きてきたね!」
「おはよー、ニル」
「おーはよ!」
「アリスもおはよー、朝ごはん作ってくれてありがとね」
「大丈夫だよー、逆にこの二人に作らせるとどうなるかわからないからね」
そう、この双子、料理がほとんど出来ないのだ。
前に食べさせられたけど……
うえっ、ちょっと思い出したくないわ。
「失敬な!作ろうと思えば作れるわよ!」
「はいそれ、作れない人がいうやつー」
「うぐぅ!」
「アハハハハ」
「ちぇっ、絶対作れるようになってやるんだから」
「頑張って、ラル!僕は応援しているよ!」
「え?ニルはしないの?」
「いや、だって、エルム君と一緒に暮らせばエルム君に手取り足取り教えてえもらえるかもしれないもーん」
「なっ!そんな発想があったとは!うー!どうしよう!」
「いいわよ、私が今度教えてあげるって」
「ホント!?ありがとう!アリス!」
…………なんだかおかしい気がする
いや、会話の内容じゃない。
三人のこの異様な仲の良さだ。
昨日、気絶する前に二人とアリスはすごい勢いで争っていたはずだ。
それが、昨日今日でこんなに仲良くなれるものなのか?
……うーん、なにかたくらんでる?
まあ、仲が良いことはいいことだからまあいっか!
「じゃあ、お先に!いっただっきまーす!」
「ふぅー食った食った!」
「どうだった?食べれた?」
「食べれたもなにも朝食にはもったいないくらい美味しかったよ!」
「ストレートに言われるとちょっと照れるなぁ」
ヤバイ、アリスがいつもよりかわいく見える
ただでさえめっちゃかわいいのに……
なんだ?マジでなんの補正がかかってんの?
「それはそうと!エルム君!」
「うぇえ!!ど、どうしたの!?」
突如アリスがテーブルの反対から体を乗り出してくる
見とれていただけあってつい変な声を出してしまった。
「今からお出掛けするから、これに着替えてね!」
そして、アリスが取り出したものは、夢で俺が来ていたのとおんなじ純白のワンピースだった。
しかし、ツッコミたいし、逃げたいのに喋れないし動かない。
それどころか渡されたワンピースを勝手に体が受け取ってしまう。
考えることはできる分余計に精神的におかしくなりそうだ
「あ、そうそう、エルム君のご飯の中には従順薬いれといたから」
はっ!?ちょっ!それってA級禁薬じゃん!!
しかも、貴族のおっさんがこっそりと仕入れてるって有名な従順薬って!
そしてついに着替えるべく服を脱いでいく。
やめろ!!止まれ!マジ止まれよ!
せめてここは!ここで着替えるのだけはやめてぇ!!
「よーし、みんなでエルム君のお着替えをじっくりと堪能しましょー!」
「「おー!」」
抵抗むなしく徐々に一枚、さらに一枚と勝手に脱いでいく。
そしてとうとう、上半身になにも着るものがなくなってしまった。
次に脱いでいくもの、ズボン、パンツ……
だぁあああああ!!
それはまずい!!完全にヤバイやつだって!!
脳内で完全にパニクっている俺を察してくれたのか、アリスは助け船を出してくれた。
「さーて、さすがに見るのはここまでにしてあげましょうか」
「えー!」
「もったいないよー」
「いいの!はい、二人とも他の部屋にいくよ!」
「へーい」
「ぶー」
……何かある。
絶対に何かある。
理由も確証もない。だけど、何かあると思う。
そして、唯一自由に動ける目だけで見える範囲でのみ色々と見回してみる。
いつもと違うものがあれば恐らくそれが不安の原因だ
キッチン、特に変わったことはない
テーブル、調味料の配置が変わってるか?
ソファー、クッションと可愛らしいヌイグルミ……これだ
目は特に異常はない。しかし、胸のところに異様な……
うん、あれ、遠眼魔術ですね。
簡単に説明すると非生命体にその魔術をかけるとそこに魔術回路がつながり、いつでもどこでもそこから見れるというとっても便利な魔術ですね。
…………って、おい!!
いなくなったよりタチ悪いじゃねぇか!!
やめろ!それ以上は!ズボンに手をかけるなぁ!!
回りから見たらその光景はただ、一人の少年が女装をするために着替えている光景にしかみえなかった。
「あっそうそう、それ録画可能なこととこれもしっかり履いてね!」
部屋にいったと思っていたアリスが戻ってきて二つの悪魔的宣告をして今度こそ部屋に向かって去っていった。
録画可能なのか……
しかも、あれを履かないといけないのか……
あれとはさっきおいていった女性用下着……
お母さん、お父さん、今日俺は変態に仕立てあげられてしまうかもしれません。
こんなの変態をお許しください……
ついに、最後の一枚が無くなった……
うっうっ
体の自由が聞かない今心の中で泣くしかない
ああ、この世から俺という存在を一切なくしてほしい
美少女3人に全裸を見られたあげく、女装していくところも見られた…。しかも、しっかり女性用下着もつけるところも……
それをさせた張本人は目の前で目を輝かせている。
「ほんと、エルム君は何でも似合うねぇ!」
「もう、羨ましいな!!」
なんと言われようがもう、どうでもいいや
まだ全然動かないし……
「あっそうだ!!」
えっ?なに?
「エルム!私に抱きついて!」
ああ!そうか!この状況は二人にとって最も嬉しい状況かもしれない!!
命令された通り今回も勝手に動いていく自分の体
そして、ラルに抱きつく。
「ふあああああ」
すぐにラルも抱き返してきたけどすぐに力が抜けたようだ
それにしても、女の子っていい臭いなんだな……
「嗚呼!し、あ、わ、せ……」
「あーー!ずる~い!」
「うへ、うへへへ」
ラルの顔がとてつもなくデレッとしている。
大丈夫なのか?
「ぶー、じゃあ、僕は~エルム君は僕をお姫様だっこする!」
おふ!今度はお姫様だっこですか……
抵抗なんて無駄だとわかり始めた俺はとにかく流されることにした。
ラルから離れた俺はニルの背後にまわり優しく持ち上げる
「んぅううう~、もう最高!」
ニルが満面の笑みを浮かべたと思ったら俺の首に手を回してきた。
そして、次の瞬間に俺は思考をも停止させられた。
「ちゅっ!大好き!エルム君!」
あ、あう、ああ
うわぁああああ!
学院に入る前は全く免疫がなくて、入ったあとでは多少は免疫がついたとはいえ、女の子にほほにキス、何て言うことは多少の免疫程度しか持っていないエルムにとってとてつもない精神ダメージを与えた。
「あーー!エルム、デレデレしない!」
中身ではめっちゃデレデレしてるけど今の俺って俺ではなんにもできませんが?
そういえば、今の俺って女の子の格好だよな?
はたから見たらただの百合だよね……
「はーい二人とも~そろそろエルム君を離してー」
「えー、まだやってないこと色々あるのに~」
「僕は結構満足だよぉ~」
「はい、エルム君、行くよ!」
……どこに?
疑問に思ってもなんの意味もない。
なんにもできない。ただ、アリスに付いていかされてるだけ。
まあ、出掛けるんだから外にいくんだろう。
いやだ、この格好で出たくない……
とは思いつつも勝手に動いてしまうこの体
そして、家からでる。
すると、そこには一つの馬車が停まっていた。
「じゃあお願いねー」
アリスは馬車に向けて何かを頼むすると二人の御者が馬車から降りてきた。
「任せてください!」
元気よく返事をする御者……ん?
なんか聞いたことある……声?
「はい、じゃあこっちに来てください」
うむもいわさず……間違えた、言えず御者の方に近づいていく。
そして、なぜか手足を縛られ馬車の中にかつぎ込まれた。
「じゃあ、またねー!エルムくーん」
「「またねー!」」
「そうだ、一応、その薬の効果消しとくね。『エフェクトイクセングウェイシ』」
え?ええええ?
そして、馬車の扉が閉まり、三人の姿は見えなくなった……
……おい、どういうことだ?これ
一旦、回りを見渡してみた瞬間に状況はほとんどわかった。
そう、この馬車は夢と同じ。
この馬車どころじゃない。
この状況、俺の格好、御者の声
ああ、正夢になってしまったのか。
「ねえ!こいつ、今まで売られてきた中でも一番の上玉じゃね!?」
「そうだよな!?やっべ!!今回は超運いいわ!!」
「これなら今回はあれにだそうよ!?めっちゃ高くなるよ!」
「当分遊んで暮らせそうだな!!アハハハハ」
極めつけにこれか。
ああ、やっぱり誰も信用なんかしちゃいけなかったのか。
信じても、俺は、ただの道具か。
「もうやだ……」




