92 紫苑ちゃんのお仕事
紫苑ちゃん編はすぐ終わります。
――ウォーウッドの町
町に入ると男達がいきなり突っかかって来た。
興味ないので魔法で衝撃波を生み出して男たちを吹き飛ばす。
ズドーン!!
ド派手に吹き飛んでピクピクしているが、
無視して指定の酒場に向かう。
「まっ待てこのアマ!!」
ズドーン!!
たかって来る虫けらを追い払って、
指定の酒場にてメッセとか言う男を店主に呼んでもらう。
「こんにちは。」
「私は伝言役のメッセンジャーです。」
「メッセとお呼びください。」
ちょび髭の男が丁寧にあいさつをする。
「あなたとは初めましてだったかしら?」
「私は依頼を受けた紫苑と申します。」
紫苑はお上品に挨拶をする。
「紫苑さん。此度は依頼を受けていただきありがとうございます。」
「早速依頼のはなしですが・・」
そう言ってメッセは説明を始める。
近頃、周辺で色々と問題が起こっているらしいが、
一応問題解決の伝手はあるらしい。
だが、それにしても問題が重なり過ぎているので、
わざわざ東方の鬼人族の国に依頼を出したそうだ。
そして依頼とはここから南西にある山から次々と出現する魔物の調査と解決。
上澄みのハンター達では全く相手にならなかったらしい。
人間が異常に弱い種族とは言え、あまりにも被害が大きすぎる。
その件以外にも――
最近魔境の森から出てくる魔物が増えたり、
海賊の被害も大きくなっていたりと色々と大変らしい。
「そちらの問題は大丈夫なのですか?」
紫苑は心配そうに問いかける。
「はい!王都から強力な助っ人が来る事になってますので問題はありません」
「ただ、彼だけでは手が回らない可能性が有ると判断いたしました」
「なので今回、紫苑さんに依頼を出させていただきました」
「強力な助っ人ですか?」
人間にそんな戦士か魔術師が居たのかと驚きつつ質問する。
「はい、王都に突然現れたハンターで、通称『死神』です。」
「死神?」
普段は鬼人族の国に居る紫苑にとって聞きなれない通り名だ。
「そうです。彼は敵の首を悉く斬り飛ばし」
「その戦闘方法に加え」
「漆黒の頭髪と瞳とマントを合わせて漆黒の死神と呼ばれています」
メッセは恥ずかしげも無くそんな通り名を口にする。
「随分大げさな呼び名ですね?」
「その御方はひょっとして鬼人族ですか?」
「顔立ちは鬼人族に少し似ているとの事です」
「ですが、実際は良く分かりません」
「そう言えば変わった湾曲した細剣を持っているらしいですね。」
と思い出す様にメッセが呟く。
「刀?の事でしょうか?」
「だとしたら鬼人族か鬼人族の血が混じった人間でしょうね」
紫苑は納得した様子。
「噂では、一人でオーガ50体の首を数秒で刎ねるらしいです」
「ほう?さぞ狂暴な奴なのだろうな?」
紫苑はニヤリと笑いながら言う。
「戦闘時はそうらしいですが」
「普段はペットの犬と遊んだり教会の子供達に料理を振舞っているそうですよ」
そんな事無いよと、メッセがフォローする。
「狂暴ですが邪悪な御方ではなさそうですね」
「はい、そうお聞きしています」
「その辺の下手な神官よりも神聖魔法に長けているらしいですし」
「噂や死神と言う通り名ほど凶悪な人ではないそうです」
「そうですか。そちらは彼に任せて良さそうですね」
「で――私は山の魔物に集中すればよいのですね?」
紫苑は話題を元に戻す。
「はい、よろしくお願いします」
――紫苑は話を聞いたあとすぐに山に向かった。
今の人間の里になど長居したくない。
歩きで数日
壊滅した村を通り過ぎて山に向かう。
その道中に明らかにソレと思われる魔物が居た。
天候は曇り、紫苑は試しに空から雷を落とす。
ズドォーン!!
眩い雷光と共に轟音が響く。
邪悪な魔物は焦げてふらふらしているがまだ生きている。
紫苑はもう一度雷を落とす。
雲に少し魔力で干渉すれば簡単に雷を落とせる。
ズドォーン!!
「まだ息があるようね」
紫苑はもう一度雷を落とす。
ズドォーン!!
一度目は効果今一つ、二度目で倒れた。
三度目で魔物はようやく完全に息絶えた。
「二度も耐えるなんて普通じゃないわね。」
一撃でオーガ10体以上を炭に出来る威力のはずなのだが・・・
この世界に居る魔物とは一線を画す邪悪さと強靭さだ。
明らかにおかしい。
何かが起きている。
このままだとこの脆弱な王国なんてあっという間に壊滅してしまう。
この王国が壊滅するだけで済むのならまだしも・・・
他国にまで被害が及びそうだ。
王国の生産する野菜や果物は大陸屈指の味と量を誇る。
今は交易が減ってしまったが・・・
いずれ交易が始まった時のために、
王国には存続して貰わねば困る。
でないと私の長い人生の楽しみが減ってしまう。
実は王国で暮らしてみたいと思っていたのだ。
王国には美味しい料理に食材、いろいろな娯楽もあるらしい。
鬼人族共は殺し合いをしてばかりで。
そう言った面では大きく劣っている。
しかし今、私の様な獣人もどきが王国で暮らすのは無理だ。
何故なら教会が中心になって人間以外を差別しているから。
他種族はまともに生活出来ないほど、ひどい扱いを受けるらしい。
現に私が少し町を歩いただけで絡んでくる輩が多数いた。
まあ数百年ほど待っていればそのうち改善するだろう・・・
とそんな事を考えながら周囲を詳細に探知する魔法を使う。
魔法で立体的に広範囲を確認する魔法だ。
これと私の鋭い視覚、聴覚、嗅覚で周囲を完璧に把握する。
そして自分は動かず、この場から的確に魔物に雷を落とす。
ズドォーン!!ドーン!!
周囲に幾つもの雷が雨の様に落ちる。
先ほどよりも、さらに強い威力の雷だ。
「ふむ、それぞれ連携を取ったりはしない様子ね」
紫苑は満足そうに言う。
そんな大雑把な魔法を行使しながら山に近づいて行く。
山に入って捜索をする。
雷を落としたり、手から雷撃を放ったり、
純粋に周囲の大岩や巨木で魔物をサンドイッチしたり。
やたら強い割に数が多くて驚いた。
――その日から数日かけて森や森周辺を調査した。
森に入り調査をして森から出て野宿をする。
野宿と言っても魔法で簡易的に家を作り出すのでかなり快適だ。
そうやって、森を調査しているとある発見をした。
何かを魔法が隠している。
鬼人族の国では見覚えのない魔法の術式で、
多分エルフの魔法だ。
魔法をどうにかして隠された空間に入ってみた。
――そこにはエルフの集落があった。
臨時的な集落の様に見える。
「これは?」
紫苑は驚きを隠せない。
当然ここは人間の王国なのでエルフが住んでいるはずがない。
ここ最近は特にそうだ。
集落に入ってすぐ、エルフが素早い動きで弓や剣を向けてくる。
「獣人がここで何をしている!?」
「答え次第では殺すぞ!!」
エルフのリーダーと思われる男が剣を向けつつ叫ぶ。
今の所、生存しているキャラでは作中最強の紫苑ちゃん!
強い!可愛い!!耳と尻尾フリフリ!!




