再戦 その3
二章もそろそろ終わりになります。
「しぶとい。なかなかしぶとい。しかしそれだけだな」
ハリーはため息をつきながら槍の刃の方へと目を向ける。そこには深く突き刺されたリクがいた。
「これで三度目。いや。前日を合わせたら四度目か……。同じ相手にこうも何度も突き刺したのは初めてだな……」
ポツリと呟いていると、リクがハリーに対して銃を構える。それをわかっていたのか、ハリーは面倒臭そうにリクを放り投げる。だが、リクもわかっていたのか、放り投げられながらも決して照準をはずさなかった。そして引き金を引いた。
それでもやはりまだリクの腕如きではハリーの頬に傷をつけるだけであった。それに対するリクの傷は致命傷である。
「うげぇ」
「……諦めの悪さは敬意に値するほどだな」
「……俺はまだルーキーさ。ルーキー。そうだルーキーだ。いくら才能があると言われようとも俺はルーキー。負けて当然。相手が格上であることも当然予想すべきことだ。そうだ。そうなんだ。そんな当たり前のことを俺は忘れていたよ」
リクは笑いながら呟いている。
「……ついに気が狂ったか」
「いや。違うね。俺は冷静だよ。いや冷静になった。普通気づいて当然。いや、そもそもそれは考えることもないこと。俺は特殊な環境のせいか、わざわざそのことを考えて認識した。俺はそれを認識し、図に乗った自分を一気に冷やした。笑っていたのはその間抜けな自分を笑っていたのさ」
「それで?それで貴様はこれからどうするのだ?」
「教えてくれ先輩。態度のでかいルーキーに戦い方ってものを。……アストラ・インクリナント・ノン・オブリガント(星は私たちの気を惹くが、私たちを束縛することはない)」
巨大な白く輝く狼が、ハリーを襲う。
しかしハリーはそれを眺めているだけであった。
狼がハリーに噛み付く。だが、その瞬間ハリーの姿が消える。
「よかろう。一つ指導してやろう。……アウレア・アニムスを使えるのは結構なことだが、それに頼り切りというのはナンセンス。貴様の持っている銃。それも使えこなせていない。そして魔法もな?今私は何をやったかわかるか?貴様のアウレア・アニムスを避けるために使ったのは魔法。強大な力に対して強大な力をぶつけなければならないという道理などない。魔法のみで回避することも可能」
リクが銃の引き金を引く。その瞬間。今度はリクの目にもはっきり見えた。
ハリーの体が全身炎の塊になり、魔力によって生み出された銃弾がすり抜けたことを。
「魔法は、炎、水、風、土、氷、雷、光、暗闇またはそのどれに分類されない無系統。これらを生み出す技術。使い手により風を生み出すのが得意な者。氷を生み出すのが得意な者。さまざまであるが基本全員これらを使える。俺が今やったのは体を炎に変換すること。つまり炎と無系統の魔法が合わさったものだ」
「へぇ。案外複雑なのか」
「その通り。貴様は多少魔法が使えるだろうが、初歩の初歩。それでは足りん。それでは私たちの敵となるには不適格!それでは少なくともこの私を満足させることは出来ない。もっと力をつけろ。今日のところは悪意のかけらだけを回収するとしよう。まだ向こうも戦っているようだし邪魔はされまい。さっさと回収させてもらう授業料だ」
「……それは困る。それは授業料としては高額だ。支払いは出世払いとして勘弁してくれ先輩。こいつは渡せないのだ」
「……力づくで払わせる。今の貴様なら容易だ」
「ああそうかい。なら俺も考えがある.アストラ・インクリナント・ノン・オブリガント(星は私たちの気を惹くが、私たちを束縛することはない)!」
「笑止!アウレア・アニムスに頼り続けることは馬鹿馬鹿しいと言ったはずだ!学習能力がないようだ」
「いや。それは違う。学習した上で使った。俺を舐めないでいただきたい先輩」
ハリーは体を炎に変え、またしても回避する。だが、陸が狙ったのはハリーではなかった。狙いはその先、車だ。
「……!貴様」
車が破壊されたことにより周囲に爆発音が響く。それだけでなく。周囲に黒い霧が覆われる。
「悪意のかけらを破壊するとこんなことになるんだな……。初めて知ったよ」
「貴様!」
「どうせ守りきれない。俺では先輩。あんたを阻止することはできない。俺たちの目的を成すことはできない。そんな状況下でなお、まだ諦めず、粘った先には最悪の結果。今回の場合は、お前らが全てを掻っ攫う。これを防がないといけない。それができたら少なくともドローだ」
「……」
「これでもお互いの目的は達成不可能。戦う理由なし。俺たち。そうだな人間的な戦う理由はない」
「確かにその通りだ。だが我らはデスアモル。戦うことは飯を食うことと同義。目的などはどうでも良い。……だが、今のお前と戦っても面白くない。ここはさるとしよう」
ハリーはそう言ってリクに背を向けゆっくり歩いていく。
「仲間は?」
「奴もデスアモル。相手の獲物を取るのは無礼というもの。たとえそのせいで死んでもな」




