第二十話 秘密結社
「・・・!? 本当に彼らはそう言ったのか!?」
「そ、そう言ってたけど、何? ギルマス、何か知ってるの?」
「う・・・む・・・まぁな・・・」
リチャードは、顎髭をせわしなく触り、気を落ち着かせてからゆっくりと喋り出す。
秘密結社『青薔薇団』
それは、世界平和を目論む秘密組織の名であった。
世界平和ね~、それだけで胡散臭さ100%だわ。
この世界は、魔族からの侵略に度々晒されて来た。
その度に、『勇者』と呼ばれる者たちの力によって、魔王と呼ばれる者を退けてきた過去がある。
しかし、いつまでも不確定な勇者にばかりに頼ってはいられないと、人々は考えた。
その為、人類は、勇者に頼らず、自分達で魔王を倒す為、世界各国の協力の元、優秀な魔導士・錬金術師・鍛冶師・聖女などを集めた、対魔組織を作ったのである。
『不可能を可能に』との願いを込めて、その組織名を『青薔薇団』と名付けられた。
彼らはとても優秀で、対魔族用に聖剣や魔剣と呼ばれる武具をいくつも造り出した。
あのノインって女剣士が持ってた斬魔刀とか言う、超ド級の大剣の事だな。
あの後、リバティからあの馬鹿デカい剣が聖剣だったと聞いている。
あんなモノを何本も作ってたのかよ。
って言うか、あんな馬鹿デカい剣を扱えた奴とかいたのか?
だが、彼らは武具を造るだけでは満足せず、魔王を倒す者『勇者』を作ろうとしたのである。
その為、人間を強化する為の人体実験を繰り返し、強化人間・人造人間・複製人間などの非人道的な実験をするようになった。
すべては、世界平和の為に。
その信念の元に暴走を始めた彼らは、魔族からの侵略に対しては世界が一つになるべきと訴え、世界平和の為の世界征服を唱えたのである。
『青薔薇団』の危険性を察知した各国の騎士団が、彼らの本部を襲撃。
しかし、その時には既に本部はカラであり、彼らの作った武具や、研究資料、実験体は消えていた。
そして、各国は、この危険極まりない組織を作ってしまった事を隠す為、彼らの存在を無かった事にしたのである。
こうして、『青薔薇団』は、姿を消し、歴史の陰で暗躍する秘密結社となった。
これが、大雑把ではあるが、ギルマスが教えてくれた秘密結社『青薔薇団』の概要だ。
クリスが存在しないと言っていたのは、そう言う事だったのね。
リチャードの話では、結成時期や、構成員の数など不明な点も多くあるが、少なくとも200年前の『勇魔戦争』と呼ばれる、人類対魔族との世界大戦の際には、裏で暗躍していたと言われているらしい。
「その三人組が本物なのか、ただの騙りかは分からないが、冒険者ギルド本部に報告しておこう」
そう言って、リチャードは牢を後にした。
なるほどね、鬼畜サイコ野郎のクリスに相応しい、中々にイカレタ組織だわ。
やれやれ、面倒な事にならなきゃいいけど・・・それよりご飯はまだなのかしら?
そう思いながら、私は、ボロベットに寝ころんだ。
◇
冒険者ギルド支部
その魔道通信室に、支部長であるリチャードが座っていた。
彼の前には、魔道通信石と呼ばれる水晶の様なモノが置かれている。
これは、遠く離れた者と姿を見ながら会話できると言う代物であり、冒険者ギルドのみが所持している魔道具である。
リチャードは、シャオと別れた後、衛兵隊長にシャオたちの釈放の手続きを要請、その後、領主にコアダンジョン崩壊の報告と魔獣の活性化の対策を話し合い。
今は、魔獣の活性化対策の話し合いを一時抜け出し、ギルド支部からギルド本部に今回の魔獣の活性化とコアダンジョン崩壊を報告しにきたのである。
既に時刻は、深夜になろうとしていた。
さすがに非常識な時間帯だったが、事が事だけに緊急報告として一報だけでもとギルド本部に連絡を入れた所、ギルド本部の通信士が本部長に取り次いでくれるとの事であった。
こんな時間に本部長がギルド本部に居たのは驚いたが、リチャードにとっては手間が省けて好都合であった。
そして、しばらくすると、通信石から一人の男性が立体映像の様に映し出された。
はちきれんばかりに盛り上がった筋肉に、ピカッと光るツルツルの頭部をした筋骨隆々の大男。
冒険者ギルド本部の本部長であった。
『待たせてしまってすまないね、今ちょっとごたついていてね』
「いえ、こちらこそ、この様な時間にお手間をとらせてしまい申し訳ございません」
『ふむ、緊急報告との事らしいが、何やら余程の事が起こったみたいだね、例えば・・・』
肘を机に付き、両手を前で組み、ジッとリチャードを見据え。
『コアダンジョンが崩壊したとか?』
「えっ!? 何故その事をご存じで!?」
本部長からの意外な問いに、リチャードは驚きを隠せなかった。
本部長はため息をついてから、ゆっくりと喋り出した。
『・・・今、各地のギルド支部から、コアダンジョンが崩壊していると言う報告が上がってきておるのだ』
「なんですって!?」
『その様子では、君の所も』
「はい、こちらで管理していたFランクのコアダンジョンが崩壊いたしました」
『・・・何て事だ』
本部長は、ツルツルの頭を抱えた。
『コアダンジョンがなぜ崩壊したのかを調査をしようにも、既にダンジョンが崩壊している為、調べようも無いので困っていると言うのに』
「その事なのですが、実は、コアダンジョンの崩壊から生還した冒険者が二名おりまして」
『なに!? まさか、コアダンジョン崩壊に関して何か知っているのか?』
本部長が前のめりになり、リチャードの目前に、つるっぱげの強面の顔が目前に迫る。
「はい、コアダンジョン崩壊の原因を知っている者たちです」
『何者だ?』
「一人はCランク冒険者でして名はシャオ、もう一人はGランク冒険者で名をリバティと言います」
『シャオにリバティ・・・ひょっとして・・・いや、すまないがその者たちの資料を送ってもらえないかな』
「かしこまりました」
リチャードは、あらかじめ用意しておいたシャオとリバティの資料を、魔道変換通信機に通す。
この魔道具は、絵や文字など書かれているモノを、相手に伝達できる代物で、やはり冒険者ギルドにしかない。
しばらくして本部長の元に紙が二枚、秘書から手渡される。
『氏名シャオ、狼族の闘士でCランク冒険者、もう一人がリバティ、格闘家でGランク冒険者・・・この二人で間違いないか?』
「はい、間違いございません」
『ふむ、やはり、昨日冒険者登録をして資料が本部に送られて来た者か、まったく昨日の今日だぞ』
本部長は、ツルツルの頭を手でかきながら呟く。
「あの、何か?」
『いや、こちらの事だ、この者たち信用できるのか?』
「少なくとも信頼は出来る者たちかと、獣人の少女であるシャオは、少々喧嘩っ早い所がありますが、根は良い子の様ですし」
『もう一人の方はどうだ、このリバティとか言う男、何か怪しい事は無かったかね』
リバティの資料をバッと前に出し、リチャードの目前に見せる本部長。
「いえ、怪しい事と言われましても・・・そうですね、しいて言えば出身地が分からない事くらいで」
『何だと!』
ドンッ!っと、机を叩き、声を上げる本部長。
「その、地方の田舎などでは、稀によくある事ですし、本人も森だか山の中で育ったと言っておりましたから、それに、話をした所、何か後ろめたい事をしている人物には見えませんでしたが・・・あの彼が何か?」
『・・・いや・・・何でもない・・・君の人を見る目は評価している、忘れてくれ』
本部長は、一旦息を整えてから、本題に入る。




