二三言目 はい 【最終話】
辺り一面に紫桔梗の花が咲いた。
そしてそれは僕を、僕の隣にいる紫桔梗を中心に咲いている。
紫色の長い髪の毛、綺麗な顔立ち、白と紫のヒラヒラした服装(着物)で、いつの間にかそこに存在していた。
いつのまにか、ではあるけれど。
不思議と違和感はなかった。
【主人様、敵はあやつらで良いのかしら】
そうだよ、数が多いけど大丈夫?
【数なんて問題ではありません】
そう言うと、紫桔梗は周囲の仲間たちにふわりと指示をだし、ツタを伸ばした。そのツタは恐ろしく速く、そして広範囲に渡って、ゴブリンの大軍を目指した。
【私は忘れません、主人様に育てて貰った事を】
ほんの瞬きの間にゴブリン、そしてゴブリンロードまでもを捉え、拘束した。圧巻だ。
【私は忘れません、主人様が夜通し守ってくれた日々を】
そのツタの拘束は強力で、全てのゴブリンたちは身動き一つとれず、足掻こうとするそれらは何一つとして許されなかった。
【私は忘れません、主人様がくれた土の味を】
カランと、また一つカランと、手に持っていた武器を落としていくゴブリンたち。空いた手でツタをなんとかしようともがくも、意味をなさず。
【主人様が望むなら、私は永遠につかえましょう】
ぼとり、ぼとりと、今度は動かなくなったゴブリンたちが地面に落とされていった。
【我が名は紫桔梗、トキ】
そして、あの騒がしくも、危険な空気は一変。
【主人様に育てられた、一粒の種にございます】
眼前に広がるのは、ゴブリンの山と、誇らしげな果樹園の姿だった。
「アルス、貴方一体……」
「ヴィオラ!」
「な、何よ」
「果樹園、無事だったよ!!」
「見れば分かるわよ、全部貴方のお陰ね」
「違うんだ、僕じゃないんだよ!」
「隣にいた人?」
「そう! トキさんって言うんだ!」
「その人はどこに行ったのよ、お礼の一つも言えてないんだけど」
「ここにいるよ?」
「は?」
僕は手を差し出した。
そしてそこには先程までとは少し姿の変わった、紫桔梗の種があった。
種は紫色にまんまるになり、1センチ程の珠になってしまった。
不思議だ。
「……まぁいいわ、それも含めておいおい聞くから」
「え?」
「出て行くなんて言わせないわよ」
「え!?」
「もしどうしても。出て行くって言うのなら」
「……!」
「私もついて行くわ」
「ええええええええ!!!!!」
「そんなに嫌がらないでよ、帰るわよ」
「はい」
そんな事があって、ひとまず帰る事にした僕だけど。
村を出てわかった事は、どこに行っても僕には畑しかなくて、
僕がふりまわされてるくらいが丁度いいって事だった。
【完】




