1
第五章 過去
_____十数年前
「端羽君、この書類間違っているわ、貴方ね一体、何度注意したら分かるわけ」
「はい、すみません」
「すみませんじゃないでしょう、もういいわ上司に報告するわ…貴方クビよ」
…貴方クビよ…アナタクビヨ…
「…ビよ」
「パパ大丈夫?」
「あぁ…」
「最近疲れすぎているんじゃないの、寝ている時もうなされているわよ」
「十田居…」
そして、俺はとうとう仕事に行く事ができなくなってしまった。会社で繰り返されるパワハラ。
俺は、ストレス解消のはけ口ではない…
「あなた、病院に一緒にいってみましょう」俺は妻に連れられ病院にやってきた。
「眠ることが出来ないんですね。今は何もせずにゆっくり出来るようにしてください」
*
突然、人が変わったようになってしまったんです。
家に帰っても終始俯いていて暗い表情で。
結局、修也さんの仕事はやめさせたんです。
私は看護士なので、それなりに収入は頂いていますし。
こんなことになる前は、いつも明るくて優しかったんですけど…。
後から知った話なのですが、ボーリングをしに看護士仲間と行った時、隣のレーンに座った人が私の名前を聞いて
「端羽ってもしかして端羽修也の奥さん?」って話しかけてきたんです。
変わった苗字なので、ピンときたみたいで。
それで話をきいてみたら、修也さんの元同僚だったんですよ。
「大変でしたね、十田居さんって言う女が、自分が部長に気に入られたいからって修也さんの手柄を横取りしたりしたんですよね、あれは見ていて可哀相でしたよ。あともう少しだけ辛抱してれば良かったんですけどね、あの女、交通事故で身体痛めてやめるんですよ。これで自分も会社の厄介者がいなくなって清々するって」
そうやって言っていたんですよ…
こうやって話していると、今でもとても辛いです。
今も元気でいてくれたら修也さんも、あなたに会う事ができたのに。
練炭自殺なんて、苦しかったでしょうにねぇ…。




