コーラ その3
「さて。早速始めたい。だが、一つ問題がある」
「問題?」
「ああ。極めて重要な問題だ」
一体どんな重大な問題なのか?リクは身構える。
「後2時間弱で、晩御飯が出来上がる。その前に切り上げなければならない。よって今日の訓練は非常に短いものとなる」
「ぶち殺しますよ?」
「師に対してなんて口。それにぶち殺せるならぶち殺せるで、それならもうあなたを鍛える必要もないよ。……たく。わかってないね?飯は大切だ。いいかい?みんなで飯を食う。これ人間として必須。わかる?だから切り上げる。わかったかい?」
「……」
非難の目を向けられているがわかるとコーラは少しばかりため息をつく。
「安心しな。2時間でも十分に身に入るものをしてやる。いや、2時間もやってられるかというものをやってやろうじゃないか」
「ほうそれはどんな」
「さっき言ったことは頭に入っているね?」
「もちろん」
「ならば、今からやるのはそれを体に染み込ませること。体に染み込ませて初めて生きたものとなる。そして体に染み込ませるには……」
そこまで言われてリクもようやく理解する。
「なるほど。いきなり実践で叩き込もうと」
「正解ね!」
その瞬間コーラの体がまるで細胞分裂の如く別れ始める。
一から二に増えたと思ったら、二から四と初項を1、公比を2とし等比数列に従い数が増えていく。
それは16でストップする。
「これだけあれば十分だね。さて。私は今からあんたを攻撃する。それをあんたは魔法によって防いでいきな。その魔導兵器は禁止だね。素手でやったほうが身につくからね」
リクは黙って頷く。
「今から私は魔力により分身した影で攻撃する。先に予告しておこう。それぞれこいつらは役割をあらかじめ決めている。一発一発重い奴もいれば手数で勝負する奴もいる。あんたはそれらの攻撃を魔法によって防ぎ、魔法によって倒していかなくてはならない。タイムリミットは1時間半。それまでに16体倒してみせな」
その瞬間コーラの分身3体が襲い掛かる。
一体は、宣言通り、手数でリクを攻撃する。しかし、威力は大したことがない。
それをリクは硬化魔法により防ごうとする。
―――しかし、横から鈍い痛みを自覚する。そこにはもう一体敵がおり、そいつは一発リクの脇腹を殴る。明らかに威力が段違いであった。硬化魔法をあっさり破る程度には強い。
そして体勢が崩れたのを見計らい、さらに一体が、電撃を食らわせる。
「ぐおお」
その瞬間焼け付くような痛みを自覚する。
(なるほど。ミスれば、一気に攻撃を加えてくる。それも込みで対応しなければならない。そして、今のでわかったのは、魔法の強度。硬化魔法を使ったが、俺はまだ大して慣れていない。さらに大した威力ではないからと言って、強度を緩めてしまった。だから、もう一体の攻撃を防ぐことができなかった)
もう一度同じ攻撃が仕掛けられる。
リクは、今度は、防御に集中する。しっかりと硬化魔法を使用する。
そのおかげで、一体の攻撃は容易に防ぐことができたが―――
ゴキッ。
恐ろしい鈍い痛みが再び、さっきよりは痛みはないが、それでもやはり強烈な痛みだ。
そして再びの電撃。これにも硬化魔法で対応したが、痛みを感じた部分以外に焼け付く痛みが襲う。
「……クソ」
思わず悪態をつく。しかし、すぐに思考を回転し始める。これを解決しなければ次に進めない。
「考えな考えな。まずはその攻撃、ストレートに対応してみせな。忘れるんじゃないよ。さっきの教えをね」
(この訓練は、言うなれば、授業の復習。授業の応用。ならば当然さっき言ったことにヒントがある。そして今回関係するであろうことは、魔力の配分。おそらくだが、俺は、無駄な配分にしてしまった。言うなれば全て均等に配分したと言っていい。手数が多いやつは時間が経てば経つほど負荷が大きくなるが、それでもやはり、一定程度であれば、一撃にかけたやつと比べると弱い。ならば、一撃が重い奴に大きく配分するべき、そして、また俺は、強烈な痛みを受けた瞬間無意識的にその部分を庇ってしまった。そのとき、次に来た雷撃は、均等に配分して防がなければならないのに、一部を庇ったことで、他の配分が少なくなってしまった。おそらくこの分析は当たっている。つまり俺はこの2回において、最善の行動の真逆の行為をしてしまったということか……)
再び同じ攻撃、三度目。流石にパターンは覚えた。
一体目の攻撃を、攻撃が加えられる場所のみに軽い膜のように防御膜を貼り、第二撃の重い攻撃には分厚く守る。
そして最後の雷撃からは全身に平等に膜を貼り、対処する。
決して全力ではない。雷撃を受け流しながら、目の前にいる敵に対して攻撃をする。
手に魔力をおよそ三割集中させ、叩き込む。それだけで体が崩れ始め、そこに同様に蹴りを入れると、それは消滅する。
だが、その間に残りの二体は、同時に攻撃する。背後に回っていた一体が右脇腹に拳を入れる前にリクは肘で塞ぐ。当然ただ塞ぐだけでは、膝が砕けるだけのため魔法を使用してだ。
残り一体は魔法を使用するが、先ほどの行動から魔法を使い遠距離で攻撃することはなんとなく読めていた。
リクは迷うことなく、攻撃を防がれ体勢を崩している一体をを盾に攻撃を防ぎながら、残り一体に拳を叩き込み消滅させる。
「……よろしい。では、次の攻撃に移ろうか」




