84 魔境の森に行ってみよう!
お仕事のお時間です。
街を出て、南の方に向かう。
目印はとっても分かりやすい。
南方面に二つの巨大な山脈があり、その間にある森に向かうだけ。
その辺りでキャンプを張り、ひたすら森の獣を狩る。
楽しい楽しい狩と殺戮のお時間です。
森の手前を歩き回って比較的近くて安全な場所を探す。
そこにテントを張って、ミカとスイを待たせる。
「今日は一旦二人で待っててくれ。」
ミカとスイは頷く。
スイはともかく、ミカもいざとなれば魔法を使う。
俺は忍梟に使った【雷撃】をミカに教えたので一応こいつも自衛は出来る。
俺はユキとエンを連れて魔境の森の境目に向かう。
――森の境目にて。
すっごい気配や魔力をバンバン感じる。
人間にはどうにもならない様なバケモン級の魔力ばかり。
「久しぶりに本気でやれるかもな」
『ええ!楽しみね』
ユキもご機嫌な様子で、エンは涎を垂らしてにっこり笑っている。
俺はユキに乗って大斧を担ぐ。
森の中は木がやたら高くて太い、常に何かの叫び声が聞こえてくる。
そして常に濃密な魔力が漂っているのを感じる。
早速やってきたのは明らかに異常な育ち方をした野菜人。
大きさは2mほど、形は通常個体よりも人間や獣に近い。
コイツは狂野菜人若しくは狂木人と言う。
木っぽいか野菜っぽいかで呼び方が若干違うらしいが、どうでもいい。
ある程度成長しエネルギーや魔力を貯めて根を張る野菜人に対して、
コイツは根を張らずに成長し続けてしまう狂った野菜人だ。
食欲が暴走し周囲の生物をひたすら捕食しまくる。
捕食したエネルギーをひたすらため込みどんどん強くなっていく。
それが40から50体。
「油断するな」
そう言って俺とユキで暴れ回る。
防御力は大木の魔物並みで素早さは精鋭のゴブリン程度、
パワーはオーガに一歩及ばず。
普通に強い。
強いって言ってもユキの蹄で簡単に砕けるし、
俺が魔法で強化した大斧で簡単に切り裂ける。
大した相手ではない。
だがしかし、野菜と木の中間の様な体だから食えなさそうだ・・
エンとユキは今一やる気が出ない様子。
エンは巨大化するまでも無く相手を切り裂いて噛み砕いている。
難なく全てを倒したら、死体をどうするかの会議に入る。
「食えないだろうしなぁ・・・」
「干せば薪になるか?」
死体を見ながら腕を組んで考える。
エンとユキはそもそも興味無さそう。
結局、死体をすべて回収しておく事にした。
そして次々と魔物が出てくる。
デカいだけの熊に体高が人間位の蜘蛛の大群。
そして首の長いライオン。
全部雑魚だったが次に出てきたのは猪。
俺がアーロン達と出会った時に倒した二股に分かれた牙の猪。
それのさら高い魔力を持った個体だ。
コイツは堅いし早いし狂暴だしで手強かった。
しかし、ユキの蹴りで頭蓋骨を砕いて終了。
そんな感じでよく分からんけど強い奴を倒しまくった。
ユキとエンは魔物が大して強く無いとかなんとか文句を言っていた。
ただ、今回のは魔境の森の端に追いやられた個体だと思われる。
なので、まだまだ強い個体は居るだろう。
――キャンプに戻る。
そこではスイとミカが魔物の山を作っていた。
「襲われたのか?」
『うん』
「怪我は?」
『ない』
スイは淡々と答える。
それらを一旦【収納】に入れて、飯を食おう。
その前に狂野菜人達を出して乾燥させておく。
そして肉を焼く。
にゃー!
肉を焼いていると猫が来た。
それもでっかい猫だ。
頭の位置が俺の身長より高い。
その巨大猫は焼いた肉を見て涎を垂らしていた。
「食うか?」
猫の目の前で肉をチラつかせると頷いた。
俺は皿に肉を乗せて巨大猫の前に置く、
猫は舌でゆっくりペロペロしているが少々熱いらしい。
俺は魔法で少し覚ましてやると、猫は嬉しそうに食べ始めた。
「猫って猫舌なんだ」
そう呟きながら肉を食う。
猫はグレーで毛が長い高級感ある毛並み。
歩き方もお上品だ。
そうして思わぬ来客がありつつ、飯を食った後は交代で寝る。
――次の日
朝食の時も猫が居たので一緒に食べた。
「今日はミカとスイだ!スイとユキはお留守番」
――そうして魔境の森の逆目に向かう。
相変わらず中途半端に強い連中が出てくる。
そんな中ちょっと別格の気配を感じた。
拳がアルマジロの背中みたいになった熊だ。
フットワークの軽い二足歩行の熊で、ボクサーの様な戦闘スタイルだ。
パンチは音速に匹敵し、地面を砕くほどのパワーだ。
俺はミカから降りて大斧で対決する。
この熊はアーロンとサシでやり合える程度には強いと思う。
だがパンチを躱して首を刎ねて、あっさり終了。
今日も一日中ひたすら狩りまくる。
獲物の山を作った完成した所で今日は終わり。
徐々に骨のある魔物が出て来るようになった。
――狩を終えてキャンプに戻ると、今晩も猫が居た。
「お前どっから来たんだ?」
猫は森の方を向く。
「あそこの森から来たの?」
猫は頷く。
猫はやたら俺の頭の上に前足を置いてぐりぐりする様になった。
なんでだろう?懐かれたか?
寝る時も俺の事を抱き抱えて来るし・・・
まあいいか。
――10日ほどひたすら狩り続けた。
本当に死体の山が出来るんじゃないか?と思うほど狩った。
まだ【収納】に入り切る量に収まっているし、
少しずつ食べて消費している。
がそれでも、どんどん増え続けている。
この調子だと【収納】がパンクするかも・・・
魔境の森の境界をウロウロして魔物を探していたが、
魔物との遭遇率が減って来たので少し森の中に入って魔物を探す。
そうすると魔物は一気に狂暴に強靭になって行く。
『燃え盛るライオン』に大量の水の大砲を食らわせて骨をバラバラに砕いた。
二足歩行の巨大なマッチョの猿が集団で襲い掛かって来たので、
ユキを走らせながら切り殺したり。
弾丸の様にすっ飛んでくる猪の群れが来て、
躱しながら反撃したリ。
出て来る魔物達は曲者ぞろいだった。
「森の中に入ると全然違うな?」
『はじめっから森の中で狩をすればよかったわね』
ユキはようやく楽しくなってきたらしい。
そん感じで狩を続ける。
未だに巨大猫は俺の料理を食いに朝と夜にやって来る。
なんだか味付けの要望まで出してくるようになった。
調味料関係は長期間の野営用に沢山用意してあるから問題はない。
――さらに数日狩り続け、徐々に森の奥に入って行く。
そんなある日、狼が現れた。
灰色の高い魔力を持った体高1.5mほどのオオカミ。
そのオオカミが大量に出現した。
50やそこらではなく、200近いかそれ以上の大所帯だ。
しかも家族で大移動って感じでは無く、
戦闘要員のオスだけで200前後って感じだ。
それに加えて、どの個体からも高い魔力を感じる。
「はっはっは、随分と盛大なおもてなしだな」
『気合入れるわよ』
ユキは張り切っている。
『はっはっは!やるぞ!!』
エンもテンション爆上がり。
――戦闘開始
この狼は風魔法を使って攻撃してくる。
初めに【風刃】の弾幕を飛ばして来た。
俺達は魔法を躱しつつ、最小限の防御魔法で防ぎつつ、突き進む。
そしてオオカミ共の首を少しずつ刎ねていくが・・・
まぁ一筋縄ではいかない。
狼達はしっかり攻撃を躱すし、反撃もしてくる。
爆風の魔法で俺達を吹っ飛ばそうとしてくるので、相当戦い難い。
しかも奴らの攻撃は一度のミスで大怪我する程度には強力だ。
エンは巨大化して戦っている。
どうやら巨大化したエンは風魔法に対する抵抗が強いらしく、
エンに風魔法はほとんど効いていない。
ユキは周囲に冷気を飛ばして戦うものの、
オオカミの集団による爆風で冷気を跳ね返されてしまっている。
エンの火炎放射も跳ね返されて辺り一帯が燃えている。
地面から槍を生やしても簡単に躱されるし、
雷も風で軌道を変えられるし、
物理的に攻撃するしかないかな?
俺達は地道に攻撃を躱して地道に攻撃を当てて倒していく。
厄介なのは、このオオカミ自信が爆風でハイジャンプする所だ。
そして周囲の木々を足場にして飛び込んでくる。
しかも連携を取ってタイミングを合わせてくるので厄介極まりない。
躱して普通に切り殺すけど。
それでも一体ずつ倒すしかない。
およそ半数近く、4割程度倒した所で一時にらみ合いが発生。
「そろそろ引き下がるか?」
狼は犬ほど好きじゃない。
だが、ゴガ達のオオカミと交流して、少しだけ好きになりつつある。
だから引き下がるのなら見逃すつもりではある。
しかし突風使いの狼たちは全く引き下がらない。
そうしてまた戦闘開始と思われたその時!!
シュパパパパッ!!
周囲から真っ赤な槍が複数降ってくる。
俺は防御魔法で防ぎ、狼たちは風の防壁を張って防いだ。
周囲を確認すると灰色の突風使いのオオカミでは無い、
毛の根元が黒で毛先は赤のオオカミが俺達全員を囲んでいた。
大きさは突風使いのオオカミと同等の大きさだ。
観察した所、別種の様だ。
「なるほど漁夫の利って事か」
突風のオオカミ達から『してやられた』って雰囲気が感じ取れた。
全部相手にするのは少し骨だな・・・
「おい!一時休戦にしないか?」
突風狼に提案してみる。
すると突風狼たちもそれを理解したのか周囲の赤黒いオオカミの方を向く。
「敵の敵は味方だ」
突風狼たちと一時共闘する事になった。
そして戦闘再開。
この赤黒い狼達は赤い液体?を使って攻撃してくる。
血かな?
ぱっと見で『鮮血狼』と呼びます。
その液体を槍の様に固めたり、
円盤状のカッターにして飛ばしたりと、
かなり自由に扱っている。
厄介なのは『風』と『赤い液体』で質量が全然違う事だ。
だから魔法のパワー的な上下関係で言うと若干鮮血狼の方が上。
しかしスピードは若干突風狼の方が上。
パワー型とスピード型って感じで違いがある。
まあ数の上では相手に分があるが・・・
俺が居る。
狼たちが怪我をすれば俺が回復させる。
そうして戦線復帰させる事で数的不利を補う。
後はエンとユキの魔法がある程度効く相手だったので、
それもあって囲まれて数的不利な点を覆す勢いで戦えている。
しかし相手さんもそこまで甘くないらしく本命の個体が数体現れた。
「まだ出て来るのかよ・・」
体が大きく魔力が高い鮮血狼が姿を現した。
周囲の奴らの反応的にリーダー格の連中の様だ。
睨みあって、何もしてこないなと思っていた――しかし
注目すべきは奴らでは無かった・・・・
「上だ!」
俺は慌てて叫ぶ。
上空には大量の槍が出来つつあった。
突風狼たちは風の防壁を上に張り、
俺は魔法を防ぐ防壁を全体に張る。
そして真っ赤な槍が降ってくるが、風の防壁も魔法の防壁も易々と突破してくる。
この感じには覚えがある・・・
あのエルフの性悪ジジイの師匠がやって来た技だ。
「クソが!!」
俺は悪態を付きながら急いで新たな防御壁を張る。
――しかしその時だった。
にゃん!
と言う声と共に周囲に存在するすべての魔法が消え去る。
「は!?」
俺は困惑する事しか出来ない。
そして見覚えのある巨大な灰色の猫がお上品に歩いて来る。
「お前がやったのか?」
俺がそう言うと、猫はいつも通り俺の頭を前足でグリグリと撫でる。
俺の頭はグワングワンする。
周囲の狼たちも全員驚愕している。
そして猫から意思が伝わってくる。
「皆で仲良くしろって?」
俺がそう言うと猫は俺の顔をペロリと舐める。
「わかったよ」
そしてオオカミ達に向き直る。
「そう言う事だ。これで終わりにしよう」
そう言うと二つの狼集団は理解した様だ。
にゃん!
猫は皆で肉を食おうぜとかほざいている。
「まじで?俺達殺し合った仲だよ?」
にゃん!
(うるせぇ!肉食え!!)ってさ。
両陣営と俺はこの猫に逆らえず一緒に肉を食う事になった。
――皆でキャンプに向かう。
普通に気まずいけど仕方ないので俺がアホみたいにため込んだ獲物を放出する。
そして全員仲良く肉を食う。
俺は料理して猫にくわせた。
皆腹を空かせていたのかモリモリ食べている。
そんでいつのまにかメス狼や子狼も増えている。
皆で仲良くモリモリ食べていた。
幸い俺はアホみたいに魔物をため込んでいるので足りないという事は無い。
皆で飯を食っている最中リーダー格の奴らと俺達で話し合いを行う。
話し合いはスイとエンを通してどうにか少しずつ行った。
数時間かけて情報を集めた結果。
ここ最近、この森の魔物達の一部が普段より狂暴化したらしい。
狂暴化した魔物は尽く殺し、獲物を食らいつくす様になった。
単純な魔物の暴走っぽいのかな?
そのせいで上手く狩が出来ず。
まともな食事にありつけていなかったとの事。
で魔境の森の外まで、進出しだしたって事だ。
「そんなにきついなら、これからお前らで協力したら?」
俺がそんな事を言うと狼たちは致し方ないとの事で協力を決めたらしい。
ついでに暫く俺達にも協力してくれることになった。
ラッキー!
魔境の森を例えるのなら、人間視点でセルジュニア以上の魔獣が跳梁跋扈している森です。
普段は森から出て来ようとしないのです。




