83 良くあるひと悶着
さてどんな街でしょうか?
宿は枢機卿に教えてもらう事になっている。
まずシリアンと言う名の枢機卿に会うために教会へ。
教会の場所は町の中心部付近だが、ヴェスバルトとは違い壁で区切ったりされてない。
教会に到着し手綱を馬留に縛って教会内に入る。
「相変わらず馬鹿みたいに豪華な建物だな」
「そうですね、ですが俺達も相当お金持ちになりましたよ?」
「なんかハンターやってると、普通の金銭感覚が分からなくなってくるよな」
適当な人に声をかけて枢機卿を呼んでもらうのだが・・・
「ふん!薄汚いハンター風情がこの教会に足を踏み入れるな」
と早速豪華な服を着た枢機卿と思われる人に言われてしまう。
この教会ってこんな感じなのか?
「俺達はクラーレンに言われてやって来た。」
「あの落ちこぼれのカスの下僕か・・・」
「そこの薄汚い酒場で酒でも飲んでさっさと帰るんだな」
と言いながら怒りに任せた様子で何か紙屑の様な物を投げてくる。
終いには、そのまま奥に戻って行ってしまう。
「ちっ!態度の悪い野郎だぜ」
カールはイラついている様子。
――これはアレのパターンだな。
「へっ!二度と来るかよクソったれが!!」
そうわざとらしく言って、
俺に続きエディやディーンもわざとらしく小言を言って教会を去る。
――その後指定された酒場に向かう。
「なになに?『酒場でちょび髭の男を待て』だってさ」
もらった紙屑に書かれた文字を読みながら言う。
「ん?何のことだ?」
カールはよく分からないと言った様子。
「お前マジで言ってんのか?」
「さっきのは演技に決まってるだろう。」
ディーンとエディは呆れている。
「え!??」
カールは冗談抜きで驚いている。
「お前マジで気付いて無かったのか?」
カールは頷く。
「そうか周囲の目を気にしてああいう態度を取ったのか」
カールはようやく理解した様だ。
そうして酒場で適当な席について、水を飲んで塩漬けの肉を食いながら待つ。
「塩を食ってるようなもんだよなこれ」
この肉、ちょっとしょっぱい。
「まあ味はほぼ塩だな」
カールは食べなれているのかな?
「パンに挟むとちょうどいいかもな」
ディーン
「これは単体で食うもんじゃないな」
エディ
待っていると、旅人風の服を着たちょび髭のおっさんが来た。
「あなた達がカールさん、ディーンさん、エディさん、と白馬の乗り手さん?」
上品なちょび髭のおっさんが確認してくる。
「まぁ、概ね正解です」
とカールが答える。
「私は彼の御方との使者として参りました」
「メッセンジャーのメッセとお呼びください」
分かりやすい偽名だな。
「メッセさんは『あそこ』の職員さん?」
教会と言う言葉は出さない方がいいかな?
「ええ、『あそこ』の職員です」
「そうかこれからよろしくお願いします」
俺がそう言うと他三人も続いて挨拶をする。
俺は「で早速本題ですが。」と言って話を進めていく。
まずはカール達が何処でどう過ごすかを確認する。
ハンター協会の近くにある大きい家をすでに用意してあるとか。
そこで手下探しと訓練と依頼を並行してやっていくらしい。
今は大々的に教会と協力するべきではないとの事で、
町の端にある寂れた教会に少し協力して欲しいらしい。
何故寂れているのかと言うと鬼人族とこの国の人間のハーフだかクォーターだかが居るらしい。
それゆえ、周囲から完全に腫れもの扱いされている。
しかし優秀だから放逐も転職も引っ越しも出来ない。
もちろん寂れている理由はそれだけではないのだが。
そこの神父は事情を知っているらしく、
きちんと鬼人族混じりの彼女を守っているとの事。
カール達は早速そこに向かうらしい。
それに対し俺はと言うと依頼は二つ。
一つはこの町の南側にあるドデカイ山脈の間にある魔境の森に行って、
そこから出てくる魔境の森のヤベェ魔物をひたすら倒してほしいとの事。
何か最近、森から溢れ出て来て困っているらしい。
二つ目は北東にある港町に時々現れる海賊退治。
こっちは港町に行ってみて、どうにか出来そうならしてくれとの事。
優先順位が高いのは魔境の森で、
魔境の森の魔物はポイズンラージや大型トラック猫とかの比にならない魔物が時々出てくるらしい。
しかも日に日に増えているとか。
トップクラスのハンターが日夜、命を削りながら対処している。
でも被害もそこそこ大きくて困っている。
で俺は早くそっちに行って魔物が出てこなくなるまで殺戮の限りを尽くして欲しいと言われた。
「と言う事でもし何か必要ならこの店の店主に私宛のメモを渡して下さい」
「『メッセ』宛で良いのか?」
「はい。それで結構です」
「了解した」
他の連中も特に質問は無いらしくメッセは帰って行った。
「とにかく勧められた宿に行くか?」
「そうですね」
そう言って席を立とうとすると変な奴に絡まれた。
「おいおいおいおい!」
「こーんな所に鬼人族様がいらっしゃるぜ?」
「俺達と遊ぼうぜー!!ねーちゃん!!」
そう言うのは何か粗暴な雰囲気のおっさん達。
俺は無視して酒場を出る。
「おい!」
「無視すんなよ!!」
と俺の肩を掴むおっさん集団の内の一人。
肩の手を払ってもしつこく絡みついて来る。
イラっと来た。
振り向きざまにそのおっさんを無言で殴り飛ばす。
ドオォン!!
そして酒場を後にする。
「鬼人族は大変っすね」
と冷たい目で奴らを見るカール
「そうらしいな」
「アイツ死にかけてましたけど・・・」
ディーンは若干顔を引きつらせている。
「自業自得だろ」
エディ
「でもアイツ、ゴールドクラスのランク1でしたよ?」
ディーン
「そんなすごい奴も酔っぱらったらあんな雑魚に成り果てるんだ」
「お前らも酒に気を付けろよ」
斜め上な忠告をする。
「そう言う問題か?」
「そう言う問題だから気にすんな」
「へーい・・」
カールはあきらめ気味に返事をした。
「無茶苦茶だろ」
「普通のハンターにあのパンチを躱せって方が無理な話だよ」
エディとディーンが小さな声でブツブツ言っている。
そうして俺達は宿に向かう。
宿は俺で一部屋、カール達三人で一部屋を借りる。
この日は宿で飯を食って寝た。
――次の日
俺は一旦、カール達が顔を出す教会に行って挨拶をする。
そこに向かう途中にまたもや絡まれた。
傍からじろじろ見られてグチグチ言われるだけなら無視する。
しかしそうでは無い者もいる。
いきなり尻を揉んで来たり、肩を絡みつけてくる変態も多い。
ドカァン!!
バコォン!!
道端で死にかけてピクピクしている男らを横目に教会へ向かう。
「隊長はあんまり、この町に居ない方がいいみたいですね」
ディーンは心配そうに言ってくれる。
「雑魚ばっかだから別に気にしないけどな」
「怪我人を量産するだけだぞ」
そう言う事じゃねぇよって感じでカールが突っ込む。
「怪我しに来る奴が悪い」
「そうだそうだ」
エディは脳死で同意する。
「まぁ、だから森や港での依頼を頼まれたんでしょうけどね」
ディーンは冷静に答える。
――ボロッちい教会に到着。
馬を停めて中に入ると早速黒髪のシスターを発見。
「こんにちは」
「こんにち・・ええ!?」
「こんな所で何してるんですか?」
と俺に向かって言うシスターさん。
「いちゃダメですか?」
「この町に鬼人族が居ると大変なんですよ!?」
「はい、昨日と今日で数回絡まれました」
既に経験済みだ。
「ええ!?大丈夫でしたか?」
シスターさんは驚きつつ心配する。
優しいシスターさんだ。
「全て丁寧な説得(拳)で解決しました」
「嘘つけ、容赦なくぶん殴った癖に・・・」
カールは目を細めて俺を睨む。
「しっかり死にかけてましたよ」
ディーンがそれに付け加える。
「生きてはいるんだし別に良いだろ」
「とにかく、お前らは挨拶しろ」
「申し遅れました」
「我々クラーレン神父に言われて王都から遥々やってきました」
「私からカール、ディーン、エディで、全員ハンターです」
と珍しく真面目にカールが挨拶をする。
「あー!そう言う事でしたか!」
「話は司祭様からお聞きしております」
「私はここの教会の神官のハナコと申します」
手を叩きつつ自己紹介をしてくれた。
「只今司祭様をお呼びいたしますね」
ハナコさんはそう言って奥に歩いていく。
「司祭って神父の事だっけ?」
カールは暇つぶしの質問をする。
「そうだ、因みに『神官』は教会の職員全般を指す」
「シスターとか神父とか修道士とか色々呼び方はあるけど『神官』と一括りにしても良いらしい」
ディーンはぶっきらぼうに説明する。
そしてやって来た司祭様。
「どうも始めまして司祭のリロイと申します」
リロイは手を出してくる。
「どうぞよろしく」
俺から順番に握手していく。
協力とはいっても、時々顔を出して援助するだけ。
この教会にはあまり子供もいないみたいで、
居るのは鬼人族の血が混ざった子や鬼人族に似ていると言うだけでいじめられた子ばかり。
そんな子は珍しく沢山いるわけでは無い。
「まぁ、あなたも感じたと思いますが、ココでは鬼人族に対して当たりが強いので気を付けて下さいね」
リロイ
「隊長は相手のためにもあまりここに居ない方がよさそうだな」
カールは目を細めて俺を見る。
「相手のため?」
「だって、いちいち相手を半殺しにしてちゃ、キリが無いだろ?」
「確かにめんどくせぇから俺はしばらく魔境の森付近で暮らすよ」
殺してはいけない人間に絡まれるより。
殺してもいい魔物と居る方が楽だ。
「でもたまにはこっちに顔を出してくださいね?」
エディは優しく、そんな事を言ってくれる。
「おう!」
俺は顔合わせを終えたので教会を後にする。
その後必要な物も特にないのでそのまま魔境の森が在る南の方に向かう。
町を出るまでの間にまたもや絡まれたが三人程殴り飛ばして黙らせた。
全員そろって俺を鬼人族の女だと勘違いしていた。
そんな事がありつつも町を出た。
女性と他種族を下に見ているのはこの町だけの話ではありません。
各地で平然と行われている事ですが、なかなか描写出来ておりませんでした。
気にしない者も居れば、下の立場の者を見て安心する者も多数います。




