真実を知ってるものと真実を意地でも聞かない者
俺は思う。
この世の中はやっぱ理不尽ではないかと。
そして、さらに思う。
今の状況も理不尽なんじゃないかと。
現状
「アハ!アハハハハ!!」
「痛ぃ、痛いよぉ……」
「ほらほらぁ!言わないと僕とラル同時になっちゃうかもよぉ!!」
ビシ!ビシ!ビシ!
「いい加減、イタ!信じろやぁ!イテェ!」
「アハ!あんな格好で一緒に倒れててよく言うよ!!真実を話してよぉ!怒らないからさぁ!!」
ニルの目が狂喜の色に染まっていた。
そして、さっきまで見えていたラルの鞭を振る右手が見えていたのに突如ぶれてほとんど見えなくなる。
ビビビビビビビビッ!
「うぎゃああああ!!」
「え?もっと?もっとやってほしいの!?」
「もうやめてぇ!!」
「早くほんとのこと話しなよー!!」
「最初ッからほんとのこと言ってるてのぉ!!」
「む~~、頑固なエルム君にはおしおきだ!」
またもやぶれて鞭が振るわれる。
「ひぃ!なんで!いっでぇえええええ!!」
「まったく!僕だってほんとはこんなことやりたくないのに!」
「嘘つけぇ!!振るときが半端なく愉しそうじゃねぇか!!」
「エヘ」
従順で優しかったニルはSっ子に目覚めたようだ。
「いい加減俺を解放しろぉ!!」
「ほんとに隠したいの?」
「隠したいじゃねぇ!隠してない、だ!!」
「信じないもーん」
「部分治癒 スカーチ!」
「ああ!治したね!そんなことするんだったら話すまでもっともっと痛みつけるからね!」
「やめろぉおおおお!」
隙をみて治した鞭跡をさっきより多く量産する寸前だった。
ズダァアアアン!
この部屋めがけて突っ込んできた何かはこの部屋を半壊させた。
そのお陰で俺を吊るしていたロープが外れる。
「いてててて、流石はラルね、あんなことまで出来るなんて……」
ナイスタイミングで俺が吊るされていたこの部屋に突っ込んできたのは……
「アリス!!」
「エルム君!よかった、まだ無事だったのね!」
そう、切り傷やなぜかやけど等の怪我をしたアリスだった。
「ちょっと助けて!さっきからニルに拷問擬きをされてるんだ!」
「私もそれどころじゃないんだけど……!マジックシールド!」
魔力の盾を張った直後、それめがけて一発の光の弾丸が飛ばされてくる。
「ち!」
「どうやったら剣から光の弾丸が飛ばせるのよ!」
「教えるわけ無いし」
光の弾丸が飛ばれた方向をみるとアリスのように切り傷はないもののやけどや何かに叩きつけてできた傷みたいなのが多くあるラルがレイピアを構えたっていた。
「あ!ラルじゃん!」
のんきな声を出したのはニルだった。
「おー、ニル、そっちはどうだった?」
「ダメ、全然吐かないよ~」
吐かないとか言うな!
マジで拷問かよ。
「そっちの方はどうなの?ずいぶんボロボロだけど?」
「こっちも全然」
「やっぱり僕達は二人でやろうか」
「そうね、アリスなんとかすればすぐ終わるわよ」
ふっふっふ、なめられたもんですな。
「なめてもらっちゃ困、うっ!」
バタ
〔アリス視点〕
「はやっ!ちょ!一瞬でやられて担がれてんじゃない!!」
堂々と格好つけて最後まで言い切ることなく首に手刀を落とされ撃沈。
「いや、さすがに二人同時は無理でしょ……」
いやいやいや、ここで諦めたら魔術師失格ね
ここは、一撃で決めるしかないか。
そのためには……時間稼ぎが必須!
すぐさましゃがみ、地面に手を当てる
「チェンジトゥリーン、ラビリンス!」
突如地面が半径約200メートルほどに陥没する。
陥没の後陥没したぶんを補おうとするように上に天井が端から作り出されていく
二人は突然のことで驚いたようだがすぐに体勢を立て直す。
ニルがその作り出された天井に跳ぼうとする。
「アシッドレイン!!」
ラルとニルの頭上に酸性雨を降らせる。
地面にあった植物が一瞬にして溶ける。
その様子を見た二人は即座に作り出されていく天井のしたに避難したようだ。
しかし、直後に飛んできた光の弾丸が頬をかする。
何発も飛んできたがうウィンドウィングで作り出される天井をすり抜け空に舞った。
それを最後に天井が作り終わりラルとニルのまったく見えなくなった。
チェンジトゥリーン、地形変化。
一定範囲の地形をほとんど自由に変えることができる。
しかも、この魔術は全属性魔術のなかでもっとも物理的耐久性の高い土魔術だ。ラルやニルこの二人でも壊すのは容易ではない。
そして、指定した地形はラビリンス、俗にいう迷宮、時間稼ぎにはもってこいだ。
迷宮なので出口が存在するのは致し方がない。
いつ出てくるかわからないのなら、今のうちに魔術を発動せねば!
「異級、アンディーンマニピュ……っ!!」
と
アリスめがけて飛んできたのはラルの光の弾丸ではなかった。
光ってはいた。
だが、形状があきらかにちがう。
まるで三日月のような……
直後迷宮の天井が崩れる。
「ふぅ~、中々やるじゃん、こんなに固い物を切るのは久しぶりだよ」
「助かったわ、ニル」
「いいっていいって、前から、手数はラル、威力は僕だろ!」
な、な、な、な!
マジですか!
あんなのなかなかなんてもんですまされるもんですか!
正面からぶっ壊せる人がいるなんて、無茶苦茶じゃない!
ほんとに化け物……
「もう僕も参戦していいよね?」
「私の相手だ、とか言いたいけど、仕方ないわね」
「よーし、じゃあ、久しぶりに共闘だ」
「剣術最強コンビの力をみせてやらないと!!」
これは不味い!絶対に勝てない!
一瞬でそう感じた。
こんなことはじめてだ。
……だからこそ、楽しみだ!
「ねえラル、アリスなんか笑ってない?」
「ええ、なんか笑ってるわね」
「聞こえてるわよ?こんなに楽しそうな状況なのに笑わないなんてできないわよ」
「変態か……」
「まあ、否定はしないわ」
「くっ!やっぱりさっきのはわざとか!」
「なわけないでしょ!」
「許せない!私達があんなになっていたのに!」
「そうそう、その事で一個言わせて」
「聞きたくないけど、まあいいわ……なに?」
「それって自業自得じゃない?」
「「ぐはぁあ!!」」
あっ、これはいけるかもしれない
「だってさ?二人が自分の感情をただただエルム君に押し付けていた時にも彼は苦しんでいたんだよ?弱い自分と正反対の人達に常に守り続けられ、先輩や同級生からの妬み、そこから発展したいじめ……」
「エルムの悩みを気づけなかったのは本当に悪いと思ってるよ。でも、いじめに関しては、しっかり守って……」
「ほんとに守れてるとでも?」
「どういうことよ」
「あなた達はエルム君といたときにきたいじめてる人たちを対処しただけでしょ?」
「違うよ!ちゃんと、僕とラルでいじめようとしてる人達もしっかり警告もしたよ!!」
「はぁー、わかってないわねー」
「なにがよ!」
「僕たちの何がわかってないって!?」
「全部よ!全部!!もう、最初ッから説明してあげるわ!
私たち三人と学院にいるもう一人のファンクラブがあるのは知ってる?」
「ええ、気にしたこともないけど」
「僕も知ってるけどどうでもよかったよ」
「じゃあ、各一人のファンクラブの合計人数なんて知らないわよね」
「うん」
「じゃあ教えてあげる。
まず、ラル、1575人」
「なっ!そんなに!?」
「次、ニル、1639人」
「僕にもこんなに……」
「まあ、私ともう一人の人は今は関係ないとして、全校生徒総勢7432人、だいたい二人あわせて半分もの人々があなた達のファンなのよ?」
「なんでそんなに僕たちに?」
「行事とかでも目立ってないわよ?」
「いつでもどこでも目立ってるじゃない、一人は活発系美少女、一人は甘えん坊系美少女、二人とも剣術において天才ときた。
歩くだけで目が釘付けになって男女関係なく足が止まる。
そんなのが目立ってないとかありえるわけないじゃない」
「うっ」
ニルは首をかしげたがラルには多少自覚はあるようだ。
「で?全校生徒の半分のファンを持つ二人がある一人にベタぼれときた。しかもその人がイケメン+強い、なら誰もが無理矢理納得するでしょう。しかし、相手は学内で最弱と蔑まれていたエルム君。
ここまででもうわからないかしら?」
「……僕はもう大丈夫だよ……」
「えっ?えっ?どういうことなのよ?」
「はぁ、まだわからないの?あんた筋金入りのバカ?」
「なんですって?」
「僕が簡単に説明するよ、僕たちのファンがエルムを妬み、いじめた。しかし、僕たちが対処したエルム君をいじめた人達はせいぜい何十人、だけど、それだけですむわけがなかったってことだよね……」
「……」
「そういうことよ」
「でも、まって、それを知ってたんならなんでアリスはそれを知ってて放置してたの!?」
「はあ?放置なんかするわけないじゃない。でも、やられていたところを助けはしなかったわ」
「なんで!?あんたエルムを見捨てたってことなの!?それなんだったら本気であんたを許さないわよ!」
「本質を見失ってるわ。エルム君が何に悩んでたか忘れたの!!?」
「本質!?そんなんよりその場を見たことがあるのに助けなかったあんたを許せないわよ!」
「ラル、アリスはたぶん正しいよ」
「どうして!こいつのどこが正しいのよ!」
「エルム君が何に悩んでたか、それは、私達が、いやちがう、強い人たちが弱い人を助ける。それはいいことかもしれない。でも、弱い人にも頑張ってるのに強くなれない人と頑張ってないから強くない人がいる。後者の人達はたぶん気にしないだろう。でも、エルム君は前者の人だ。しかも相手はほとんどなんでも持ってる人。それがどんなに悔しいのか、しかも、助けられるにつれていじめられる回数も増えさらに助けられる回数も増える。
だからこそ、アリスは助けなかった。違うか、裏では助けていただろうけど、その場では助けなかった。助けたら、さらに増えていくのだから」
「そういうこと」
「で、でも!目の前でやられているのを助けないのは……」
「私が悔しくないわけないじゃない!!」
目の前で好きだけど近づけない、仲良くなりたいのになれない!
それがどれだけ辛いことか!
あんたにはわからないわよ!
口には出さない、出してはいけない。
出したらもう終わってしまう気がするから。
「ごめん、そうだよね……」
「……」
「ありがとう、アリス、真実を教えてくれて」
「何をするつもり?ニル」
「ちょっと、学院にいってくる。」
「ダメよ、そんなんしたらエルム君が悲しむ」
「くっ!」
私だって考えたことくらいあるからわかるよ。
だからこそ今は誰もエルム君をバカにしないここにいたい。
それに、二人とも仲良くしたいしね
それをするには……
「だったら今、エルム君の言うことを信用することが大切じゃない?」
一応冤罪は解いておかないと!
「ええ、そうね」
「うん!」
「じゃあ帰りましょうか」
そういって私は家に復元魔術を使い元に戻しながらエルム君を担ぐラルと笑顔で歩くニルと共に家に帰った。
今度こそみんなで町に行き遊ぼうと誘うことを心に決めて……




