アルボス
ウァリエタースの首都アマデウスから、およそ200km離れた街アルボス。リク一行は、その街を訪れていた。
この世界には、車があるため移動は当然ながらそれである。しかしインフラ整備がリクの世界にいた場所よりも進んでいない。また車の性能もあまり良いものではない。そのため、首都まではすぐに到着するものではない。
車を運転しているのは、クレア。助手席にはエレノア。その後ろにレイラとリクが乗っている。リクは車の窓から外の風景を眺めていた。
「首都からだいぶ離れているのに、随分と反映しているな。中央集権の様な国家とは違うのか?」
リクが目にした風景は、道路がきれいに整備され、バスやタクシーらしきものがあった。そして煉瓦で作られた建造物も新しい。金がなければできないものだ。
「いえ、中央集権国家なのは間違いないです。しかしこの街。アルボスは例外なのです」
「例外?」
「えぇ。この街の周辺は、異常なまでにデスアモルが出現します。そのため、この街はデスアモルに対応するべく、国から多額の援助が来ているのです。そして、その金を元に、軍事力を備えデスアモルの襲撃に備えているのです。そのおかげか、軍事産業が発展し、さらにデスアモルの研究な度も行われていることから国としても重要な街としてみられているのです」
「なるほど」
「ちなみに、目の前に見えるあれは、この街最大の建造物よ。あそこには多くの軍人や、兵器。何より軍事機密。それを支える研究者が多く存在するの」
エレノアが指摘する場所にリクは目を向けると、一段と頑強な建物が見えた。鉄でできており、警備も万全。軍事機密が多くあるのだ。それは当然だろう。
「まぁ。少しの間ここに滞在することになるのだし、見学でもしてきたら?知っておいて損はないはずよ」
「できるのか?あんな軍事機密の宝庫の様なところを」
「これでも私たちそれなりに強い権限をもっているのよ?」
素朴な疑問に、レイラは得意げな顔で答える。
「全てを見ることはできなくても、大抵は見学できるはずよ」
「それは何とも心強い。権限が大きい人間が味方にいると言うのは物事を進める上で大変有利ですから嬉しいですよ」
「誉めかた下手くそすぎない?あなた」
エレノアはため息をつく。どうやら呆れているようだ。
「そろそろホテルに到着しますよ」
リクたちが宿泊するホテルは、一言で言えば豪華であった。上品な格好に身を包んだホテルマンが、到着するや否や、駆け寄り陸たちの荷物を丁寧にかつ迅速に運んでいく。その間も、一度も慌てた様子もなく、行動一つ一つ品がある。
ホテルの中へはいると、ロビーには、座り心地の良さそうなソファーに、上品な机。そして大理石でできた床。高級なホテルと評価して何ら問題ないだろう。
「察してはいたが、金あるんだな」
「そりゃあんな屋敷に住んでいるのですから、金がないほうがおかしいと思いませんか?」
「ちなみに私たちの給料も高い」
「だろうね」
エレノアは自身満々の態度を軽く、受け流す。その後不服そうな顔をされたが気にしないことにした。
―――
案内された部屋は、やはり豪華であった。その中でもこのふかふかなベットをリクは大変気に入った。これならば、夜は心地よい睡眠を取ることができるだろう。来たことのない街。外を見て回るのも悪くはないだろうが。しかし今日は、この町に到着した時点ですでに遅い時刻だ。それをやるのは明日が賢明だろう。
リクは、そう判断して、ベットに飛び乗る。
車というのは運転すれば疲れるが、案外乗るだけでも疲れる。今この場で目を閉じて仕舞えばそのまま眠ってしまいそうだ。
しかし、眠る前にシャワーを浴びる必要がある。浴びずに寝るのは個人的に避けたいものであったからだ。
このホテルには浴場も付いている。どうやら日本にある様な入浴の文化があるのだろう。それは、日本人たるリクには大変嬉しいものであった。
「いくか!」
少しワクワクしながら、リクは準備を行い。ドアを開けるとそこには、エレノアとクレアの姿が。
「あれ?リクさんも入浴ですか?」
「クレアもか?」
「はい。ここは浴場も素晴らしいので、入らないと損ですからね!」
「えぇ。私も楽しみにしてるわ」
エレノアも少しウキウキしている。どうやらエレノアも入浴が好きなのだろう。
「レイラさんは?」
「少しやることがあるとおっしゃられていました。後ほど来るでしょう」
「そうか。俺もいくとするか」
リクもそう言って部屋を出る。するとクレアが急にニヤニヤとし始める。
その顔を見て察する。これは揶揄う合図であると、エレノアもそれを見て苦笑い。
「ち・な・み・に。混浴があるのですが?そしてここに混浴のための鍵があります。私たちだけで入ることが可能ですけどどうです?」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………やめておく」
「驚くほど間があったわよね今?おそろしいほど欲望と理性との戦いがあったわよね?」
エレノアがジトッとこちらを見る。
正直なところそれは仕方がないと言いたい。リクとて男、性欲はある。クレアもエレノアも大変魅力的な女性。そして、まだ日が浅いとはいえ、それなりに過ごしてきた仲。信頼できる人間と思っている人だ。そのような女性に誘われたら、リクとて反応してしまう。ただ女性に対しては、少々保守的なリクは己の本能と理性を天秤にかけ、外部的状況を総合的に判断した結果、やめておいた方が良いと結論付けたのである。
「……本当に良いのですか?」
「あぁ。自分のポリシーとクレアたちの信頼を壊したくないからな」
「そうですか。それじゃあエレノアと楽しく行ってきます!」
そういって、クレアはにこやかにエレノアの方を掴みながら、姿を消して行った。
「……………………少し名残惜しいと思っている自分がなんか情けないな。まぁ仕方ない。そうしよう。俺も風呂に入ろ」
一人とぼとぼ浴場へと向かう。
この章ではこの街が舞台となります。
やはり目的地に行く前に何かしら障害があった方がいいですからね。
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