60 仲良くなれるかな?
お馬さんとお友達になれるかな?
ロープを取り出して観察。
群れから孤立している若くて健康そうな牡馬を見つけた。
毛並みは黄金の様な栗毛。
全速力でそいつに急接近し飛びかかる。
背中に乗っかり両足で前足の付け根の後ろ辺りをしっかり挟み込み、首にしがみつく。
馬は暴れ出しロデオ開始。
馬の魔物の身体能力はとんでもなくジャンプ力もすさまじい。
俺がのっかっているのに真上に数メートルほど飛び上がったりする。
しがみついたまま目と鼻の間辺りにロープを巻き付ける。
そして、馬が大人しくなるまで耐える。
大人しくなれーと念じながらひたすら耐える。
お馬さんからは恐怖と怒りなどの感情を感じる。
ひたすらなだめながら耐える。
肉食獣を蹴り殺すほど狂暴な馬だ。
根性も体力も相当ある。
何事かと群れの馬たちが近寄ってくる。
しかしユキが威嚇すれば蜘蛛の子を散らす様に去っていく。
よっぽどユキが怖かったらしい。
しばらくロデオをした後ようやくお馬さんは落ち着いた。
諦めたようだ。
「大丈夫だ。取って食ったりはしない。」
そう言いながら首を撫でる。
だいぶ落ち着いた様なので降りて果物を食べさせる。
頭をなでなで。
ユキは『逃げ出したらどうなるかわかってんだろうな?』と睨みつけている。
お馬さんは恐怖で縮上がっている。
肉と果物と野菜を適当に器に盛って食わせる。
この馬は果物より肉と野菜の方が好みらしい。
食後はブラッシングしたり洗ったり怪我がないか体中を確認する。
ダニや寄生虫の様な虫は居ないようですこぶる健康だ。
しっかり体を洗ったので綺麗な体毛がさらに綺麗になった。
太陽に照らされて輝く黄金のような毛並み。
頭をロープで上手く縛る、『無口』とか『もくし』という縛り方?をする。
ユキが脅したおかげか嫌がったのは最初だけですぐに大人しくなった。
何回か付けたり外したりして慣れさせる。
慣れた後はロープを引いて一緒に歩く。
ハミは無い。
普通の馬もかなり頭がいい動物だ。しかし馬の魔物はさらに頭がいい。
その後も色々やってみてわかったが、
おそらくは数日ほど調教すれば乗って移動できるくらいには出来そうだ。
ユキもそうだったが頭がいいと飲み込みが早い。
それにユキのおかげで言う事もちゃんと聞いてくれてる。
俺だけなら手こずってただろうがユキが居ればどうにかなりそうだ。
「ありがとな。今度友達を紹介しに来てもいい?」
と伝わるか分からんけど言ってみる。
ユキやスイとエンほどではないがイエスと言う意思はうっすら伝わってくる。
「じゃあまたな!怪我すんなよ!」
と頭と首をなでなでしてロープを外して一時開放する。
今度アーロン達と合わせてみようと思う。
後はユキに荷馬車を引かせて王都に戻る。
内臓が無いとはいえ大型の牛4頭がのっかってるので山盛りだ。
少々驚かれつつもハンター協会で換金する。
「買い取りお願いします。」
査定員のお姉さんに渡す。
皮や魔石はこっちで確保したので売るのは肉や骨、角だ。
「あいよ!」
と活発そうな赤毛の査定員のお姉さんがちゃっちゃと査定する。
「この牛さんを狩るなんてすごいね!」
「この牛さんのお肉は高級品だから高値で売れるよ!」
「所で皮と魔石は?」
「皮と魔石は別の用途で使うから売らないです。」
「そっか残念。」
換金の結果肉だけでもいい金額になったのでよかった。
「じゃあまたよろしくねー!」
と陽気に言う査定員のお姉さん。
「じゃあまた。」
と適当に返事をして、ハンター協会を後にする。
そして7頭分の皮は鍛冶屋に持ち込んで、防具の材料として使えるか聞いてよう。
「こんにちは!」
と元気に挨拶。
「いらっしゃいませ。」
と言いながら目線はすでに俺の持っている牛さんの皮に奪われている。
「この牛の魔物の皮は防具の材料に使えますか?」
と言って皮をカウンターに乗せる。
「近くに平原に居る牛ですか?」
「そうです。」
「この牛は平原に沢山いるくせに強いのであまり狩られずに数が増えすぎてしまう事が多々あるのです。」
「害獣って事ですか?」
「そのくらい強いって事です。」
「なので、かなりいい防具を作れますよ!」
「おお!そうですか!」
「でしたら!昨日の奴ら用に防具を作ってください。」
「昨日一緒にいらっしゃった5人用にですか?」
「そうです。」
「あなたは?」
「今は必要ありません。」
「なるほど。」
当然だが本人たちが居なきゃ話が始まらない。
どんな形がいいとかはそれぞれ違うだろうし。
なので一旦皮を渡しておいて後日、本人達を連れてくることになった。
どうせ皮を鞣すのに時間が掛かるだろうし気長にやる。
もうすぐ日が暮れるので宿に戻るとアーロン達もちょうど戻ってきていた。
「牛の魔物の肉あるけど食うか?」
「良いんですか?」
「いっぱいあるし良いぞ。」
って事で俺はキッチンを借り肉を焼く。
いつものパンとスープの献立に俺のお手製の肉料理が加わった。
晩飯を食いながらアーロン達と情報共有した。
アーロン達は町中で依頼をこなして一旦知り合いを増やす事にしたらしい。
普通に依頼をこなしたそうだ。
依頼の中には人を捕まえたりやっつけたりするものもあったらしく、
結構疲れたとの事。
しかし賃金はアイアン時代よりも良かったそうだ。
「俺達にも猟犬が居れば楽だったかもな。」
とカールがボヤく。
どうやら捕まえる人を探すのに時間が掛かったらしい。
「ウチのワンコを一日か半日単位で雇うか?」
と俺は牛さんの大腿骨をバリバリかじっているスイの頭をなでながら言う。
「本当に困ったときは雇ってもいいですか?」
とアーロンが大真面目な顔で言う。
『ヒロが良ければいいよ。』
と言う感じでスイの許しも出た。
それに対しエンは話を聞いていなさそう。
「隊長はどうでした?」
ブレッド。
「俺は普通に平原まで行って狩りをしてきた。」
どんな魔物が居たのかとか馬の魔物の事とかを伝えた。
「へー、随分狂暴なのが居るんですね。」
「どれも肉食の奴以外は害さえ加えなければ大人しいからそこまで危険じゃないっぽいぞ。」
「なるほど。」
「それと牛の魔物の皮を鍛冶屋に渡してきたから、それで防具作っていいぞ。」
「え?良いんですか?」
「ああ、俺は別に防具とかいらん。」
「そうですか。」
「デザインとか個別に決められるらしいから行ってみると良い。」
「わかりました。」
その後は情報共有もほどほどにして雑談に花を咲かせる。
「大通りにもチラホラ怪しい輩を見かけるけどスリか?」
とカールが言う。
「そうだぞ。」
俺。
「ヴェスバルトの事件もあったし、攫いやすそうな旅人の物色でもしてるのかもな。」
ブレッド。
「うぇ!おっかねぇな。」
カール。
「健康な男好きの変態貴族が居たらお前たちも攫われちゃうかもな?」
俺。
「こわいこと言わんでくださいよ。」
と笑いながら言うアーロン。
「幼い男好きは結構いるみたいだけど成人男性好きは珍しいのか?」
俺。
「知らないっすよそんなの。」
とカールも笑いながら言う。
「裏社会の奴らにはそう言うのが好きな連中が多いってグレゴリー辺りから聞いた事あるぞ。」
ディーン。
「まじかよ。」
アーロン。
「穴がありゃなんでもいい連中って事か?」
俺。
などなどくだらない話をして部屋に戻る。
部屋に戻るとマントに包まった卵を確認。
元気そうだ。
今日も抱えながら魔力をバンバン流しまくりながら寝た。
元気になーれと念じながら寝た。
王都のとある場所とある部屋にて。
「公爵閣下!王女殿下がご帰還なされたと言う話は真ですか?!」
と豪華な貴族風の男が二人薄暗い部屋で話をしている。
その男たちの脇には裸同然の恰好で首輪と鎖をつけた女性が彼らの腕や足や体をマッサージさせられている。
「ああ、国王と王城の廊下を歩いている時に丁度目の前に現れてこの目で確認した。」
「間違いない。」
「暗殺に失敗したというのは団長殿の気休めの言葉だったのでは?」
「そう思っていたが・・・」
「暗殺計画は入念に準備したのだ。失敗するような杜撰な計画では無かったはずだ。」
「国王やあの団長を王都から一時的に離し、苦労して護衛を減らしてくれたのはお前だったな?」
「ええその通りでございます。色々と足が付かな用にするのに苦労はしましたが。」
「王女暗殺の犯人をエルフ共の犯行に仕立て上げる計画だったが・・・」
「一体何があったのですか?」
と恐る恐る公爵に質問する貴族風の男。
「何やら王女殿下が内密に護衛を雇っていたそうだ。」
「なっ!!万全を期して精鋭を送り込んだはず。」
「あの小娘にそのような戦力を雇う資金力があったのですか?」
「わからん、あの無気力だった王女にそんな資金力があるとは思えなかった。」
「しかも誰にも気づかれずにそのような手練れを雇うなど・・・」
「国王や団長も知らない様子だった。」
「それに当時ヴェスバルトに送り込んであった手下からはなんの情報もなかった。」
「王女と王女の護衛の件は不自然ですね。」
「それにヴェスバルトの一件もかなりの痛手でしたね。」
「ああ、あと一歩で西方を完全掌握できると言う所で根こそぎ逮捕されるとは・・・。」
「その護衛の事、調べた方がよさそうですね。」
「東方の鬼人族の様な風貌だった服装は完全にこの王国の物だった。」
「鬼人族と言えば。」
「ああ、アレも言っていたが、よっぽどの理由が無ければわざわざ鬼人族が王都まで来るとは思えないそうだ。」
「では鬼人族に似ているだけの人間だと?」
「しっかり調べる必要があるだろうな。」
「わたくしの方で調査してみます。」
「私は暗殺失敗によって狂った例の計画を修正する。」
「はぁ、教会も相当荒れているらしい。」
「色々と忙しくなりそうでございますね。」
「そうだな。」
と言ってワインを一気に飲み干す。
「まあ今夜はソレを楽しんで発散していけ。」
と不気味な表情で女を眺め始める男達。
もちろん女性たちに拒否権は無い。
「はっ、感謝いたします。」
その後、二人の男達はそれぞれ別の部屋に恐怖で顔を歪ませた女性を連れて行った。
この部屋に残ったのは女性たちの悲鳴とうめき声だけ、
彼女らが部屋を出る頃には体の中から外までボロボロで明らかに家畜以下の扱いを受けていた。
そんな扱いを受けて居れば数日と経たずに死んでしまうが相手は大貴族だ。
気に入った女はわざわざ高価な薬で回復し延命させてより長く楽しむのだ。
通常の人間ならばいくら薬を使っていてもいずれ死んでしまうのだ。
部屋から出てきた二人の男は再び向かい合う。
「本来なら、今頃はエルフの女を手籠めに出来ていたというのに。」
葉巻?を吸いながら男がボヤく。
「人間はそれほど長持ちしないが。エルフは人間よりも頑丈だと聞いた。」
「計画は修正される。いずれはエルフも手に入るだろう。」
「それまで楽しみにしていろ。」
エルフや獣人、鬼人族ならば人間よりはるかに頑丈で見た目も良い。
この貴族らが使うには都合の良い種族なのだ。
ただ、彼らの目はすでに欲にまみれて濁っていた。
他種族との交流を断って数百年経った事で、人間と他種族の種族的な強さの違いを失念していた。
いや、頭では理解しているつもりなのだろうが、完全に他種族との力の差を甘く見ていた。
二人の男は終始邪悪な笑みを浮かべて笑っていた。
彼らの魂は完全に穢れ切っていた。
少し遡り当日の夕方ごろ王都王城の一室にて。
ジュリエットは城に帰還して数日たった。
「はぁ・・・」
窓の外を眺めながらため息をつく。
彼女はすでに憂鬱だった。
ついこの間までは常に誰かが一緒に居てくれて何時も楽し気な会話を繰り広げていた。
しかしここでは気軽に話しかけてくれる人はほとんどいない。
父からは愛情こそ感じるがそれは友人や仲間のそれとは違うし、
メイドも話しかければ返事を返すだけ、
貴族やその子女らは私を使って王に取り入ろうとしているだけ。
王城に戻って数日たつが私ってこんなに人付き合い下手だっけ?
今では『それら』と『本当の仲間』との違いをはっきりと感じる。
王都に来るまでは、王女なんて身分を捨てて彼らと共に生きようとすら考えていた。
しかし王女に戻る事を選んだ。
彼らの前で恰好を付けたかったというのもあるが、教会やヴェスバルトの実情を見てしまったからだ。
あのような惨状は絶対に止めるべきだ。
わかっていたつもりだったが完全に甘く見ていた。
しかもあのような事が王国の各地で行われていると考えられるのだ。
王族として知らなかったでは済まされない。
気を引き締めてこれからどうするかを考える。
まずは信頼できる味方を探そう。
おそらくアーサー団長やヴェスバルト伯爵は信頼できると思う。
しかし現在わかる事はそれだけ。
それ以外は今の所、敵認定していいだろう。
それに父や公爵も本当に信頼していいか分からない。
私に出来る範囲で調べてみる事にする。
そんな事を考えながら鏡台の前に座り宝物を取り出す。
それは彼からもらった大切な手鏡だ。
何気なくくれたものだが、今では大切な思い出となっている。
この手鏡に元気をもらいまた明日も頑張ろうと決意する。
次の日の朝
卵はまた昨日よりも元気になった。
早朝の訓練をして朝食を取った後。
馬が来た。
正確には立派な黒鹿毛の馬に乗ったアーサー団長だ。
「おはようございます。」
俺は少し驚いたがどうにか挨拶。
「おはよう。」
「私の前ではあまり堅苦しくなくていいぞ。」
「はっ、招致いたしました。」
「今日は王城に来てもらうぞ。」
「何か私に御用で?」
「ただ少し話を聞きたいだけだ。」
「堅苦しい物ではなくその場にいるのは私と王女殿下だけだ。」
「招致いたしました。」
「さあ、馬の準備をして出発だ。」
って事でユキに鞍を付けて王城に向かう。
今日もマントは卵をくるんでいるのでマント無し。
今回はどうやら双子も連れてっていいそうだ。
「良い馬だな。」
お世辞で会話を試みる団長さん。
「ありがとうございます。」
「人見知りして暴れるタイプなのであまり近寄らないでくださいね。」
と一応釘を刺しておく。
「ジュリエット殿下から伺っている。」
「軍馬か?」
とユキを眺める団長さん。
「一応それっぽく訓練はしてます。」
「人も魔物も恐れぬ勇敢な馬のようだな。」
人も魔物も食い殺す怪物です。と言うセリフは飲み込んだ。
「確かアーサー団長は騎兵隊の隊長ですよね?」
「そうだ。」
「ではそちらの馬も軍馬ですか?」
「ああ、長い事一緒に居たがもう若くないのだ。」
「最近はもっぱら王都内を乗り回す程度だな。」
「と言う事は新たな相棒をお探しで?」
「そうだな。そろそろ若くて元気な馬も見つけておかなければなるまい。」
「そう言えば、おすすめの馬具店などありますか?」
「ああ貴族区の外にあるぞ、後で詳細な場所を教えよう。」
「ありがとうございます。」
「馬具の新調か?」
「いえ、新たに馬を調教しようかと思っていたのです。」
「ほう?どのような馬だ?」
「平原に居る野生の馬です。」
「はっはっは、アレを調教しようとはなんと豪胆な!!」
と笑われてしまった。
「意外と、筋力と優しさでどうにかなりそうですよ。」
「真か?」
「はい、頭がいいので色々と覚えがいいです。」
「そうか・・・」
「もしよければその現場に同行してもいいだろうか?」
よっぽど気になった様子だ。
「構いませんが危険かもしれませんよ?」
一応魔物だし肉も平気で食らう馬だし。
「はっはっは!そのような忠告をされたのは久方ぶりだぞ。」
とまたもや爆笑。
そう言えば王国最強なんだっけ?
「失礼、愚問でしたね。」
「気にするな、悪気の無い忠告は潔く受け取っておくよ。」
とそんな話をしているうちに王城に到着。
ユキを厩舎に預けて城に向かう。
しっかりと大人しくするようにと忠告しておいた。
魂が穢れていると魔力も闇や邪に染まっていきます。
魂が綺麗だと魔力は光や聖に染まっていきます。
公爵閣下と主人公が会った時、
何やら沢山の魔道具の影響で彼の魔力を感知できなかったので、
彼の穢れも感知できなかったのです。




