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カナリアは、もう啼かない!  作者: 愛章
1章 おれさまは、猫である
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よみがえる猫(2)

サラちゃんのお説教中…

『――シッ――サラ、ちょっと黙って』

「ふざけないでライラ、あたしが一体誰のためを思って――!」

『お願い。少しの間、静かにしてちょうだい』


 真剣な表情と声に圧され、さしものサラも押し黙ってしまう。

 野犬どももライラの声に従い、風だけが草木を鳴らしていた。


『…………ェ…………』


『間違いない』

 ライラが目を見開いて立ち上がる。

『グリムの声よ。まだ生きてるわ』


「確かに、何か聞こえたけど……」

 サラは結晶化している獣の亡骸に目を向ける。

「頭はユアが粉々にしたし、活動も完全に停止している。さっきちゃんと確認したし、今だって……」


『そっちじゃない』


 ライラは亡骸とは反対方向の茂みを指差した。


『あっちから聞こえる』

「そんな……私は確かに、あのグリムさんを……」

『…………おい、奴隷。きさま何をやっている?』

「だって、早く立ち上がらないと……んしょ、よいしょ……」


 かろうじて動く手足をバタバタさせているだけで、背筋は地面にくっついたまま。

 脊髄そのものに異常はないが、神経系はおれが主導権を握ったままだ。動かせるはずもない。

 おれも疲れている。このまましばらく眠るのが、おれと奴隷のためでもあるが、仕方ない……。


『……全く、面倒なやつめ……奴隷よ。少しの間じっとしていろ』

「へ……って、うわわ……身体が、勝手に……?」


 奴隷をどうにか立ち上がらせると、そのままサラのところまで歩かせる。


「ちょっと、ユア――きゃあ」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

『おい。ボケッとしてないで、こいつを支えろ。こいつの身体はもうしばらく管理が必要なんだ。少しだけ動かしてやるから、あとはきさまが運べ』

「管理って……あんたがユアを操縦していたせいじゃない!」

『主人が奴隷を使って戦わせて何が悪い。アフターケアの必要が分かっているなら、文句を言わず運べ』

「あのぉ…………一体、何の話でしょうか…………?」

「ばかっ! あんた、さっきまでずっとネロの操り人形だったのよ! あんたひとりであんな化け物、相手に出来たわけないでしょうが!」

『猫聞きが悪い……。シンクロと呼べ、シンクロと』

「一方的に操ったことには変わらないでしょうが! こんなドジのウスノロに無茶させた結果がこのザマよ。主人を自称するなら奴隷の限界くらい考慮しなさい!」

『……確かに……こいつはおれの予想を超えるポンコツだった……それは反省している』

「――――ありがとうございます」

「はぁっ?」

「私、ひとりじゃ何にもできなかった。今だって、まともに歩くこともできていない。怖くて震えて立ち上がれないから、ネロ様が私を動かして、サラちゃんが支えてくれている……。私、強くなりたいです。ふたりのこと、ライラやみんなのことも、今度はちゃんと自分の手で守れるくらい……」

『…………とにかく、きさまは基礎体力からだな』

「というより、両手のリハビリが先じゃないかしら。ずっと両手が使えなかったのに無理な動きするから、肩とか腰とか、関節に負担がかかっているのよ。こればかりは、あんたのシンクロとやらでも解決できる話じゃないわ」

『……なるほど、面倒そうだ』


 いずれにしても、訓練など猫には眠くなるほど無縁の話だ。

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