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カナリアは、もう啼かない!  作者: 愛章
2章 地下の国の、カナリアたち
38/46

……ローブは預かってもらいました(1)

コリョウの町へ…

 カナリアに自由は無い。

 聖職者なので拘束こそされないが、勝手気ままに出歩く自由は無い。

 住民のため、カナリア自身のためにも、第三者の監視無しに住処の外を出ることは、基本的に許されていない。

 そんなワケで、これまで人目を忍んで旅をしてきたわけだが……。

 おれとウサギだけならともかく、カナリアである奴隷どもを連れて大きな町に入るとなると、さすがに監視役が必要だ。

 日常的に、修道院などの教会施設に隔離されているカナリア。

 教会の所有物であるカナリアを管理するのも、教会の役目である。

 これは主に、役職を持たない見習いが受け持つそうだ。開拓村ならば、司祭付きの助手がその担当だった。

 このルールはどの町や村でも変わらないらしい。

 実際、動けなくなったココを回収しにやってきたのも、コリョウの聖職見習いたちである。

 つまり、聖職見習いが一人でも居れば、カナリア連れでも堂々と町に入れるということだ。

 カナリアを除く聖職者は、全て黒の僧服を身につけている。

 司祭のような役職持ちは、赤や金の刺繍が入っているらしいが、一般の聖職見習いは無地の黒一色を纏うよう義務付けられている。

 その程度なら、簡単に化けられる……。


「――ネロ様が――というか、尻尾が服に?」


 おれは奴隷の尻尾を引き伸ばし、奴隷の全身と指先を包む、黒い僧服へと姿を変えた。

 この尻尾はおれが植えつけたもの。おれはこれと同化できるし、自在に操れる。

 服に形を変えるなど造作もない。


「へぇ、意外とそれっぽいじゃない。これなら一発で見破られる心配は無さそうね」


 一方のサラは、懐にウサギを隠している他は、いつもの白いローブ姿。長旅であちこち汚れているが、問題ないだろう。

 白一色のローブを着用することは、カナリアの義務であると同時に、その者がカナリアであることを意味している。


『あたしもネロさんみたいに変身できたら良かったのになぁ……』


 ユアさん頼りないし……と、聞こえるようにウサギが呟く。


「猫の服なんて絶対着たくないし、あたしまで変装したらややこしいじゃない。それに、この顔だけは隠せないんだから」


 サラの穢れは左目を中心に広がっている。

 フードをかぶり、伸ばした前髪で隠したところで、黒く変色した皮膚と真っ黒な眼球は誰の目にも明らかだ。


「サラちゃん…………」

「見習い連中はあたしをそんな風には呼ばないし、そんな顔もしない」

「――――うん」

『…………』

「まぁ、台本はてきとーに考えておくとして……ところでネロ、この服あんたが分離したらどうなるの?」

『愚問だな。これは奴隷の尻尾だ。おれが抜けた程度で、形状が崩れることはない』

「へぇ……あんたの尻尾って、わりと便利よね。艶もあって、いい肌触り。ねぇ、どんな着心地?」

「スースーして心もとないです。重さも感じないから、肌着一枚で居るみたいで……これ、ローブを下に着ちゃダメなんですか?」

『かさ張るから却下だ。裾や足元でバレたらどうする?』

「…………分かりました。なんだか恥ずかしいですけど、頑張ります」

『あと、非常時以外は両手を使うな。変装が解けるからな』

「はい、分かり――?」

「ユア一人の力だと、尻尾は変形できないってこと?」

『元はおれの尻尾だからな。形状維持はできても、奴隷に操作はできん。まぁ、あくまで非常時の話だ』

「そうね。非常時なら仕方ないわね」

「あっ、あるに決まってるじゃないですかぁぁ!」


 夕暮れの街道を、一人の聖職見習いと、それに従う一人のカナリアとして旅人に混じり、おれたちはコリョウを目指した。


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