77 後処理っていっつもめんどくせぇ
戦いの後のあれこれです。
一切の死者を出さなかった。
教会の神父さん達のお陰で怪我人もすぐに治療された。
戦場の後片付けをした者が戦闘の苛烈さを人々に語った。
そして若くして戦場に立ちゴブリン軍団に立ち向かった、
ジュリエット王女殿下とビクター侯爵は町の住民達から大きな称賛を受けた。
もちろんラドクリフ神父にも参加者達から多大な感謝をされたようだ。
ブロッキーやアーロンも頼れる兄貴として住民達にもみくちゃにされていた。
そしてゴガ達ゴブリンは友好的なゴブリンとして町の住民達から受け入れられていた。
そんな様子に見えた。
見えただけです。
・・・
俺は戦後すぐに逃げた。
さすがに目立ち過ぎたから、あれこれを追求される前に逃げた。
まさに脱兎の如く逃げた。
カメレオンの如く隠れた。
お陰様で詳しい事は何にも知らない。
全て遠目から眺めていてわかった情報だ。
もちろん遊んでいるわけでは無い。
戦後は暇があれば枢機卿を見張っていた。
何か自室の中で縮こまって丸まっていた。
そしてブツブツと永遠につぶやいていた。
完全におかしくなっちゃってるよ・・・
可愛そうに自業自得だよ。
枢機卿の味方の神父さんたちもここまででは無いが似たような状態だった。
「不味い不味い不味い不味い不味い不味い」
「こんなはずでは・・・」
「なんだあの化け物は・・・」
「計画と違うぞ・・・」
「どうすれば・・・」
「不味い不味い不味い不味い不味い」
枢機卿はそんな感じにぶつくさ呟いている。
何となく察するに、何かしらの計画だったのだろう。
ゴブリン若しくはナイフ投げのハンターを使って名声を上げるとか?
ひょっとしてあのボスゴブリンも教会の仕業か?
まさかね?
人為的に魔人化なんて出来るわけがない。
高すぎる魔力を急に得れば体が崩壊する。
それに適応するために体がだんだん魔力に馴染み強くなっていく。
これが普通の成長だ。
魔人化とはその変化が身体的特徴として目に見えて起きる事だ。
例えば禍々しい角。
例えば神々しい翼。
例えば猛々しい腕。
あとは体毛が丸ごと変化したり、純粋に巨大化したり。
突如変化するのか、徐々に変化して行くのか分からない。
しかしそう言った変化が起きるらしい。
因みに今更だがこの世界で過ごしてみて解った事だが。
魔物とは二種類いるみたいだ。
一つ目は先天的に魔物で既にそう言う種族と成っている物。
二つ目は後天的に魔物と成った物。
例えば王都の西側に居た牛と馬は先天的な魔物だろう。
例えば王都の北に居た角の光る鹿や俺のマントとなった巨大な黒熊、
これはおそらく後天的に変化したと思われる。
鹿は角が光る様に変化し、超巨大黒熊は毛皮が漆黒に変化した。
奴らの個体数が極端に少ないのはそのためだろう。
って事はあのゴブリンは他所から連れてこられたのか?
どっからきた?
北から来た?
東?
それとも異世界から来たのか?
ゴブリンの異世界転生って事?
あんなのがポコポコ各地に現れたらさすがに相手しきれないぞ。
まあ一旦町が落ち着くまで待ってから皆に相談しよう。
その後はカメレオン状態で枢機卿らを監視し、
宿に引きこもると言うルーティーンを続けた。
時々ジュリエットやアーロンやゴガと会ったが長い会話はせずに逃げた。
「おはよう。」
俺。
「おはようございます!」
「どこに行ってたんですか?」
ジュリエット。
「散歩だ。」
「何かあれば部屋にメモでも置いておいてくれ。」
「じゃ!」
といってすぐに去る。
そんな日々が数日経過した。
何故だか死神の言葉を良く聞くようになった。
だが町は落ち着きを取り戻しつつある。
ある日。
俺はいつもの教会に呼び出された。
俺は姿を消したまま教会の一室に侵入する。
ユキとスイとエンは教会の前に置いて来た。
「一体いつまで逃げているつもりですかね?」
アーロン。
「町の様子も落ち着いてきたので、」
「そろそろ出て来ていただけると助かるのですが・・・」
クラーレン。
メンバーはジュリエット、アーサー、アーロン、ディーン、ブロッキー、
クラーレン、ビクター卿、ラドクリフ神父、ゴガとギガもいる。
体を消したままイスを引いて座る。
「久しぶりだな。」
と体を消したまま発言する。
「今日はずっと消えたままですか?」
アーロン。
「まぁ気にするな。」
俺。
「なんでずっと消えているんですか?」
ビクター。
「趣味だ。気にするな。」
俺。
「戦争直前と戦争中にやらかしたからですよね?」
ディーン。
「あのド派手な魔法ですか?」
ビクター。
「そうですよ。」
「彼は魔法を人前で使わない様にしてたのにやむ負えず使ってしまったので、」
「今現在隠れているんですよ。きっと。」
ジュリエット。
「あー、なるほど。」
ビクター。
「しかし捕らわれたハンターを無理やり救出して回復させた後、
敵の半数を数分で壊滅させたってのは最早伝説級の活躍ですよね。」
ラドクリフ神父。
「救出したのは俺だが、壊滅させたのはユキとスイとエンだ。」
「俺じゃない。」
俺。
「あのでっかい白馬とワンコ達の事ですね?」
ブロッキー。
「そう言えばあの双子なんで急に大きくなったんですか?」
ジュリエット。
「知らん。」
「頑張ったら出来たらしいぞ。」
俺。
「なんか獣人族みたいですね。」
クラーレン。
「獣人族ってデカくなるの?」
俺。
「いえ、一部の獣人族は戦闘時に体が変化するらしいですよ。」
クラーレン。
「へー、動物に成るの?」
俺。
「獣人は普段人間寄りの姿ですが、戦闘時は獣寄りの姿になるらしいですよ。」
「私が見たのは二足歩行のままだったはずですが。」
クラーレン。
「へー、じゃああれは戦闘形態って感じか?」
俺。
「おそらくそう言う事なのだと思いますよ。」
クラーレン。
って事で情報のすり合わせを行う。
まず当初の作戦は大成功との事だった。
ジュリエットとビクターは今や枢機卿ですら口を出せないらしい。
まぁ枢機卿は精神崩壊気味だけど・・・
他の貴族も今回の一件で敵味方が割とはっきりしたらしく、
ブロッキー達やラドクリフ達と協力して少しずつ断罪していくらしい。
でその他の連中も俺の観察通りいい意味で大きく名を上げたとの事。
そしてゴブリン達はと言うと、友好を示すことが出来たが、
今後の彼らの扱い方で揉めているらしい。
人間の村と同じように扱うのか、人間の村とは別として扱うのか。
はたまた暫くは非公式に付き合っていくのかとか。
様々な意見が出ているらしい。
確かに今正式に関係を認めると確実に厄介な連中が口を出してくる。
主に教王派閥の連中だ。
そもそも獣人やエルフですら敵認定している連中だし。
多分貴族にも教王派閥がいるだろうし、確実に波乱が起こる。
って事で一旦非公式に関係を結ぶことに決定した。
ビクターが信用出来る貴族と教会の神父さんを集めてその旨を伝えるとの事だ。
でハンターやゴガ達が引き続き調査をしていたらしいが、
ゴブリンの脅威は去ったと判断したらしい。
これにて一件落着だ。
これでゴガ達も一旦ゴブリンの村に帰るらしい。
そして俺の話に入る。
「この数日の間、枢機卿と他数人の神父を監視していた。」
俺。
「ほう?」
アーサー。
「別に逃げ回っていたわけじゃないぞ。」
「で奴らは戦後ずーっと引きこもって部屋の端っこで丸まっていた。」
「そしてぶつくさ何かをつぶやいていた。」
「計画と違うとか、あの化け物はなんだとか、まずいとか色々言っていたんだ。」
「要はあいつらも何かしらの計画があったんだろうと思われる。」
「そしてあのゴブリンだ。」
「突然現れたのでは?と俺は思ったのだが、どう思う?」
俺。
「ふむ、まず枢機卿らはかなり精神的に参っているようですね。」
「しばらくはそのままで病んでいてもらいましょう。」
クラーレン。
「サラッとえげつない事を・・・」
「で当のゴブリンは自然発生した個体じゃないって事ですか?」
アーロン。
「うーん、情報が少ないので判断し兼ねる。」
「しかし突然軍団が集まりだしたんだろ?」
「自然発生してたらもっと徐々に集まるんじゃないかと思って。」
「それにリーダーのゴブリンもあの大軍を管理できるほど賢いように見えなかったし。」
「ひょっとしたら教会の連中も一枚嚙んでいるのでは?と勘ぐってしまう。」
俺。
「ふむふむ、不自然な点が少々多いと・・・」
クラーレン。
「西部は前々から調査をしていた。」
「しかしあの軍団は我々が東部のゴブリンを支配してから急速に集まりだしたのだ。」
「それにあの巨大な角の生えたゴブリンもそのころ突然確認されたらしい。」
ゴガ。
すると皆考え込んでしまう。
「まあ、教会が噛んでいるかどうかは置いておいて、」
「アレほどじゃないが強力な魔物が各地で増えている気がする。」
「何かしら対策を考えないといつかどこかの町が滅ぶぞ。」
俺。
「なるほどそう言う事か。」
「しかし、我々近衛兵団はあくまで国王陛下の物だ。」
「だから国王陛下の元を離れるわけには行かないのだ。」
アーサー。
「領主としてはそれに対抗するだけの常備軍を維持出来ないのと」
「下手に軍を増強すれば国王陛下に対し反逆の意志あり思われてしまいます。」
「なので我々はいざって時にハンターさん達に依頼を出すしかできません。」
ビクター。
「領主も色々大変だね。」
俺。
そんな話をしているとクラーレンが手を上げる。
「あのー。」
「この際だから話してしまいますけど・・・」
「アーロンさん達とは少しずつ話を進めていたんですが。」
「教会を粛清した後にそう言う団体を各地に設立しようと思っているのです。」
クラーレン。
「ん?」
「そう言えば何か考えているって言ってたっけ?」
俺。
「ええ、各地を守護する教会所属の戦士団。」
「資金源は教会からと自らのハンター業で賄う予定です。」
アーロン。
「おおー!」
「人々を守る神の騎士、聖騎士って感じか?」
俺。
「まあ騎士を名乗るのはあまり良くないので聖戦士とかですかね?」
クラーレン。
その話を聞いて皆おおー!とか驚いている。
「騎士ではなく聖騎士なら問題ないですよ。」
ジュリエット。
「え?そうなの?」
俺。
「ええ、まったく問題ないです。」
ジュリエット。
「おお!じゃあ聖騎士団で決定だな。」
「所で命令権は誰が?」
俺。
「一応教王ではなく聖騎士団の団長自らが持っている事にする予定です。」
アーロン。
「教会所属と言いつつ、教会とも貴族とも別って事か。」
俺。
「はい。誰にも惑わされる事無く物事を判断する組織にする予定です。」
クラーレン。
「なるほど、だから今の教王達が居たら邪魔なのか。」
アーサー。
「彼らが居る内に設立してしまうと、指揮権は彼らが持って行ってしまいそうですもんね。」
ラドクリフ神父。
「ハンターとしての活動と教会への募金を資金源にするのであれば、」
「資金的な問題は解決できそうですね。」
ビクター。
「今回のブロッキー達の訓練もそれの土台作りって事か。」
アーサー。
「その代わり聖騎士と言う名は相当重くなるぞ。」
「お前は聖騎士団団長の名を背負えるのか?」
俺はアーロンに向かって聞く。
俺の姿は見えないけど。
「まだ完全に覚悟が固まったわけではありませんが・・・」
「是非やりたいと思っています。」
アーロン。
「そうか。」
俺。
「すでにビクターには軽く説明してありますし、」
「西方のグレゴリーさんに話を持ち掛ける予定です。」
「あと東方と南方にもそう言うチームを作っておく予定です。」
クラーレン。
皆の反応はかなり肯定的だった。
「つまりその聖騎士団とやらが設立されれば今回の様な相手にもすぐに対処できるって事だな?」
ゴガ。
「教会だの貴族だのとよく分かりませんが一応ついていけてます。」
ギガ。
そう言えばゴブリンってそう言うの分からないよな。
「まあ今度ビクター辺りに教えてもらうと良いよ」
俺。
「ああ、是非頼む。」
ギガ。
「ええ!お任せください!!」
ビクターは嬉しそうに返事をする。
その後も会議は続いた。
ブロッキー達に大きな馬房付きの家を用意するとか話をしたり。
ゴブリン達と密に情報のやり取りをするとか。
アーロンやクラーレンとビクターやラドクリフ神父も密に連絡を取り合うとか。
何時頃教会の連中を粛清する予定かとか。
好きな料理の話とか。
結婚しているのはだれ?とか。
子供とお菓子作りを始めたり。
外で子供たちと遊んだり。
俺の髪の毛が子供たちのおもちゃになったりとか。
色々あった。
次の日。
ゴガ達を村に送り届ける事になった。
ついでに白蛇に挨拶してくる。
彼らは優秀なので尋常じゃないくらい素早く村に着いた。
そしてゴガ達と別れて蛇の洞窟に行く。
今更だが蛇の洞窟はゴガがこっそり見回っている。
大きな脅威があればこっそり排除してくれているらしい。
有難う。
俺とユキとスイとエンでその洞窟に向かう。
「忙しかったけど、そろそろ王都に戻れるぞ。」
俺。
『忙しかったのはあなただけよ。』
ユキは少々いじけている。
『うん。』
スイ。
『もっと暴れたかった。』
エン。
皆いじけている。
「ごめんって、みんなあと数日はやる事があるみたいだから少し時間はあるぞ?」
「何がしたい?」
俺。
『走りたい。』
ユキ。
『暴れたい。』
エン。
『ヒロと遊びたい。』
スイ。
「じゃあどっかに走って行って暴れながら遊ぼうか。」
俺がそう言うと皆嬉しそうにうなずく。
「どこに行きたい?」
俺。
『どこでもいいよ。』
エン。
『北に何かあるみたいよ。』
ユキ。
『じゃあ俺も北で。』
スイ。
「じゃあ北に村があるみたいだし行ってみようか。」
俺。
って事になった。
そんな会話を続けていると洞窟に到着した。
そして洞窟の中にズケズケ入って行くと白蛇が出て来た。
『おーい!あんちゃーん!!』
白蛇。
「おお!元気だったか?」
俺。
『うん!!何かあのゴブリンが嫌な奴を倒してくれてるんだよ!』
『だから皆元気元気!!』
白蛇。
「おお!そうかそうか良かったね!」
俺。
白蛇は少し長く太くなった気がする。
ついでに亀も増えた。
なんだろこの亀。
『ねぇねぇ!コレあげるよ!!』
『この前のお礼!!!』
白蛇は【収納】から何か鉱石?っぽい物を山ほど出す。
「何これ?」
俺。
『なんか人間が欲しがってるマコセキ?とか言うやつだよ。』
白蛇。
「へー。マコセキ?そんな貴重な物をくれるのか?」
俺。
『ここじゃそこまで貴重じゃないし沢山あげるよ!』
白蛇。
文字通り山の様になったマコセキ?とか言う多分鉱石の一種だと思われるそれをくれるらしい。
「へー、ありがとう!!」
何に使えるんだか分からないけど、何かこの鉱石から魔力を感じる。
魔物化した鉱石って感じかな?
ん?
マコセキって魔鉱石か?
何か加工次第で固くなったり軽くなったりするヤツだったはず。
通常の鉱石よりも魔力や魔法の乗りが良いらしい。
通常の鉱石を使った武器に掛けられる強化が10だとしたら、
50にも100にもなるとかならないとか。
エルフやドワーフが加工したらミスリルとか言われるようになるヤツ。
そんな物を山の様にもらっていいのか?
「あー・・・」
「そのマコセキって絶対他の生物や人間に知られたらダメだぞ?」
俺。
『ん?もちろんココわっち等の住処だし誰にも教えないよ!』
白蛇。
「くれぐれも気を付けてくれよ。」
俺。
『はーい!』
白蛇。
こうして予期せず大量の魔鉱石が手に入った。
その後白蛇に別れを告げて洞窟を後にする。
そして一旦町に戻った。
王都に帰る予定の日まで出かける事を伝えて置く。
一応北の村の情報を集めて置く。
まずはブロッキー達。
「北の村にはちょっと変わった噂がありますよ。」
ブロッキー。
「なに?」
俺。
「夜な夜な村の北から死者のうめき声が聞こえてくるとか・・・」
ブロッキー。
「なんで死者?」
俺。
「なんかハンターが北の村で夜な夜な動く人影を見たと良く噂しているんですよ。」
ブロッキー。
「へー。実際は村人ってオチか?」
俺。
「それがそうでもないらしくて、詳細は不明のままなんですよ!」
「だから北に行く際には気を付けてくださいね!」
ブロッキー。
って事で次はラドクリフ神父。
「北の村に関してちょっと変わった噂がありますよ。」
ラドクリフ神父。
「あなたもですか、ひょっとして動く人影?」
俺。
「人影?いえ?そうではありませんよ。」
「実は昔から北の村のさらに北の一番高い丘の上にとても古い城があるとか。」
「もっぱらの噂ですが。」
ラドクリフ神父。
「古城?」
俺。
「はい。なのでその人影ってその古城に住み着いた浮浪者なのでは?」
ラドクリフ神父。
「おお!なるほど!面白そうだな。」
俺。
「ですが気を付けてくださいね。」
「一部ではヴァンパイアが住んでいるとか言われてたりしますので。」
とラドクリフ神父は若干わざとらしくふざけながら教えてくれる。
ビクターにも聞きたかったがそんな時間はすでに無く明日の朝に出発する事になった。
この日はミカの体を綺麗に洗って餌をあげたりしてやった。
そしてずーっと持ち歩いていた卵だが。
何かとんでもない気配と魔力を放ち始めた。
そろそろか?とも思ったが。
まだ生まれそうな気配は感じないのだ。
まだまだ成長するっぽい。
主人公は後処理を殆どしないで逃げ回ってました。
あとゴブリンに関して色々明かされるタイミングが無い気がしたのでぶっちゃけます。
何処かの何かがこの世界のゴブリン達にいたずらをして北方に大集合してしまいました。
で悪戯をされたゴブリンの中からあの角の生えたゴブリンが生まれたのです。
ふわっとしてますがこんな感じです。




