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86 謎の黒い男。

別の人視点でのお話。

 少女リナ


――少し遡り

ウォーウッドの町の北東にある港町。


とある家族経営の商店で少女が荷物を馬車に積み込んでいた。


彼女の名は『リナ』。


「ぱぱ!これで準備完了だよ!」

リナは胸を張って父親に報告する。


「ありがとう」

「じゃあウォーウッドに向かおうか」

父のドムはリナの頭を撫でる。


「ママとおねぇちゃん呼んでくるね!」

「ああ、頼んだよ!」


その後、家族四人で店を出発し街道を進む。

道中の馬車では家族が楽しく会話する。


「これから私たちは何をしにいくんでしたか?」

母のエブリンは指を立てて娘たちに確認する。


「はいはいはい!!」

「えーっとね!」

「お店の商品の仕入れをするの!」

リナは手を上げて元気に答えた。


「半分正解ね!」


「その前にウチお店の商品を売らないとでしょ?」

姉のリアは『仕方ないなぁ』といった感じ。


「リアも正解よ!」

「二人共よくできました!」


「パパとママは商談があるからその間はちゃんと待ってるんだぞ!」

「いいな!?」

父は二人に優しく注意する。


「「はーい!」」


街道を進むので危険は無く順調に進む。

父は「最近物騒になって来た」と客や友人から聞いていた。

だから十分に警戒していたが、特に危険な事は無かった。


数日かけて進む。



――そしてウォーウッドの町に到着。


父はいつもの宿に部屋を数日借りて出かける。


「じゃあパパとママは商談に行くから二人は待っててくれよ!」

「はーい!!」


そうして両親は出ていく。


「おねぇちゃん!」

「パパとママは行った?」


「うん!もう大丈夫よ!」


二人は荷物を用意してマントを着る。


「ん?」

「おい、嬢ちゃんたち?」

「どこに行くんだい?」


宿の店員さんは出かけようとする二人を見て不思議そうに尋ねる。


「えーっとね!」

「パパとママにプレゼントを買うお金を貯めるの!!」


リナは正直に答える。


「町の近くで薬草を採取してハンター協会に売ってお金を稼ぐんです!」


リアはそう付け足す。


「おー!そうかいそうかい!」

「パパとママには言ってあるのかい?」


「はい!」

リアは嘘をついた。


「そうか、なら気を付けるんだよ!」


「「はーい!」」


二人は元気に返事をして宿を出る。


「おねぇちゃん!」

「なんで嘘をついたの?」


「だってああ言わないと宿から出してくれないじゃない!」


「でもぉ・・・」

リナの表情が少し暗くなる。


「とにかく町の外で薬草を取りに行くわよ!」


「うん!!」

リナは気を取り直して返事をする。


二人は町から出て周辺の森を歩き回る。

薬草は沢山取らないと、大した金にはならない。

だから二人は急いで採取していた。


『ここが町の近くだという事実』と

『急がなければいけない焦燥感』から二人は警戒を怠っていた。


まずは姉、そして妹。

布を口に当てられて眠らされてしまう。

そしてロープで縛られ、布をかぶせられ、馬車に乗せられてしまう。


馬車は森を進む。


姉のリアは布をかぶせられたまま目を覚ます。

リアはどうにか事態を把握した。


何か悪い事が起こって二人共攫われてしまったと。


隣には妹の物と思われる手を確認できた。

リアは耳を澄まして周りの状況を確認する。

彼女は幼いながらも妹を巻き込んでしまった罪悪感から、

この極限状態でギリギリ理性を保っていた。


リアはここが馬車の中で周りに1~2人程度しか人が居ない事が分かった。


暫く道を進み、悪人らは現在休憩中らしい。


リアは縛られた手でどうにか妹の手を縛るロープをほどく。

そして妹を起こす。


「リナ!リナ!」

リアは小さな声で必死に何度も呼びかける。


「うーん・・・おねぇちゃん?」

リナはどうにか目を覚ました。


「リナ!悪い人が戻って来ちゃうから、私の手をほどいて!」


リナは被せられていた布を脱いで眠たそうに周囲を確認する。


「ここどこぉ?」

リナはまだ状況を把握出来ていない。


「リナ!早くほどいて!」

リアがもう一度言うとようやく姉のロープをほどきにかかるが・・・


「おねぇちゃん・・・」

「全然ほどけないよぉ!」

リナは泣きそうな声で呟く。


リアに焦燥感が募る。


――そして決心する。


「リナ!じゃあリナが私の代わりに助けを呼んで来て!」


「いやだよ!おねぇちゃん!!」

リナは泣きじゃくりながら言う。


「リナが助けを呼んで来てくれたら大丈夫だから!ね!?」


どうにかなだめて妹だけでも逃がす事が出来た。

リアは張り詰めた状態から一気に安心したせいで眠ってしまう。



――妹は走る。


荷物などすべて悪者にとられてしまった。

ひたすら裸足で道なき森を走る。


しかしここは道から離れた深い森。

当然、危険な魔物が多数いる、と言うのは常識だ。


枝や石ころで彼女の足も体も傷だらけになってしまう。

それでも闇雲に進むが・・・


リナはついに魔物に囲まれてしまう。


「ううぅ・・・おねぇちゃん、パパ、ままぁ・・・」


リナは泣きじゃくるが、すでに命運尽きたかに思われた。

――そんな時、自分以外の声が聞こえた気がした。


「お前ら何やってるんだ?」


そこには黒い長髪で真っ黒な毛皮のマントを羽織り、巨大な白馬を連れた人間?が居た。

ついつい抱き着いてしまう。


「うわああああぁあん!」

「だずげでええぇぇぇぇ!!」


リナは懇願するように叫ぶ。


「あぁ・・心配するな」

「この狼達は俺の友達だから、食べたりしないよ」


黒い男の声はとても優しかった。


「うう・・あなたはだれ?」


「俺はハンターだ」

「ハンターさん?」

「そうだ。君は何故ここにいるの?」


黒い男が優しく質問をしてくる。


「お姉ちゃんと町の近くで薬草を取ってたら、いつの間にか縛られて馬車に居たの」

「それで、ここまで逃げて来たの?」

「うん、お姉ちゃんが逃がしてくれたの、助けを呼んで来てって」


リナは寂しさのあまり涙がこぼれる。


「フーン・・・そうかそうか」


黒い男はそう言いながら頭を撫でてくれる。

しかし父の様に丁寧な撫で方では無く、

ぶきっちょで豪快な撫で方だった。


「じゃあ、お姉ちゃんを助けに行こうか」


黒い男は笑顔でそう宣言する。


「え?良いの!!?」


「ああ、いいぞ!でもその依頼料の代わりに、この犬の毛の手入れをしてくれ」

黒い男は白い大きな犬を撫でながら言う。


「わんちゃん?」


「そう、名前は『スイ』だ」


「わかった!スイちゃんのお手伝いする!」

「だからお姉ちゃんをたすけて!ハンターさん!!」


「わかった。お姉ちゃんが死ぬ前に探しに行こうか」


「うん!」


リナは大きくなったスイの背に乗せてもらって進む。

黒い男は馬に乗って沢山の大きな狼を引き連れて道なき道を進む。


いつの間にか本人も気付かない間に、リナの怪我が治っていた。


「お友達も手伝ってくれるの?」


「そうだよ」

「だからあいつらの毛の手入れも手伝ってくれよ?」


「うん!」


黒い男と道なき道を進むと木や草やツタなどで巧妙に隠された洞窟を発見した。

洞窟のすぐ外には沢山のテントがあり、沢山の馬が居た。

洞窟の入口には、木のドアが取り付けられている。


「あそこっぽいな」

「スイ!ユキ!お前らはここでその子を守ってやれ」

「お前らはあそこを取り囲んで合図を待っててくれ!」


黒い男が号令を出すと灰色のオオカミと赤黒いオオカミ達が散開する。

狼達は拠点を取り囲んでいく。

この男は子供の目から見ても明らかに魔物を操り指示を出している。


つまり異常だ。

狼達の理解力が高いのか黒い男が特別なのか分からないが異常だ。


「じゃあ君はここで待っててくれ」


「うん!頑張ってお兄ちゃん!」


リナの返事を聞いてから、男は先行する。



――男が先行して暫く経った。

突然、悪い人たちの拠点の周りに空まで続く透けた白い壁が張られる。


そして周囲を取り囲む狼達が攻撃を開始した。


攻撃と言っても噛みついたり切り裂いたりではない。

悉く全ての狼が壁の外から内側に向けて魔法を発射し続けている。


リナは口をあんぐり開けて驚愕する。


「なにあれ・・・?」


その疑問の声にこたえる者は誰も居ない。

暫く狼たちの攻撃と人間達の悲鳴と絶叫が続く。

リナとリアって分かりにくいですね。

表記を妹と姉にすればよかったかも。

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