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風を感じさせてくれた人~ホンダ ゴリラ~

「ヒロシさん、最近調子が悪いみたい。」



久し振りにその名前を聞いた。そして、その懐かしい人が体調を崩しているというのを聞き、心がざわついた。



「まだ若いのにアツルハイマーなんじゃないかって。」



ヒロシさんと最後にあったのはいつの事だろうか?本当に小学生か中学生以来、数十年会っていないと思う。実家の義姉さんにその話を聞いたときに頭に浮かんだ姿は、多分、ヒロシさんがまだ20代の頃の事だったように思う。



お兄さんのノボルさんは、何年か前に亡くなってしまったのだが、その数年前に、東京に息子のバスケットボールの全国大会を観に来るということで、うちに一晩泊って行った。それが、ノボルさんとの最後の日だったのだけど、ノボルさんとは定期的に顔を合わせていたので、その時のノボルさんの姿が僕にとってのノボルさんの印象だ。



だけど、ずっと会っていなかったヒロシさんは、最後にあった20代の姿のまま、僕の心の中で止まっている。多分、今のヒロシさんに会ったとしたら、月日の過ぎた長さを痛いほど感じてしまうだろう。そして、ヒロシさんも僕の姿を見て、僕だということに気が付かないだろう。



くるくるパーマのかかった長髪で、眉毛はゲジゲジ、髭はぼうぼう、ニキビの跡で肌がぼこぼこという山賊のような風貌のヒロシさんだったけど、笑顔が可愛くて、人懐っこくて、頼れる兄貴分のノボルさんとは違い、自由で優しい人だった。



「たくちゃん、ちょっと後ろに乗るかい?」



いつもヒロシさんが乗っていたホンダのゴリラ。大きな体格のヒロシさんが乗ると、本当にサーカスの熊のような感じに見えた。



「うん!乗ってみたい!」



50CCの原付だったから、リアシートは無く、後ろの荷台に乗った。足はぶらぶらさせている代わりに、ヒロシさんのお腹にギュッとしがみついた。



「じゃあ、いくぞー!」



快晴の夏の日、田んぼと田んぼの間の道を走る。



自分が頭の中で思い描いていたバイクという乗り物とは違い、本物のバイクは荒々しく、乗り心地が悪く、心地よいものではないかもしれないと思った。



でも、顔に感じる風は心地よく、このバイクがあれば、どこへでも行けるのではないかと思った。



「どうだ?楽しいかい?」



「う、うん!ちょっと怖いけど!」



「ははは!」



僕はバイクが好きだ。



もしかしたら、車よりも好きかもしれない。その自由さと不自由さがとても魅力的だ。天気が良くて、ちょっとでも時間があれば、こんな寒い時期でもバイクを走らせてしまう。その魅力はやはり、「風」にあるんじゃないかと思う。



寒い峠道を風を感じながら走っていると、なぜだかもう会えない人や遠く離れた人とのつながりを感じる気がする。自然を感じることと、危険に身を晒すことと、どこかへ向かうということが、僕の中の原始的な感覚を刺激しているのかもしれない。ヒロシさんは、そんな大切なものを教えてくれた人だ。



ヒロシさん。僕、あの時教わった風を今も感じていますよ。



またいつか、ヒロシさんのゴリラの後ろに乗せてください。

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