88 次の依頼は?
次は何をするのやら。
色々あった。
全身から炎を発するライオン、全身から電気を発する虎、
超高速で木々の合間を立体機動をする山羊軍団。
森の深い所に行けば行くほど面白い奴が居た。
時々ソロで狩に出たりした。
魔物の特徴をちょっとずつ調べたり、容赦なく瞬殺したり。
散々暴れ回った。
――そうした日々が続いたある日、
何故か魔境の森とは違う、外の森に少女が居て泣きじゃくっていた。
どうやらここでも人攫いが行われているらしい。
あの枢機卿があえてお目溢しをしているのか・・・
あの枢機卿に隠れて行っているのか・・・
ともかく少女の姉を探すことにした。
少女の匂いを辿ればそれっぽい集団の匂いに行きついた。
そこから、その匂いを追った。
簡単に敵拠点を見つることが出来た。
まずは主犯と思われる連中を数人確保し、他は狼達に処理させる。
雑魚ばかりなので数十秒で処理出来た。
その他大勢の頭部は一応集めて置く。
そうしてあっさり姉妹は再会できた。
他にも捕まってしまった被害者が居たので解放した。
周囲に被害者が居たので、この場で主犯に拷問は出来なかった。
だから情報は得られてない。
一先ず落ち着いたタイミングでカール達を呼び出し、
被害者を町まで送り届けてもらう。
彼女たちの物資は奪われて持ち金も無いとの事、
だから、高く売れそうな魔石を各自に渡した。
帰り道の路銀程度にはなるはずだ。
特に欲しかった情報は、
他にもこんな感じの拠点があるかどうか
それと、誰が仕切っているのかという事だ。
カールに犯人と下っ端の頭部と証拠になりそうな書類を渡した。
後の調査は丸投げした。
文句を言いつつもしっかり、やってくれるはず。
俺は狼を使って周囲を探索したが特に似た施設は見つからなかった。
他の施設があったとしても町中か全然違う位置にあると思われる。
そろそろ町に戻った方がいいのかもしれない。
俺はその後、数日かけて魔境の森の境目を端から端まで見て回る。
俺達が狩をし続けた結果、
森から出てくる獣や魔物は居なくなったらしい。
二種類の狼達もすでに一つの群れの様に仲良くなっていた。
俺が居なくなった後は狼達が森の出入りを見張ってくれるらしい。
ありがたい。
「じゃあまたな!」
数日後、俺はオオカミ達と別れを惜しみながら町へ向かう。
猫師匠もオオカミ達と一緒に暮らす事にしたらしい。
――町に戻ると少し騒がしかった。
何かと思いつつ教会に行く。
「こんにちは」
「おお!お久しぶりです」
ハナコさんは俺を覚えていたらしい。
「カール達は元気ですか?」
「はい!お元気ですよ」
「ただ、今は重要な証拠が見つけたとの事で町の悪者退治をしているそうですよ」
「そうですか。忙しそうですね」
察するに、やはり町中に他の拠点があったらしい。
「ヒロさんはお仕事が終わったんですか?」
「はい、一旦魔境の森から出てくる魔物の件は解決したと判断しました」
「じゃあゆっくり出来るんですか?」
「いえ、まだやることがあるので、また出かけます」
――という事で、酒場に行ってメッセさんを呼んでもらう。
暫くして。
「どうも大変ご活躍されたみたいですね」
メッセはそう言いながらイスに座る。
「なんで知ってるんだ?」
「あなたが町を出てすぐ、ハンター達が『魔境の森から出てくる魔物が居なくなった』と噂をしていましたので」
「それとついでに人さらいの拠点も潰していただけたようですね?」
「ああ、姉を攫われた少女に依頼されたんでな」
「相談もせずに潰したのは済まないと思っているが、仕方なかった」
「あえて泳がせて他の拠点を探すと言う事も可能でしたが、被害者を無下にはできません」
「なので今回の行動に何ら咎められる点はありません」
「それに情報はしっかりと搾り取りましたので」
メッセはニヤリと笑いながら呟く。
「そうか、今カール達を使って潰して回ってるのか?」
「はい、そうです」
「そちらは問題なく進んでいますので、次にあなたは港町の方に向かっていただきます」
メッセはそう言って水を口に運ぶ。
「海賊退治だっけ?」
俺も水を口に運ぶ。
「はい、もしかしたら今回の人攫いの件ともつながっている可能性が考えられます」
「なのでその辺りの情報を可能であれば集めていただきたいです」
「了解した、でも俺泳げないんだよなー・・・」
「・・・」
「ま、まあこの際ド派手に戦闘をしてもかまいません」
「情報も無理に集めなくても良いのでまずは海賊の処理をお願いします」
意外そうな顔で提案してくる。
「わかった。早速明日の朝に向かうよ」
という事で町で必要な物資を補充して宿で寝る。
めんどくさいので宿の部屋を取ったまま港町に行くことにした。
だから余分に代金を払っておく。
あと、卵が放つ魔力がだんだん増えている。
卵の段階でこの魔力量っていったい何の生物だろうか?
――次の日
港町に向かうために、街道を進む。
街道は安全で道もおおよそ真っ直ぐだ。
だからユキやミカの足だと丸一日ほどで到着した。
しかしここで大問題が発生する。
俺をはじめユキとスイとエンが突然具合が悪くなってきた。
俺は完全にグロッキーで高熱が出ている感じがする。
ミカ以外は港に近づくにつれてどんどん悪化していく。
「なんだこれ?風邪でも引いたか?」
『分からないけど体が重いわ』
ユキも辛そうにしている。
――俺達はふらふらになりながら町に到着した。
町並みはとてもきれいで美しく、海も綺麗でとても良い場所に見えた。
しかし俺達はグッタリ。
そんな中指定の宿に向かう。
そこで部屋を取り、事情を知っている店員に話を聞く。
「お待ちしておりました」
店員さんはプロっぽい顔つきになる。
「ああ・・・」
俺はグッタリしながら話を聞く。
「大丈夫ですか?」
店員さんは心配そうな顔をする。
「わかんない・・この町に来たら急に気分が悪くなった」
グッタリです本当に。
「あー、時々いらっしゃるんですよ、町に来て具合が悪くなる人」
「特に優秀な神官様に多いんです」
店員はなるほどと言って様子で答える。
「そうだったんですか・・」
「体力を吸い取られている感じがする・・・」
この土地に何かあるんだろうか?
「ええ、おそらく原因は海ですよ」
「海賊退治に来たのに海に力を吸い取られるって最悪だな・・」
なんか呪いみたいだな・・・
「どうします?何ならやめにしても良いですが?」
店員さんが心配そうに提案してくれる。
「いや・・人間数百人程度なら問題ない」
「話を聞かせてくれ」
精鋭のエルフ数十人ならいざ知らず。
たかが人間数百人程度なら埃を払うような物だ。
「は、はい!分かりました」
話は単純。
時々、港に海賊が現れ、大暴れして帰って行くらしく、
なかなかに厄介との事。
俺の知る限り大砲などは存在しない。
だから、矢でけん制しつつ上陸して大暴れするらしい。
ただ目的は物資なので、人を無駄に殺したりはしない。
人を殺せば本格的に討伐されると解っているらしく、
海賊らはそう言った面で、かなり手心を加えて来る。
がしかし、最近になって人も攫うようになった。
攫われた人はウォーウッドなどにある拠点に運ばれている、
先日の一件で人攫いの拠点をかなり発見出来たらしい。
だから今回は、とにかく町を守り、海賊をぶっ殺せばいい。
そこで疑問が一点ある。
この町の戦力では対抗出来ないのか?
と言うと普通に負けるらしい。
なぜかと言うとこの町は商人の力が強い。
遥か昔にこの町の領主と商人たちとの間で税に関する契約が結ばれた。
その契約がとんでもなく商人に有利な物だった。
そして商人が漁師たちを囲い込み。
漁に対しても強く税を取れなくなった。
海産物やそれらを使った加工品の貿易がこの港町の主な産業だ。
この町の領主は完全にそれらの財源を封じられたことになる。
お陰で領主は金がなく兵士も雇えず。
港町を守る戦力は僅かばかりの兵士と時々やって来るハンターぐらいな物だ。
それに気付いた悪人共が海賊に成り果て好き放題暴れ出した。
山賊より海賊の方が逃げやすいらしい。
今までは商人達がどうにか対抗しようと動いていたのと、
海賊達が兵士やハンター以外をあまり殺さなかった。
お陰で大きな被害は物資のみだった。
まあ俺から見れば領主への税の代わりに、
海賊に略奪品を取られるようになっただけな気がする。
で最近は人を攫われるようになって本格的に困っているという事だ。
アホかこいつら・・
「と言う事で次の襲撃まで町で待機していただきたいのです」
「わかった。それまで待ってるよ」
海賊の襲撃があるまで待ちの姿勢にならざる負えない。
俺は辛いので早く来て欲しいのだが・・・
海が苦手な理由は、司る神がかかわっています。
神にも色々あるんです。




