48 依頼完了
町に帰りましょ。
次の日から村長と森に入って森の様子を見てもらう。
「これならもう問題ないだろう!」
3日ほど続けて観察してもらったがもう問題ないとの事。
つまり依頼完了だ。
長居する必要もないので明日に村を去る事になった。
夜キャンプにて。
「充実した遠征でしたね。」
グレゴリーが言う。
「トラブルはあったが全員無事だ。」
アーロン。
「危険な魔物も居ませんでしたね。」
アンナ。
「危険な人間はいたけどな。」
俺。
「町に帰ったらしばらく休暇にしよう。」
「数日町で休んでくれ。」
皆に告げる。
「わかりました。隊長はどうするんですか?」
アーロン。
「俺は少しやることが出来たからそれが済むまで休暇ってことにする。」
まあ例の件だ。
「私も手伝いましょうか?」
アンナ。
「いや、気にするな。」
「少し町を離れるだけだ。」
次の日
朝一で村長宅に行き捕らえた2人を馬車に乗せる。
村長は馬に乗って移動する。
狩った獲物と荷物を満載した馬車6台で町に帰る。
帰り際、マキさんが俺の頬にキスして「いつでも家に寄ってね」と言われた。
やはりマキさんは真っ直ぐと言うか気が早いと言うか積極的だ・・・
帰り道は問題なく急ぐ意味も無かったので夕方頃に町に到着した。
アンナとアーロンとグレゴリーに依頼達成の報告を頼み、
俺は村長を村の領主が住む館に向かう。
「付いてきてくれてありがとう、この二人と俺一人じゃ心細くてな。」
「構いません、事情の説明も必要でしょうし。」
俺はユキの馬車に二人を乗せて村長に付いていく。
行先は貴族区の中、村の領主の館。
本来俺の身分では入れない場所だが村長のお手伝いとしてなら入れる。
貴族区の入口で検問を受ける。
「村に現れた犯罪者の事で領主様にお知らせがございます。」
村長は身分証を見せながら説明する。
「彼は今回の件に関わったハンターで事情の説明と犯罪者の運搬をしてくれています。」
俺はハンター証を見せる。
「アイアンか、今回は特別だぞ。」
衛兵に渋い顔をされたが侵入を許可された。
って事で村長の誘導に従い館に向かう。
この区域は今までの場所とは全く違う。
まず石畳が大きさも形も均等だ。
そして貴族区の入口の門は豪勢な彫刻が刻まれている。
と思ったが、何かの魔法陣だった。
多分頑丈にする類の物か老朽化を防ぐ物。
そしてなんと道路の脇に街灯の様な物もある。
沢山は無いが定期的に配置してある。
動力源はもちろん魔力、魔石と魔法陣だと思う。
領主の館に着くと門番に説明し敷地に入る。
館の入口で少し待つと村の領主が出てくる。
俺と村長はひれ伏して待つ。
「家まで押しかけるとはよっぽどの用事なのだろうな?」
やたら豪華と言うわけでもなく、
しかし領主らしく着飾ったの男が出てきた。
「はい、突然の訪問申し訳ございません。」
「よいよい、二人共立って話せ。」
村長と俺は立ち上がる。
「此度は村に訪れた賊についてのご報告です。」
「賊?」
「はい、先日魔物討伐の依頼を受けたハンターが村で狩をしていた時の出来事です。」
そう言って村長は、村に約150名の謎の集団が来た事、それらの一部が村の女性を襲った事、
俺達ハンターを皆殺しにして村人を攫おうとしていた事を報告した。
領主は少し考えた後口を開く。
「そうであったか、村への被害は無かったと言うのは本当か?」
「はい、幸い腕のいいハンターのおかげで被害はありませんでした。」
「そしてこれがそのハンターチームのリーダーか?」
村の領主さんは俺に視線を移す。
「はい、賊と直接対峙したのが彼のチームでございます。」
「ではお前にその賊について詳しく聞かせてもらおう。」
俺は端的に賊について話した。
確実にハンターではなくどこかの正規兵でもないが、
物資や馬車の数は明らかにその辺の賊ではないという事。
確実に人さらいが目的な事。
他にも賊の仲間が居るであろうことなどを色々話した。
「ふむふむ、興味深い話だな。」
突然村の領主の後ろからもっと偉そうな人が出てきた。
中分ブラウンの癖毛でガタイが結構良い男。
俺は村長にこの人誰?って目線を送るが村長は何も言わず頭を下げる。
俺はよく解らなかったが真似して頭を下げた。
「これはこれは、長々とお待たせして申し訳ございません。」
村の領主さんより偉い人の様だ。
「それで?」
「この御仁がかの有名な白馬に乗った漆黒の死神かな?」
この人何でそんな事知ってんだ?
村の領主さんもぎょっとした表情になる。
「私はハンターのヒロと申します。」
「白い馬を連れた黒髪のハンターではありますが私はただの人間でございます。」
俺がその恥ずかしい仇名で呼ぶのを辞めてくれと思いつつどうにか返答する。
「はっはっは。」
「そのようだな、私の目にもお主はただの人間に見えるぞ。」
「話は戻るが人さらいの噂は前々から耳にしておったのだが、なかなか尻尾を掴めずにいたのだ。」
「では、賊の証言に心当たりが?」
貴族が手を貸してるんだろ?って直接言うのは気が引けた。
てか、この人が誰かわかってないのは俺だけの様だ。
「彼らに手を貸す貴族の存在か・・・」
「貴族や教会の者を裁くとなると明確な証拠が必要だ。」
「この件は慎重に調査を行う事とする。」
「お前たちもこの事は他言無用だ。」
俺と村長、そして村の領主も頷く。
「賊はこちらで一時的に引き取り、明日手続きをして監獄に送ろう。」
村の領主さんは従者に2人の身柄を運ばせる。
「そしてヒロ殿には似たような事件や手がかりがあれば逐次報告をお願いしたい。」
「腕利きのハンターの様だしな。」
偉そうな人が俺に言う。
「はい。ですが私はアイアンクラスのハンターでございます。」
「報告の際はいかがすればよいでしょうか?」
この人が誰か分からないまま話が進んでしまう。
偉い人って事はわかるので逆らわないようにする。
「ハンター協会の職員に話を通しておく。」
「報告の際は協会職員に伝えるか、協会職員と共に屋敷まで来てくれ。」
「はい、招致いたしました。」
どなたか存じませんが、やりたいことが一致しているので話に乗る事にした。
その後すぐに館を出て宿に戻る。
その道中。
「村長、あの偉そうな方はどなたですか?」
村長は目をまん丸にして俺を見る。
「知らんで、話してたのか?」
俺は真顔で頷く。
「あの方はこの町の領主だ。」
「ダニエル・フォン・ヴェスバルト子爵、だったかな?」
「フォンとか子爵とか細かいのはよく解らんがそんな感じだ。」
「なるほど!それで村の領主様よりも偉そうにしていたのですね!」
ようやく納得がいった。
「顔はしっかり覚えて置く事だ。今後失礼のないようにな。」
宿に到着した、村長も同じ宿に泊まる事になった。
ユキの世話をしてスイとエンも俺も綺麗にして食事を済まして寝る。
次の日
村長は予定通り朝一で村に帰った。
「俺は少し買い物をしてから出かける。」
「スイとエンの世話を頼むぞ。」
昨晩報酬を分配し皆に休みを与えた。
今日はアンナに一言いって出かける。
世話を頼むと言ったがスイとエンはアンナの護衛係だ。
買い物を済ませユキに乗って出かける。
向かうのは西の村。
ユキは気持ちよさそうに全力で駆ける。
これにはユキも大喜びだ。
「ずっと森の中にいたから退屈だっただろ?」
ユキは嬉しそうに吠える。
大きな馬体に似合わず飛んだり跳ねたり。
はしゃぎまくってるのが伝わってくる。
『村まではどのくらい?』
ユキが聞いて来る。
「馬で普通に行くと一日半らしい。」
俺がそう答えるとユキは目を光らせて答える。
『じゃあ目標は半日って事で!』
コイツは何を言っているんだ?
そう思う間もなくユキはさらにスピードを上げる。
コイツは何と身体強化の魔法を使ってる。
「お前!どこで覚えた!?」
俺はびっくりしながら叫ぶ。
『ヒロの魔法を見て覚えたのよ!』
俺が驚いている様子を見て、ユキは嬉しそうに言う。
「すごいなユキ!!」
俺はそう言ってユキの首を撫でてやる。
ユキは嬉しそうに嘶く。
そろそろ村かな?
と言う所で道の脇の茂みに隠れて準備をする。
今回この村に来た目的は例の奴らをどうにかするためだ。
ニンブルから聞き出した情報によると、
この村は領主がグルになって人攫いを見逃しているそうだ。
一部村人も人攫いの手伝いをしたり見て見ぬふりをしている。
そこそこ前から日常的に行っているそうだ。
例えば旅人や旅行者の様な足が付かない人間を攫う。
それにぴったりなのが宿だ。
この村には珍しく宿があり、旅行者を歓迎している。
村を訪れた者は皆その宿を紹介されて、攫っても問題ないか調査する。
その宿で攫われた者はすぐに町にある組織のメインアジトに運び込まれる。
その後買い手に販売したり、また別の町に輸送したりするらしい。
攫われると必然的に奴らの本拠地に行けるという事になる。
という事で、標的になりやすいのは身元の不確かな旅人、
そして若い美しい処女だそうだ。
ここで俺の唯一のチートスキルの出番と言うわけだ。
【女体化】である。
本来は神共の夜の相手をするためのスキルだが、
なぜか今でも自由に使えるのだ。
因みにそれが理由で俺の見た目は男女共にとても美形に作られている。
今後一生使わないスキルだと思っていたがここに来て出番だ。
俺は町で購入した少し小さい旅装束を取り出す。
服を脱いで、スキルを使う。
因みにこのスキルを使うと若干の痛みが生じる上に、
姿が変わるのに時間が掛かる。
衣服にマントと袋の様な形のバッグ。
そしてベルトには賊から拝借した適当な剣。
自分の持ち物は全て【収納】に入れて置く。
今身に付けている物は全て無くなってもいい物だ。
ユキは【女体化】のことを知っているので驚かない。
「じゃあユキは町に戻っていて。」
「宿に帰ってもいいし、平原でのんびりしててもいいわよ。」
私はユキの装備を外しながら言う。
ユキは『気を付けてね』と言いつつ、
少し背が低くなった俺の顔を舐めて町の方に走っていく。
日が暮れる直前まで待ってから動き出す。
私は改めて道に戻り村に向けて歩みを進める。
一応設定としては東の方から遥々来た世間知らずの小娘だ。
名前はアナベルとか適当な名前にしておく。
髪はいつもみたいに縛らずにおろす。
神に調教されたおかげで女らしい仕草は完璧です。
何もかも女体化するおかげで脳内も若干だが女性っぽくなる。
不思議だね。
とぼとぼ歩いていると村が見えてくる。
村人もちらほら見える。
私はニコニコ笑顔で景色を楽しむふり。
冒険が楽しくて仕方ないって感じを出す。
楽しいフリ、気持ちいいフリ、感じているフリは神の国で散々やった。
だから慣れているつもりだ。
「お嬢ちゃん!独りで旅行かい!」
髭面強面巨漢オヤジが声をかけてくる。
「ええ!そうよ。」
ニコニコ笑顔で答える。
「そうかい、観光ならこの辺りの森は厄介な魔物が少ないから安全だよ。」
御親切に観光案内をしてくれる。
「そうなのね!少し森を見たいと思って来てみたの。」
「この村に来て正解だったみたい!」
「そうかいそうかい、それなら楽しんで行ってくれ!」
とアホ臭い会話を続ける。
普通、女一人で馬にも乗らずに来るわけないだろ。
と言うツッコミは無かった。
「それならうちの宿に泊まりなよ。」
因みにこの村の宿は一軒のみ。
早速食いついてきたようだ。
入れ食いとはまさにこの事。
「本当ですか!よかったー!」
「野宿でもしようかと考えていた所なんですよ!」
とワザとらしく喜んでみる。
「そうかい、それならおいで!」
男は慣れた様子で宿屋へ誘う。
って事で早速宿に行く。
村の中心まで行くと宿屋を発見する。
後ろ暗い事こんなに堂々やってるのはさすがに驚いた。
男に連れられて宿の受付をする。
男は宿帳の様な物を開く。
「では早速お名前は?」
「アナベルです。」
「身分証はあるかな?」
「どこかに落としたみたいで・・」
「ああ、よくある事だよ。」
男は笑顔で言う。
「どこから来たの?」
「王都の東から遥々旅をしています。」
「へー!すごいね、君みたいな子なら旦那か彼氏と一緒かい?」
「いえ、一人です。」
「別れちゃったのかい?」
私は照れた風に答える。
「いえお付き合いはまだ誰とも・・・」
モジモジしておけばウブっぽく見えるよね?
「そうなの?」
「綺麗な娘だから皆ほっとかないだろ?」
「そんな事ないですよ。」
普段なら普通の会話だろうと気にしないが、
改めて考えると攫うための情報を細かく聞き出している様子だ。
同行者の有無、身分が明確かどうか、男性遍歴など。
その後特に問題なく部屋に案内された。
ここは食事なし宿と水場の使用は可能。
それだけだが部屋の中はそこそこ良い。
結構清潔なベッドがある一人部屋だ。
暗くなってきたので適当に持ってきた食料を食べて寝る。
もちろん寝ない。
寝てるふりをして待つ。
夜中誰もが寝静まったであろうタイミングで部屋の扉が開く。
分かりにくいかもしれませんが、途中の会話で北の村の領主と町の領主の二人の領主が居ます。
あと貴族の事とかはあまり良く解っていないので礼儀作法とか話し方とか感覚で書いてます。
おかしなところがあればご自分の脳内で変換するかご指摘ください。




