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87 姉妹は再開を果せるのか?

姉妹の続きのお話。

 リナは必死に耳を塞ぐ。

そうして、待っていると白い壁が突如パッと消えた。


リナを乗せたスイはゆっくり中に進んでいく。

リナは辺りに飛び散っている肉片を見ない様にスイにしがみつく。


幸い頭部の様な物は見えなかった。


「おう、来たか」


黒い男の近くには沢山の女子供が居てその中に姉の姿があった。


「ほら、お嬢ちゃんの妹だろ?」


黒い男が姉の背中を押す。


「リナ!!」


リアが叫びながら近寄る。


「おねぇちゃん!」


妹も叫びながらスイから飛び降りて走って行く。

そして二人は再会を喜び抱き合う。


「はぁ、良かった・・・」

「無事だったのね!」


「うん!黒いお兄ちゃんとワンちゃん達が助けてくれたよ!」


二人は再会を喜び合う。


「結構沢山いるなぁ・・・カール達を呼ぼうかな?」


二人を横目に黒い男がそう呟いて何もない所から紙とペンを取り出す。

そして紙に何かを書き始め、スイにその紙を持たせて走らせる。


「ワンちゃんはどこにいったの?」

リナは不思議そうに質問する。


「俺の人間の友達を連れて来てもらうんだ」

「こんなに沢山いたら皆で町に行くのも大変だしね?」


「その・・助けていただきまして有難うございます!」

救助された一同が礼を言う。


「気にするな。その子がたまたま俺に助けを求めたから助けただけだ」

「それに・・・ちゃんと依頼料はもらうしな?」

と黒い男はリナに向かって言う。


「うん!依頼料としてワンちゃん達のお手入れする!」

リナが元気に言う。


「お手入れ?」

リアは『何の事?』と言った感じで問いかける。


「あのね!お金の代わりにワンちゃん達を綺麗にするの!」


「そんな!それでだけでは・・・」

リアはそう言って黒い男を見る。


「はっはっは!ガキに金をせびるほど落ちぶれちゃいないよ」

「じゃあ!助けが来るまで早速手入れをしてもらおうか?」

黒い男は豪快にわざとらしく笑いながら言う。


「では、せめて我々もお手伝いいたします!」

リアが言うと一同もウンウンと頷く。


「そお?なら頼んだよ」

「お前らの体を綺麗にしてくれるってさ」

「くれぐれも怪我させるなよ?」


黒い男がそう言うと狼たちは頷く。


拠点にあった馬の手入れ道具などを使って狼達のブラッシングを皆でやった。


その間、何やら美味しそうな香ばしい香りがプンプン漂ってきた。

臭いの元に目をやると、黒い男が大きい鍋でスープを作っていた。

するとそこかしこから、お腹のなる音が聞こえてくる。


ぐうううぅぅぅぅ!!!


「お姉ちゃん・・・」

リナは涎をじゅるりと垂らしている。


「もう・・リナったら」


あはははは!と周囲を笑い声が包む。

そんな会話をしていると黒い男が近寄って来る。


「おーい!お前ら!」

「飯の時間だぞー」


そしてなんと、

黒い男お手製のスープを皆で食べる事になった。


「んー!!美味しいね!お姉ちゃん!」

リナは幸せそうにスープを飲む。


「ええ!本当に美味しいわ!!」

リアも笑顔で答える。


「はっはっは!そうだろ?」

「俺も好きな味なんだよコレ」


黒い男は狼達にどこからともなく取り出した魔物を食べさせてる。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん?」

リナは不思議そうに問いかける。


「ん?どした?」


「その魔物はどこから出したの?」


「・・・あ゛!?」

「まっずい!!」

黒い男は思い出したかのように叫ぶ。


「どうしたの?」


「あっ、ああ何でもないぞ」

「あれはな?その辺りに隠しておいたんだよ?」


黒い男は苦し紛れにどうにか誤魔化そうとしている。


「ふふふっ!そうですよね皆さん?」

「あの魔物はさっきからその辺に置いてありましたよね?」


一人の女性がにこやかに発言すると他全員はしっかり頷く。


「はっははは・・ありがとう・・」

黒い男はため息を吐きながら礼を言う。


「ふふっ!いえいえお構いなく」


「リナも良いわね?」

「この事は絶対に他の人に言っちゃだめよ?」

リアは丁寧に忠告する。


「なんで?」


「そうしないと今度は黒いお兄ちゃんが攫われちゃうのよ!」


「ええ??やだぁ!!」


「だからこの事は秘密よ!」


「うん!わかったぁ!!」

リナはどうにか理解した様子。


「はぁ・・・あぶねぇあぶねぇ」

「うっかりしてたわ・・・」


「どこかの貴族様ではないのですか?」


一人の女性が黒い男に質問する

魔法を使えるのは貴族のみ、そんな常識があるからだ。


「俺は全然普通のハンターだ」


「本当に普通のハンターしょうか?」


「そういう事にしなさい」


「わかりました」

「でもせめてお名前だけでも教えてくださいな?」


「あ?言ってなかったっけ?」

「俺はブロンズクラスハンターのヒロです」


ヒロはようやく自己紹介をした。


「わかりました」

「いつか必ずお礼をいたします」

「此度は本当に有難うございました」


そんな風にのんびりしていると迎えの馬車が来た。


「遅いぞカール!」


黒い男はニコニコしながら叫ぶ。


「うるせぇよ!!」

「大体!唐突過ぎるんだよアンタは!!」

黒い男と馬車に乗った大男が楽しそうに言い合いをしている。


馬車と護衛と思われるハンターが沢山到着した。

被害者達はその馬車に乗り込んでいく。


黒い男が洞窟の方から何かを持ってきた。

それは、ぐるぐる巻きにされた男二人で、その二人を馬車に乗せた。


そして次に赤く染まった大きなズタ袋も馬車に乗せる。

ズタ袋の中身は子供以外なら、おおよそ察しが付く・・・

おそらく賊の頭部を回収して身元を確認するのだろう。


そうして黒い男やオオカミ達とお別れ。


「おにいちゃん!ありがとー!ばいばーい!!」

リナは大きく手を振りながら叫ぶ。


「ありがとうございましたー!」

リアも同じように手を振る。


こうして姉妹と他の女性達はウォーウッドの町に帰る事が出来た。



――町のハンター協会にて。


ハンター協会から各所に連絡が行き、

そこまで時間が掛からずに保護者や家族が来た。


被害者達はある程度事情聴取された後、

すぐに帰る事が出来るらしい。


「ぱぱ!まま!」

リナは両親の元に飛び込んでいく。


「リナ!リア!」


父と母は娘たちの元に駆け寄り二人を抱きしめる。


「心配したんだぞ」

父は嬉しそうに叱る。


「ごめんなさい!」


「うわあぁぁぁん!!」

リナはひたすら泣きじゃくっている。


そうしていると大きなハンターがやって来て事情を説明してくれた。


「――と言う事らしいです」

「わたくしも事後処理を頼まれただけですので詳しくは分からないのです」


カールと名乗る男が丁寧に言った。


「そうでしたか」

「それで、助けていただいた方はどこに?」


父は申し訳なさそうに質問する。


「あぁ・・ちょっと事情があって森に籠ってるんだ」

「気にしなくていいとの事だ」


カールは頬を搔きながら言う。


「そんな・・・!せめてお名前だけでも!」


「あっ!私知ってるよ!」

「ハンターのヒロだよ!」

リナが嬉しそうに言う。


「ハンターのヒロ?」

父は聞いた事が無いと言う風に名前を繰り返す。


「まぁ白馬の死神の通り名の方が有名だったりするけど本人は嫌がるんだ」


カールは「シーッ!」とジェスチャーをしつつ言う。


「な!??彼の有名な死神だと!?」

「なぜこんな所に?」


父は巷で聞いた噂を思いだし驚愕を隠せない。


「死神ってあの死神?」

リアはよく分からずに質問する。


「そうだ、オーガ数十匹の首をあっさり刎ねてしまうハンターだぞ」


カールは優しく面白がりながら説明する。


「ええええええええええ????」

「えええええええーーー!!!?!?」

リアとリナはでっかい声で驚く。


「でも北方でゴブリン軍団を始末した後は消息不明と聞きましたが・・・」

母も噂を聞いていたらしい。


「確かに世間ではそう言う事になってますが、」

「アレは人見知りであんまり町に居たがら無いだけなんですよ」

カールがため息交じりに言う。


「人見知り?」


「人見知りと言うか人嫌いと言うか」

「だから気にしないでくれ」


「そう言う事ならしかたないですね」

と母がにこやかに言う。


「でね!私これ貰ったよ!」

「ワンちゃん全員を綺麗にしてくれたお礼だって!」

リナは嬉しそうに両手で拳より大きいサイズの魔石を取り出す。


「はぁ!?なんだその魔石は!?」

「でっっか!?」


商人である父は死ぬほど驚く。


「大きすぎて使いにくいからいらないって!」

「売ってもいいし食べても良いって言ってたよ!」


リナがニコニコ説明する。


「食べてもいいって???」


父のはハテナでいっぱいだ。


「あー・・・」

「いつもの下らない、分かりにくい冗談だ」

「おそらく魔境の森で狩った魔物の物だと思う」


「魔境の森ですか?」


「ええ、彼は今魔境の森から出てくる魔物を狩っているんです」


「まっ、魔境の森の魔物の魔石って事は一体いくらになるんだ?」


父の頭の中では目まぐるしく計算が行われる。


「パパ!それを換金するんならこれもお願い!」

そう言ってリアも同じような魔石を取り出す。


「二つ目!?」

父は既に白目をむきかけていた。


「被害者全員に配ってたわよ?」

リアが冷静に一言。


「・・・」


父はついに絶句した。


「デカい猿がどうとかって言っていたわよ?」


「デカい猿?大猿か?」

「並みの生物よりはるかに身体能力が高いと言うあの大猿の魔石か・・・」


「これを売って路銀にでもしろって事なんだろ」


カールが彼の考えの代弁をする。


「何という心の広いお方だ・・・」


「いい加減なだけですよ・・・」

「どうせ売ろうにも狩った獲物が多すぎて売り切れないとかだろうし・・」

「本当に気にしなくていいと思います」


カールは呆れつつ言う。


「それでも、改めてお礼を伝えて置いてください」


母は改めて礼の言葉を言った。


「はい、しっかり伝えておきます」

カールはにこやかに言う。


こうして被害者達は思わぬプレゼントがあった。

その、お陰で皆元々居た場所に戻ることが出来たのであった。

かろうじてハッピーエンドを迎える事が出来ましたね。

皆さんも人攫いにはお気を付けて。

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