50 貴族と枢機卿
一応この国で人身売買は違法です。
『人』の売買は違法なのです。
宿に戻って休む。
日が昇る前に行動開始する。
食事は保存食を適当にかじりユキに乗って貴族区の領主の元に向かう。
貴族区の検問は一人でもすんなり通れた。
領主の館では兵隊が沢山、文官も少々待機していた。
その中の領主を見つけてユキから降りて近寄る。
「おはようございます。」
「おはよう。」
領主も俺に気付き挨拶をする。
「準備はいいか?」
俺はいつもの黒い毛皮のマントと腰に刀を差している。
「準備は万全です。」
「では行くぞ。」
道中、領主の隣を歩く。
「これから向かうのはデブリオ・フォン・ウエス男爵の自宅だ。」
そう言えば貴族はみんなフォンが付くんだっけ?
アンナに聞いた気がする。
しかし前世の感覚がいまいち抜けないせいで変わった名前だなーとか思ってしまう。
デブリオって恰幅のよさそうなお名前ですね。
「そいつが大物買い手の内の一人ですね?」
「買い手でもあり資金や人狩の場の提供に加え、
教会と共に裏で手を回して闇商会のお目溢しもしていた。」
お目溢し、商会のやっていることが表に出ない様に証拠の隠滅したり見逃したりって事だ。
「そのデブリオ男爵以外の貴族様の名前はあまり無いですよね?」
「商会の会長はよっぽど慎重だった様で絶対断られない相手としか取引をしてないようだ。」
「デブリオ男爵は元から黒い噂の絶えない男だった。」
「しかし何か問題が起きても証拠不十分かつ教会の進言によりいつも罪を免れていたのだ。」
「だから怪しいだけの男だと思っていたがこれほど勢力を広げていたとは。」
実際領地をもたないこの町の貴族や商人や商会などの有力者多数の名前があがっている。
「ただ、上の組織や貴族の情報は全くありませんでしたね。」
「ああ、確実に存在しているみたいだが規模も名前すらも不明だ。」
攫った人間の一部を王都の一次団体的な所に送っている様だがそのこと以外ほとんど分からない。
「今回の件が知れ渡るのは時間の問題です。」
「領主様にも危険が及ぶのでは?」
「今回の事件後、噛みついて来てくれれば敵だと分かりやすくて助かるんだが。」
「釣り針ごと餌を食い千切られるかもしれませよ?」
「確かに、お前の言う通り慎重に動くべきだな。」
「貴族は敵が多くて大変ですね。」
「ハハハハ。今後はお主も敵が増えるかもな。」
「全部領主様の手柄になれば俺に被害は及ばないのでは?」
「私に手柄も面倒ごとも両方押し付けると?」
「ダメですか?」
「手柄も一緒にとなると断りにくいな。」
「それに私はいずれ王都に行く予定なので今はあまり目立ちたくないのです。」
「王都に行きたかったのか?」
「はい。」
「と言う事は身分証が欲しくてハンターを?」
「そうです。」
「ふむ。」
領主さんはそう言って少し考えこむ。
「っと、到着だ。」
「話は後にしよう。」
「お主は私の近くで待機だ。」
「わかりました。」
領主の部下が男爵家のドアをノックする。
「デブリオ・フォン・ウエス男爵!」
部下が扉をノックすると家から執事っぽい人が出てくる。
「ごきげんよう。」
「朝早くからどのようなご用件で?」
執事さんは落ち着いた様子で応対する。
「デブリオ男爵に人身売買及び職権乱用など複数の容疑が掛かっている。」
「おやおや、でしたら後日正式な手続きと書類を持ってからお越しください。」
よくある事なのか執事さんはこなれた様子で対応する。
「今回は領主直々の強制調査だ。」
領主さんはそう言いながら前に出る。
執事さんはかなり驚いた様子だ。
領主が直々に来るのは想定外だったようだ。
俺はピッタリ領主さんにくっついていく。
「只今よりデブリオ男爵の自宅を調査する。」
「大人しくしててもらうぞ。」
ものすごい迫力で宣言する。
領主の部下達がどんどん家に入っていく。
家と言っても土地も館もかなり広く大きい。
俺は領主と共に男爵を起こして外に連れ出す。
一応まだ貴族なのでちゃんとした服に着替える時間くらいはあげた。
「ヴェスバルト!何のつもりだ!!?」
男爵殿は怒鳴り散らす。
「ボーク会長と手を組み人身売買を行っただろう。」
男爵は口をパクパクさせてる。
「そっ、そんなわけないだろう証拠もなしにこんな事っ!ゆるされないぞっ!」
「証拠ならここにある。」
領主さんは帳簿をだす。
「なんだそれは?」
デブリオ男爵もこの帳簿の存在を知らなかったようだ。
「ボーク会長の取引の帳簿と名簿もある。」
「お前の女の好みまで事細かに書かれている。」
男爵は一気に青ざめていく。
「ブラウンヘアーの幼女好きだったっけか?」
俺はつい口を挟む。
「変態ロリコン野郎だな。」
領主さんが痛烈な一言。
一応この世界にもロリコンの概念があるようだ。
領主さんは気色悪い物を見る目で男爵を見る。
「ヴェスバルト卿、地下牢に売買されたと思われる少女たちを発見しました。」
領主の部下がそう報告する。
随分簡単に見つかるもんだな。
「帳簿と一致する名前と特徴の子が多数いました。」
「ただ買われたのに発見できない子もいますので、依然捜索中です。」
「そうか。」
領主は悲しそうな顔をする。
その反面男爵はニヤリと笑う。
コイツ・・・ヘラヘラしてるが今の自分の立場が解ってないのか?
すでに証拠は十分そろってるんだぞ?
「スイ、エン、わかるか?」
二匹は迷わず広い庭の方に向かう。
そして土が見えている地面で止まる。
『この下。』
スイ。
「この下を掘ってもらえるか?」
スイの意図を理解した領主が部下の人に命令して掘り返させる。
「これは・・・」
遺骨や腐りかけの遺体、ほとんど腐ってない遺体まで出てくる。
全て女性で骨格的に幼い遺体が多い。
成人と思われる遺体はほとんど無く、さらにすべて衣服を着ていなかった。
この場に居る者達は皆、言葉が出なかった。
新しい遺体は穴と言う穴がズタズタに引き裂かれ体中痣だらけ。
想像を絶する光景だった。
領主も部下たちも過去の自分を恨んだだろう。
何故もっと早く行動しなかったんだろうと。
何故彼女たちがこんな目に合わなければならないんだと。
そして室内を捜索中の領主の部下が取引の記録を持ってきた。
中身は隠語を使っているが商会の帳簿にある取引記録とと一致。
「もう言い逃れは出来ないぞ。デブリオ!」
領主がそう叫ぶとデブリオは男爵はその場にうずくまる。
ピクピクしながら何かブツブツ言っている。
一瞬おかしくなったのか?と思ったがそうでは無いようだ。
俺は領主の隣で動向を見守る。
領主は少しあきれた様子だった。
次の瞬間デブリオ男爵は勢いよく起き上がる。
杖を領主の方に向けて叫ぶ。
「敵を焼き尽くせ!【ファイアーボール】!!」
うずくまている最中に詠唱をしていたらしい。
デブリオが叫んだ後、杖の前に魔法陣が浮かび上がる。
領主に複数の炎の玉が飛んでくる。
完全に油断していた領主は対応できていない。
だからと言って俺はこの場で魔法を使うべきではない。
そこで俺はマントごと領主に覆いかぶさる。
炎の玉は数発飛来し俺や周囲の地面に当たり大きな土煙と炎が舞い上がる。
ドドドドドン!!!
「はははははは!」
「この俺様を舐めているからこうなるのだ!能無しのヴェスバルトめ!!」
領主さんは冷静に俺と土煙に隠れて魔法の詠唱を始めた。
領主さんは詠唱しながら目で合図を送ってくる。
俺は傷一つない毛皮のマントを勢い良く翻す。
「今だ!」
「【ストーンボール】!」
姿を見せた領主はド派手に杖を振るって複数の丸い石を飛ばす。
「なにぃぃ!!」
複数の鈍い打撃音が響く。
ゴズッ!!ゴスッ!
殺傷力は低くギリギリ死に至るほどではないがかなり痛そうだ。
「ブヘへへェェェ!!!」
デブリオはド派手に吹き飛び意識を失う。
多分死んではいない。
「悪足掻きはここまでだ。」
領主はキメ台詞を吐いて捨てる。
「そいつから杖を奪って捕らえろ。」
部下は杖を奪い取り乱暴に縛り上げる。
「さすがに焦りましたね。」
俺。
「焦っていたようには見えなかったが?」
領主さんはニヤリと笑いながら言う。
「いえいえ、もう完全にパニックですよ。」
俺も領主もヘラヘラ笑う。
「助けてくれてありがとう。」
「ただのマントでは無かったようだな。」
「魔物の毛皮だな?」
「バカでかい黒熊の魔物です。」
「新人のハンターが熊の魔物を?」
「狩ったのはハンターになる前です。」
「はっはっは、そうかハンターになる前から熊の魔物を狩るか!」
「それならあの落ち着きようにも頷けるな。」
「奴と証拠は確保したので数人の残して一旦引き払おう。」
「男爵の私兵にやられたりしませんか?」
「館内に居る奴の私兵達は全員捕縛済みだ、囚人輸送馬車もすぐに来るので問題ないだろう。」
「次は教会だ。」
調査隊は一部をこの場に残して貴族区の教会へ向かう。
「その猟犬は優秀だな。」
移動中領主のダニエルさんがほめてくれる。
「だってよ。」
そう言って双子を見るとワン!と可愛く一吠えする。
「言葉を理解するのか!?」
ダニエルさんも驚いている。
「おおよその意味は理解できているみたいですよ。」
「おかげで狩の時も大活躍です。」
双子はうれしさのあまり尻尾をブンブン振っている。
「先ほどの戦闘時もあまり驚いた様子は無かったな。」
「よっぽど訓練を積んだのだろう?」
「対魔物戦も対人戦も訓練してます。」
「ほう?対人もか?」
「そうです。色々あって対人戦をしっかり教え込んでいます。」
母親みたいに人に殺されて欲しくないからね。
「昨晩の戦闘報告を聞いた。」
「喉、武器を持つ腕、動きを鈍らせるための足、それらを的確に狙っている。」
「一兵卒程度じゃ歯が立たないだろうな。」
そんな話をしているうちに超絶豪華な教会に到着する。
「なっ、なんだこれ、、」
外装は石か大理石っぽい、所々金や宝石、透き通ったガラスなどで装飾されている。
庭も綺麗な花々が咲いているが無駄に豪華な石像や彫刻もある。
フランクの教会とは天と地ほど差がある。
「下町の教会とは全く違うだろ?」
驚いている俺を見てダニエルさんが声をかける。
「一応貴族の子供たちを集めて時々勉強会をしているが・・・」
「今改めて考えてみれば慈善活動なんてそれだけだったな。」
早速この豪華な教会の門をたたく。
御用改めである!
なんつって。
「領主のダニエル・フォン・ヴェスバルト子爵だ!」
「あら、おはようございます。領主様。」
そう言って出てきたのは見覚えがあるような無いような女性だ。
会った事あるっけ?
てか全然関係ないし今更だけど、
結構広い範囲を支配しているっぽいのにダニエルさんって子爵なんだ。
伯爵とか侯爵とかじゃないんだね。
「バルボンド枢機卿はいらっしゃるか?」
枢機卿って教会内じゃ相当偉いよな?
「はい。只今書斎にいらっしゃいます。」
「お呼びいたしましょうか?」
「ああ、ただし名を明かさずに呼び出して欲しい。」
「わかりました。お客人とだけ言ってお呼びいたします。」
そう言って女性は教会の中に入っていく。
枢機卿が数人いてその中から教王が選出される。
枢機卿の人数は決まってたり決まってなかったり時代によって変わるらしい。
司教だの大司教だの教区がどうとか枢機卿がなんだとか色々ややこしい話がある。
ある一定の範囲つまり教区をまとめる人が司教で教区が大きいと大司教となる。
そう言う意味ではバルボンドさんは大司教となる。
そして大司教や司教の中から枢機卿が選ばれ、枢機卿から教王が選ばれる。
司教とか関係なく枢機卿になる事が稀にあるみたいで細かくは決まって無さそうだ。
よくわからんが枢機卿は教王のお手伝い的な役職らしい。
つまりバルボンドさんは貴族区の教会の司祭でありながら、
この辺りの複数の教会をまとめる大司教であり、
枢機卿と言う役職も受け持っている。
因みに複数の教会と言うのはこの町だけでなく周囲の村にある教会もまとめてだ。
それゆえにダニエルさんの支配領地とバルボンド枢機卿の収める教区は非常に似通っている。
バルボンド枢機卿は教会内でトップから二番目というアホほど偉い人なのだ。
先ほどは貴族で一応ダニエルさんの部下となるので強制調査も逮捕も問題ない。
しかし今回は教会のナンバー2だ。
この王国と教会の関係を考えると慎重にならざる負えない。
領主様が報復されるのを覚悟の上で強行手段に出たが、
本来なら教会が持つ権限によりダニエルさんが罷免される可能性すらある。
【断罪】の魔法が失われたであろう今、教会がどうやって貴族を罷免するのか分からないが・・・
アンナやフランクさんや神の国での情報を合わせるとそう言う事になる。
それにもし領主様が黒だった場合、領主プラス枢機卿と言う最悪のコンボが完成する。
市民どころか並みの貴族ですら手を出せなくなってしまう。
そうなればもうお終いだ。
悪人を探し出してその悉くを闇討ちするしか手が無くなるわけだ。
その可能性を考えると最初何も考えずニンブルと言う男を引き渡したのは悪手だった。
事前に信頼できる領主かどうか確認する必要があったのだ。
まあ今回はたまたま上手くいったからよかったが・・・
考え事をしていると教会から枢機卿が出てきた。
「アポなし訪問とは無礼だぞ。」
そんなセリフを吐いた後、領主の姿を見つけたようだ。
「ヴェスバルトか、何の用だ。」
あれ?
領主相手に随分舐めた口調じゃないか?
そんなに今の教会勢力ってって偉いのか?
「フン、貴様を逮捕する。」
ダニエルさんも面倒くさいのかぶっきらぼうに告げる。
「なんの容疑だ?」
「証拠もなしにその様な真似をすると今の地位を失う事になるぞ。」
枢機卿さんはかなり強気だ。
「強制調査をするのに十分な証拠がある。」
「教会及び自宅の強制調査を行う。」
ダニエルさんがそう告げるがしかし枢機卿さんの態度は変わらない。
「はっはっは、強制調査とは大きく出たものだ。」
「まあ自宅にも教会にも何も証拠が出ないだろうが好きなだけ調査しろ。」
「その代わり何も出なかったときは覚えてろよ。」
枢機卿さんは先ほどの貴族と真逆で一切動揺せずむしろ啖呵を切っている。
そして調査を開始する。
貴族とは違いちゃんとした帳簿があるとは限らない。
教会の金を使っているのなら教会の帳簿に証拠があるかもしれないが・・・
チームを二手に分けて調査をする。
1チームは教会、1チームは自宅。
領主と俺は枢機卿の自宅に行くことにした。
教会内にさらった人を監禁するとは思えないからだ。
「枢機卿の自宅は教会のすぐ近くだ。」
枢機卿を連れて自宅へ向かう。
先ほどの貴族様の家と遜色ない程度に立派だった。
「直ちに調査を始めろ。」
「了解です。」
ダニエルさんが部下に指示を出し調査を開始する。
「ふん!どうせ何も出ないさ。」
枢機卿さんは自信満々だ。
実際帳簿も取引記録も無かった場合本当に罪に問えないそうだ。
隠れた別荘でもあるのかな?
時間が掛かるので家の中の応接室?っぽい所でまったり待った。
ダニエルさんと枢機卿が何やら舌戦を繰り広げている。
その間俺はスイとエンをなでなでコネコネする。
二人の会話を盗み聞きする限り昨晩と今朝の件はまだ知らない様子だ。
暇ついでに室内を観察してみると高価そうな調度品ばかりだ。
枢機卿ともなれば相当儲かるらしい。
黄金の置物とか宝石だらけのよく解らん枝っぽい飾り、
豪華な額縁に入った絵、何かすごそうなタペストリー。
こっち関係はマジでよく解らんから高そうって感想しか出てこない。
どれもこれも魔法関係の道具ではなさそうだ。
くだらない舌戦に疲れた二人が静かになった頃。
ダニエルさんの部下が報告に来た。
「ヴェスバルト卿、人も記録も見つかりません。」
ふむふむ。
「ふはははは!」
「どうだ!お前の貴族人生もこれまでだ!!」
元気モリモリになった枢機卿と苦虫を嚙み潰したような顔のダニエルさん。
俺は立ち上がってドアに近づきダニエルさんを見る。
「ん?ヒロ殿も調査に赴くのか?」
「はい、気になる場所があります。」
暇つぶしに【探索】魔法で屋敷内をマッピングした所おかしな場所を発見したのだ。
それは一階にある書斎と思われる部屋の隣。
室内の間取り的に明らかに何かがある場所だが壁しかない。
何かがあるって言うか階段があるんだけど壁でふさがっている。
俺はその辺りの壁をぺたぺた触る。
スイとエンが真似をして前足でぺたぺたしてる。
それを見た領主はアホの子を見る目で俺を見る。
対して枢機卿の額には汗が流れる。
どうやら当たりのようだ。
解らん・・・
内部構造がごちゃごちゃしていてスイッチを探し出すのも時間が掛かりそうだ。
すぐにめんどくさくなってきたのでその辺の壁を思いっきり押してみる。
「おい!なっ何をしている!!」
壁がミシミシ言い始めた頃枢機卿がおろおろしだす。
バキバキッ!!
ドオォン!
大きな音とともに壁が倒れて奥にあった階段が姿を現す。
「隠し通路を発見しました!」
俺は計画通りですって顔でダニエルさんに報告する。
「開ける方法が分からないからってゴリ押しするなよ・・・」
爆速でバレた。
「そんな事より早く行きましょう。」
「はぁ・・・そうだな。」
ダニエルさんは俺の太々しい態度に呆れつつ先を急ごうとした時。
枢機卿が外に向かって走り出した。
「何やってるんだ?」
なんか走り方が変だな。
「まあ確たる証拠が見つかる前に逃亡を図っているんじゃないか?」
あれで逃げてるのか!!
俺はスイとエンに合図する。
「殺すな。」
そう言った瞬間目にもとまらぬ速さで枢機卿の両足に食らいつく二匹。
枢機卿は両足に噛みつかれたせいで顔面から地面に倒れ込む。
ビターン!!
「おおぉ・・・痛そうだな。」
ダニエルさんがボソッとつぶやく。
スイとエンが枢機卿の両足を顎で掴んで地面に赤い一筋の線を描きながら引きずってくる。
ズリズリ
「はぁ、拘束しておけ。」
ダニエルさんの部下が手際よく縛る。
なんか亀甲縛りみたいになってるけどコレが普通?
気を取り直して地下室に進む。
一応俺が先頭だ。
まあ【探索】を使ってるので、どこに誰が居るか分かるんだけどね。
地下に降りてすぐの場所に数人の敵さんが武器を構えて待機している。
俺は気にせずズケズケ進み、襲い掛かってくる奴らを殴り飛ばし蹴り倒す。
「待ち伏せか?」
「おそらく強制調査がバレてたのではなく常駐の看守って所でしょう。」
外から魔法で確認出来ていたからわかっていたが、
俺が隠し扉を破壊するまではかなりリラックスした様子だった。
看守室の様な場所には入れたてのお茶があった。
「隠し扉を破壊した事で警戒されただけって事か。」
遠回しに俺のせいだって言いたいらしい。
「まあそう言う事ですね。」
そんな会話をしながら内部を調査する。
階段を下りたすぐの場所に看守の部屋と書斎の様な部屋が二部屋ある。
その奥には広い牢屋がいくつかある。
「見つけたな。」
ダニエルさんは周囲を一望して指示を出す。
「調査を開始しろ。」
俺はダニエルさんと書斎を物色。
地下室だから暗い、俺が松明を持ってダニエルさんが書物を探す。
そして証拠もばっちり押さえることが出来た。
その際ダニエルさんがある書類を興味深そうに眺めていた。
俺もこっそり見ようとしたがダニエルさんに見ちゃダメって言われてしまった。
どうにか見えたのは『遠征』と『暗殺』そして『姫』と言う文字だった。
教会や神が悪いのではなく教会の中の人が悪いのです。
別に教会や信仰を下げるつもりはありません。
人の悪意が悪いという事です。
最後の三つのキーワードは一体何なんでしょうね?




