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カナリアは、もう啼かない!  作者: 愛章
1章 おれさまは、猫である
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よみがえる猫(3)

声がする方向…

『さておき…………正直きさまがまだ生きているとは思わなかったぞ、レムル』


 ライラが拾った声は、落ちた獣の首から発せられていた。

 それは獣が自ら棄てた首。

 元は獣の本体であり、生き永らえるために獣と肉体を融合した結果、意思も力も次第に奪い取られ、挙句おれの支配下に収まることでしか獣すら制御できなくなった、まさしく抜け殻のような存在。

 首だけになって、ようやく自我のようなものを取り戻せたというのなら、笑ってやるのが情けというものだろう。


『…………ネ………ロ…………』

「本当に喋った!」

『今、ネロってー―』

『落ち着け。放っておいてもじきに死ぬ。が、このままではあまりに不恰好だ。奴隷よ、トドメをさしてやれ』

「……でもネロ様……このグリムさん、何だかさっきのグリムさんとは違います」

『ではきさまが責任をもって首を繋げなおすか? それでこいつが、本当に何もかも元通りになると、きさまは言い切れるのか?』

「……それは……」

『やれ。おれの手助けがあったところで、獣を殺したのは間違いなくきさまの意思だ。やるときは徹底的にやれ。それがきさまと、仲間のためだ。生半可な放置など敵意しか生まん』

「――ちょっと、ネロ。いくら何でも、これ以上は――」

「……大丈夫です、サラちゃん……私が、始めたことだから……私が、ちゃんと終わらせないといけないんです……」

「ユア……」

『…………』

「……ネロ様、この方のお名前は?」

『聞いてどうする?』

「お墓を作ります」

『…………レムルだ』

「レムル、さん……」

『どこかの猫のせいで長生きしすぎた、哀れな老犬だよ。ボス犬という生き物は、身内に殺されるくらいなら、猫にでも殺されたほうがマシと聞く。猫の奴隷ならばなおさらだろう』

「…………」


 触れるというより、なでるようだった。

 額がひび割れ、頭部全体が黒く結晶化してゆく。

 ――レムルは死んだ。

 もはや首をつなぎ直したところで、何一つ戻ることはないだろう。


『……ネロちゃん、そろそろ……』

『あぁ、分かっている。きさまは犬どもを指揮しろ。ひとまず撤収するぞ』

「撤収?」

『人間どもが来る。見つかっては面倒だ。奴隷は犬に任せて、きさまは死骸処理を手伝え』

「処理って……あんな大きな死体、どうやって?」

「私も手伝います。グリムさんと中の犬さんたちのお墓も作ってあげないと……」

「……分かった。正直もうヘトヘトで動きたくもないけど、今見つかったらどうなるのかなんて考えたくもない。ライラ、あとどれくらい時間ある?」

『今はまだ大丈夫。門の外の様子を伺っているだけ。でも部隊を再編成したら、こっちに来るまでそう長くはかからないでしょうね』

「その間に、犬を連れてあたしたちも身を隠す……死体が無ければ、しばらくは警戒して追ってはこられないし、あたしたちの生死も確かめようがない……心底嫌だけど、駄々をこねている場合じゃないわね」

『ぼやくな。この死骸はきさまらにとってただの重荷ではない。さっさと片付けて、次の計画に移るぞ』

「ネロ様、計画って?」

「やめておきなさい、ユア。どうせ眠いとか面倒とか言って、肝心なことは何一つ話さないんだから、この駄猫は」

『分かっているなら結構。貴重な睡眠時間のために、一刻も早く撤収作業にかかれ、奴隷ども』


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