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「小堺さんが悪いわけではありません。どうぞ、顔を上げてください。小堺さん、パソコンとかは得意です?」
「パソコンですか…?苦手です。携帯電話もようやくガラケーを卒業して、それが嬉しくて、モバイルバッテリーも購入したんです。子供が3人もいるので交代で使うのですぐに充電がなくなるのもあって」
「なるほど。あの日、家内が入浴している際に皆さんは一緒にいらっしゃったんですか?」
「大角 圭子です。食事を食べた後に温泉に入ろうと前々から話していましたので、心江には申し訳ないけど、私たちは入らせてもらう事にしました。心江も笑顔で見送ってくれました」小柄ででっぷりとしていて髪は短くメガネをかけている。
メガネがそういうと、全員がこっくりとうなずいた。
「本当に残念です。まさかこんなことになるなんて思いませんでしたから…」
「ゆかり、名前言わないと」とメガネが言う。
「あ、ゆかりです。境ゆかりです」という彼女の唇から八重歯が両端から2本覗く。
「もう一つだけいいですか?この中でパソコン自宅に持っている人いますか?」
そう言うと4人が全員手を挙げたのだった。
「使いこなせないだけで、持っていますよ、時代が時代なので」とおかっぱが答えた。
___その夜、僕は心江の遺影の前で、図書館で借りてきた絵本を開き「むかし、むかし、あるところに…」と読み始めてから全部を読み終えるまで、俺の目から涙が止まることは一度もなかった。




