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第六話 冒険者ギルド


「へぇ、始めてきたけど、良い街じゃないの」



 ジムとネモに案内されて街の門をくぐると、悠然と並ぶ建物に、通りを行き交う人々。


 私が人の国に来て、見て来た村や町がチンケに見える街並みが続いていた。


 広い通りには露店が立ち並び、その露店からは、食欲をそそる良い匂いが私の鼻を刺激する。


 おっ、あの肉の串焼きは、美味そうだな。


 向こうの吊るした肉を削ってパンに挟んでいる食べ物も旨そうだ。


 く~~~、目移りしちゃうじゃない。


 ハッ、いかんいかん、これじゃ田舎から出てきたお上りさんじゃないか。


 ふと我に返り、振り返ると、微笑ましい笑顔を向けているリバティに、苦笑いを浮かべるジムとネモ。



「何だよ、私を食いしん坊みたいな目で見やがって、育ち盛りなんだよ、成長期なんだよ、成長期」


「成長期っスか」



 そう言ったネモの視線が、私の胸を見たのを、私は見逃しはしない。



「ごら、ネモ! 今どこ見て言いやがったっ!!」


「いえ、なんでもないっス」



 私の怒気に、ネモがサッと顔を背ける。



「あ”ぁ!!? 私の胸が小さいってか!?」


「いや、その、思ってませんから」


「どうせ男は、みんな巨乳好きなんだろう」


「まぁ、胸は大きい方が・・・」


「ぶっ殺す」


「うわぁ、すんませ~ん!」



 脱兎の如く、その場から逃げ出すネモを、私は追い駆ける。



「面白い友人だね、もう仲良しになってる」


「すみません、悪い奴じゃないんですけど、お調子者で」



 恐縮するジムの横で、巨大な毛皮を丸めて、まるで丸太を担いでいるように見えるリバティが、私とネモの追いかけっこを眺めていた。





 ネモを軽く小突いた後、冒険者ギルドへと案内をしてもらう。


 今の私とリバティは、お金が無い。


 お金が無ければ、宿にも泊れないし、何より飯が食えない。


 手っ取り早くお金を手に入れるには、討伐したビッグベアの素材をギルドに買い取ってもらうのが一番だろう。


 ジムとネモに案内された大きな建物の入り口で立ち止まると、私は、その建物を見上げた。


 デカい、三階建てかよ、私の知ってる冒険者ギルドじゃねえ。


 私とリバティが建物を見上げていると、ネモが扉を開け入って行くのでそれに続く。


 中に入ると広いロビーに大勢の冒険者、窓口のカウンターで応対する受付嬢たち。


 壁には大きなボード、これには冒険者への依頼が張り出されるのだろうが、時間が時間だけにほとんど残っていない。


 ギルドの奥は、食堂兼酒場になっていて、依頼を終えた冒険者たちが食事や酒盛りをしている。


 とにかく広い、私の知ってる冒険者ギルドは、もっと小ぢんまりとした木造建ての酒場みたいな所なんだけどな~。


 私がギルド内を見回していると、ネモが一目散にカウンターへと走っていく。


 丁度空いていたカウンターには、金髪ロングヘアーの受付嬢が座っていた。



「メグさーん」



 走ってくるネモに気が付いたのか、受付嬢が笑顔で対応する。



「お疲れ様です、ネモさん」



 どうやらネモとは、顔見知りの様だ、それにしても。


 うーむ、見事な営業スマイル。


 これが俗に言う『出来る女』って奴か、何と言うか才女感があるな。



「はいこれ、依頼されてた薬草、一杯採れたから」


「お預かりいたしますね」



 ネモが薬草入りの袋とギルドカードをカウンターに載せると、受付嬢のメグが中を確認し、他の職員に袋を渡すと何か指示している。



「それで聞いてくださいよ、メグさん、今回はマジでヤバかったんスよ」


「前回はレッドドラゴンに襲われて、その前はヒュドラに襲われたんでしたっけ、今回は何に襲われたんですか?」


「今回は、ビッグベアに襲われたんスよ」


「それは、怖いですね~」


「いや、今回はマジなんスよ」



 ネモが受付のお姉さん、メグに必死にビッグベアに襲われたと説明するが、完全に受け流されている。


 哀れだ、普段から大口を叩いているから、いざって時に信じてもらえない。


 こう言うの何て言うんだっけ、『狼少年?』人狼への風評被害だ。


 そんな事を考えていると、ジムがカウンターに歩いて行く。



「メグさん」


「ジムさん、お疲れ様です、依頼の品なら、ネモさんが先ほど納品されましたよ、手続きを致しますのでギルドカードを提出してください」


「はい、それよりメグさん、ギルドマスターに取り次いでもらえませんか」


「何かありましたか?」



 ジムの真剣な雰囲気に何かを感じ取ったのか、ギルドカードを受け取った受付嬢のメグは、座り直し聞く体勢になる。



「脅威度Cランクの魔獣ビッグベアに襲われました、その事を至急ギルドマスターに報告を」


「ビッグベアですって!? 怪我はありませんでしたか!? 遭遇した場所は!? 何か証明出来るモノはありますか!?」


「あの~メグさん、俺の時と対応違くないっスか」



 これはあれだな、普段からの行いの差ってやつだな。



「怪我の方は大丈夫です、遭遇したのは街の近くの森の中、証明になるか分かりませんが、これが襲われた時のモノです」



 そう言ってジムは、ボロボロに切り裂かれた三角帽子をカウンターに置いた。



「あっ、それ俺の帽子じゃん、拾っておいてくれたんだ」


「これは・・・確かに、何か鋭い爪で斬り裂かれて、よくご無事でしたね」


「俺、運が良いっスから」


「僕が助けたんだけど」



 無残にも切り裂かれた帽子を手に、メグが血の気の引いた顔をしている。


 それに対し、ネモはあっけらかんとした口調で答える。


 私が助けに入る前に襲われてたみたいだけど、結構ヤバイ状況だったみたいだな。


 まぁ、私とリバティが駆け付けた事自体が、運が良いとも言えるけど。



「それで、その後は、どうなったんですか?」


「旅の冒険者の方たちに助けてもらいました」


「・・・ビッグベアかどうかは判断出来ませんが、凶暴な魔獣がいる事は分かりました。

 あなた方を助けたと言う冒険者たちの安否も気になりますので、ギルドマスターにお話しして魔獣の対策と、冒険者パーティーの安否確認を検討してもらいましょう」


「あ~、その事なんスけど・・・」


「なにか?」


「ビッグベアは、その冒険者の方が、既に討伐しました」


「・・・はい?」


「なので、ギルドマスターに、ビッグベアが居たと言う事を報告してもらいたいんですけど」


「ちょ、ちょっと待って下さい、脅威度Cランクの魔獣ビッグベアを倒した冒険者パーティーがいるんですか!?」


「冒険者パーティーって言うか、一人ッス、一人で魔獣ビッグベアを倒しちゃいました」


「脅威度Cランクの魔獣を一人で倒すなんて、そんなまさか」



 驚きと驚愕で混乱でしている。


 まあ、脅威度Cランクの魔獣が居て、それを一人で倒した冒険者が居るって言われたら、その脅威を知ってる者からしたら混乱するでしょうね。


 受付嬢の慌てふためく姿を見ているのも面白いが、流石にそろそろ会話に参加しますか。


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