3頭と征く(1)
犬さんにまたがる猫さん…
…見てみたかったです…
――ひとまず、犬どもの背に跨るのは止めにした。
「どうぞ、ネロ様。私の肩にお乗りください」
などと、奴隷が食い下がるものだから仕方ない。
奴隷がおれに代わって犬どもの側に付いていれば済む話だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
教会堂は村の中心よりやや南に位置している。
開拓が進み、農耕地となっているのが南側。
川も近いため、防壁は未開拓の北側に集中している。
防壁とは、高さ二メートルほどの丸太を並べて建てただけの、獣避けの壁。
これが扇形になって、村の北側を囲っている。
周囲には罠も設置されているため、うかつには迂回できない。
「……だけど、さっきのグリムが抜け道を見つけたということは」
防壁に近づくにつれ、戦闘が外側だけでなく、内側でも始まっていることにサラが気付いた。
グリム・ハウンドが通り抜けた道を辿るようにして、罠をかいくぐり、防壁の隙間から入り込んだ野犬どもが、警備隊どもに襲い掛かっている。
主力を門の外に集中させながら、内側から徐々に崩していく。
通常の野犬の群れではまず考えられない手口だが、グリムなら可能だ。
『――ライラ、あの子たちも操られているだけなら、あんたの声で止められないの?』
『やってみたけど、この距離じゃ駄目。それに……さっきと同じで、操っているグリムをまずどうにかしないと……』
一際大きな咆哮が、門の外側で今も続いている。
意味不明な叫び。
だが、それは犬どもにとって絶対的な命令。
あれが続く限り、ライラの声など届かない。
「……怖い、ですか?」
奴隷の足に、犬がすり寄っている。
防壁に近づくごとに、咆哮もより激しく響くのだ。
おれや人間どもにとっては、耳障りな叫びにしか聞こえなくても、犬どもにとっては耳の奥にまで入り込んでくる呪いに等しい。
命令系統がライラの穢れで上書きされてなお、精神と身体に影響を及ぼしている。
「……大丈夫です」
奴隷はかがみ込んで、犬の背中を撫でる。
「あなたも、あなたのお友達も……私だけじゃ頼りないですけど、サラちゃんにライラ……何よりネロ様が付いてくれています。だから、大丈夫ですよ……」
「…………」
『……と、いうわけだ。犬ども、きさまらも犬なら犬らしく、主人のために尽くすことだけを考えろ。きさまら哀れでみじめな捨て駒どものために、戦ってやると言っているのだ。逃げたければ、尻尾を巻いて逃げろ。だが、そうでないというのなら……』
「……ゥゥゥゥ」
『いいぞ。それでこそ猟犬だ』
奴隷の尻尾と、犬どもの尻尾が絡み合った……。




