再戦 その4
息が切れ始めたエレノアに対して、アンドリューは嬉しそうに問いかける。
「どうする?どうする?えぇ」
「うるさいわよ。ゴタゴタと。体力で押し切りたいなら私に回復を与える暇なんてないじゃない。もっとも体力で押し切るよりも先に私が倒すけど」
「……」
アンドリーは自分の歯が折れるのではというぐらいに力を入れる。そしてダガーを持ちエレノアに対して向かっていく。
「スィー・ウィース・パーケム、パラー・ベッルム」
風の武者。エレノアの従者が現れる。だが、それは先ほどに比べて二周りも小さなものであった。
「はっ!やっぱ体力がないじゃないか!魔力もな!そんなので私に勝つ気か!」
「ええ。そうよ。それにこれで十分。あなたにはこれで。あなたの作った従者に対して。私はさっきまで過大評価しすぎているのに気がついた。だからこれでいいの」
「舐めるな!」
アンドリューは水の爬虫類に指示をし前に出させる。
(奴のアウレア・アニムスが小さくなっている理由は魔力及び体力が消費されているから。ではない。いやそれもあるのだろうがそれが大きな要因ではない。奴の魔力が違う場所で使われている。とするならばおそらく奴の狙いは奇襲!)
直後地面の下から突風が襲い掛かる。
(だろうね!)
「アド・ノケンヅム・ポテンテス・スムス。我が子供よ。私の前に集まり守れ!」
水の爬虫類が合体し、一つの大きな水の爬虫類に。しかしこれで守るのは下から出た突風ではない。アンドリューが突風に気を取られた隙にエレノアのアウレア・アニムスが襲い掛かることを予想していた。そのための盾である。
(この程度の突風自力で防げる)
その判断は正しく、アンドリューは水を生み出しそれを固定することによって盾を作り出しその攻撃を防いだ。
だがその隙にアンドリューの読み通り、エレノアの従者たる風の武者が襲い掛かってきた。
(ずばり!)
アンドリューはその武者の後ろに回り込む。水の爬虫類はそのためのものだ。回り込むにしてもあの一瞬。アンドリューに隙があった。水の爬虫類を巨大化させたとはいえ、あの一瞬大した大きさではなく、すぐにやられるだろう。それでも時間稼ぎはできた。その隙に武者の後ろにいるエレノアを刺す―――
(……いない。なぜ―――)
瞬間。アンドリューの胸。心臓がある場所に鋭い一撃が。
「あげぇ」
「そうくるだろうと思ったわ」
エレノアはそう言って槍を引き抜く。
「デスアモルといえども心臓を貫かれたら死は免れない」
「ち。ちくしょう……」
アンドリューの体が風に吹かれるだけで砕けていく。アンドリューという形で固まっていた灰が風に吹かれその形を保てず。空に舞い上がていった。
エレノアのスィー・ウィース・パーケム、パラー・ベッルム(汝平和を欲さば、戦への備えをせよ)により現れた武者が小さい理由は確かに突風を生み出す魔法に魔力が裂かれたことも理由の一つ。だが、最大の理由は、武者を己の体と引き離し独立させて生み出し、さらに自動で多少なりとも複雑な動きを要求したせいである。
「終わったのね」
「はい。敵は倒しました」
レイラの問いかけにエレノアは答える。どうやらレイラたちもあの数のデスアモルを倒し切ったようだ。
「ですがリクさんは……」
「ここにいるよ」
クレアが心配そうにいうとその後ろからリクが戻ってきた。
「どうやらそっちも倒したようね」
「あ〜。いや。そうじゃなくてだな……」
「?はっきりしなさい」
「相手が帰ったんだよ。悪意のかけらが木っ端微塵になったから……」
「……はい?」
「ほら」
そう言って指差す先には悪意のかけらが積まれていた車があったはずの場所であった。そこにはクレーターのようなものはあるがそこに車があったとは分からないほどの破壊ぶりであった。
「ちょっ!あんた!どうすんのよ!大統領との面会の条件が達成できなくなったじゃない!あんた市長とカッコよく交渉しといてそれはないでしょ!」
「しょうがいないだろ。だってあいつ強いんだよ。あれは無理」
「じゃあどうすんのよ!」
「だがこれが一番ベターなんだよ。俺だけじゃ絶対奪われてた」
「それは仕方ない。エレノア。一番最悪を回避しただけよしとしましょう。それにエレノアはデスアモルを一匹上級を倒したのだから」
クレアはエレノアを宥める。
「まぁそういうことだ。最悪を避けたんだ許してくれ」
「……それをあんたがいうな〜〜〜!」
これにて第二章が終わりとなります。
次の章。予定では『魔道の極意』となりますが、
ここでは魔法を詳しく説明していこうと思いいます。




