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54 そろそろ行こうかな?

旅立ちの時は近いです。

 引っ越しをしてから数日後。

チームのメンバーは別にどうでもいいが、

ケイト達4人のメイドさんはかなり手際が良く、とても働き者だ。

もちろん休みも与えてるが特にする事が無いらしいので、

俺とベルがこっそり魔法を教えてる。

元々綺麗な魂だったので、回復魔法はすぐに使えるようになってた。

まあ普通に考えてあり得ないほど習得が早かったのだが・・・なぜ?

「っ!!!」

魔法が使えた時は声にならないほど驚いていた。

「魔法ってこんなに簡単に使えるんですか!?」

ケイト達は超びっくり仰天している。

そんな簡単には行かない筈なんだけどね?

「貴族さんは何故か魔法陣と詠唱と杖にこだわっている。」

「なぜかは本当にわからないけど。」

「だから絶対にバレない様にしろよ?」

この辺は本当に注意してほしい。

「あっ、ソレ知ってるわよ。」

とベルが説明してくれる。

「魔法は貴族が貴族たる所以だそうよ。」

「そうなの?」

「貴族がなぜ特別かと言うと魔法が使える選ばれた人間だから、とか言ってたわよ。」

「だから魔法が使える人間は貴族の血が混じってる事にされて連れていかれてしまうのよ。」

「連れていかれた後は?」

「殺されるか、無理やり養子とか部下とかにされて使いつぶされるかのいずれかね。」

貴族ってこわいね。

「って事らしいから決して人前で使わない様にしろよ?」

俺が改めて言うと四人共うんうんと頷く。

「まあこの町の領主ならひどい事はしないと思うけどな。」

俺。

「確かにヴェスバルト伯爵なら悪いようにはしないと思うわ。」

ベルも同意する。

皆その認識だし、貴族以外使えないと言う印象なので市民は誰もうらやましいとか思わないそうだ。

それこそ一般人は魔法で何が出来るかもよく解っていないレベルの知識らしい。

おとぎ話の様な感じだ。

しかし神の国で聞いた情報と少し違う様だ。

「誰でも使えるけど魔法を学ぶのに金が掛かりすぎるって感じじゃないのか?」

俺。

「あー、それは一昔前の感覚ね。」

とベルが説明をしてくれるらしい。

「そうなのか。」

「そう、この王国は一昔前までは高価で意味不明な魔法書を買って、

 超高い金払って魔法使いに師事する事で魔法が使えるって感覚だったわよ。」

「でも2~3百年前からだんだん貴族だけの特別な力だと主張し始めたわね。」

「おまけに属性を細分化するとか言う意味不明な事をしてるし。」

「そう言えば、他種族への差別が広まりだした頃と時期は近いわね?」

「そうかだったのか。」

さては魔法独占開始の時期と差別開始の時期が被るのは偶然じゃないな?

因みに属性の細分化って火属性とか水属性とかって感じに魔法を分ける事だそうだ。

とそんな話をしつつ日常を過ごす。

もちろん訓練も依頼もこなしている。

あと訓練に関してフューリー支部長に見てもらえることになった。

朝はほぼ毎日で定期的にやっている訓練もたまーに来てくれるらしい。

引っ越してからはグレゴリーがチームのリーダをする様になった。

特に問題もなさそうだし困ったら周りの人を頼るように言ってあるのでもう大丈夫だと思う。

因みに我々のチームは現在総勢50人なんて軽く超えている。

今までのようにチームを細かく分けて管理する方法を教えてあるので人数が増えても問題ないだろう。

グレゴリーは立派なリーダになったのだ。

それで今日は鍛冶屋に向かう。


鍛冶屋。

「こんにちは。」

いつもの店員さんに挨拶する。

「お!来た来た!!」

「こんちわ!修理出来てますよん!」

やたらテンションが高いがいつも普段通りだ。

そう言って裏から俺の大斧を持ち出してカウンターに置く。

「特別な素材を使った修理と刃の部分の手入れをしておきました。」

「ありがとうございます。」

お礼を言いつつ持ってみる。

「アホみたいに頑丈な材料だったので加工が大変でしたよ。」

と苦笑いしながら言う。

持った感じからして前のとは全く違う。

「棒状に加工するのも一苦労でした。」

「あんな魔物良く倒せましたね?」

あの魔物は確かユキが倒しいたからどう倒したのか分からない。

「どうやったんだっけ?」

分らんのですっとぼけておく。

「まあともかく、少し振ってみて問題無ければそのまま持ってってください!」

って事で店にある広い空間で少し振ってみる。

ブン!

ブン!

「問題なさそうです」

少々重くなった感じがするが全く問題ない。

「まあ後日気付いた事があればまたご相談くださいね!」

「わかりました。」

そんな話をしていると。

「おう!問題なさそうだな!」

そう言いながら奥の部屋から厳ついおっちゃんが出てきた。

「親方!」

鍛冶屋の親方さんらしい。

普段は店員さんに色々聞いたり頼んだりするので親方さんに会うのは初めてだ。

「親方さん?初めましてハンターのヒロです。」

「巷で噂の死神だな?」

「いえ、ただの人間です。」

俺は苦笑いをしつつ返事をする。

「はっはっは!確かに人間にしか見えねぇや!」

豪快に笑いつつそんな事を言う親方さん。

「いやいや、お前さんに一言言ってやりたくてな。」

「なんですか?」

親方さんは改まって俺を見る。

「安物をいつまで使ってもいいが武器は命を預けると言っても過言ではない代物だ。」

「金に余裕があるんだったら、もっといい武器を使う事を進めるぞ。」

なるほど、薙刀が見つかるまでのつなぎのつもりだったが鍛冶師的には気になる点だったらしい。

なんせ安物どころか家畜を〆たり解体するための斧だしそう思われても仕方ない。

「そうしたいのは山々なんですが、俺が使いたい武器が無くてですね。」

俺がそう言うと親方さんは俺を観察し始める。

「なるほどそう言う事か。」

「お前の目的の物は現地でしか手に入らないだろうな。」

俺や刀を見て東方の種族か何かと思ったらしい。

「よっぽどの物好きじゃなければその武器は使わん。」

「よってどこも販売してないし、もし販売していたとしても輸送費の関係で超高額だろうな。」

「そうですか・・・」

何となくわかってはいたけどガッカリしてしまう。

「やはり現地にて購入するしかないだろうな。」

ただ、この王国で薙刀は買えないとわかっただけでも収穫だ。

「まあメインは刀と弓ですし、使えるだけ使いますよ。」

「そうか、余計な口出しして悪かったな。」

「いえ、ごもっともなご指摘ではありますし、ご忠告ありがとうございます。」

って事で俺の大斧は修復&若干強化されて戻ってきた。

やっぱり薙刀は手に入らなさそうなのでしばらくこの斧には世話になりそうだ。

武器も戻ってきたしグレゴリー達の今後も問題なさそうなので、

そろそろ王都に行こうと思う。

この日の夜、家の広い食堂にて。


「そろそろ王都に向かおうと思う。」

俺は食後にアンナ、アーロン、グレゴリー、ケイトなどのメンバーに言う。

「我々が居なくとも問題なさそうですしね。」

アーロン。

「寂しくなりますね。」

グレゴリー。

「悪い噂を聞いたらすぐにでもすっ飛んでくるからな?」

俺。

「もうしませんって。」

グレゴリーは笑いながら言う。

「教会のフランクとも仲良くしとけよ?」

俺。

「あ、そう言えばフランクさんって司祭から司教に昇叙(昇格)したとか?」

アンナ。

「あー、そう言えばそんな事言ってたな。」

俺。

「今は貴族区に行ってしまって、こっちの教会ではブリッツさんが司祭をしているとか?」

アンナ。

「そうか、ならフランクとなかなか会え無くなっちゃったのか?」

俺。

「フランクさんは前の枢機卿と違って良く顔を出しているそうですよ?」

「そうなのか、ならタイミングが良ければ会えそうだな。」

「王都へ出発前にお会いになるんですか?」

「領主様と大司教様と支部長様にはしっかり挨拶してから出るよ。」

そんな話をしているとケイトが口を挟む。

「隊長さんはそんなに顔が広いんですか?」

驚いたケイトが言う。

「言われてみれば俺も顔が広くなったよな?」

俺。

「支部長様はハンターをやっていればいずれ会う事になったでしょうし、

 大司教様はたまたま知り合いが出世しただけですし、領主様に関してはたまたまですよね?」

アンナがまとめる。

「確かに全部たまたまだな。」

「まあとにかく、明日にでも挨拶してくるよ。」

「グレゴリーは顔つなぎのためについてこい。」

「アンナもだ。」

「わかりました。」

「了解です。」

その後真面目な話も終わりにして楽しく談笑した。

何やらグレゴリーとケイトは仲が良さそうだった。


次の日

三人と二匹と一頭で馬車に乗りあいさつ回りをする。

まずは朝一で領主の元に行きアポを取る。

アポの取りのつもりが運よく会えた。

「おはようございます。」

「「おはようございます」」

俺に続いて二人も挨拶する。

「うむ、久しぶりだな。」

領主のダニエルさんは機嫌が良さそうだ。

「ヒロ殿には伝えてなかったが晴れて伯爵に陞爵したぞ。」

なるほど、だから機嫌がいいのか。

「おめでとうございます。」

「ありがとう。」

「ほとんどお前のおかげだがな。」

「いえいえ、何の事だかさっぱり?」

一応知らんぷりしておく。

「はっはっは、別に今は隠さなくてもいいだろ?」

「少し暴れすぎたので最近は大人しくしてますよ。」

「そのようだな。家はどうだった?」

「良い立地で中も広かったのでとても気に入っています。」

「場所と広さは一番いい家だったのだが、荒れ放題で気に入らないかもと思たってたが。」

「気に入ってくれてよかった。」

「それで本題なのですが、そろそろ旅立とうと思います。」

「わかった。ではこれをアーサーという男に渡してほしい。」

そう言ってダニエルさんは封筒に入った手紙を俺に渡す。

その際チラッとアンナの方を見た。

「アーサーが誰かは王都に行けばわかるだろう。」

「わかりました。」

そう言いながら両手で丁寧に受け取る。

「ただの古い友人だ。」

って事は貴族かな?

「ではくれぐれも無事に王都まで行ける事を願っているよ。」

やはりダニエルさんはアンナの方をチラッと見つつ言う。

「責任をもって安全に送り届けます。」

手紙の事ともアンナの事ともとれる言い方をしてみた。

そしてグレゴリーの事を紹介してから領主館を後にした。


貴族区にある教会に向かう途中。

次はフランクに挨拶する。

「フランクの所もアポ必要だったか?」

俺。

「大司教様ともなればお忙しいでしょうし、会え無いかもしれませんね。」

アンナ。

「まあそうなったら誰かに伝言しておくしかないな。」

俺。

到着して教会の中に入る。

「こんにちは。」

教会内を歩く女性に適当に声をかける。

「こんにちは。」

何か見たことあると思ったら多分この人フランクのお母さんだ。

「アポは取ってないんですが。フランク神父とお会い出来ますか?」

出世したらしいので会うのは難しいはず。

「確かハンターのヒロさん?ですよね?」

お母さんは俺の事を覚えていた様だ。

自己紹介はしてないがおそらく後で聞いたんだろう。

「そうですハンターのヒロです。」

「しばらくお会いできなくなるのでその前にご挨拶に伺いました。」

俺。

「あら、そうなんですね!」

「すぐ呼んでまいりますので少々お待ちください。」

そう言って奥に歩いていくフランクのお母さん。

確か彼女自身優秀だけど女性だからってだけで出世できないんだっけ?

少し待つとフランクがニッコニコ笑顔で歩いて来る。

「おお!ヒロさん!お久しぶりです!!」

握手をしつつそんな事を言う。

「お久しぶりです。遅れ馳せながら昇叙おめでとうございます。」

久しぶりに会ったのでようやく言えた。

「お話は領主様から聞きました。」

「色々とありがとうござます。」

とフランクは話を濁しながらお礼を言ってくる。

領主のダニエルさんに口止めでもされてるんだろう。

「それにしても大出世ですよね?」

色々気になるので質問してみる。

「ええ、王都の教会から誰かが送られて来ると思ったのですが・・・」

「とあるお方の口添えで私が大抜擢されてしまいました。」

と申し訳なさそうに言う。

「とあるお方?」

「はい、王都の教会の偉いお方です。」

うーん?

ひょっとしてクラーレンか?

「所で枢機卿が捕まったのでてっきりフランク神父が枢機卿になると思ったのですが。」

「ちがうんですね?」

俺。

「それはですね。枢機卿と大司教は選出方法が違うんですよ。」

「なので大司教の席に着いたからと言って枢機卿になれるわけでは無いんですよ。」

「へー、そうなんですね!」

「はい、なので今ごろ王都では枢機卿を選出する準備をしているはずです。」

「選出する準備ですか?」

「そうです。司教や大司教によって選出されるので準備が大変なんですよ。」

いまいちピンと来ないが今は置いておく。

「とは言っても今はまだ、これからやるかも?って情報が届いただけですけどね。」

「そうか、色々忙しそうですね。」

「確かに、愚痴の一つも言いたくなってしまいますね。」

とフランクさんは苦笑い。

「で!報告なんだけど、俺と一部のメンバーで王都に行きます。」

「王都を拠点にするのでしばらくは戻ってこれないと思います。」

「残ったチームのリーダーはこのグレゴリーに任せる事になります。」

「そのお知らせです。」

「そう言えば一時的に滞在しているだけと言ってましたね。」

事前にふわっとだが伝えてあったのだ。

「ええ、いざとなればこのグレゴリーを頼ってください。」

「わかりました。ですがグレゴリーさんもいざとなれば私を頼ってくださいね?」

とフランクは暖かい言葉をかけてくれる。

「はい!お任せください!」

グレゴリーは泣きそうな顔でしかし嬉しそうに返事をする。

彼が元々罪人で町のチンピラだったのはフランクも知っている、

それでもこういう風に言ってくれるのは信頼しているからだろうし、

その信頼は彼自身の努力の賜物だろう。

その後は忙しいフランク大司教の時間が許す限り他愛もない話をした。

でハンター協会に向かう。

すでにある程度伝えてあるので改めて言う事は無いんだけどね?


ハンター協会にて。

「そうか、王都に行ってしまうのか。」

「訓練相手の事でしたら、すぐにグレゴリー達が強くなりますよ。」

「そうか!ならいいか!」

と暗い雰囲気から一転笑顔になる支部長様。

随分と軽いなとか思ったら、

「とまあ冗談はさておき、若いんだし色々な場所を見てみると良い。」

とまた雰囲気が一転し真面目な雰囲気に。

「そうですね。時間があれば王国の各地に行ってみたいと思います。」

「それがいい。」

「で?お前の後釜がそこのグレゴリーか?」

「そうです。今後ともコイツ等をよろしくお願いします。」

「なるほど、俺を訓練に誘ったのはそのためか?」

「はい。彼らをビシバシ鍛えてやってください。」

すると支部長の目がギラリと光りグレゴリーを捕らえる。

「元ハンターの血がたぎるな。」

とまた冗談っぽく怖い顔で言う。

「ひとまずの目標はゴールドクラスという事で。」

俺。

「わかりました!頑張ります!」

とグレゴリーは真面目に答える。

「ふん!弱音を吐く暇も与えんぞ!」

って感じで支部長様はやる気満々の様だ。

これで一先ずグレゴリーの顔つなぎは問題ないだろう。

まあ普段からよく顔を合わせているので特に新情報もなく、

その後は、やれ息子が出世しただの、妻がどうだのと他愛もない話をした。

ともかくあいさつ回りを終えて家に戻りに荷造りをする。

王都までは結構かかるらしいので水や食料にテントなど一通り用意する。

馬車は広めの幌馬車で馬車の中でも寝れるように布で前後を塞げるようになっている。

数日かかるらしいので明日の昼にでも出ようかと思う。

その日の夜は皆少しだけ寂しそうだった。

貴族と魔法の件は若干無理がありそうな話ですが、書いてある通りです。

貴族は特権でも何でもない「魔法」を特権にしているのです。

一応捕捉しておくと何もせずに情報ゼロの人間が魔法を習得できる可能性はゼロに近いです。

そして誰かに師事したとしても使えるようになるのは月単位か下手をすると年単位で時間が掛かります。

王族であるはずのアンナが初対面時において魔法を使えなかったのはこれらの事が原因です。

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