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93 紫苑ちゃん大ピンチか?

紫苑ちゃん可愛いと心の中で念じながら読みなさい。

 紫苑は武器を持ったエルフ達に囲まれてしまった。


困った・・

一先ず事情を説明しなければ・・・


「この山に出現する狂暴な魔物の調査に来た紫苑と言う者で」

「こんな見た目だが鬼人族の国から派遣された魔術師だ」


紫苑は相手を刺激しない様に落ち着いて説明する。


「鬼人族の魔術師?」

「あの有名な九尾の魔術師か?」


どうやらエルフにも知られている様子。

そうなれば話が早い。


「有名なのか?」

「まぁ尻尾は9本あるけれど・・・」


と紫苑は自分の尻尾を見ながら呟く。


「まぁ、そう言うわけでこの森の魔物にしか興味は無い」

「此度はエルフなどどうでもいいのだ。」


紫苑はぶっちゃける。


「まあ、よかろう」


リーダがエルフ達の武器を下ろす様に指示を出す。


「逆にお主たちはここで何をしている?」


「はぁ・・・話せば長い」

「奥で座って話そう」


エルフは紫苑を集落の奥に案内し、簡易的なイスに座り説明する。



――事の発端は数か月前。

何とかって言う国王の代理人を名乗る人間が、

王国との国境に近いエルフの里を突然襲ったらしい。


理由は意味不明で王女殺害が云々との事。


本当に突然、人間の大軍が襲い掛かって来た。

そのせいで、無警戒だったエルフ数人が犠牲になってしまった。


そして襲われた里の長は冷酷な判断を下した。


残ったエルフを半分に分けて反対方向に逃げろとの命令で、

半数は他のエルフの里の方に、

もう半数は人間の王国の方に逃げろとの命令だった。


つまり囮役と本命に二分して逃げる作戦だ。


里に逃げる方の集団には身分の高いエルフたちが。

人間の王国側に逃げる集団には身分は低いが実力が高いエルフたち。



身分の高いエルフ達は普段から無駄に高いプライドを持っていた。

彼等はいい機会だと言う事で、囮を使って逃げたらしい。


一時的に王国との国境付近まで逃げる事が出来た。

だが、一緒に逃げていたエルフ達の気持ちは治まらない。

だから、いっその事新天地を探して、そこに住もうという事になった。


人間の国での移動は容易かった。

人間は姿や音さえ隠せば気付かない。


そして見つけたのがこの山だったらしい。


「にしてもエルフの里と距離が離れすぎていないか?」


紫苑には一つ疑問が思い浮かんだ。


「西の町を超え、王都を超えてここまで来た」

「つまり我々の身軽さと、里長達への憎しみからここまで来てしまったのだ」


エルフのリーダーは真面目な顔で言う。

突拍子も無いが嘘をつくならもっとましな嘘をつくだろう。


にしても怒りに任せて王国の反対まで歩いてきちゃうんだ・・・


「そうか、エルフも大変そうね」


「ですのでここの集落の事は秘密にしていただきたい」


「構いませんよ。私もこの王国では爪弾き者ですし」

「どこにもバラすつもりはありません」 


紫苑は興味無さそうに言う。


「そうですか、やはりあなたほどの者でもそう言った目に合うのですね」

「申し遅れました。私はラウル・ウィンディアと申します」

「ラウルとお呼びください」


エルフのリーダーはラウルと名乗った。


「ラウル殿。早速だがこの森の魔物の事で知っている情報を教えて欲しい」


「招致した。と言っても大した情報はありません」

「魔物が沸いて来る狭間の場所を知っているだけです」


「その狭間を調査したい、案内をしていただける?」


「ああ、若いのが良く知っている」

「テッド、ロビンお前たち案内してやれ」

「くれぐれも魔物に見つからない様にな」


とラウルが言うと二人のエルフが前に出る。

どうやら彼らは隠密行動で森を移動し食べ物を確保している。


魔法で隠されたこの集落には畑がある。

家も建て始めているし、

畑や家があるという事は住み着く気満々の様だ。


人間達もまさか取り逃したエルフがこんな所に住んでいるとは思わないだろう。

意外性抜群ではある。


そもそもエルフがなぜここに来たのかと言うと、

同じ状況になれば私でもそうすると思う。


エステラ王国とエルフの国の国境付近から逃げるとすると、

行先はエステラ王国、獣人の国、ドワーフの国、南の人間の国だ。


エルフはそこまで頻繁に交流はしない他を頼る事もあまりない。

だから逃げるのなら条件のいい場所に向かうだろう。


食料が豊富で他種族に見つかりにくい場所。

エステラ王国は国土的に食料が豊富で、

人間共はろくに魔法が使えないうえ、超絶鈍い。

隠れて住むには絶好の場所だ。


で王国のどこか深い森に隠れるのがいいのだが、

彼らは怒りに任せて王国の反対側まで来てしまったらしい。

エルフって意外と感情的なんだなぁと少し驚く。


――その後、集落を出て隠密の魔法を発動しつつ移動する。

木を伝って移動しているのだが、見れば見るほど魔物が多い。

この山に生息する通常の魔物は邪悪な魔物に食い散らかされてしまっている。


「気を付けて下さいね」

「あの邪悪な魔獣の中には感が鋭い個体も居ますので」


そう比較的若いエルフのテッドが忠告してくれる。


「一応、姿と匂いとついでに魔力も消そう」

と紫苑が呟く。


複数人で隠密系の魔法を使う時、

お互いの姿すらも把握できなくなる。

だから紫苑が全員にまとめて隠密魔法をかけて、

お互いの位置を把握できるようにした。


「おお!これなら安全ですね」

と少し感心したようにテッドが呟く。


「木がしなる音や地面の足跡で気付かれたりするんですよ」

もう一人の若いエルフのロビンが付け加える。



――そんな感じで慎重に移動し、山頂付近に到着した。


そこに切れ目?隙間?の様な物があった。

空中に存在する大きな狭間。


その狭間を潜り抜ける様に邪悪な魔物が現れている。

しかもそれだけじゃなく邪悪な魔力も漏れ出てきている。

周囲には邪悪な魔力が充満している。


「あっ、アレです」

テッドがビビりつつ指をさす。


「ふむふむ。」

「あの切れ目?と言うか狭間が異界との出入口になっている様だな」

「異界の門とは――初めて見たぞ」

ビビるテッドに対して紫苑は冷静に分析する。


「ええ、我々エルフも聞いた事がありません」

「なので対処できずに放置している状況です」

ロビンも緊張しつつ額に汗を滴らせる。


「正直私も初めて見ました」

「そもそも異界自体、存在するかどうか定かでは無かったので」

「異界や異次元の研究も世界的にたいして進んではいない筈です」


紫苑は相当の知識を持っているがそれでもほとんど情報が無い。


「では打つ手なしと?」


「アレを閉じる方法は無い」

「だが一時的に出てくる魔物を抑える魔法を行使する」


解決できない代わりの代案だ。


「どういうことですか?」

ロビン


紫苑は木の上から降りて魔法を行使する。


紫苑の尾が8本、尻から離れて雷に変わり一つの塊となる。

そして雷の塊となった8本の尾は一匹の獣となる。


雷の獣だ


鳴き声は雷鳴、その体は雷、速度は雷光の如く。


「よし、話は分かっているな?」

「この山の邪悪な魔物を狩りつくしてくれ」


紫苑は自分の尻尾から成った雷の獣に指示を出す。

雷の獣は雷鳴と共に森に駆け出し巡って行く。


後ろからテッドとロビンが現れる。


「目標を自動追尾して狩る魔法?」

テッドが恐る恐る質問する。


「そうだが、その魔法の根幹に私の尻尾を使っている」

「だから自動的に魔力が充填される」

「尾8本分なのでよほどの事が無い限り、魔力を切らす事は無い」


「それぞれの尾に魔力の生成器官が備わっているのですか?」

ロビンが驚愕の表情を見せる。


「私の場合は体に一つ、それぞれの尾にひとづつで計10個だ。」


「へー、そんな感じの種族って確か千年前か二千年前には結構いたんよね?」

テッドは若いので年上のエルフから聞いた話だ。


「そうらしいね」

「別の大陸から来たとか異次元から来たとか言われていますよね」

ロビンも人図手の情報を話す。


「ともかく、これで暫くは安全です」

「狙うのは邪悪な魔物だけで、食べる分は残してくれるはずだ」

「集落に戻りましょうか」


紫苑はにっこりと告げる。


一旦集落に戻りラウルさんに説明する。


「そう言う事ですので、しばらくアレで時間を稼ぎ」

「その間に、アレの対処方法を考ておきます」


紫苑は事情を端的に説明した。


「私もあれの事は全く分からないので力にはなれない」

「この山に来る際はいつでもここに立ち寄ってくれ」

「あなたなら、ここに住んでも貰っても構わないぞ」

ラウルは冗談交じりで優し気に言う。


「ふふっ!わかったわ」

「もし今の住処を追い出されたら、ここに来ることにします」


そうして紫苑は一旦この山を離れウォーウッドの町に戻る。

今回の尻尾の使い方を分かりやすく言いうと、エンジンなどの動力とAIを積んだファン〇ルです。

遠隔で自動で行動し、ある程度自己判断し、ほぼ自力で魔力を供給できます。

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