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エリートウォーズ  作者: 流山治満
スキルスティーラー編
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ナスタチウム班⑧

 亘の触手が大島を貫いていた。

 最初に大島に湧いてきたのは疑問だった。


「バカな……なぜ……?」


 心臓を貫いた触手がコアとともに引き抜かれると、

 そのまま力なく体勢を崩していった。


 亘が使ったのは、持て余していた幻覚もどきのコア能力だった。


 もとはものごとの認識を数センチずらす程度になり下がったはずのコア能力。

 これがここにきて急に開花した、というわけではない。

 相も変わらず惰弱なままである。


 大島の万力は流転する(フォースバンク)によって動体を完全に静止させることは、緻密な業だ。

 数センチのずれが失敗を招く。


 先ほどと同じく、真正面から攻撃を受けて、動きを封じようとした。

 それが裏目に出た。

 亘はそこにほんの少し認識をずらすコア能力をぶつけることで、

 本来であれば通らないはずの触手を通したのだった。


 ドタッという大島の倒れた音が一瞬の静寂を破る。


 友江の叫び声が響く。

 そこへ引き抜いたコアを触手の先でくるくると遊ばせながら亘が迫る。


「こんな使い道があるとはなァ!」


 日々の鍛錬の成果もあって、友江はすぐに冷静さを取り戻した。

 しかし真坂のサポートがあったとしても、

 わずかに間に合わないことを悟る。


 しかし、亘の目に入っているのは友江の後方の真坂だった。


(角よりも王を優先するぜ!!)


 再び、真坂に向かって炎の壁が放たれる。

 先ほど見た速さから計算して逃げられない大きさにしている。

 仮にこれを防がれても炎を目くらまし代わりにし、

 懐に飛び込めばジエンドという算段だ。


 真坂は何食わぬ顔で速度を緩めさせ、

 横に飛んで回避を間に合わせた。


 亘もすぐに追いつく。

 思わず満面の笑みが出てしまうほど欲していた、

 その能力の持ち主のコアへ触手を伸ばす。


 だが、真坂のコア能力の発動とそれによるスピードの方が上だった。

 触手の間をすり抜け、

 風を切る音のするすさまじい拳を顔面に見舞う。

 亘はそれを間一髪で他の触手で防ぐものの、

 その衝撃で数メートル吹っ飛ばされる。


(能力のスイッチが速すぎる……!!

 同時に2種類は使えないようだが、

 そんなの問題にはならねえ……!)


 距離を取るべきか考えているうちに、

 友江もこちらへ突っ込んでくる。

 その突きは風を切るように鋭かった。


 油断したわけではないが不意を突かれ、間一髪で避ける中、

 友江が持ち直したとはいえ取り乱した一方で、

 真坂が一瞬たりとも隙を見せなかったことに亘は驚嘆する。


(精神の切り替えも速いなんてもんじゃねえ……!

 奴が強いのはコア能力だけじゃねえってことか)

 それでも、徐々に追い詰めてコアを奪い取ろうとする。

 しかしその度に真坂が適格な位置でカバーしてくるため、

 むしろ形勢が徐々に悪くなっていく予感がした。


 今度は友江が触手をかわしながらやや後ろに下がり、

 真坂が入れ替わるように前に出てくる。


(ここだッ!)

 亘の体が翡翠色に薄く光る。

 先ほど大島を葬ったのと同じものだ。

 当たると確信しながら触手を真坂のみぞおちに向ける。


(もらったァ!!)

 歓喜の表情を浮かべていたせいか、

 一瞬、触手の1本に衝撃が加わったことに気付けなかった。


 亘の突きは当たるどころかすべていなされ、

 逆に一撃をもらっていた。

 大島と違い真坂は数センチ単位の精密さを必要としない。

 そのため、亘の幻覚は問題にならなかった。


 真坂が攻撃した触手は大島のコアを抱えていた触手だった。

 コアは飛ばされて舛森の近くに落ちる。


 舛森はキョトンとしながらも、

 思いっきり踏み潰した。

 パリンとガラスの割れるような音が響く。


「お前ぇぇ!!」

 亘の怒号に、逃げ出したくなる舛森であった。

 真坂は余裕の表情を崩さない。

 その一瞬の隙に亘の足元を掬い体勢を崩そうとする。


 亘は触手を使ってうまく着地し、

 その勢いを利用して追撃をかわしやや距離を取った。


「よくやった。被害は最小限に抑えられた」

 真坂は舛森に向かって指で合図を送ると、

 いったん友江の方まで下がった。


「奴は持っていた隠し玉を使ったんだ。

 これでおそらく奴のコア能力は全部だ」

 友江は黙って頷いた。


「あとは倒すだけだ。

 僕たちならできる」

 友江は強く頷いた。


(こうなったらアイツのコアを意地でも取る。

 でないと骨折り損だ)

 亘は躍起になっている。

 だが、自らの状況の危うさは自覚していた。

 周りをキョロキョロと見回しながら思考を巡らす。


(宮島は攻撃向きじゃねえし、

 油井にはもう期待できねえ。

 手札は使い切ったぞ畜生が)


 遠距離戦にしようとすれば、

 こちらの攻撃は真坂に防がれるうえ、

 1人では防げない雷が落ちてくる。

 かといって近接戦ではこのザマだ。

 それでも諦める気はさらさらなかった。


(それなら……)

 再び走り出す。


「一点突破だ!!!」

 向かったのは真坂の方ではなく、舛森の方だった。

 舛森は顔を真っ青にして半狂乱で逃げ出す。

 ちょうど真坂たちと舛森の間に亘がおり、

 真坂たちのいる方とは反対に駆け出した。


 それでも、真坂の影響下でそれなりの速さがあった。

 むしろ、追いかけている亘が後ろから迫る真坂たちに追いつかれそうだった。


(くそっ、はええよ!!)

 追うのを諦めた亘は前に飛んだ。

 着地の際に触手が力を受け、

 バネのようにして来た方向へと飛ぶ。


 後ろをほとんど見ずにやったので真坂たちには避けられたものの、

 すれ違いざまに攻撃を食らうこともなかった。

 直後に、正面の真坂たちに炎をごうと吐いた。

 友江が作り出した水の壁によってそれは安々と防がれる。


 そのままの勢いで、再び着地時に触手をバネにして前方に飛ぶ。

 2~3メートル先で着地し、

 真坂たちの方へと突っ込んでいく。


 一瞬、亘は舛森の方をキッと睨む。

 雷の命中を各段に上げているのは、舛森の操るカラスだ。

 舛森を葬れば遠距離に持ち込めると考えた。

 

 しかし、真坂はそれを許さない。

 少しでも舛森の方へ目を向けると、

 その隙を突いて一手詰めていく。

(舛森くんには悪いが利用させてもらう)


 コアは見えない位置にあるが、

 手探りでも入れられるところに一撃を入れる。

 幸い、コアがある場所ではなかったようだが、

 右腕に蹴りを貰った亘は思わず顔を歪める。


 真坂は再びアドバンテージを稼ぎ、一撃を見舞う。

 今度は脇腹に蹴りを貰った。

 亘は着実にダメージを与えられていく。


(ジリ貧だ。

 あのままじゃ負ける)

 その様子を倒れながらも見守っていた油井は決意を固める。

 力が入らない状態であったが、体を震わせながらも立ち上がった。


 

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