78 北の村周辺の変人。
変人に会います。
次の日の朝、早速出発した。
町の北側からクネクネした道を進むつもりだったが。
ユキさんの要望により森の中を直線的に爆走する。
何か暴れたいだの走りたいだの言っていたので遠回りをしつつ暴れ回る。
ユキは道中の魔物や獣に突撃して吹き飛ばしたり、蹴りつぶしたり。
スイとエンは巨大化し爆走のついでに魔物を噛み殺す。
山頂に一気に駆け上がったり、4~50mはあろう絶壁を飛び降りたり。
とんでもない暴れっぷりだった。
まるで竜巻でも通ったかのような破壊の跡を残していた。
直線距離で行けば村まではすぐに到着するが、
そんなつまらない事はしない。
村に到着するまでぐるぐる遠回りして暴れ回る。
ゴガ達の村に迷惑をかけない様に暴れ回る。
一日中広範囲に渡って暴れ回った。
ユキに乗っていただけだが風を感じることが出来て楽しかった。
まぁ血飛沫や肉片が飛んで来たり、枝葉がぺちぺち当たったけどね。
そして適当な水場を見つけてキャンプをする。
場所は分からん。
ひょっとしたら目的の村を通り過ぎたかもしれない。
全員の体を綺麗にする。
水を豪快にぶっかけてゴミと血を落とす。
骨片や肉片も綺麗に落とす。
そしてユキは色々なブラシでごしごし、ワンコ共も洗ってタオルと温風で乾かす。
ユキはしっかり水気を払ってやらないとダメなのでキッチリやる。
その後俺の体も洗う。
で焚き木を燃やして圧し折った木をイス代わりにして肉を焼く。
そして食う。
皆で食った。
野菜は塩をかけて丸かじり。
そして水をのむ。
食った後は俺とスイ、ユキとエンが交代で夜の番を行う。
まずはユキとエンが寝る。
さすがに知らない場所なので【探索】で周囲を警戒しながら焚き木の前で座る。
スイと魔法の話をしながらぼーっと過ごす。
水の事とか雲の事とかを話した。
スイは水と風系統の魔法が得意なようで、水と風を魔法で操る事も出来る様になったらしい。
水の円盤を超速回転させるカッターとか、純粋に大量の水を高速でぶつけるとか、
色々な魔法を一緒に考えた。
スイとエンが協力すれば雲を作れるのでは?とか、
そうやって雨を降らせばユキが無双できるのでは?とか、
色々考えていた。
会話をしつつも警戒は怠っていないつもりだった。
周囲は高い木々が生い茂っていて少々広い空間になっている。
特に生物の気配はない。
しかしほんの一瞬だけかすかに殺気を感じた。
【探索】の魔法では何もないはずの場所から一瞬だけ殺気を感じた。
次の瞬間、スイが俺を突き飛ばし覆いかぶさって来た。
そして俺のいた場所を大きな鳥の鋭い爪が通り過ぎて行った。
「すまない、ありがとう。」
「スイ!みんなを起こせ。」
俺。
「ワン!」
俺はそう言った後【探索】魔法を広げ集中する。
するとようやく発見できた。
巧妙に魔力をカモフラージュされていて気付けなかった。
完全に油断していたのだ。
どういう事かと言うと、
【探索】とは周囲に魔力を散布して周囲の魔力を感じる魔法だ。
だから密度や質の違う魔力があれば形すらも分かってしまう。
例えば空気中に漂う魔力と、人間が発する魔力は全く違っていて、
この魔法を使えばすぐに位置がわかってしまう。
白く塗った壁に赤いペンキで書かれている様な物だ。
次にその【探索】魔法から隠れる方法だが、
まず一つとして体から出る魔力を消す方法だ。
これは【探索】魔法の初心者なら簡単に騙せる方法だ。
初心者は立体的ではなく周囲にある魔力を音の様に感知するだけだからだ。
音を出さなければ気付かれないって感じだ。
しかし立体的に感知する熟練者は騙せない。
熟練者にとっては、白く塗った壁にぽっかり黒い穴が開いているように感じるのだ。
そしてその穴の形を調べれば何があるか分かってしまう。
俺は基本的にこの対策をしていたのだが今回の敵はそれ以上だったって事だ。
つまり二つ目の【探索】から隠れる方法。
カモフラージュだ。
一つ目の様にぽっかり空いた穴に周囲と紛れるように魔力を放つ。
ギリースーツや迷彩服とまんま同じ方法である。
今回はこれだった。
これを看破する方法はカモフラージュの甘い部分を探すか、
相手に動いてもらうとすぐにわかる。
後は無理やりカモフラージュを看破する方法もあるが今は置いておく。
魔力をカモフラージュして、暗闇に紛れ、音もなく殺気もほとんど隠しながら襲ってくる。
そんな巨大な鳥、フクロウだった。
おそらく隠れる事に特化したフクロウの魔物なのだろう。
忍梟もしくはニンジャオウルって感じ?
スイはぎりぎりで匂いに気付いたらしい。
俺は広げた【探索】魔法に感知出来たフクロウ達の位置を把握する。
そして体や内臓を強化して息を大きく吸う。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
と周囲を吹き飛ばすのでは?ってほど大きな声を出す。
俺はさらに前後左右に配置されているフクロウすべてに向かって光の槍を生成し一斉に放つ。
ザクッ!!
俺の大声に圧倒されている個体は全て仕留めた。
が老獪な個体は数匹生き残った様だ。
俺は大斧を出して頭上に巨大な光源を設置して臨戦態勢に入る。
「かかってこい!」
俺。
するとさすがにキレたのか巨大フクロウ達が一気に襲い掛かってくる。
フクロウは足と爪を魔法で強化して攻撃してくる。
俺は大斧を強化して対抗するが、固い足の皮と爪に阻まれてなかなか攻撃が通らない。
キイィン!
ガキィン!
とまるで金属同士で打ち合っている様な音が鳴る。
俺は作戦を変える事にした。
打ち合った直後通り過ぎてどんどん離れていくフクロウに手をかざす。
「【雷撃】」
すると俺の手から眩い雷光と共に稲妻が発生し雷がフクロウを丸焦げにする。
雷の威力は人間千人程を一瞬で絶命させる程度の威力だ。
フクロウは幸い魔法の防御力が低かったみたいであっさり死んだ。
それを見たユキやスイとエンは凍らせたり、
燃やしたり、水圧でぶっ飛ばして噛み殺したりし始めた。
そうして無事魔物のフクロウ集団を壊滅させることが出来た。
「はぁ・・・完全に油断してた。」
そう言いながらスイの頭をなでる。
「本当に助かったよ。ありがとう。」
スイは目を細めて嬉しそうに尻尾を振る。
そして後片付けをした直後、またもや来客がやって来た。
今度は人影だ。
「どちら様?」
俺は質問するが帰って来るのは唸り声だけ。
よく見ると顔色が真っ青で体も所々傷があったり腐りかけてたり。
「うーん、どうしよう。」
「病気か?まさかゾンビってわけじゃないだろうし。」
「死体を魔法で操っているとか?」
俺は色々考えを巡らせる。
一応最低限の治療を施してダメなら始末しよう。
って事にした。
まず回復魔法は全く効果なし。
次に解毒系の魔法も効果なし。
そしてダメもとで浄化魔法をかけるとなんと倒れて動かなくなってしまった。
おお?
一応手袋を付けて動脈とか心臓とか確認したが動いていない。
「しっ・・・死んでる!」
俺。
『臭いは完全に腐りかけの死体だったよ。』
スイ。
『うん。』
エン。
「じゃあ最初っから死体だったって事か?」
俺。
皆頷く。
死体を操る魔法って感じか?
闇とか邪系の魔法だったから浄化の魔法で効果が切れたとか?
ともかく他の動く死体に集中する。
取り合えず皆で浄化魔法をかけて普通の死体に戻す。
倒しても倒しても動く死体は増えていく。
既に山の様に積み重なっている。
そしてついに浄化魔法が効かない個体が出て来た。
眼は真っ赤に輝き高い魔力を発している。
「なんだこいつ!」
もうなすすべがないので俺はついに首を刎ねる。
ザクッ!
首はすっ飛び体は動かなくなる。
でも顔は動いていた。
「キモッ!!」
俺は脳付近を斧で叩き切る。
「お前らは近寄るな。」
『なんで?』
『汚いからよ。』
「腐った死体に噛みついたりしたら病気になるぞ。」
って事でスイとエンとユキには離れてもらい俺が大斧で対処する。
ブンブン振り回してなるべく首から上を破壊する。
ゾンビもどきの強化個体は身体能力も少し高めの様だ。
ひたすら切り飛ばし、死体の山を作ってもなおゾンビもどきは襲ってくる。
お陰で辺り一帯は腐敗臭で満たされている。
腐敗臭に我慢しながらひたすら死体の上で舞う。
たいして疲れるような作業じゃないし、いつまででも続けられる。
けどこんなのが村や町に来たらかなりの被害が出るぞ。
とか思ったけど逆にここまで大量のゾンビもどきが居たのに、
町やゴガの村に全く影響が無かったのはどういう事だ?
考えた所で答えは出ずゾンビが出てくるだけだ。
不味い・・・
またユキとスイとエンが退屈し始めている。
そんな事を続けていると朝日が見えて来た。
ゾンビは朝日が苦手。
そんな事は無かった。
さらに作業は続き日が暮れて夜になった。
ここに来てようやくゾンビもどきの数が減って来た。
そして深夜、月が頂点に達した頃ゾンビが止んだ。
俺は積み上がった死体の山の上で腐敗臭を我慢する。
くっせぇ。
そして全身から炎を出して周囲一帯に広がる死体を焼いていく。
肉は消え骨は灰となる。
どうやら森に広がらない様にユキが結界を張ってくれているらしい。
俺は全身から炎を噴射し死体処理を終えた。
スイとエンが風で周囲の熱気を吹き飛ばしてくれる。
そしてユキが冷気でほんのり冷やしてくれる。
「ありがとう。」
「ようやく終わったよ。」
俺。
『また別のが来るよ。』
ユキ。
「ん?」
俺。
ユキがそう言った後。
森の中からゆっくりと馬に乗った人影が一人、地を歩く二人の影が見えて来た。
漆黒の馬の周囲の草がどんどん枯れていく。
「よくもやってくれたな?」
??。
「礼には及ばない。」
俺。
「感謝したのではない!!」
と漆黒の巨馬に乗った謎の白髪短髪男がブチギレながら言う。
服装は黒く何処かの貴族かってくらいバッチリ決まっていて襟が立っている。
他は一人が白い豪華なドレスを着てなぜか日傘をさしている金髪の女性。
もう一人は髭の爺さん的な紳士。
「じゃあなんだ?」
「あんな死体放置しておけってか?」
俺。
「そうだ!」
「私が長年かけて集めた手下を良くも灰にしてくれたなぁ!!」
と完全にブチギレている。
「だったらちゃんと躾しておけ。」
俺がそう言うと他の2人がひっそりと頷く。
「うるせぇ!」
「お前は殺す。」
といきなり殺気立つ男。
「じゃあその前にお前が死ね。」
俺。
「へ!俺は千年前に死んでるよぉ!!」
と言っていきなり剣を抜いて馬から飛び降りて襲い掛かってくる。
俺は刀を抜いて適当にいなす。
その間、それを見ていたスイとエンも我慢の限界だったようだ。
スイとエンは他二人に対して巨大化し戦闘態勢に入って唸っている。
ユキは今はまだマイペースでのんびりしているが黒い巨馬に睨まれている。
俺は相変わらず適当にいなしているが男は身体強化をしてまで襲い掛かってくる。
「死人が何でしゃべれるんだ?」
俺。
「無駄口を叩くなぁ!!」
アホ助。
「お前は誰だ?」
俺。
「俺はヴァンパイアだ!!」
「あの集めた手下を良くも!!」
アホ助。
「ヴァンパイアのヴァン君とお呼びしても?」
俺。
「違う!!」
「ヴァンパイアは種族名だ!」
「俺の名はダンシング・ブラッドムーンだ!!」
アホ助。
ダンシング・ブラッドムーン?
聞き間違えか?
ダンシング・ブラッドムーンって聞こえたけど。
そんなアホなことある?
「なんて?」
一応聞き返す俺。
「だから!!」
「ダンシングブラッドムーンだ!!」
ダンシング・ブラッドムーン。
「偽名ならもっとマシな名前にしろよ。」
俺。
「偽名ではない!!」
「俺の名前はダンシング・ブラッドムーンだ!!」
彼がそう言うと俺はつい吹き出してしまう。
「すまん。」
「俺の故郷じゃちょっと面白い意味になるもんだからつい。」
俺。
「あああああ???」
「なめてんのかぁ!!??」
「ぶっ殺すぞ!!」
ダンシング・ブラッドムーン。
「ダンシングさん?」
俺。
「ああ??」
ダンシング。
「名前長いからダンでいい?」
俺。
「うるせぇぇぇぇぇ!!」
ダン。
もう頭に血が上って会話にならない。
その間スイとエンはまず動いたのはスイ。
スイがひたすら水を発射して二人を包み込む。
「あらあら、少しまずいですね。」
女。
「ふむ、随分強力な魔獣のようで。」
紳士。
その間漆黒の巨馬がユキに突撃するがいとも容易くユキに蹴り飛ばされた。
そして黒い馬はスイの噴射した水の塊の中に溺れていく。
エンはその間ずーっと炎を圧縮し球体にしていた。
スイの水の塊の膨張が止まった直後、エンは超高温の圧縮した炎の玉をそこに発射する。
魔法で生み出した水と炎であっても蒸発はする。
つまり炎の玉に突っ込まれた水の塊は全て一瞬で蒸発する。
それ即ち水蒸気爆発である。
ズドオオォォン!!
周囲一帯に衝撃が轟く。
ユキがスイとエンに結界を張って守る。
俺は俺で一時的に魔法で防御した。
地面も軽く抉れている。
他の連中は吹っ飛んだか?
「何と凶悪な技でしょう。」
ズタボロになった女は何もしていないのに徐々に傷が塞がっている。
「ほっほっほ、ご主人様!喧嘩を売る相手を間違えたようですぞ。」
紳士。
「黙れ、あの女々しいアホをぶっ殺す。」
ダンが俺に向かってそう言うと遂にユキがキレた。
ユキは固まってずぶ濡れになっている三人と一頭にゆっくりと近寄る。
それに対して三人は良く分からないと言った感じでユキを眺めている。
そして徐々に三人と一頭が足元から凍り始める。
彼らが気付いた頃にはすでに手遅れだ。
足元から膝、腰、胸とどんどん凍り付いていく。
「くっ・・・この私を凍らせるだと!!?」
ダン。
「おやおや、あなたでさえ、どうにもならないなんて困りましたわね。」
女。
「万策尽きましたな。」
紳士。
そうして三人と一頭は完全に凍りついてしまった。
「はぁ・・・」
「ちょっとした気晴らしのつもりだったのにな。」
俺は納刀しながら言う。
『フン、失礼な奴はバラバラにして差し上げますわ。』
ユキは徹底的にやるつもりらしい。
「もう放って置け。」
「なんか不死身っぽいし、これで少しは反省しただろ。」
俺。
『フン!命拾いしたな雑魚共が!』
ユキは三人を多めに見てくれるらしい。
「ここじゃ休め無さそうだし一旦町に戻ろうか。」
俺。
ユキとスイとエンは頷く。
夜な夜なゆっくり森を進んだ。
めんどくさいので襲ってくる魔物は全部ユキに凍らせてもらった。
「丸一日動く死体の処理とか気が滅入るよ。」
俺。
『うん、近くにいたけどすごく臭かった。』
ユキ。
『鼻が曲がるかと思った。』
スイ。
『俺は鼻が曲がっちまった。』
エン。
『でもなんで見逃したの?』
ユキ。
「なんかアホだけど悪い奴じゃ無さそうだったし。」
俺。
『死体を集めてあんな事をしていたのに?』
ユキ。
「確かに・・・」
「戻って殺すか?」
俺。
『千年前から生きていると言っていた。』
『だからダンシングが悪い奴ならすでに周囲の村や町に被害が出ているはずだ。』
『被害が出ていないって事は悪い奴じゃないと思う。』
スイ。
『なるほど。』
ユキ。
「じゃあ今からちょっと村に行ってみて何ともなかったら放っておこう。」
俺。
って事でユキとスイとエンは村まで真っ直ぐ爆走する。
あとやっぱり俺達のいた場所は北の村より北の位置だったらしい。
ひょっとしてあれが噂の古城の主なのかな?
到着する頃には朝になっていた。
そして村は全く平和その物。
村人に聞いてみても全く問題は無いとの事。
「ハンターさんや。」
「一体どうしたってんだい?」
村のおっちゃん。
「ここから北の方で変な奴に襲われたんだ。」
「だからこの村は大丈夫かなって、思いまして。」
俺。
「襲われた?」
「それで無事に戻ってきたのかい?」
おっちゃん。
「ああ、全員無事だよ。」
俺。
アイツらも一応無事だろうし。
「そっかそっか、こっから北は霊峰があったり別の国があったりするんだ。」
「だからそこに迷い込まない様に見張ってくれているのさ。」
おっちゃん。
ん?
俺に対してはそんな感じでは無かったけどな?
「そっかそっか。」
「ならこの村は大丈夫そうだね。」
俺。
「ああ!心配しなさんな!」
おっちゃん。
そして俺達は町に帰る事にした。
今回はユキに乗って道なりに帰る。
「おそらく死体を使って国境を越えようとした奴を脅かしてたんだろうな。」
「だからあっちからもこっちからも国交が無くなったという事か。」
俺。
『死体を使うとは趣味の悪い奴ね。』
ユキ。
「あいつ自身も死体みたいなもんだし同族って事なんだろうよ。」
俺。
『そう言う事になるのか?』
スイ。
『死体同士お友達って事か?』
エン。
「そう言う事なんじゃないか?」
俺。
『死体の友達なんて、』
『私には一生理解出来ない感覚だわ。』
ユキ。
『『オレも。』』
スイとエン。
そして町に着き体を洗ってようやくまともに寝る事が出来た。
ダンシング君の名前は2分くらいで考えました。
変な名前とか言わないでください。




