メイドのアン その2
かなり久しぶりの投稿になります。
話が途中過ぎて読み返さないといけないほどでした。
「そろそろいいかね」
「?」
「次のステップさ、魔力配分の感覚などはある程度わかったろ?」
「確かに、ある程度はですけど」
「魔力を具体的な形に表す。魔力を用いた法術、『魔法』の使い方を教えよう」
「魔法といば、レイラさんがやっていた氷を作ったりということですね」
「ああ、それもそうだ。あんたの自己回復もそれと同じさ。しかし、魔法はもっと高度に扱うことができる。魔法は自己の魔力により通常あり得ない現実を具現化するものさ。使い手によっては、ちょっとした炎どころではないね」
「以前見せた分身とか?」
「その通り。私が持つ魔力を動力として具現化したものさ」
「俺もできると?」
「ああ、しかし得意不得意はある。炎を生み出すのが得意だか、氷は苦手。つまり魔力効率的な話として、炎であれば100の魔力のうち5で生み出せるのに、氷ならその倍がかかってしまうなどだね」
「それは訓練次第でどうにかなるものか?」
「多少までなら、万人そうだね。しかし、達人の域になるかは、それはその人の個性も考慮しないといけない」
「個性ね」
「そうさ。その人個人により左右されるのが魔法の面白いところさ。だから、魔法の使い手はオリジナルの技を身につけたりする」
「暗に俺も身につけろとでも」
「いや。あんたは勝手に身につけそうだからそんなことは言わない。それに、炎を生み出したりなど典型的な技は広く知れ渡っているし、それをマスターするだけでもかなり戦力になるから一概には言えないからね」
「そう言うものか」
しかし、言われてみると納得する。皆が使っているからといって劣っているとはならない。むしろ使いやすくて便利だから使われていると言える。それは理解するとコーラの言葉は確かに理にかなう。あくまで自分自身に合うものを身につけろという事だ。
(俺はどういう闘い方がいいのだろうか?俺が無意識ながら身につけているのは自己回復。今まではその能力でゴリ押ししていた。致命傷も致命傷にならないとして。…まずは俺のこれがどの程度俺の魔力を咲いているのか知る必要があるな)
―――
「それでは、この一帯の清掃をお願いします」
「かしこまりました。クレア様」
クレアからの指示により、アンは他のメイドと共に清掃を開始する。
リク達が、この屋敷にきてから、一週間、アンはまだ何も成果を残せていなかった。
デストヒュヌスを部分的に解放するにしても、障害はある。護石を弱めることだけでは不可能。
この屋敷のどこかにある封印のための核。そこでもやはり封印のための制御を行っており、そこでは半人工的に封印のために必要な力を調整している。つまり、護石が弱まった時、他の護石を強めたり、あるいは補助的に核そのものが抑えるといった具合だ。
このような二重構造によりデストヒュヌスは守られている。そこでアンのやるべきことは、その制御装置を一時的にシャットダウンすることである。
しかし、現状その場所のありかさえわかっていない。知っている人間は、この屋敷の当主であるレイラ、執事のベアテル、メイドのクレアとエレノアである。
それ以外の人間には一切知らされていない。
そうなるとアンとしては聞き出すか、自力で探し出すかである。
前者は期待できない。となると残るは後者のみ。
(制御装置の場所を知る方法は、跡をつけるということもあるけど…これは難しそうね。他のメイド達はただただ、屋敷の業務をこなすためにいるけど、あの3人は明らかに戦闘能力が高い。下手に跡をつけたら、後々厄介。しかし、これ以外に方法がないのも事実)
アンはその結論に達して、覚悟を決める。
「『鏡の中の私』」
アンがそう唱えると、アンの陰から、液状の物体が現れる。これは彼女の魔力が物体化したものである。
そしてその魔力の塊は、形が変わり、アンの形へと変わっていく。
これはアンのオリジナル。
魔力により、アンがその人物をよく知らことで、その人物を作り出すことができる。
そしてアンは自分自身を作り出すと、すぐに扉のドアノブに手をつける。
「『建物の模様替え』」
扉を開けると、そこは屋敷の庭だった。
これは本来あり得ない。
彼女がいた場所は、屋敷の2階。まず高低が違う。
しかしアンであれば可能なこと。自分がいる場所と任意の場所(無制限とはいかない。むしろ制限が多い)を扉というものを起点に繋げてその場所に行くことができるのだ。
この魔法の利点は、容易に行き来ができ、逃亡する際にも便利だ。だが、魔力の消費も激しく、アンの魔力のおよそ50%を一時的に消費する。しかもその回復に意外と時間がかかる。
もう一つの魔法、『鏡の中の私』こちらは、どれだけ精密な行動をさせるかで消費が変わってくる。今回は、簡単な動作と簡単な会話で戦闘のために使用しないことから、消費はだいぶ抑えられている。
それでも、『建物の模様替え』と同時に使用すれば、一時的とはいえ彼女の魔力は三分の一以下となり、そのような時に攻撃されれば、かなり危険であることには変わりない。
アンは誰にも気が付かれないことは最も神経を使わなければならないのだ。
(この屋敷は、5階までが普段使い。しかしここは、恐ろしい程の高さを誇る建造物。おそらくさらに上がある。まずはそこをあたるべきね。まずは3階へ)
屋敷の構造も正確に把握していない彼女に取ってまずはその構造を知ることが何よりも大切なのだ。
バレないように、ゆったりそれでいて急ぐようにアンは走る。
どうやら、3階は図書室等があるらしい。そしてその場所を数名のメイドが清掃等をしている。
遠巻きで見ていると、そのメイドたちは比較的長い期間働いている者たちであることがわかった。
アンがこの屋敷に入るのと同時に雇われた者はアンを含めて4名ほど。その彼女らは2階以上上の部屋を任された事はない。それは他の者との会話から確認済み。さらに、1.2年ほど先輩についても任されていない雰囲気であった。
後者のことは、確定できなかったがこの様子を見る限り間違いとアンは判断した。
「そう言えば、あなたはあの男性を見た?」
「ええ。確か少し目つきが鋭い方よね?」
「気にならない?」
「やめなさい。そういう詮索は。レイラ様が連れてこられた以上私たちが何かいうことでもないの」
「不平不満を述べようとしているのではないの。これは好奇心。私たちだって関わることもあるのだから、その際どんな人なのか知っておきたいというその程度よ」
「なるほど。確かにそう言われると私も気になるわ。でも私も遠巻きに少し見たぐらいで何も知らないわ。ベアテル様と何か話していたような」
「何か言っていたの?」
「さあ。聞かないようにしていたからわからないわ」
「それもそうね」
「気になるなら話しかけたらいいじゃない。その辺りは寛容よ」
「そうするわ」
アンは、二人のメイドを横目に通り過ぎていく。
完全に人の気配が無くなったことを確認し、中へと入る。ここでは魔法は使わない。
魔法を使うというだけでもそれを探知できるものに気が付かれる。ただのメイドは多少は使えても、ここまでこなれたものを使うことはできないはず。
そのような状況下で気が付かれる恐れがある行為をすると相手型に警戒を与えるだけである。
魔法の使用を気が付かれないことも重要な技量である。
「あの男は今日も?」
「そうですね。リクさんは今日もババァと特訓ですね」
「クレア。君はコーラと何かあったのか?」
「私が丹精込めて作ったジャムを見事に食い散らかしやがりました」
「…ジャムを食べるときは必ず君に声をかけよう」
「常識の範囲内で食べていただければ何も言いませんよ」
「食い物の恨みは怖いな」
「まぁ。本人の目の前で言えば殴られますから、控えめにおばさまとしてますよ」
「それはそれで、態度次第では嫌味だな」
「そうですね。危うく殴られるところでしたよ」
「ダメではないか」
アンの視線に入った人物は、ベアテルとクレアであった。
(後をつける?いや。あれは一般業務の最中。つけても無駄なリスクを背負うだけで、リターンはない)
その判断を下した時には既に、彼らから距離をとっていた。
そして、一つの扉を開けなかに入る。
(ここは、物置?整理はされているが、あまり使われていなさそうね)
アンは、一歩さらに前進するが、その足はそこで止まった。
嫌な予感がしたからだ。
だが、それはベアテルたちに正体がバレたとかではない。もっと直接的な『死』に関する予感。
(まさか…)
慎重に足を運ぶとそこにはメイドの死体が一つ。
「…」
声は出さない。
これで取り乱すほど間抜けではない。
(なんてこと。こんな場所で殺人なんて、かなりまずいこと)
アンはその場を離れていた。もちろん証拠は隠滅した後でだ。
おそらくこの後、死体は発見される。
そして、当然このなかにスパイ又はそれに類する者が紛れていると疑われる。
その時こそ、アンにとって最大の試練となる。
ようやく試験も終わり少し余裕ができはじめました。
このまま少しづつ投稿できればいいのですが、どうなるやら。




