89 海賊退治
誤解されがちですが、海賊とは本来悪人なのです。
「周辺の地理をおしえてくれ」
店員さんに尋ねる。
町の簡単な地図を見せてもらって、迎撃する場所を選ぶ。
地図を見せてもらってわかったがこの港町の海岸は弧を描いている。
海を囲うように緩やかに弧を描いている。
――試しに町の東側の端っこの高台から眺めてみた。
「やけに綺麗な弧を描いているよな?」
『自然に出来た地形には見えないわね』
ユキはそう推理する。
町の海岸だけでなく海岸沿いにずーっと弧を描いている。
まるで陸を円形に切り取った見たいだ。
お陰で今いる高台からは町全体を見渡せるし、
海の方も良く見える。
迎撃地点はここに決めた。
それまである程度準備をしておく。
やる事は矢の補充と魔法陣をいじる事。
後は海賊船の構造と弱点を聞いておく事。
矢は金属製の矢尻で頑丈なものを用意した。
魔法陣は近くの森で試しつつ調整した。
そこまで時間が掛かる作業じゃないので数時間で終わった。
で海賊船の構造は海岸沿いの漁師さんに聞きにいく事にした。
――船着き場にて。
俺は木の棒を杖代わりにして歩き回る。
「はぁ・・・」
海に近づくと疲労感が増してくる。
「アンタ大丈夫かい?」
マッチョな漁師が心配そうに声をかけてくれる。
「ご親切にどうも・・」
「海に落ちなければ全く問題ないです」
「あんた、一体を何しに来たんだ?」
漁師さんは不思議そうに問いかける。
「海賊船の構造に関する情報が欲しくて来たんです」
「なんでそんな事を?まぁ、みんな知ってるけど・・・」
「海賊船はガレオン船、一本の竜骨に3本のマストだ」
「大きさはかなり大きめでちょっとやそっとじゃビクともしないぞ」
「で普段はどっちの方角から来ますか?」
「えーっと。多分あっち、だったかな?」
考えるそぶりを見せながら、東側を刺す。
「でも、普段は海岸沿いを通らないで沖側から回って来る」
「なるほど」
「襲撃時は1~2カ所をスピード重視で襲ってくる」
「隠れて居れば、よっぽどの事が無い限り殺されないから安心しろ」
「わかりました。ありがとうございます!」
「おう!いざって時は逃げろよ!」
と漁師は俺の肩をポンポン叩いて来る。
「はーい」
本当は町をのんびり見て回りたかったけどそんな気分でもない。
基本的には高台で座って一日中グッタリする事にした。
――俺達は高台の上でのんびりする。
ユキは座って俺はユキに寄りかかる。
スイとエンは座っているミカの腹の上でぐったりしている。
「早く帰りたい」
ついつい本音を漏らしてしまう。
『ええ、そうね・・・』
ユキも同じらしい。
ミカは多少違和感を感じるらしいが俺達よりはマシな様子だ。
何も考えずぼーっと水平線と海を眺める。
――そんな日々が数日たったある日。
いよいよ俺達の気分も最底辺ってタイミングで船が遠方に現れた。
すぐに、馬を走らせて店員さんがやって来た。
「ヒロさん!海賊が来ました!」
店員さんが叫びながら馬を下りる。
距離は一キロくらい?
よく分からんけどまあまあ遠い。
俺は弓を構え矢をつがえる。
「よし、少し離れててくれ」
ちょいと危険だからね。
「わかりました」
店員さんは大人しく下る。
まずは矢尻に一時的な魔法を付与する。
炎を可能な限り圧縮して着弾時に炸裂する魔法陣だ。
鉄の矢尻に付与できるギリギリの魔法陣なので威力は低め。
少し威力の高い火炎瓶って所だ。
そして次に矢を引き絞り狙いをつける。
狙うのはメインマストの根元。
視力がやたら良いのは神からもらったこの体のお陰だと思う。
次は矢で、どこかで見たコイルガンの真似をする。
矢の前に強い磁力を発生させて発射速度を上げる方法だ。
具体的には。
矢の前に螺旋状の電流を生み出すが、
タイミングを合わせて一瞬だけ螺旋の電流を生み出す。
そうして一瞬だけ強力な磁力を発生させる。
流す電流の強さによって磁力の強さも変わるし、
磁力で引き寄せられる仕組みなので、
矢尻が通り過ぎる前に電流を消さないと、矢が引き戻されてしまう。
だからタイミングが大事。
俺の体に電気を貯める。
周囲に電気がバチバチと発生する。
そして矢を放つ。
パシュンッ!!
その瞬間矢の前に螺旋状に大きな電流が流れる。
一瞬発生した磁力に鉄の矢尻が引き寄せられ一気に加速する。
ぶっちゃけ矢をつがえる必要があるかと言われれば無いのだが、
今はこの方が矢を飛ばす向きの微調整がしやすいのだ。
そして魔法陣付きの矢は狙い通り海賊船のメインマストの根元に刺さる。
コンッ!!
矢が刺さったメインマストは圧縮した炎が炸裂し小さな爆発が起きる。
そしてメインマストは根元からボキッと折れる。
海賊たちは何が起こったのか分からない様子。
遠目から見てワタワタしているのが確認できる。
俺はその方法で遥か遠くの海賊船に矢を放ちマストをすべて爆破する。
初めは燃料気化爆弾っぽい魔法を矢尻に付与しようと思った。
だが神の国で練習した威力の魔法陣は付与できなかったので諦めた。
縮小版を作ろうと思ったけど、
その実験のために何度も大爆発を引き起こす事になるのでやめた。
って事でこの方法で少しずつ海賊船を沈めていく。
高速で矢が飛び、炎をぶちまける手榴弾みたいな威力になる。
マストを吹き飛ばし、航行不能にした後は喫水線付近を狙う。
次々に矢を放つとドーン、ドーンと言う音と共に、
大きな水柱を作りつつ木片が吹き飛ぶ。
ボロボロになった海賊船は激しく炎上し、浸水し、沈んでいく。
「一旦これでいいか」
「はぁ・・・疲れた・・」
俺は海賊船が沈んだのを見届けてユキに寄りかかりながら座り込む。
疲れた・・・
「・・・」
店員さんは唖然としていた。
「結構沖で沈めたけど海賊は泳いで来るのかな?」
ぼーっと海を眺めながら呟く。
「えーっと。どうでしょうか・・・?」
店員さんは頭を振りつつ返事をする。
『泳いでいるのが何人か居るわよ?』
ユキの鋭い目が敵を捕らえたらしい。
「まじで?」
俺は弓を持って立ち上がり海を眺める。
「あー、普通に泳いでるね?」
「あれは殺す?それとも小舟か何かで捕縛しに行くの?」
店員さんの方を向きつつ問いかける。
「多分捕縛すると思いますのでご心配なく!」
店員さんは海を眺めつつ言った。
「おけー・・・」
俺は再びユキに寄りかかりグッタリする。
「助けが必要なら言ってくれ」
「俺はしばらくここでグッタリしてるから」
「はい。分かりました」
そう言って店員さんは馬に乗って町の方に走って行った。
その後、兵士さんや漁師さんが海賊を捕まえたそうだ。
そしてなんと、海賊の拠点の場所も突き止めたらしい。
海賊の拠点なんてあったんだね。
主人公が矢に魔法をかけまくったせいで、ただの矢がミサイルみたいな攻撃に成り果てました。
人に直撃したら木っ端みじんのバラバラになります。
海賊は無事爆散しました。




