51 悪いことをしたらダメですよ。
久しぶりの投稿です。
誤字脱字や意味の分からない部分があればご指摘下さい。
枢機卿の館から証拠を確保した。
攫われた人達の大半を救助することが出来た。
館内の事件に関わっていた使用人も一緒に逮捕した。
ここにも攫われた後亡くなってしまった者達がいる様だ。
デブリオの時の様に庭を探しても埋めたような痕跡は無かった。
スイとエンも分からないらしい。
「ミンチにしてスライムに食わせたのか?」
そんな事をつぶやいてみる。
「いや・・・」
「こいつは教会の幹部だ。」
「もしかしたら教会の墓地に埋めたのかもしれない。」
先ほどは庭のど真ん中に不自然に人を埋めたせいでスイとエンが匂いを探し出したが。
教会の墓地となると様々な人が行き来している上に沢山の人が埋まっている。
「という事はどこに埋まっているか分からないですか?」
「教会は名前の分からない遺体はまとめて埋葬してしまうんだ。」
貴族区内には貴族用の墓地があるらしい。
今回の被害者達はおそらく貴族区外の教会にある墓地か町の外周部にある広い墓地だろう。
「名もない墓なんて山ほどある。」
「探し出すのはもう不可能だ。」
別の所に売られてしまった被害者は可能な限り調べて追跡して探すらしい。
遺体が見つからない人たちに関してはやむ負えずあきらめる事にした。
兵隊さんに証拠とバルボンドを輸送してもらう。
なんだかんだで昼を過ぎ夕方近い。
「今日は助かった。ありがとう。」
ダニエルさんは丁寧にお礼を言ってくれる。
「いえいえ、彼らを無事に逮捕出来てよかったです。」
実は枢機卿の家から証拠が出なかった場合、逮捕出来るか怪しかったそうだ。
失敗すればカウンターパンチを食らう危険性もあったとの事。
危ない危ない。
「あと数件手伝って欲しい所がある。」
「次は貴族区の外なので、もしよかったらヒロ殿の仲間にも手伝って欲しいのだが。」
「よろしいかな?」
「荒事ですか?」
「そうだ。」
「わかりました、荒事に慣れているのを何人か連れてきます。」
「明日また領主様の館に伺えばいいですか?」
「いや明日早朝、ハンター協会に部下を送るのでその者と共に来てくれ。」
「招致いたしました。では私はこれにて失礼いたします。」
「うむ、改めて今日はご苦労だった。」
で領主のダニエルさんと別れて宿に戻る。
宿に到着。
「戻ったぞ。」
宿の食堂で皆がたむろっていた。
「おかえりなさい。」
アンナが真っ先に声をかけてくれる。
「今日は特に問題なく終わった。」
「待機しててくれてありがとう。」
今日、皆はただ待っているだけになってしまった。
相当暇な一日になっただろう。
「こいつ等が暇すぎて歌い出すほどでしたよ。」
アーロンが愚痴る。
「領主様が明日はもう何人か手伝って欲しいと言っていた。」
「グレゴリーとあと何人かで手伝ってもらえるか?」
「了解です!」
「二班くらいですか?」
「ああ、来たかったらグレゴリーの部下全員来てもいいぞ。」
「了解です。」
「アンナとアーロン達は依頼をこなしてもいいし教会に行って子供たちと遊んでてもいいぞ。」
フランクさんの様子が気になるのでぜひそっちに行ってもらいたい。
それにあそこの教会なら安全だろう。
「そうですね。久しぶりにフランクさんの所に顔を出そうかと思います。」
アンナ。
「俺たちも教会に顔を出してみます。」
アーロン達も教会に行く様だ。
所でデブリオ男爵とバルボンド枢機卿を捕まえた事ってこいつらに伝えていいのかな?
分からないので一応伏せて置こうか。
「じゃあ少し遅れたが北の村での依頼成功を祝して少し豪華な晩飯にしようか?」
俺が皆に聞いてみると、
「やったー!」とか「うおー!」とか楽しそうに叫んでいる。
「明日に支障が出ない程度には酒飲んでもいいぞ。」
さらに歓声が沸く。
「久しぶりの酒だー!」
と一部の酒好きが大喜びだ。
久しぶりって事は昨日とか一昨日とかは飲んでないのかな?
俺は料理が得意なやつらと共に台所へ、他は酒などの買い出しに行かせる。
料理は宿のおばちゃんやピリンちゃんも手伝ってくれた。
そしていつもより豪華な晩御飯が出来上がった。
もちろんポリンちゃんも宿屋のおっちゃんも参加だ。
北の村での依頼の報酬も十分とれたし、
何より150人の粗暴な団体客様からのお布施があったのだ。
村長と話し合ったがそのお布施は全部俺達がもらう事になったのだ。
俺達が対処した団体客なので俺達が全部もらうのは当たり前だって事だ。
いつもよりも騒がしく食事をする。
「やっぱり隊長は酒飲まないんですか?」
グレゴリーが質問してくる。
「ああ、飲めないわけじゃないが苦手なんだ。」
「そうですか・・・」
俺がそう言うとグレゴリーがしょんぼりしてしまった。
俺はアーロンを引っ張ってきて突き出す。
「酒の相手はコイツでいいだろ?」
そんな事を言ってみるとグレゴリーは少し元気になった。
「それに、飲まなくても楽しめるだろう?」
アーロンとグレゴリーとシラフの俺で料理と会話を楽しんだ。
夜寝る直前。
俺は枢機卿の自宅で見た三つの単語の事を考えつつベッドに寝転ぶ。
『遠征』『暗殺』『姫』
最初はアンナの事かと思ったが、アンナは貴族の令嬢だと言っていた。
姫ってアンナと何か関わりがあるのか?
そもそもの話だがアンナが暗殺者に襲われて行方不明になってから、
この町で特に騒ぎになっていない。
アンナがもしも仮に姫だったのなら大騒ぎになっているはず?
逆に木っ端貴族だったと考えるとこの町で騒ぎになってないのも変ではない。
世知辛いが世間の認識なんてそんなもんかと納得できる。
じゃあこれから実行しようとした計画か?
アンナは王都の貴族らしいから聞けば多少の情報は得られるかもしれないが、
その三つの単語は多分領主様が隠したがっている様子だった。
仲間のアンナとはいえ伝えてもいい情報ではないだろう。
それにアンナを暗殺しようとした輩は人さらいでは無かったと思う。
装備もアンナを襲った奴らと昨日の連中では違ったし。
結局答えが出ないまま、もやもやしたまま寝た。
次日の朝
俺とグレゴリー達でハンター協会に向かう。
総勢25人程度つまりグレゴリーの部下が全員来た。
よっぽど暇だったようだ。
ユキとスイとエンも一緒だ。
待っていると俺の名前をでっかい声で呼ぶ領主の部下さんが来た。
しかもダニエル・フォン・ヴェスバルト子爵の名代だ!とか言ってくれたもんだ。
協会職員や周囲のハンター数人が『え?』みたいな顔で俺を見る。
別に悪いことをしたわけじゃありませよ?
そんな表情を必死で作る。
気まずいのでさっさと名乗り出てダニエルさんの元に向かう。
そして向かったのはダニエルさんの館ではなく貴族区の外にも存在する役所的な施設。
そこにはダニエルさんと兵隊さんが沢山いた。
「おはようございます。」
俺がそう言うとみんなが続く。
「「「おはようございます。」」」
「おはよう。」
ダニエルさんも返事をしてくれる。
「今日は裏社会の連中を逮捕する。」
「わかりました。」
という事で領主様の兵隊は2部隊に分かれて対処に向かうそうだ。
グレゴリー等15人とスイ、他メンバー10人と俺とユキとエン。
この2チームに分かれて向かう事にした。
今回はさすがに領主様は付いてこないらしい。
この役所的な施設で指揮をとるとの事だ。
早速行動開始する。
「相手は巧妙に証拠を隠している可能性がある。」
「なので困ったら助っ人のハンターを頼るように。」
とダニエルさんが部下に伝えてる。
昨日の活躍で俺と双子の有用性を理解したから今日も俺達を呼んだらしい。
なるほどね?
敵の拠点は大きな館だけではなく裏町の何区画かをまとめて拠点にしている。
地主がボスでその土地に部下やその家族が沢山住んでいると言う感じらしい。
敵の拠点に行きご挨拶をする。
「こんにちは!領主様の命により逮捕しに来ました!」
そう宣言する。
俺が。
何故って?そう言う作戦だと言われたからだ。
そしていきり立つ敵さん。
ギャングとかマフィアっぽい輩だ。
堂々と正面から行くのは俺達で他は区画を丸ごと囲い込み退路を断つというわけだ。
なので領主の部下さんも沢山来ている。
俺のやる事はボスさんの土地の中心にあるボスの家に訪問する。
ボスを怒らせ構成員を怒らせる。
そして俺達と兵隊さんが暴れる。
囲んでいる別の兵隊さんが構成員を逃がさない様にブロックと言う具合だ。
相手の数は多いが一般人に毛が生えた様な輩だ。
たいして苦労することなく全員を逮捕出来た。
本当に俺達いらなくね?
と思ったがうちの面子が結構活躍している。
その後も居ても居なくても変わらない様な作業を何か所かで行った。
そして売られた人たちを助ける事が出来た。
あとスイとエンは人探しでも活躍した。
役所にて
「大活躍だったそうだな!」
ダニエルさんだ。
「いえいえ、この程度なら我々の力は必要なかったのでは?」
「この前のようなイレギュラーが有るかもしれないからな。」
「油断は禁物って事だ。」
「なるほど、冷静な判断ですね。」
「これでも領主だからな。」
そう言う事らしい。
「この後は我々で何とかなる。」
「今回の件が一段落したらこちらから報告をさせてもらう。」
「改めて礼を言う。ありがとう。」
「いえいえ、また何かあれば呼んでください。」
そうして宿に帰った。
色々あったが一軒落着だ。
後はダニエルさんが処理するそうだ。
皆が帰宅して晩飯を食べる。
宿の食堂にて。
アンナに教会の事を聞いてみた。
「教会に行って来ました。なぜかは分かりませんが忙しい様子でしたね。」
「おかげさまで一日中子供たちのお世話をする羽目になりましたよ。」
アンナは『お前何か知ってんだろ?』って顔で言う。
「まあ色々あったからな、教会も領主さんも大忙しだ。」
「詳細は多分言えないけどな。」
俺。
「多分?」
アンナ。
「そのうち発表があるだろうからそれまでお預けだな。」
アンナは少しいじけた。
いじけたアンナを多少甘やかしてから部屋に戻った。
ともかく今回の一件が上手く収束してくれれば一旦この町は安全という事になり。
仲間たちの安全もある程度確保されたわけだ。
しかし今回、危ない場面が多数あった。
この前アンナにも小言を言われたが、せめて仲間達にはある程度作戦を伝えておくべきとか、
言われたし。
そもそもこの町の領主が信用出来るか分らないのに色々行動を起こしてしまった事もあるし。
最悪の場合、証拠をすべて消され、犯人が全員まとめて無罪放免になったかもしれないのだ。
ではどうすればよかった?
事前にアンナ達に相談すればよかった?
そもそもの話だが。
ニンブルと言う男が教会との関わりをゲロった時点で俺が解決しなければならない問題になった。
その事に関してはアンナもチームの仲間たちも関係ない。
俺が神に命じられた任務だから。
一人でやった方が簡単で確実だと思った。
それなのに結局、当時信用出来るか分からなかった領主を頼り、
ハンター協会を頼り、仲間たちに頼る事になった。
考えなしにもほどがある。
計画も作戦もない行き当たりバッタリの出たとこ勝負が過ぎる。
かといって神の事はアンナやアーロン達、グレゴリー達には言えない。
言っても頭がおかしいと思われるだけだ。
今回の自分が立てた、しっちゃかめっちゃかな作戦を見て改めて思った。
仲間が必要だ、やっぱり王都に居るクラーレンと言う男と協力した方がいい。
アーロン達が信用出来ないわけではないがそこまで巻き込むつもりはない。
さもなくば俺はただ悪人と思われる連中をひたすら殺し回る化け物になってしまう。
それで神に与えられた任務をこなせるのなら問題ないかもしれないが、
必ず途中で人間達に駆除されてしまうだろう。
今の俺はこの王国の全国民を相手にして勝てるほど強くはない。
なるべく王国の敵にならない様に立ち回らなければならない。
とまあ、そんな事を考えても意味があるのかどうか・・・
俺は昔から失敗から学ぶのが下手なのだ。
次の日から元の生活に戻った。
数日間経った。
数日町中で依頼をこなしまくり一日森でハンティング半日訓練と休日。
定期的に教会に寄付したり子供たちと遊んだり。
そのローテーション。
もちろん早朝の訓練はやる。
アーロン達グレゴリー達はかなり出来るようになった。
訓練もそれに合わせて苛酷になっていく。
走り込みも最初の頃と比べてとんでもないスピードだし。
武器も相当使えるようになった。
しかし筋肉の付き方が俺と似てきた。
個人差はあるものの一定以上は筋肉が膨張しないようだ。
お陰でスピードとしなやかさを維持しつつ力は増えていく。
これが何なのかは分からない。
異世界の人間特有の物なのか?魔物の肉を食わせすぎたか?
多分問題はないと思う。
確証は無いけど多分問題ない。
うん。
多分ね?
アンナも腹筋にうっすら縦の筋が見えてきたらしい。
やったーとかこんなの女の子っぽくないとか、
喜んだり悲しんだり忙しそうだった。
そんなある日領主様から俺だけ呼び出された。
いつも通りユキに乗る。スイとエンはアンナのお守りだ。
貴族区との境目に居る番兵とも顔なじみになってきた。
領主の館にて。
領主の館に到着し談話室に通された。
「おはようございます。」
今日も元気にご挨拶。
「おはよう。」
「急に呼び出してすまない。」
「この前の件だ。」
ダニエルさんがそう言った後、
執事さんがお茶を出してくれる。
イスに座りダニエルさんと対面する。
「リストや帳簿に乗っている者たちは全て逮捕するか殺害した。」
「何度も言うが本当にありがとう。」
「これが報酬だ。」
ダニエルさんは硬貨の入ってそうな大きい袋と何やら立派な書類をテーブルに置く。
袋の中を見ると金貨だった。
「これは金貨?」
「ああ、おそらく人生の半分は働かなくてもよさそうな額だ。」
「今回の一件で入手した金のほんの一部だ。」
ほんの一部と言っても相当な額が入っている。
金貨数百枚はあるか?
それと立派な書類を確認する。
「今回の一件で接収した屋敷の内の一つだ。」
「場所は下町のハンター協会からさほど遠くない位置にある。」
「最大で約100人が過ごせる程度には広いぞ。」
「ヒロ殿のチームに丁度いいと思ったのでな。」
「大量の金貨に広い屋敷・・・本当によろしいのですか?」
「良いぞ、それに屋敷は広いが質素だ、あまり期待するな。」
「不要なら誰かに売ってくれて構わないからな。」
そう言ってダニエルさんはカギの束を渡してくる。
「そうですか、ありがとうございます。」
俺は両手でありがたそうに受けとる。
「それとハンタークラスをアイアンからブロンズに上げるように提案しておいた。」
「ヒロ殿とリーダー格の者を数人程度だが。」
何か過剰に報酬を貰っている気分になってしまう。
俺この後殺されたりしないよね?
「あ、ありがとうございます。」
「ヒロ殿とアーロン、ブレッド、カール、ディーン、エディ、グレゴリー、ヘンリー、イゴール、ジェフリー。」
「それとアンナ、彼ら全員をブロンズに昇格させることを提案した。」
「協会の職員も前向きな反応だったのでほぼ確実だろう。」
「そんなに考え込むな、これはまっとうな報酬だ。」
「この町の膿を絞り出してくれたんだ、当然だ。」
「因みに私は部下の管理が出来てないとかでお叱りを受けたが、
教会の枢機卿の悪事を暴いたのと裏社会の連中を一斉に逮捕
した事もあって子爵から伯爵に陞爵する事になった。」
「おー!おめでとうございます!」
「正式な発表はまだなので他言無用だ。」
「わかりました。」
「ひとまず重要な知らせは以上だが・・・」
ダニエルさんがそこまで言うと一気に空気が変わる。
「ここからはただの雑談だが、」
「ブロンズになったことで一応王都に行けるようになっただろう?」
「はい。」
「チームに居る少女も一緒に連れて行くのだろう?」
「はい、そのつもりですがそれが何か?」
「ふむ・・・」
ダニエルさんはそう言って少し考えこむ。
「ここだけの話にしてほしいのだが、」
ダニエルさんは小声で話す。
「実はおおよそ一か月半前にこの国の姫様が行方不明になってな。」
・・・
「大々的に公表すれば大混乱に陥るためまずは秘密裏に捜索していたのだ。」
「犯人は教会や貴族がかかわっている可能性が高いと王都の信頼出来る友人から聞いていた。」
「誰が黒幕か分からない以上迂闊に動けなかったのだ。」
「今から約一か月前、騒ぎにならぬように極秘に姫様を捜索していた時の事だ。」
「魔物達が町に襲い掛かってきたことがあったな?」
「その時に目立った活躍をした見慣れない一団を発見したのだ。」
「わたしは当時長い金髪の少女を探していた。」
「なぜなら姫様の特徴も長い金髪だからだ。」
ん?
「私は王都で姫様に会った事がある。」
「だから遠目でその少女を見た時は驚いた。」
「そして秘密裏に行っていた捜索を辞めた。」
んん???
まさか・・・
俺は驚きを隠そうとしたがつい顔に出てしまった。
「その少女の名前はアンナと言うそうだ。」
「しかし捜索している姫様の名前はアンナではない。」
偽名って事か?
「ここで全然全く関係ないが姫様の母君、今は亡くなってしまわれたお妃様の名は確か・・・」
「『ジョアンナ』だったな。」
『ジョアンナ』か・・・
どうにか頭を回転させて話を整理する。
つまり、一か月前姫様が暗殺されそうになった。
そして俺がとある貴族の令嬢のアンナと名乗る少女を助けた。
町に行きハンターになって活躍した頃領主様の目に留まった。
そして領主様はアンナを見て姫様の捜索を辞めた?
つまり、彼女はアンナではなく貴族の令嬢でも無く、
お姫様?
まじですか?
訓練とはいえ何度も何度もボコボコにしたぞ・・・
でもなぜ領主様は匿おうとしなかった?
内通者が居る可能性があったからか!
敵さんの目的もわからず誰が敵かもわからなかったはずだ。
だから領主自ら匿うより俺と共にハンターをやっていた方が安全だと考えた?
いや、だとすると何故俺を信用出来ると判断した?
俺は完全によそ者で怪しさ満点だろうに・・・
いやそもそもそんな危険な仕事してたら止めないか?
「ヒロ殿はそのころから相当な腕前だったそうだな?」
「今回の一件もヒロ殿だからこそ手を貸してもらったのだ。」
『俺だからこそ』?
強いだけでなく俺を信用するに足る何かがあって、姫様を任せたって事か?
ひょっとしてどっかの貴族お抱えの戦士とか思ったのか?
干渉してこなかったのはアンナが姫様だと他の連中に感付かれない様にするためか?
「この前、王都に行くのが目的だと言っていただろう?」
「だからこそ便宜を図ったのだ。」
「もちろん実力も十分だと判断しての事だ。」
「まあ、まだ決まったわけではない。」
「もう少し時間が掛かる可能性だってある。」
アンナの事がバレない様にお互い干渉しない様にしてたのに急に俺が王都に行きたいと言ったから
特別に便宜を図ってくれたのか?!
そして現在、わざわざこの話をしているのは暗に『わかっているぞ』と俺に知らせるため?
内通者が居なくなったであろう今だからこそ話せる内容って事か?
「まあとにかく、我々はもう友人と言っていい仲だろう?」
「王都に向かう際は友人の私に一声かけてくれ。」
「まだ気が早いだろうが、そのアンナとやらも無事王都に着くことを願っているぞ。」
一番気になっていたアンナが行方不明になったのに騒ぎになってなかった件は、
おそらく領主様が安全な場所に匿っているとかなんとか王都の友人に伝えてあったからだろう。
そのおかげで貴族連中はまだ姫様は遠征している最中とか思われていたんだろうな・・・
そもそも『アンナ』と偽名を使っていたから領主様も警戒して俺の自由にさせてくれてたのか?
そう考えると俺がさっさと領主に突き出していればアンナはもっと早く王都に戻れていたんじゃないか?
まあ当時は領主様も信用できるか分からなかったし、仕方ないか?
色々噛みあってしまったせいで、こんな面倒な事態になってしまった感じだろうな・・・
領主のダニエルさんも俺を貴族のお抱えか何かと勘違いしている様子だし。
しかしただの暗殺ならなぜこんな辺境で殺そうとするんだ?
やっぱり何か他に目的があったんだろうな。
この件に関しちゃ教会の枢機卿もかかわっていたとの事だから、
俺も無関係ではなくなったわけだ。
そう言えば家くれたけどそれほど信頼しているって事か?
いつでも町にウエルカムだよって事だよな?
ていうか色々考えたせいで疲れた。
俺はため息を吐きながらお茶を飲む。
ズズッ
「貴族様って大変ですね。」
ついついそんな事を口にしてしまう。
「はっはっは!」
「領主ともなると色々大変なのだ。」
「何も考えず剣や杖を振るっていた頃が懐かしいよ。」
「ヒロ殿も面倒ならあまり貴族にかかわらない事だな。」
「最もすでに手遅れかもしれんが・・・」
その後はどうでもいい話に花を咲かせてしばらくしてから領主の館を出た。
要するに実は殺されそうになってたのはお姫様でした。
って事です。




