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長い夢の始まり
「おい、リク!何してんだ?」
遠くから、カズキの声がする。
楽しく手を振って陽気に俺を迎えてくれた。
「…」
俺はその陽気さに、少し。本当に少しだけ、恐れていた。
全く敵意のないその無邪気な笑顔に、俺の心が酷く痛まされたりしていた。
「どうした?」
「いや。少し頭が働いてなかっただけだ」
「なんだそれ。ほらいこうぜ」
和樹は俺を引っ張り、無理やり歩かせる。
俺は抵抗しなかった。
こいつが引っ張る先にいた人物に気を取られていたせいかもしれない。
「二人ともこっち」
彼女はそう言って、俺たちを迎えた。
―――
俺はそこで目が覚めた。
周囲を見るとそこはレイラさんの屋敷であった。
どうやら、寝落ちしていたらしい。
「おはようリク」
「おはようございます」
「疲れていたのかしら、とても深く眠っていたようだったわ」
「そうかもしれません」
「でも少し辛そうだったけど嫌な夢でも見た?」
「…辛そうでしたか」
「ええ」
「そうですね。嫌な夢を見ていたのかもしれません」
「目が覚めたらもう忘れた?」
「いえ。夢の中身は覚えています。ただ…」
「ただ?」
「嫌な夢でもあり、良い夢でもあったのですよ。厄介なことに」
「…そう。それは厄介ね」
「ええ。本当に困ったことに」




