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エリートウォーズ  作者: 流山治満
スキルスティーラー編
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ナスタチウム班⑦

(しかし、よりによってあの能力が残っているなんてな)


 気が付くと、上空に再び入道雲が発生し始めている。

 ちょうどこの公園だけに範囲が及べばいいと言わんばかりのお手頃サイズだ。

 その分精製は速く、既にゴロゴロと不穏な音が聞こえ始めた。


 亘は値踏みするように真坂たちを見据えている。

(今のでだいたいの能力もその強化による速さもわかった。

 わかっていれば対応できなくはなさそうだ)


「亘さん……!」

 ミノムシの声をかき消すように亘は再び走り始める。


(他には主だった遠距離攻撃はねえ!

 だから、厄介な雷が落ちてくる前に終わらせるッ!!)


 最初に出していた避雷針代わりの水晶はまだ残っていた。

 亘は短期決戦とすることを選んだ。

 避雷針の有効と思われる範囲から外に出る。


 次の落雷は亘の予想に反してすぐだった。

 猛突進するかのような勢いで真坂に迫り、

 その距離が20メートルほどまで差し掛かったときだった。


(目くらましにでもなれば十分ッ!!)

 友江の速攻に舛森も呼応して、

 亘の頭上に雷を誘導するためカラスを飛ばしていた。

 一瞬ではあるが、まばゆい閃光とともにパンと物が破裂したような音が響いた。


 しかし、亘は健在だった。


「!?」

 友江は亘の後方をじろりと見た。

 そこには震えながらも右手を上空に向けている油井の姿があった。


 思わず後ろを振り向いた亘と目が合うと、

 油井は力のない表情ではあったがニヤリと笑った。

 その瞬間、亘はとあることに気付く。


(今までのはやはりあの電気使いが防いでいたのか……!

 だけど今のが限界だったならこれでもう防がれない!)

 強気を取り戻した友江は、再び落雷を使おうとする。


 だが次の攻撃をする間もなく、

 亘が欲望に満ちた邪悪な笑顔を浮かべて迫った。


「油井ィ、お前の意図、読み取ったぜぇ」


 一方の真坂は、大島にとある確認をしていた。

「大島くん、さっきの一撃は100%、

 つまり隠し玉をすべて消費した一撃だったのかな?」

「いや、違う。

 とっさに目隠しをされて、

 確実に当てられるかが怪しかったからセーブしたんだ」

「なら、問題ないね。

 次で仕留めよう」


 亘は10メートルほど迫ったところで立ち止まった。

 やや上方に炎を発生させ、それを薙ぎ払うように真坂たちに向ける。


(ここで落雷の準備を取りやめるわけにはいかない。

 ちょっとくらいなら真坂さんがカバーしてくれる……!)


 積乱雲を操っている友江は、

 亘の炎を防御するのに必要最小限の大きさの壁を作った。


 予想通りの展開に亘は思わずほくそ笑む。


「コアまで焼けんなよ!!」


 そう叫んだ瞬間、炎は爆発しながらさらに強大な熱風となり勢いを増し、

 水の壁を超える大きさで迫り真坂たちを包んだ。


 油井が大量の水を電気分解し、

 発生させた酸素を散布した意図に亘は気付いていた。


 亘本人にも肌がヒリヒリとするような熱気が伝わってきた。

 周りの木々も小さな火が点々と燃えている。


 熱気の中で目を凝らしながら真坂たちの状態を確認した。

 彼らは健在だった。


 爆発の瞬間に真坂は領域の法則を変更していた。

 炎の温度で焼けない空間となっていた。

 さらに、爆風の衝撃は大島が吸収していた。

 すべて打ち合わせ通りだった。


 会心の一撃を防がれたとはいえ、

 とっさの出来事に気を取られている友江に亘は突進していった。


「お前は接近戦は苦手だろうなァ!!」


 領域の法則が変わって身体能力の向上が解けている今の状態であれば、

 接近戦を得意とする亘なら一人くらいはコアを奪えると直感した。


 しかし、そんな期待も虚しく、

 友江が一瞬で後ろに下がる一方で、

 すぐさま大島が横から迫っていた。


(近距離も遠距離も隙無しかよ!!

 しかもタイムラグもほとんどねえってのか!!)


 このままでは先ほどのようにやられる。

 次はもうコアだけでは済まされないかもしれない。


 焦燥の中、亘はふと最初に手にしたコア能力を思い出していた。

 もともとは強力な幻覚を発生させるもので、

 物理的な攻撃タイプの亘は翻弄され悪戦苦闘したが、

 味方の犠牲によってできたわずかな隙をついて敵のコアを貫いたのだった。


 それだけ苦労して得たものに、期待を安々と裏切られた。

 それは幻覚レベルには程遠く、

 相手の認識をわずかにずらす程度のものだった。

 そのくせ、消耗が思った以上に激しく、

 戦いに明け暮れる日々の中では鍛錬する気にもなれなかった。


 最初に奪って得たコア能力が惰弱だったために、

 亘が本来持つ触手に頼らざるを得ず、

 今のレベルまで磨かれたのだった。


 その後も次々に新しいコア能力を得ても、

 最初に得たこの能力だけは、

 使いどころがいまひとつ見つからず腐らせていた。

 ふと思い出し使い道を考えては、

 わずかな嫌がらせ程度にしかならないことを悟り肩を落としていた。


(このコア能力、使うタイミングあるのか?)

 ときたまそう自問自答することがあった。


 しかしそれは走馬燈ではなかった。

 大島が迫って来る中でのほんの刹那の間ではあったが、

 その直観的な閃きをすぐに実行に移す。


(イチかバチかだ……!!)


 群青色の光の球となってこちらに突進してくる大島に対して、

 亘の体も呼応するように薄い翡翠色の光を放つ。

 大島の拳と亘の触手が交差する。

 水気のある音が響いた。

 

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