67 ガキンチョとチンピラの矯正
続きですぅ。
ガキンチョと約束してからイチロウ達と少し遊んだ。
そして次の日
早朝の訓練の時間。
生意気なガキンチョは約束通り来た。
「おはよう。」
「おはようございます!」
やたらしっかりした言葉遣いになったな。
「まずは基本中の基本からだ。」
「きほん?」
「そうだ、戦い以外でも必要な事。」
「つまり体力作りだ。」
「体力作り?」
「戦いは長時間にも及ぶ事がある。」
「そして勝てない相手や相手の数が多いときは逃げる必要がある。」
「逃げるのは嫌だ!」
「逃げずに死ぬのと、逃げて強くなってから再戦するのどっちがいい?」
「死ぬのは嫌だ。」
「だろ?」
「それに戦場まで走って行って疲れたから戦えないんじゃあダメだろ?」
「確かに!」
「じゃ!走るぞ。」
「まずは自分のペースで走れ!」
「わかりました!」
って事で誰も居ない訓練場を俺とガキとスイとエンが走る。
ユキはぼーっと眺めている。
ガキンチョはかなり頑張っていた。
「ゼェ―!ゼェー!」
「生きてるか?」
俺はフルーツを切って渡す。
「少し口を潤せ。」
モグモグ。
「じゃあ次は素振りだ。」
そう言ってこのガキンチョサイズの木剣を渡す。
「持ち方は分かるか?」
「こお!」
若干違ったので直す。
「こうだ。」
「はい!」
「振り方はこうだ。」
俺はこのガキに合わせて木剣を振る。
エルフの爺さん仕込みのやり方だから多分この王国の剣術とほぼ同じのはず。
剣をふって形をしっかり見てやる。
腕が疲れたら、休憩と言ってこっそり魔力操作のトレーニングをさせる。
そして魔力が尽きたら素振り。
朝食の時間の少し前に切り上げて汗を流して今日は終わり。
「つっ、つかれた・・・」
「身長が伸びるまではあまりキツイ訓練をしない方がいい。」
「わかりました・・・」
「しっかり食べてしっかり学び、しっかり遊んでしっかり休め。」
「はい!」
「あとこれ、ハンターの手伝いをしたら貰ったと言え。」
と言って平原に居た牛さんの肉を少し清潔な布に包んで渡す。
「コレは?」
「牛の肉だ。これを食って大きくなれ。」
「ありがとうございます!師匠!」
昨日の生意気な態度は何だったんだろうな?
そして平原で狩り馬の訓練もして寝る。
ガキンチョと朝の訓練をする様になって数日が経った。
ガキンチョは少し背が伸びた。
魔物の肉を食わせたせいか?
まあいいや。
それに比例して細かった腕にも目に見えて筋肉がついた。
早くない?
って毎度毎度びっくりしてるけど、いまだに慣れない。
本人はしっかり訓練して肉を食べたおかげだと言っていた。
そんなわけねぇよ!って俺の常識が訴えてくる。
子供だから成長が早いのか?
剣術の覚えもやたら早いし・・・
アーロン達の事を思い出す。
アイツらも大概覚えが早かった。
そんなある日の昼間。
またいつものクッキーを食っている最中の事。
路地裏からまたまた声が聞こえてくる。
前の奴らに加えて武装した兵士?傭兵?っぽい奴もいる。
でボコられてるのはあのガキンチョ。
「お前らまたやってんのか?」
どうやらガキンチョは一人ぶっ飛ばした様だ。
しかし人数で押し切られたって感じだ。
「こういう時は逃げろって教えたんだけどな?」
「師匠!すみません。」
「オウオウ師匠さんよ!」
「この前のお礼だ!」
「ヒャッハー!」
俺にも恨みがある様だ。
少し師匠っぽい所を見せて置こうか。
「どこの兵士だ?」
俺。
「俺は傭兵だ。」
鎧を着た男が答える。
「ハンター協会の?」
「そんなヤワな奴らと一緒にするな。」
ハンター協会所属じゃないって事は多少雑に扱ってもいいって事だな。
「そのガキに二度とかかわるな。」
俺。
「はっはっは!このガキは高値が付く。」
「今更手を引けって言われても無理だ。」
「そしてお前はここで死ぬんだ。」
なるほど人さらいか。
だったら尚更放置するわけにいかなくなったな。
とか考えていると傭兵もどきは切りかかってくる。
俺は左手で剣の腹を弾くと傭兵もどきは体勢を崩す。
「少し手荒に行くぞ。」
俺は拳を握り込む。
態勢を崩した所で胸の鎧の部分にまっすぐ叩き込む。
ズドオォン!!
鎧は割れて胸の骨も幾つか折れて砕けて体が少し浮く。
血を吐いているが生きている。
「手加減はしたぞ。」
全員の顔に恐怖が浮かぶ。
「スイ!エン!」
俺が名を呼ぶと二匹は他の連中の退路を断つような場所に立つ。
丁度俺とスイとエンで挟み込む感じだ。
「足を食い千切られたいか、俺に殴られたいか選べ。」
その結果、半数は足を食い千切られて半数は俺に殴られた。
「師匠!」
「こいつらは俺に任せろお前は家に帰れ。」
「ありがとうございました!」
「次はちゃんと逃げろよ。」
「はい、分かりました。」
少ししょんぼりしていたが安全第一だ。
男達の足をロープで縛りロープをユキに縛り付ける。
でボロボロの男たちを教会まで引き摺っていく。
ズリズリと血で線を描きながら教会に行く。
もちろんこいつらの怪我は直していない。
アーロン達は丁度教会で男どもを指導していた。
この前とっつ構えたギャングもどきだ。
「アーロン!」
運動場に居るアーロンに、連れて来たチンピラたちをぶん投げる。
「こいつらも頼んでいいか?」
俺。
「え!死体処理はちょっと・・・。」
アーロンが嫌そうな顔をする。
「残念ながらこいつらはまだ生きている。」
「その出血量で生きてるんですか?」
「路地でガキを攫おうとしていた所を半殺しにした。」
「キッチリ調教してくれ。」
「わかりました。」
って事でアーロン達に合流させて調教する。
暫くは俺も付き合う。
丁度他の連中もいたのでちょっと厳しめに訓練を施す。
そして次の日の朝には呼べば整列&気を付けで待機するようになった。
「よし、千里の道も一歩からだ。」
「お前らみたいなカスでも日々の努力が何時か綺麗な花を咲かせる事が出来るだろう。」
「「はい!」」
と綺麗に揃った返事をする。
アーロン達5人をリーダーとして5チーム作る。
そしてその5チームで以前の様にアイアンの簡単な依頼をこなしまくる。
元気に真面目にこなさせる。
おイタをすれば容赦なくぶん殴る。
そしてしっかりごめんなさいを言わせる。
仕事が出来ればちゃんと褒める。
馬と同じだ、良ければ褒めてダメなら叱る。
一旦は真面目に行動するようになった。
後は基本的にアーロン達に任せる。
俺は人より馬と触れ合いたい。
朝はガキ、日中は馬時々人間って感じで訓練or調教をする。
時々アーロンとアーロンの手下が平原まで来て馬の世話を手伝ってくれてとても助かっている。
最初は嫌々従っていた手下共は次第に爽やかな顔になっていく。
健全な睡眠と食事と労働と運動で大きく性格が変わったようです。
こうしてチンピラ矯正施設は稼働し始めた。
チンピラたちの在り余っていた体力は訓練とハンター協会の依頼によって消費される。
そして平原で狩った獲物の解体と運搬も時々やってもらえるので
獲物を狩る数が増え教会に寄付する頻度は増えた。
その影響でやたら元気になった子供たちの何人かがアーロン達の朝の訓練に混ざり始めたらしい。
もちろん朝の訓練は俺とは別でやっている。
ガキンチョとチンピラが顔を合わせる事は無い。
そんな日々が続いたある日の事。
木工協会で仕事をしている二頭の馬は特に問題を起こさず王都にもなじんでいる様子だ。
時々平原に連れて行き自由に走り回らせているらしい。
元気そうで何よりだ。
平原の馬たちも時々来るチンピラ共に対して特に反応を示さなくなったので人間には慣れただろうと思う。
教会の礼拝堂にて
クラーレン神父とアーロンと俺で世間話中。
「そろそろ魔物の馬たちを連れてこようと思うんだけど。」
「どう思う?」
俺。
「ほとんどの個体が会話を理解するようになったので問題は無いと思いますよ。」
アーロン。
「そもそも賢い子達ですし、何が問題なのか分からなかったのですが?」
クラーレン神父。
「あいつらは食っていい人間とダメな人間の違いが分かってなかったんだ。」
「あと建物自体も店に並んでいる商品もなんでも食おうとする。」
俺。
「魔物だから本当に何でも食べてしまうんです。」
アーロン。
「襲ってきた魔物を返り討ちにして食べているのを見た事はありますがそこまでとは・・・」
クラーレン神父。
「木が大好物だったり人間が好物だったりするから本当に困る。」
俺。
「人間!?」
クラーレン神父は驚愕する。
「ああ平原で行方不明になった人間の何人かはアレに食われてる。」
俺。
「人間食を我慢できるんですか?」
クラーレン神父。
「俺の教えたスパイスで焼いた肉を食わせれば満足するぞ。」
俺。
「味の問題なのですか?」
クラーレン。
「そうらしい。しょっぱいのが好みなんだってさ。」
俺。
「馬が塩分過多って大丈夫なんですか?」
アーロン。
「魔物だし大丈夫だろ?」
「それに野菜もちゃんと食わせるし。」
俺。
「まー・・・問題にならなければいいでしょう!」
クラーレン神父。
「よし、では早速教会の無駄に広い厩舎に連れて来よう。」
「手伝って欲しいです。」
俺。
「もちろんお手伝いします。」
アーロン。
「私はここで皆と受け入れの準備をしておきますね。」
クラーレン神父。
俺とアーロン達で平原に向かう。
平原で馬たちを呼ぶ
「おーい!!いちろーう!!」
俺がでっかい声で呼ぶと沢山の馬がものすごい足音を立てて走ってくる。
ドドドドドドド!!
相変わらず勝手に数が増えている。
50頭は超えて7~80は居そうだ。
こんな数の集団を普通の野生動物は管理出来ないと思う。
しかし俺がアーロン達に教えた様に細かくチーム分けする方法を教えたら、
どんどん数が増えていった。
魔物の馬たちには序列がある。
序列一位がイチロウで序列二位が数頭いる。
三位はその他全部だ。
序列一位が二位全員をまとめて、二位が数頭の三位をまとめる。
ついでに言うとイチロウには助手的な感じでジロウが付いている。
ジロウは序列1.5って感じ。
グループ分けは俺が体格と性格で分けた。
大柄で攻撃的、大柄で大人しい、小柄で攻撃的、小柄で大人しい。
って感じ。
家族もこのグループ内で作ってもらう。
攻撃的な奴らは軍やハンター用に、大人しい奴らは畑や荷車や乗用馬として、
働いて貰おうと思う。
将来的に販売するかもしれないが、俺は人間派か馬派かで言えば天と地ほどの差をつけて馬派だ。
馬が許可しない限りは他者に渡さない事にしてある。
これはクラーレン神父やアーロン達と決めた事だ。
魔物の馬なので悪用されればとんでもない被害が出てしまうのだ。
主人選びは馬と俺達で慎重に選ぶ事にしてある。
そう言う意味では木工協会のギデオンさんはその基準をすべて合格したって事になる。
クラーレン神父曰くギデオンさんは特に問題なく善人であるとの事で俺も同感だ。
彼らに悪用される心配はない。
これから俺とスイとエンとアーロン達とチンピラ共で馬たちを囲み教会まで連れて行く。
「今からお前たちの新しい家に案内する。」
「大人しく付いて来てくれ。」
「いやな奴はここに残ってくれていいぞ。」
俺がそう言うと馬たちは頷く、脱落者は居ない様だ。
で皆で王都に入る。
大量の馬の移動は良くある事ではないが時々起こる事だ。
だから門番や町の人々に驚きは少なかった。
無事に広場も超えた。
広場には人が多かったので新入りの内の一頭が涎を垂らしまくっていたが古株の馬が我慢させてた。
人間のつまみ食いをすること無くどうにか教会の放牧地に到着した。
馬たちを放牧地に開放する。
「この柵や建物は食べちゃダメだからな。」
そう言いつけてから放つ。
馬たちは周囲を確認して臭いを嗅いだり安全確認をしている。
「見ないうちに増えてません?」
クラーレン神父。
「そのようですね。なんか増えちゃった。」
てへっ。
「ここに来るまで問題はありませんでした?」
「大丈夫だ、古株の奴らがしっかり面倒を見てくれてる。」
「それなら安心ですね。」
「って事で自己紹介しましょうか。」
「馬と?」
「そうです。皆並んでもらえますか?」
「わかりました。」
「みなさーん。この辺りに並んでもらえますか!」
クラーレン神父は教会の人たちと子供達を並ばせる。
「イチロウ!全員集めてくれ。」
俺がそう言うとイチロウが走ってくる。
そしてイチロウとジロウが俺の隣に来る。
そして序列二位が前に三位がその後ろに並ぶ。
馬たちは綺麗に整列している。
人も馬もせ整列した。
「では今日からお前たちの世話をしてくれる人たちだ。」
そう言ってクラーレン神父に一人一人紹介してもらう。
馬たちはしっかり顔と名前と匂いを判別する。
記憶力も相当いいので俺より覚えが早い。
で馬たちは数が多いのでまずは序列一位と二位だけ紹介した。
序列二位以上の個体には仮の名前を付けている。
因みにミカとクインとモルグは彼らだけでチームを分けてある。
ミカはやたら俺に付いて来るのでユキに続いて俺の馬っぽくなっているのだ。
で教会の人たちにはクインとモルグの事をこっそり伝えて置いた。
すでに引き取り手が居るという事を伝えた。
挨拶が終わり今は皆で馬のお世話をしてくれている。
チンピラ共の中に馬の世話が好きな奴が居たので、
そいつらは馬の世話をメインにやってもらう事にした。
もちろん訓練はしっかり行う。
ディーンとエディもやる事は多いが馬の世話を進んでしてくれている。
因みにアーロン達はすでに仲良くなった馬が居るらしく、
今後はそいつを乗り回すとの事だ。
アーロン達はそろいも揃って大柄なので馬も大柄で性格は荒っぽい。
アーロン達はそいつ等をどうにか躾したようだが初期の頃は完全に人間を殺そうと暴れていた。
馬の世話をしてもらうのは主に教会の人や子供とチンピラ共だがここでチーム分けが役に立つ。
攻撃的な馬はチンピラ共に任せて、大人しい馬を教会の人たちに任せる事にしたのだ。
チンピラ共は多少怪我をしても心が痛まなくて済む。
何故なら普段から俺やアーロン達が訓練でブッ叩いているから体は頑丈なのだ。
蹴りが飛んで来ても躱せる可能性が有り、当たっても死なない可能性が一番高い。
教会の癖に厩舎は馬全員が余裕をもって入るほど広さと数がある。
放牧場も全馬が軽く運動するには十分な広さだ。
もちろん定期的に平原に連れて行って自由に走らせたりする事になってる。
色々あったが移動は問題なく終えた。
それとミカはどうしても俺やユキ達と居たいらしく一緒に連れて行くことになった。
ユキもミカもデカいので宿でもう一頭分の馬房を借りる事になった。
俺はその後も数日の間ちょくちょく教会の様子を見に来た。
教会の施設を見ていると教会の権力のすごさが分かる。
だがしかし今までほぼ使われていなかったって事はよっぽどこの教会の経営が苦しかったのだろう。
今では俺やアーロン達の寄付のおかげでだいぶ良くなっているらしい。
人手も増えた事でクラーレン神父の睡眠時間がまともに取れる様になって元気になった彼は、
時々俺とアーロン達でやる訓練に混ざるようになった。
体力作りと護身術を学びたいとの事だった。
何を教えようか考えた結果、格闘と短刀術と杖術を教える事にした。
短刀は無いのでそれっぽいナイフを買ってあげた。
「神父が戦闘術をならうのってどうなの?」
俺。
「あなたも神父の様な物でしょ?」
クラーレン神父はそんな事を言う。
「なにアホな事言ってんだ。」
「神の命令でこの国の神父たちを断罪しに来た天使って・・・神父よりすごいのでは?」
「ただの使いっ走りだ。」
「お前は自らこの道を進んでいるが、俺は神に逆らえないだけだ。」
「だからクラーレン神父の方がよっぽどすごいよ。」
「そうなんですか?」
「そうだ、俺は前世でちょっとやらかしてしまったんだ。」
「やらかした?」
「ちょいと大罪を犯してしまって、それで太陽さんに叱られた。」
「大罪と言うと・・・」
クラーレン神父は少し考えこむ。
「あなたはそんな人に見えませんが・・・」
「散々しごかれたからな。」
「そんなヤワな精神状態で送り出すほど太陽さんも馬鹿じゃないさ。」
「なるほど、そう言う事でしたか。」
「俺みたいな奴を送り込むなんて神も相当いい加減だよな?」
「ははは。いい加減と言うより心が広いのでしょうね。」
「どうだかな。」
とそんなやり取りをしつつ訓練をする。
クラーレン神父は予想に反して体力と筋力があった。
アーロン達もびっくりしている。
ハンターで言えば確実にブロンズを超えている。
「戦闘経験あるでしょ?」
俺。
「その昔、戦場に赴き友の傷を癒したりしていましたよ。」
クラーレン神父。
「その昔ってアンタ何歳なんだよ・・・」
「年齢を聞くのは失礼ですよ。」
「そりゃどーもすみませんでした。」
「わかればよろしい。」
「だから、体は鍛えてるのか?」
「まあ、そんな所ですね!」
一度教えたら普通に俺をぶん投げたりするし素人とは思えない。
上着を脱いで、ガチのナイフ同士で戦闘訓練をする。
致命傷以外は回復魔法でどうにかするのでガチで戦闘をする。
訓練とはいえクラーレン神父はとんでもない集中力でナイフを振る。
眼や耳元でナイフがヒュンヒュン飛び交う。
クラーレン神父はよけ切れずに何回かナイフが掠ったりしている。
腕、肩、脇腹などなど。
しかし致命傷はしっかり避けている。
時折ぶん投げたり投げられたり。
服が切り傷や血でボロボロになった所で終了。
「服が勿体ないですね。」
「そうだけど実践じゃあ服を掴まれたりするから裸だと実践的じゃないぞ。」
「では次、実践形式の訓練の時はコレかお古を着る事にしますね。」
「それがいいな。」
血は洗うか浄化魔法でどうにかなるだろうが切り傷は消えないので服はすぐダメになる。
縫えばいいか?
まぁ幸い毎日やっているわけでは無いのが救いだ。
その日の訓練の後買い物に出る。
向かう先は馬具の店。
ミカの運用方法について考えた結果、荷物持ち以外思いつかなかった。
荷馬車でもいいが、それよりコンパクトで素早く移動出来るでっかい鞄を買ってみようと思う。
別に必要ないんだけどね?
どうせ普段は荷馬車を引かせて獲物をしこたま積むことになる。
ユキも居るので荷馬車を二台同時運用出来るって事だ。
そう言えば荷車も今は一台しか持っていない。
今持っているのは荷物や獲物を載せる屋根なしの荷車一台、
大きめの幌馬車が一台だけだ。
他はグレゴリーやどっかの村の人にあげたり売ったりした。
だから荷馬車をもう一台買おうかな?
金はアホみたいに沢山あるので金銭的には問題ない。
髭が立派な店員さんに色々聞いてみた。
ミカはユキに匹敵する巨体だ。
他の魔物馬ならまだしもミカは特にデカい。
だから馬具関係は特注品にした方が良いらしい。
なので鞍も今までの物では無くミカ専用に新しく作ってもらう事になった。
それのついでにって事で荷車もでっかくて頑丈なヤツを作ってもらえることになった。
しかもユキ用とミカ用に二台作ってくれるらしい。
幸いユキ用とミカ用で寸法は同じでも問題ないらしい。
荷馬車二台ミカ用の鞍とでっかい鞄を作ってもらう。
因みに荷馬車と鞍は木工協会と俺が普段使っている鍛冶屋と協力して作るらしい。
世間って意外と狭いね。
それが完成するまではユキに鞍を付けて騎乗し、ミカに荷車を引かせて平原に狩に出る事になる。
ミカとついでにユキの各種の寸法を測った後、
日暮れまでまだ時間があったので平原に行きユキとミカと双子に軽く運動をさせる。
俺は平原でゴロンと横になってぼーっとする。
風と日差しを感じてのんびりする。
聞こえてくるのは草原の草が揺れる音、馬と犬の足音。
そして獣の唸り声と悲鳴、馬の蹴りの音と犬が吠える声。
さらに血の香りが風に乗ってやってくる。
うん・・・今日も平和です。
皆がひとしきり走ったあと俺の元に血の匂いと返り血を添えて戻って来た。
「泥とかならまだしも返り血ってどういう事よ。」
『でっかいオオカミの群れを狩って食べて来た。』
『オオカミは臭いから嫌い。』
『デカいだけの雑魚だった。』
と彼らは思い思いの感想を述べる。
俺はその間二頭と二匹の体を綺麗にする。
「運動しに来たのに食ってばかりいたら意味無いだろ。」
俺がそう言うと二頭と二匹は顔をそむける。
「お前ら今晩の飯は抜きだぞ。」
俺がそう言うと見事に全員しょぼーんとする。
どういう事だよ、狼の群れを食ったって。
「ん?お前ら死体とか骨とかはちゃんと処理したのか?」
俺がそう言うとユキがうなずく。
『肉も内臓も皮も全部皆で食べて骨もスイとエンが食べたよ。』
ユキはそんな事を言う。
「まぁそれなら問題ないか・・・」
その後宿に戻り俺だけ飯を食って卵を抱えて寝る。
身分証が必要なのは人間だけで馬には必要ありません。




