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第八話 ギルドマスター


「いや~、何事も無く済んで良かったよ」



 そう言いながら出てきたのは、髭を蓄えた中年男性のギルド職員であった。


 ・・・今度は、誰よ?



「あっ!? あの人は!?」


「今度は、誰かな?」


「リチャードさん、ここの冒険者ギルドの支部長で、ギルドマスターですよ」



 私の獣の耳がリバティとジムの小声を拾う。


 なるほど、ここのギルマスか。


 人当たりの良さそうな顔をしているが、その物腰、一挙一動で分かる。


 このギルドマスター、強いわね。


 おそらくは、元冒険者、それも高ランクだろう。



「ギルド内での揉め事となれば、ギルドカードの剥奪モノだからね」



 リチャードは、そう言って、ブライアンに視線を向けると、ブライアンはバツの悪そうな顔をした。



「・・・マスター、ブライアンには、俺が良く言っておきますので」


「ふむ、ここはアクセルくんに免じて、お咎めは無しにしておこう、ブライアンくん反省しておきなさい」


「はぃ・・・」



 格上のアクセルと、ギルドマスターのリチャードを前に、巨漢のブライアンが小さく見える。


 はっはっはー、私を馬鹿にした報いだ、ザマーミロ。



「さて、私は、この冒険者ギルドの支部長、リチャードだ、よろしく」


「シャオよ」


「シャオちゃんか、良い名前だね、所でギルドカードは持っているかい? 持っているのなら見せて貰いたいのだがね」



 私は、自分のギルドカードを取り出すと、ギルマスに手渡す。



「失礼・・・氏名『シャオ』・・・狼族の『闘士』・・・ほぉ『Cランク』冒険者か」


「Cランク、こんなガキンチョが、俺より上のランクだと」


「・・・ブライアン、だから言っているだろう、見た目で判断すると痛い目を見るぞ」



 Cランク冒険者と言う言葉に、周りのギャラリーたちがざわつき始める。



「この毛皮、見せてもらっても良いかな?」


「どうぞ」


「ありがとう、どれどれ」



 ギルマスはそう言うと、広げているビッグベアの毛皮の前で跪く。



「・・・本物だな・・・それにしても見事な毛並みだ、普通この手の魔獣を討伐した際には、剣撃や魔法でボロボロになるはずだが、それらしい傷が見当たらない・・・凄いな」


「あの、僕とネモも攻撃したんですけど」


「馬鹿、俺達の攻撃なんてノーダメージだったんだよ、言うなよ、恥ずかしいだろ」



 私の獣の耳がジムとネモの小声を拾うが、聞かなかった事にしてあげよう。


 ギルマスは、暫くの間、毛皮を見たり、触ったりして、考えたり、一人頷いたりすると。



「メグ、ビッグベアの目撃情報は、無かったんだな」


「はっ、はい、今朝の時点で、目撃情報はありません」


「シャオさん、このビッグベアを討伐した場所は、分かるかな?」


「場所ならそっちの二人に聞いてもらえる」



 私は親指を上げ、ジムとネモを指差す。


 こう言う事は、地元の冒険者の方が正確な場所が分かるでしょ。


 ギルマスは、受付嬢のメグに指示を出すと メグがカウンターの奥に入って行き、少し大きめの地図を持ってくる。


 持って来た地図をギルマスに手渡すと、ギルマスはその地図を広げ、ジムとネモに目撃場所と、討伐場所を聞いている。


 地図を見ながらギルマスが考え込むと、今度はアクセルを呼び、何やら作戦会議を始めてしまった。


 どうやら森の調査を依頼するみたい。


 確かに脅威度Cランクの魔獣が、あのビッグベアが一匹とは限らないからね。


 それに見た所、ここに居る冒険者の中で、ビッグベア程の魔獣に対抗できるのは、Bランク冒険者のアクセルとか言うモヒカンと、ギルマスくらいか。


 アクセルとギルマスの会話で、魔導師協会に協力を要請、領主に報告と言う言葉が飛び交っている。


 やれやれ、面倒な事にならなければいいけど。


 私は、腕組みをしているリバティの傍で呟く。



「何だか、おおごとになってきちゃったわね」


「そうだな」


「私は、素材を売りたかっただけなんだけどな~」


「そうだな」



 相変わらず、言葉少ない返事だ。


 リバティとは、約束はしていないが前の町からこの街までの、二人旅と言う感じがしていた。


 この冒険者ギルドから出たら、別々になる。


 だから私は、ここで自分が思っている事を話そうと思った。



「ところで、ビッグベアの毛皮を売ったお金は、半々で良いわよね」


「あの魔獣を倒したのは、シャオだろ、君が全額貰えば良い」


「そうは言っても、リバティお金持って無いんでしょ」


「かまわないさ、元々お金なんて縁の無い、山暮らしだったんだ」


「それならさ・・・私と・・・冒険者パーティーを組まない?」



 この街に来るまで、ずっと言い出せずにきた言葉だ。


 答えは、すぐに来ない。


 ギルド内の喧騒が、待つ身になった途端、妙に気になりだしどうにも耐え難い。


 私は、その雰囲気に耐え切れず、自分から会話を繋ぐ事にした。



「リバティ、私より世間に疎いでしょ、なんか危なっかしくてさ」



 私は、リバティがどんな顔をしているのか見たくて、瞳だけて使って彼の表情を探る。


 リバティの表情は微動だにしないが、別に私を邪険にしているのではなさそうだ。


 しばらくして、リバティが口を開いた。



「そうだな、確かに、山暮らしで世間の事が全く分からない、ここは頼りにさせてもらうか」



 よっしゃーーーーーーーーー!!!!!!!!!


 期待していた返事に、私は心の中でガッツポーツをとる。


 意識していなかったが、私の腰から垂れ下がった獣の尻尾がブンブン振り回っていた。


 人の国に来て以来、リバティ程の強い者は、お目にかかっていない。


 その強い男と共に旅が出来ると思うだけで、私の頬が自然と上がる。


 ちなみにその笑みは、他の者から見たら、とても悪い顔をしていたらしい。



「それに、君といると退屈しなさそうだ」


「それって、私がトラブルメーカーみたいじゃない」


「違うのか?」


「・・・」



 私が言い返せないでいると、作戦会議が終わったのか、アクセルが他の冒険者に何か指示を出すと、ブライアンと共にギルドから出て行く。


 ギルドマスターのリチャードも、ギルド職員に指示を出すと、職員たちが一斉に散らばって行く。


 冒険者たちが出て行くのを確認すると、ギルマスが私たちの方へと歩いてくる。



「すまない、待たせてしまったね」


「構わないわよ、この毛皮を買い取ってくれるならね」


「うむ、その事なんだがな」



 えっ、何、買い取れないとか勘弁してよ。



「どうだろう、オークションにかけてみないかい?」


「オークション?」


「これだけ立派な魔獣の毛皮だ、大枚叩いてでも買いたいって言う貴族は大勢いるはずだ、こちらとしても買い取るよりもオークションでの手数料を貰った方が良いのだが・・・どうかな?」



 確かに、オークションに出品して値を上げてもらった方が、より高値で買い取ってもらえるだろう。


 だけど、そうなると問題があるんだよな~。



「オークションに出したら、どれくらいの日数が必要なの?」


「・・・そうだな・・・告知や周知を踏まえると・・・一週間以上はかかるかな」



 やっぱり、結構日数が必要だよね。


 ん~、困ったな~。



「何か問題でも?」


「実は、文無しでさ、宿に泊まるお金も、ご飯を食べるお金も無いんだよね~」



 私が懐事情を説明すると、ギルマスが少し考え。



「このギルドの隣の別館が、ギルドの経営する宿なんだが、そこに泊まるのならオークションが終わるまで支払いは、ツケで良いし食事もここの食堂で食べるのなら同じくツケで良いが、どうだい?」



 私にとっては、悪くない提案だけど、ここには、文無しがもう一人いるんだよね~。



「私の連れも良いんなら、その条件で構わないわ」


「君の連れと言うのは、そこにいる黒髪の青年の事かな?」


「そうよ」



 ギルマスが、私の隣にいるリバティを注意深く観察する。



「君の名は?」


「リバティ」


「彼女のギルドカードには、君の名は無かったが、彼女とは、どう言った関係なのかな?」


「前の町で知り合い、ここ数日間、一緒に旅をした」


「ギルドカードは、持っているかな?」


「いや、ここで作る」


「それで、私とパーティーを組む事になったから」



 ここはキチンと念を押しておかないとね。



「・・・良いだろう、君たち二人の宿泊代と食事代は、ツケで良い」



 ギルマスは、顎髭を撫でながらそう答えると、受付嬢のメグを呼び寄せる。



「メグ、悪いが彼のキルドカードを作ってやってくれ、その後、シャオさんとパーティー登録をしてくれ」


「はい、わかりました」


「それと彼らの宿泊費と食事代はツケに、それからビッグベアの毛皮は、オークションにかけるので手配を頼む」


「了解しました」



 ギルマスの指示を受けたメグは、他の職員に指示を出し、ビッグベアの毛皮を運び出させる。



「後の事は、彼女に聞いてくれ、私はこれから領主の所へ行き魔獣の報告と、万が一に備えて街の警備の強化をしてもらってくる」



 そう言って、ギルマスは、ロビーから出て行った。


 やれやれ、しばらくは、この街に滞在する事になりそうだ。



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