第二十一話 一応の決着
『それで、コアダンジョン崩壊に関しての情報だが』
「はい、実は・・・」
リチャードは、シャオから聞いた事を本部長へ報告する。
本来居るはずの無いダンジョンモンスターの異常。
コアルームの封印を解除され、ダンジョンコアを奪われた事。
次元収納と空間転移を使いこなす魔導士の子供。
そして、その者が秘密結社「青薔薇団」を名乗った事を報告した。
『青薔薇団か・・・これはまた、とんでもない連中が関わっているな』
本部長は、しばし考えた後。
『リチャード君、君はこの話、真実だと思うかね』
「本物かどうかは分かりませんが、青薔薇団を名乗った子供が居たと言うのは本当でしょう、この事を話してくれた彼女がわざわざ嘘を付くメリットがありません」
『確かにな・・・分かった、この件に関しては、私の方から冒険者ギルド総本部の方へ報告しておこう』
「よろしくお願いいたします」
秘密結社『青薔薇団』に関しては、これで冒険者ギルド総本部の預かりとなった。
しかし、相手は、その存在を消され、歴史の陰で暗躍を続ける組織である。
ギルド総本部としても、容易に尻尾は掴めないであろう。
『ところで、この件を報告した冒険者の二名だが、今どこに?』
「今は街の詰所の牢の中におります、コアダンジョン崩壊現場にいましたので衛兵に捕まりまして、明日には釈放の予定です」
『そうか、すまないがその二名、しばらくの間、君の居る街に留めておいてくれないか』
「それは構いませんが、何故?」
『今、コアダンジョンの崩壊に関して、青薔薇団と接触した唯一の者たちだ、彼らが生きていると知れば、再び接触してくる可能性もある』
「確かに」
『その為、彼らを護衛と監視する為に、既に優秀な冒険者を送っている』
本部長の言っている事に、違和感を覚える。
既に護衛と監視役を送っている?
◇
翌朝。
某国
某都市
某屋敷
豪勢な装飾品が並ぶ廊下を、褐色の美女が歩いていた。
女剣士ノインである。
彼女は目的の部屋の前まで来ると、足を止める。
扉の前で控えているメイドたちが一斉に道を開ける。
「クリス様、お休み中の所、失礼いたします」
扉が開かれ、部屋に入るノイン。
そこは、豪華な造りをした寝室であった。
寝室を囲む壁には名画が掛けられ、床には高級な絨毯が敷き詰められている。
その部屋の真ん中には、飾り屋根が取り付けられた大きな寝台が置かれていた。
「お休み中の所申し訳ございませんが、先ほど本部より連絡が・・・」
ノインがクリスの寝顔を除き込もうと、寝台に近づくと。
ピョコッと、オレンジと黒の縞模様の獣耳が毛布から生える。
「よぉ、ノイン、朝飯か?」
虎の女獣人フウが、毛布から顔を出した。
「フウッ!!?? 貴様、クリス様の寝室で何をしているッ!!!」
「朝っぱらからうるせーな~、ご主人様に慰めてもらってたんだよ、な~クリス~」
そう言うと、フウは、隣で寝ているクリスの胸に抱きつくと、クリスがフウの頭を撫でる。
その光景に、ノインは頭を抱えて絶叫した。
「ヌオォォォォォォォッ!!!! 羨ま、けしからんっ!!!! 私だってクリス様に慰めてもらいたいのに!!!」
ノインはフウに飛びつくと、クリスから引き離そうとする。
「ええい、クリス様から離れんか、この泥棒猫が!!」
「あ~ん、クリス~、ノインが虐めるんだぜ~」
クリスからフウが引きはがされる。
「やれやれ、二人共、仲良くしてください」
クリスがベットから起き上がると、控えていたメイドたちが近づき、簡易カーテンを掛けると、クリスの着替えを手伝い始める。
「それでノイン、何か用事があったのではないのですか?」
フウと手四つの力比べ状態になっていたノインは、すぐさま姿勢を整える。
「はっ、本部より連絡がございまして、幹部集会を行うとの事です」
「・・・幹部だけですか?」
「首領も参加との事です」
「彼女、苦手なんですよね~、僕は欠席と言う訳には」
簡易カーテンを開け、着替えを終えたクリスが露骨に嫌な顔をする。
「いけません」
「やれやれ、仕方ありません、諦めましょう」
クリスは、トホホと言った顔をする。
「それと、冒険者ギルド総本部に潜伏している団員からの報告なのですが・・・」
青薔薇団の団員は、普段はそれと悟られない様、普通の者たちと同様に振る舞っている。
そして、それらの者は、あらゆる場所に潜んでいるのである。
それは、冒険者ギルド総本部とて例外ではない。
「何かありましたか?」
「何やら妙な動きがあるとか」
「妙な動き?」
「確定情報ではないのですが、どうもSランク冒険者が動いているとか」
「まさか、我々の事で?」
「一昨日辺りからとの話なので、おそらくは別件かと思われますが、一応お耳にと」
「分かりました、引き続き団員に情報を集めさせてください、特にSランク冒険者の動向には注意を払う様にと」
「かしこまりました」
クリスの命に、ノインが頭を下げる。
「クリス~、朝飯食おうぜ~」
話が終わるのを見計らい、フウがクリスに抱きつく。
「ヌオォォォォォォォッ!!!! 一度ならず二度までも!! 貴様など朝飯抜きじゃー!!」
「あ~ん、クリス~、ノインが意地悪するんだぜ~」
「だから喧嘩しないでください」
フウとノインに挟まれ、苦労が絶えないクリスであった。




