邪推
「大変でしたね。3人とも」
レイラはリク、クレア、エレノアに労いの言葉をかける。
「そっちはどうなのです?」
「何か交渉材料があればよいのですがね。何せこちらはあまり実績がないもので……」
リクの問いかけに対して、レイラは困ったように肩をすくめる。
「そのことなんですが、この街から何か交渉材料が見つかるかもしれませんよ?」
「何を根拠に?」
エレノアは問いかける。
「デスアモルに襲われたのに軍が来るのにかなり時間を要しただろ?あれがおかしい。普通あんな店が並び人が、それもそれなりに金を持っている場所であの遅さはおかしい」
「他にも襲われていたのよ。事実工場とかでも同様の被害が生じていたわ。その箇所は4箇所。こちらに向かうのが遅いというだけではおかしいとは言い過ぎじゃない?」
「そこだよ」
エレノアのフォローに対してリクは指摘する。
「工場などではすぐに対応することができた。聞くところ工場周辺はよく襲われていてそのため軍も常時すぐにいるためと言われている。でも考えてほしいが、この町全体デスアモルによく襲われるはずだ。俺たちの場所だけ対応が遅れるというのはおかしな話だ。遅れるにしても多少の人員を回すだろう。何せ俺たちがいたのは街の中でも商業が発展し、比較的収入が多い人間などもいるんだぞ」
「収入が多かろうと少なかろうと関係なく多くの人間を助ける上でそうしたのじゃない?」
「それは建前だろ。俺たちがいた場所の人々はより多くの税金を払っている。それにもかかわらず、工場が多いという理由だけでそこに人員を先、こちらに一切人員をさかない?そんなことをすれば、そこに住む人々はなんのために高い税金を払っていると思っていると考える。それが普通だ。それなのにこの対応をするのはおかしいと言っている。エレノアが言ったことも理解できるが、それでもやはりこちらを見殺しにしたように見える対応は不可解」
「この街は軍事兵器を作っているの。それを支える労働者が一番大事というだけでは?」
「確かに大事だが、それを支えるにも金がいる。そして研究する人間もな。彼らを蔑ろにするのはまずい。作れても作るための金がないならどうしようもない」
「リク。あなたはどう考えているのです?たしかに不可解と言えば不可解。しかし人間とは時に非合理。何もかも組織の行動が合理化されているとは限りません。組織の甘さという考えもできるはず」
レイラの問いかけに少し考える。
確かに組織が完全に合理的かと言われるとそれは間違いである。よくミスもある。組織はどちらかというと大きなミスをしないように時に無駄とも思えるようなこともすることがある。だが、今回のケースではそれは当てはまらない。そう考えている。
「街の中でも貧富の差があります。とりわけこのアルボスは、工場労働者とその他では大きく差があるように思える。街を運営する以上金が必要であり、そうする以上工場労働者以外の者の支援は必要のはず。ならば、そのような人々を蔑ろにするとは思えない。組織も甘さがあるが、バカの集まりではありません。自分達の生命線を立つようなことをそうひょいひょいやるとは思えない。それにもかかわらず、この町では、工場労働者が大勢いる場所に護衛を配置し、それ以外はかなり手薄な印象がある。そしてエレノアと一緒に見学した時、市長とお話をしました。その時も、やはり想像よりも護衛が手薄なように思える。何せここまでデスアモルに襲われるとわかっているのに侵入されないような対策がされているようにも思えない」
「つまりリクさんは何を言いたいのです?」
「俺は、工場労働者を一番保護しているわけではなく、それ以外の場所はいちいち守る必要がないと考えているからだと思います」
「守る必要がない?」
「だけどこの街はデスアモルによく襲われるのよ、そんなはずないじゃない」
「だったらこの街に侵入されないよう街の外に壁でも作るだろう。それをしない時点でおかしい。そうするとデスアモルによく襲われるというのは―――」
「自作自演では?ということ?」
「はい」
「だとしたら問題です。この街はデスアモルが原因で国から補助金が他の市以上にもらっている。いって仕舞えば詐欺をしてもらっているようなもの」
「国は知った上で渡していることも考えられるわ」
「無論これはただの推測。証拠はない」
「ですが。私たちは今のところ何もできない。ならばこの街について少し調べてみるのも良いかもしれませんね」
レイラは言う。
「明日。市長に会いに行きましょう。どのみちリクたちは襲われた一部を制圧したのです。それに対する礼を言いたいと申し出があったのです。ちょうどいいでしょう」
「では。今日はもうお開きとしましょう。よかったらお茶でも入れましょうか?」
「ええお願い」
「私はお風呂に行ってきます」
「構わないわ。基本的には自由にして結構よ。リクはどうする?」
「外の空気を吸ってきます」
リクはそういって部屋を後にした。




