49 人身売買組織
主人公のアホな作戦が開始されました。
どうなるんでしょうね。
寝ているであろう私の口元に布をかぶせてくる。
これはおそらく睡眠効果のある薬草の粉末だろう。
アンナが先日こいつらの仲間のキャンプで見つけたやつだ。
私は魔法を使って口元から入る薬草の粉末を防ぐ。
鼻と口に空気を浄化する壁を張る魔法で一応聖属性の魔法になる。
眼を瞑ってはいるが【探索】の魔法を使っているので、
周囲で何が起こっているのか分かる。
男は私が寝たことを確認すると服を脱がす。
私を裸にするとベタベタ触って確認する。
「デカい傷は無いな。」
独り言の声が大きいやつだ。
「やっぱり綺麗な体をしている。」
「若くていい体だし処女ときたもんだ。」
「高く売れそうだ。」
私の腕や胸に股や尻に足などを鼻息が掛かるほどじっくり観察される。
「本当に綺麗な体だ、これならいつも以上に高く売れる。」
と嬉しそうにニヤニヤしている。
裸のまま布で猿ぐつわをされ手錠をされ、箱の中に入れられ運ばれる。
「もう一人追加か?」
別の人の声がする。
「ああついさっき来たんだ。」
「条件は完璧で体も見ての通り。」
「おまけに処女だ、高くなるぞ。」
二人は嬉しそうな声で会話している。
「そうか、残念だがお楽しみは無しだな。」
「お前はいつもそれだな。」
「お前はえり好みしすぎなんだよ。」
「今出発すれば到着は夜か?」
「馬車を急がせれば夜には着くだろうな。」
「ならちょうどいい、明日出発の予定だったが今すぐに出発しよう。」
「あー、舌を噛まれちゃ堪らないもんな。」
「そう、価値が落ちちまう。」
「こいつが寝ている間に行こう。」
「丸一日は起きないはずだ。」
それを聞いてびっくりそんなに強力な睡眠薬だったのね。
って事は丸一日寝たふりをしなきゃいけないのか?
そして私を入れた箱は閉じられ、
何個かの同じ規格の箱と共に馬車に積み込まれる。
他の箱はどうやら中身が衣類の箱と人間の箱の二種類がある。
そして私の丸一日寝たふり作戦が始まった。
因みになぜ私がこんな面倒な事をしているのかと言うと、
北の村で捕まえたチンピラを拷問した際にアジトの場所自体はわかった。
しかし確証が無く証拠も不十分なまま突入して証拠が一切出なかったら?
そう考えた私は一度捕まって被害者になれば最低限の証拠になると思った。
さらに他の被害者の居場所もわかって保護できるだろうとも思った。
という考えで行動を起こした結果私はここに居るのだ。
そもそも【隠密】系統の魔法を使って密かに潜入するのが一番手っ取り早い。
そのことに気付いたのは暇すぎる移動中の事だった。
てか本気で【探索】の魔法を使えば家の中の人も間取りも粗方分かる。
わざわざこんな面倒な事をする必要なかったかもな・・・
次の日の朝
町の宿の食堂にて。
「隊長がどこに行ったか当てた奴に酒を御馳走するゲームをしようか?」
グレゴリーが暇つぶしにそんな事を言う。
「娼館じゃないか?」
イゴール。
「この間の依頼がつまらない獲物ばかりだったから森で狩りだな。」
アーロン。
「お酒はいりませんが北西の村だと思います。」
アンナ。
「案外この間の連中のアジトに突撃してるかもな。」
ブレッド。
「隊長はそこまで短気じゃないだろ?」
カール。
その発言を聞いた一同は少し考える。
『『『いいや、かなり短気だったような・・・』』』
皆そんな話をして休暇を楽しむ。
人攫い馬車の箱の中
外から聞こえる二人の男のくだらない話をラジオ代わりに寝たふりを続ける。
しかし聞こえてきた話はそこそこ有益な情報もあった。
これから行く場所は町にある唯一の拠点らしい。
牧場や宿舎などは別の所にも存在するが仕事場は一か所だけ。
そこのボスはこまめに帳簿を付けているらしく、
上の組織以外の名前を出してはいけない組織や人物の名などは細かく記してあるそうだ。
いざって時に脅しの材料にするためだとか。
ただ上の組織の情報は何一つ教えてくれないそうだ。
こいつら結構ギスギスした関係らしい。
「しっかし、あの女すっげー美人だな。」
男達がまた会話を始めた。
「昨日の女か?」
「そうだ、興奮しちまってイチモツが大変だぜ。」
ガハハハハと大笑いしている。
こんな下品な会話も混ざるので重要な話を聞き分けるのが大変だった。
幸い前手錠なのでこっそり【収納】から水を出して飲むこともできる。
そんな感じで寝たふりを続ける。
馬車は結構なスピードで進んでいるので箱の中はかなり揺れる。
少し仮眠でも取ろうかと思ったが全く眠れなかった。
暫く経ってようやく町に到着した。
場所は貴族区に近い、大きな通りから少し外れた場所。
大きな商会の敷地に入ったようだ。
商会の館なだけに、敷地も建物かなり大きく広い。
館の中で大騒ぎしても近所迷惑にならない程度には大きい。
敷地内にある大きな倉庫に運び込まれる。
そこで仕分けされるらしい。
年齢とか体格とか美しさとか処女かどうかとか。
簡単に言うと変態お金持ちに喜ばれるかどうかだ。
箱から出されたのは私を含め皆、女性ばかりだ。
まだ寝ている少女や目を覚まし今の状況に怯えている女性、
恐怖に耐えきれず泣き叫ぶ女性など数人が仕分けをされる。
私達の体を再度じっくり観察し何かリストの様な物を作っている。
胸がどうとか尻があーだとかそんな事ばかり。
仕分け後に向かう先は地下の広い監禁部屋、牢獄だった。
兎にも角にも上手くアジトに潜入出来たので作戦成功だ。
後はタイミングを見計らって帳簿を探す。
話を聞く限りかなり几帳面なボスらしいので、
メンバーリストもあるかもしれない。
仕分けの後ようやく一枚短い粗末なチュニック?ドレス?を貰う。
下着なんてないからスース―するし、胸の先端が擦れてムズムズする。
裾もギリギリで半ケツ出てるし。
服を着た後手錠を付けられ鎖で壁につながれる。
周囲には今運びこまれたばかりの私達以外にも沢山の女性たちが居た。
おおよそ20~30人はいる。
私達を運び込んだ後。
人身売買組織の連中は仕事を終え、
監禁部屋にも倉庫にもいなくなっていた。
しかしながら、さっき私を運んできた2人の内一人が私をじーっとにらみつける。
まだ何か用かな?
私はその男を見る。
すると男はニヤリと顔を歪める。
「へっへっへ、昨日からずっと我慢してたんだ。」
と言いながら私の居る檻に入ってきた。
檻に居る他の女性たちはその男から離れるように壁際に逃げる。
私は近寄ってくる男を動かずにじーっと見る。
「下の穴はダメだが、上の穴はダメとは言われてないんだ。」
なるほどね。
どうやらイチモツをしゃぶってくれって事らしい。
今更、何処の穴に何を突っ込まれても構わないが、
臭いのは我慢ならないので、抵抗するついでに脱走しようかと思う。
男はズボンとパンツを脱いで元気で臭いイチモツを私の顔に近づける。
手錠は鎖で壁につながれているので手で抵抗は出来ない。
男は臭すぎるソレを私の口に突っ込む。
私は嗚咽を我慢しつつ早速イチモツを噛み千切る。
グチャァ!!
「ギャアアアァァ!!」
と叫び始めた瞬間。
壁につながれた鎖を掴んで両足を高く上げて男の顔を太ももで挟んで静かにさせる。
その体制で私は噛み千切ったソレを吐き出す。
「ぺっ!ペっ!」
「そう言う事はイチモツを洗ってからやれ。」
そう言って太ももで男の首を圧し折る。
グキィ!
そして男は絶命。
女性たちがざわつき始めた。
腕力で無理やり手錠と鎖を引きちぎる。
この怪力は日々の鍛錬の賜物だ。
そして女性たちに静かにしろと指でジェスチャーをする。
するとすぐに静かになった。
偉い。
男がベルトに刺しているナイフを取る。
そして檻の外に出て檻や手錠のカギを取る。
檻に入れられた際に鍵の場所を把握しておいたのだ。
そして他の檻も全て開け、全員を解放してやる。
女性たちは困惑気味に檻から出てくる。
「少し待ってて!」
皆に小声で言う。
私は静かに監禁部屋から出て倉庫に行くが見張りなどは居なかった。
次に、倉庫の外から敷地の門まで確認する。
夜中だったので門の前にも見張りは居なかった。
監禁部屋に戻ってから、しっかりしてそうな金髪の女性にくまさんマントを着せる。
もちろん【収納】から出したので、魔法を使ったとばっちりバレている。
「皆を連れてハンター協会に行って下さい。」
「このマントの持ち主に助けられたと言って事情を話せば匿って貰えます。」
「わかりました。」
「あなたは?」
「私はこの館を少し見学してから行きます。」
小声でやり取りをして皆を敷地の門まで送ってから別れる。
皆さん丁寧にいちいち私にペコリとお辞儀をしていく。
その後すぐに屋敷に戻り館内をテクテクを散策する。
目的は執務室にあると思われる帳簿だ。
こんな夜中にもかかわらず館内をほっつき歩いている人が居た。
バレて大声を上げられる前に距離を一瞬で詰める。
そして喉にナイフを突き刺す。
死体はそのまま放り投げて置いて先を急ぐ。
適当に歩いていると宿舎っぽい所に着いた。
こいつらを殺るか放っておくか悩んだ。
さすがに放っておく事にした。
アーロンやグレゴリー達の様に変わるかもしれない。
まあ今襲われたら殺すけどね。
さらに捜索を続けるが広すぎて迷子になりそうだ。
二階を散策中ようやくそれっぽい部屋を見つけた。
すでに出くわした敵の数は二桁を超えた。
死体も同数出来上がった。
ノックせずに蹴り開ける。
「なんだ!!?」
煌びやかなおっちゃんが居た。
夜遅くに執務中だったようだ。
「あなたがボスですか?」
唐突すぎる質問をする。
「新入りが逃げ出したか?その通りだ!あまり我々を舐めてると怪我じゃ済まなくなるぞ!」
そんな事を言うおっちゃんの傍らまでズケズケ歩いていきぶん殴る。
バコッ!
倒れて静かになったおっちゃんをロープで縛り部屋を物色する。
金髪の女性
牢屋に入れられた。
これからどんな地獄が待っているのだろうと恐怖に震えていた。
すでに言葉に出せないほどの苦痛を味わった。
どんなに鳴いても叫んでもたすけは来なかった。
そんなある夜中の事だった。
また新しい被害者が来た。
私達と同じように宿や盗賊などに襲われたのだろう。
そのほとんどが恐怖に震えていて、泣き叫ぶ子もいた。
しかし一人だけ黒髪の子が冷静に周囲を観察していた。
何も言わず表情もない。
少し不気味さを感じたが自分には関係のない事。
新入りの子たちを鎖でつなぎ男たちは去っていく。
周囲が静まり帰ったころ、一人の男がいやらしい表情で戻ってきた。
男の目当ては黒髪の子らしい。
いつもの事だ。
彼らは私たちの商品価値を落とさない程度にいたぶる。
すでに男性経験のある子は特にひどい目に会う。
黒髪の子は口にアレを突っ込まれていた。
私は目を背ける。
ここはいつも悲鳴が絶えないのだ。
しかし今回の悲鳴は随分と野太い声だった。
私は目を黒髪の子に戻す。
彼女がちょうど男の首を足で絞めている所だった。
彼女は男のイチモツを吐き出して、
臭いとかなんとか言って男の首を折っている。
すぐに自分の手錠と鎖引き千切り全員を解放した。
黒髪の女性に言われた通りに、皆を連れてハンター協会へ向かう。
黒髪の女性は不愛想だがとても親切にしてくれた。
夜道は暗く寒く靴もない、皆痛い足と寒さを我慢して必死に走る。
捕まったらどうなるか位わかる。
またあの場所に戻されるか、口封じに殺される。
もうあんな思いはしたくない。
そんな恐怖と戦いながら必死に走る。
とても長く感じたがようやくハンター協会に到着した。
カウンターに三つ編みおさげの子がいた。
激しい息切れを抑えつつ事情を説明する。
「すみません。私達逃げてきたんです。」
「今まで人攫い達に監禁されてて。」
慌てて説明しようとしたせいで支離滅裂になってしまう。
「わかりました。皆さんひとまずこっちの椅子に座って休んでください。」
と受付の子が隣の酒場兼食堂に案内してくれる。
その子はすぐに他の従業員も呼んでみんなの介抱を指示する。
「それであなたたちだけで隙を見て逃げてきたのですか?」
そう言われてハッっと思い出す。
「そうでした。これの持ち主の方が助けてくれたんです。」
そう言って黒い毛皮のマントを渡す。
「え!?」
「これってまさか・・・」
「黒髪の人に助けてもらったんですね?」
「はい黒髪の人です。」
三つ編みの子が驚いた後すぐに出て行ってしまう。
そして少し経ってから何人か人を引き連れて戻ってくる。
三つ編みの子は連れてきた人たちにマントを見せながら説明している。
「そうです!これは隊長のマントです。」
黒髪の子の知り合いだったようだ。
「で?もう一回聞きますけどうちの隊長は何をしでかしたんですか?」
金髪の大きな男性が呆れた様子で言う。
「えーっと、人さらいの組織のアジトに潜入して攫われた人たちを助けました。」
男性はウンウンと頷く。
「当の本人は?」
「残ったそうです。」
「残った?」
「はい。」
「って事は今頃死体が量産されてるかもな。」
隣にいた金髪の女性も呆れた様子で呟く。
「まさか本当にアジトに突撃してるなんて・・・」
「俺の予想が当たったな。」
「今度おごってもらうぞ。」
先ほどの金髪男性と似た男性が口を挟む。
少々気が緩んだところで、先ほどの金髪が声を上げる。
「よし、ブレッドは宿に戻り、他のメンバーを叩き起こせ。」
「二つの班をこの場の護衛兼手伝いとして置いておく。」
「他は隊長の援護だ。」
「「「了解」」」
「戦闘中だろうが戦闘後だろうがいずれにしても人手は必要だろう。」
「アンナさんはここに残って彼女たちから詳しいお話を聞いてください。」
「わかったわ。」
次々と指示を出していく。
「私は各所に連絡してきます。」
「治安部隊の出動も可能ならお願いしてみます。」
「わかった。」
三つ編みの子も動き出す。
こうして私たちはようやく助かったことを実感できたのだった。
人攫いの館にて
煌びやかなおっちゃんの部屋を物色中
大量の金貨を見つけた。
このまま上手くいけばこの屋敷に正式な調査が入る。
なので金貨を拝借したりはできない。
物色中に人が何人か来たが帳簿と名簿を見つける事が出来た。
開き中身を確認すると、金の流れがしっかり記されている。
どの組織がどんな協力をしてくれたかもしっかり描かれている。
そしてなんと、誰に何を売ったのかを隠語も使わずに正しく書かれていた。
赤毛の処女何人とか巨乳熟女何人とか太めの女性何人とかそんな事だ。
誰がどんな女の好みかがしっかりわかるし完璧な証拠になる。
と言うかそう言う好みのリストとかもあったので一通り回収した。
一先ず物色終了だ。
また誰かが来る前に男に戻って服を着る。
縛ったおっちゃんを左肩に担いで刀を抜いて移動する。
すでに館内は大騒ぎになっていた。
人に会う度に襲い掛かられる。
寸前で躱して相手の喉元を数センチだけ切り裂く。
自分で回復出来ない人間は基本的にそれだけで死ぬ。
勢い余って何度か首を切り飛ばしたせいでおっさんも俺も血まみれだ。
少々道に迷ってから、ようやく館の外の広い庭に出る。
庭にはなんと組織の連中が待ち構えていた。
と、思ったがどうやら別の集団と戦っている様子だ。
捕まっていた子たちをハンター協会に向かわせたので相手はハンターかな?
棒立ちしている俺に気付いて襲い掛かってくる奴がちらほら。
そいつらを蹴り飛ばしながら事の顛末を見守る。
先頭で戦うハンターが見えてきた。
おっ!あの金髪大男は!!
「おーい!アーロン!」
知っている顔があったのでのんきに手を振ってみる。
「隊長!何してるんですか!!」
アーロンは怒り気味に返事をする。
「証拠は確保した!後はこいつらをどうにか」
と大声で言いかけた所でその場の全員の視線が俺に向く。
あっ!やばい・・・
標的が、攻め込んで来たアーロン達から俺に変わったようだ。
「何やってんだあの人・・・」
呆れてる様子のカールの声がする。
かなりの数が居るので一旦屋敷内に戻ろうかと考えた時だった。
ヤツらの声が聞こえた。
それは獰猛な肉食獣の様な三つの雄叫びだ。
軽々とアーロン達を飛び越え敵をすべて吹き飛ばしていく。
蹴り飛ばし、食い千切り、噛み砕く。
スイとエンに加えてユキも来てくれたようだ。
さっきまではある程度対等な戦闘だったが、
一遍して虐殺に近い様相に変わってしまった。
アイツらは手加減を知らない。
って事は無いはずなんだけどな・・・
それを見たアーロンやグレゴリー達は出来るだけ生存者を増やすため、
少し焦りつつ次々と相手を無力化し拘束ていく。
「急いで敵を無力化しろ!」
「さもなくば全員死んでしまうぞ!」
アーロン達は片っ端から殴っては捕縛してを繰り返す。
組織の連中はユキと双子の活躍に畏怖した様子で、
間もなく戦意を喪失し投降し始めた。
「おーい!もういいぞー」
ユキと双子に俺が告げる事で殺戮を辞めた。
「助けに来てくれたのか?」
俺がそう言うと一頭と2匹は頷く。
「そうか、ありがとう。助かったよ。」
そう言いながら全員を撫でる。
「良くこの場所が分かったな?」
『原っぱで遊んでたらスイが呼びに来たよ。』
多分アンナ辺りの話をスイが聞いて
ユキはスイに案内されたようだ。
「隊長!」
アーロンも合流。
「そいつが証拠ですか?」
「こいつはただのボスだ。」
「証拠は俺が持ってる帳簿と名簿だ。」
「今からハンター協会の職員連れて領主の所まで持っていく。」
「後片付けは頼んでいいか?」
「わかりました。」
アーロンは俺が血まみれな事に何一つ疑問を口にしなかった。
報告後、ユキに乗り一旦ハンター協会に向かう。
鞍とか付ける暇ないので裸のユキに乗り俺は男を担いだままだ。
「やっぱりこのおっさんを背中に乗せるの嫌か?」
ユキに聞いてみると大きく頷く。
ハンター協会に到着する。
ユキを入口の外で待たせて中に入る。
「こんばんはー」
中にはまだ被害者の女性たちが居た。
アンナやチームの何人かが忙しく世話をしていた。
「あっ!ヒロさん!」
ポリンちゃんも居たようでトコトコ近寄ってくる。
「現場にいる奴らは一旦片付きましたよ。」
「本当ですか!?さすがです!!」
やったのは全部アーロン達とユキ達だけど・・・
「早速職員を向かわせて後処理と調査をします。」
「そうか、夜遅いが頑張ってくれ。」
「所で今から重要な証拠を領主様の元に持って行きたいので付き添いをお願いできますか?」
「その件は、領主様から伺っております。」
「私で大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。大丈夫です。」
「では私は準備をしてきますので少々お待ちください。」
「俺も馬車を用意するので一旦宿に戻りますね。」
という事で宿に馬車を取りに戻り改めて領主の館に向かう。
ポリンちゃんとの会話の後、アンナに小言を言われた。
ハンター協会を出る際、このおっさんをボスと知っている子も居たらしく、
俺の担いでいる男の顔を見た一部の子がぎょっとしていた。
「こいつ知ってます?」
何となく聞いてみる。
女性たちは無言で頷く。
「憎くて今すぐ殺したいのはわかるが、楽に簡単には死なせないので安心しろ。」
俺が冗談を言うと少し空気が緩む。
「あっ、あの」
突然金髪の女性が話しかけてくる。
「はい?」
「黒髪の女の子のご家族ですか?」
ん?
この子さっき俺のマント貸した子だ!
「あー、一応そうだけど?」
どうやら顔つきが同じなので家族だと思ったらしい。
さすがに同一人物ですとは言えない。
曖昧にそう答えるとその子はマントを差し出してきた。
「コレ!その子にお借りした物なんです。」
「次、いつ会えるか分からないので代わりに返していただいていいですか?」
「わかりました。けれど実はコレ俺のなんですよ。」
「妹に貸してたマントだったので助かります。」
一応俺(女)は妹って事にした。
「そうだったんですか!」
「妹さんにありがとうとお伝えください!」
金髪の女性がそう言うと他の女性もお辞儀をしてくれた。
「はい、伝えておきます。」
「俺はまだ行くところがありますのでこれで失礼します。」
そう言ってマントを着てから宿に馬車を取りに行く。
今頃アーロン達は死体処理でもしてるんだろうか?
いそいでユキに馬車を装着し、協会に戻る。
協会にスイとエンを置いてポリンちゃんを乗せる。
「じゃあ、少しここで待っててくれ。」
ワン!
「この人たちには優しくしろよ。」
そう言って領主の元に向かう。
時間はまだまだ夜中。
貴族区との境目。
検問の人にも急ぎの用事だと説明して通してもらった。
まあ説明したのはポリンちゃんだけど。
「これがその証拠ですね?」
「そう、結構大物の名前が何個かあるからもたもたしてると証拠を消される可能性があると思う。」
移動中に帳簿を見たポリンちゃんが目を見開いて驚く。
「!?」
「ね?大物でしょ?」
「同僚がお酒の席で噂してましたけど本当だったんですね。」
「ここにしっかり証拠が残ってるし、確実に調査は入るでしょうね。」
そうして領主の館に到着する。
門番にめっちゃ急ぎだと伝えて領主を呼んでもらった。
眠そうな顔の領主のおっさんが館から出てきた。
「夜遅くにすみません。」
「事が事なだけに急ぎで報告があります。」
俺は領主に対するマナーとか態度とかを忘れて素のまま会話をする。
「何事だ?」
「この間の連中の組織のアジトを突き止めました。」
「そうか!?早かったな!」
「襲撃して攫われた人たちを救出しました。」
「襲撃?随分早いな・・・」
「はい、流れでそうなってしまいました。馬車の後ろに居るのがその組織のボスです。」
「ボスは一旦どうでもいいんですが、本題はこれです。」
そう言って帳簿と名簿を渡す。
「この中に少し厄介な名前が・・・」
俺がそう言うと領主のダニエルさんは帳簿と名簿を見る。
「なるほど大物だな。アジトの襲撃が知られて証拠隠滅に動かれると面倒だな。」
「そうです。可能なら明日朝一にでも調査に入った方がいいと思います。」
「本来なら入念な下調べと証拠が必要だが、調査に入るための証拠はこれで十分だ。」
そう言って帳簿を示す。
「明日朝一に調査をしよう。」
「何が出てくるか分からないのでヒロ殿も調査に同行して欲しい。」
「わかりました。」
「ただ、教会の方は手を出せないのでは?」
「その辺りは少々複雑だが明確な証拠さえあればしっかり裁けるのだ。」
「この証拠だけだと逮捕までは難しいか?自宅から証拠が出れば確実だろうな。」
「教会の方も明日?」
「ああ、明日朝一の調査が終わり次第そっちの調査に向かう。」
「大物ほど早い方がいい。」
「わかりました。」
「で?その組織のボスは?」
「馬車に積んでます。」
そう言って俺はすぐボスを持ってくる。
「寝てるだけです。ちゃんと生きてます。」
ボスを雑にぶん投げて顔を見せながら言う。
「こいつはボークか!!」
「知り合いですか?」
「ああ、この町で一位二位を争う商会の会長だ。」
「なるほど。やたら豊富な資金力と人員の謎が解けましたね。」
「そうだな、それに商会の会長ならどこに出入りしていても不思議に思われない。」
「教会に貴族にハンターに裏社会の連中、どこに顔を出していても変じゃない。」
「こいつの身柄は一旦うちで預かる。」
そう言って部下に身柄を運ばせる。
「明日朝一の調査への同行の件、頼むぞ。」
「了解しました。」
因みにここでこの領主に裏切られると証拠も何もかも無くなってしまう。
もしもそうなると、帳簿や名簿に名がある方々も含めて一緒に跡形もなく消滅してもらう事になる。
その後ポリンちゃんが領主と事務連絡をしてからハンター協会に戻る。
ハンター協会では一時的に被害者たちを宿に連れて行くところだった。
被害者の数が多いので宿は数か所になる。
服など日用品も含めて領主が用意してくれるらしい。
明日以降は事情聴取をした後、それぞれの故郷に戻されるか、
この町で職を探すことになるそうだ。
他の領地から脱走した者が多いらしい。
領地によっては脱走自体が罪に問われる事もあると言う。
通常そう言うのが見つかった場合は連れ戻され罰せられるが、
基本的に他の領主は見て見ぬふりをしているそうだ。
今回はその辺りの事情を汲んで他の領地からの脱走だと解っても、
領主さんが良いように誤魔化してくれるらしい。
なぜかと言うと、一部の領地では普通に暮らしていても貴族や一般市民にさえも襲われることがあり、
その犯人のほとんどは証拠不十分で罪を免れる事があるらしい。
領主さんもその辺の事情も考慮して誤魔化してくれるそうだ。
アーロン達もそんな不公平に嫌気がさして脱走したらしい。
なんかジャックさんとかに聞いていた話だともう少し平和な王国のイメージだったんだけど・・・
思ったほど平和じゃなかった。
手に職がある者はすぐ職に就けるだろうし、
ハンター協会に登録して雑用の仕事をするだけでも賃金はもらえる。
ひとまず心配はいらないとの事だ。
「現場の方も後は我々協会職員と領主の兵が引き継ぎます。」
「現場に居るアーロンさん達もじきに戻ってくるはずです。」
「でしたら俺はあいつらが戻るのを待ってから宿に戻ります。」
「わかりました。私は仕事に戻ります、明日も頑張ってくださいね。」
ポリンちゃんはキラキラした目でそう言って、受付の奥に消えてった。
「領主様は何と?」
アンナだ。
「明日、有力な買い手兼協力者の家の調査をするらしい。」
「家から少しでも証拠が出れば確実に逮捕出来るとの事だ。。」
先ほどのやり取りを報告する。
「行動が早いですね?」
アンナは驚きつつ言う。
「ああ、騒ぎを聞きつけて証拠を消されると困るから領主に急ぐように言ったんだ。」
「急ぐように言った?」
アンナは少し驚いている。
「そうだけど?」
「不敬だって怒られたりしませんでした?」
「そんなに狭量な領主じゃ無かったぞ。」
「怒られなかったって事は、領主様に気に入られたんですかね?」
「そうなの?」
「ここの領主様は中立かつ武闘派ですから。」
「上下関係には少々厳しい所があるんですよ。」
「良く知ってるな?」
「はい。会った事があるんですよ。」
そう言えば、この子貴族のお嬢様だったけ?
「そうなのか。」
「俺はその調査に同行する事になった。」
「私は顔を知られているのでいけませんね。」
「そうだな。まだ信用しきれないから明日は俺だけで行く。」
「いざ裏切られた時は派手に暴れて逃げるつもりだ。」
「いざって時のために全員宿か協会で待機しておきます。」
「ああ、頼む。」
そのあとアーロン達と合流して宿に戻った。
因みにアーロン達は皆無傷だった。
男性のアレを噛み千切るのに必要な咬合力ってどんなもんなんでしょうか?
無駄に遠回りな事をした作戦が上手くいったようですね。
よかったよかった。
こう見えて主人公は真面目に考えているので許してください。




