エレノア
ここで新しいキャラ登場
緑に囲まれ、鳥の囀りが聞こえてくる。見上げれば、太陽と積雲が迎えてくる。気温も過ごしやすい気温。
まさにドライブをするには最高のコンデションだ。
その中一人の女性が、スピードを上がったオープンカーのハンドルを握っている。
紫色のサイドテールが特徴の女性だ。身長も高く、スラリとした印象を与える。美人と評価してまず問題ない。
彼女の名前は、エレノア。職業は、メイド。レイラに使えるメイドである。
彼女が向かっている場所は、レイラが住む屋敷である。彼女は今まで少し長期の休みをもらっていたのだ。
「あぁ。やっぱりスピードが出せるのはいいわね!私有地最高!他の場所ならこんなスピード問答無用で捕まっちゃう」
エレノアは、楽しそうに呟く。確かにエレノアの言う通り、そのオープンカーの速度は優に時速100キロは超えている。
これ程のスピードを出せるのは、すでに此処が私有地であり、速度制限がないこと、さらに人もほとんどおらず事故が起きることがほとんど予見されないためであった。
「長期の休みで十分英気も養えたし、これからしっかりと働きましょうか。確か救世主?となるものが、現れたとクレアから手紙も受けたしね」
エレノアはそう言ってさらにアクセルを強く踏む。スピードを楽しむためというのもあるが、早く主人の元へ駆けつけるためのものでもあった。
しかし。エレノアは知らない。屋敷に駆けつけたあと彼女は、彼女にとって最悪の出来事に遭遇することになることを。
「……へ?」
それから数分後、エレノアはレイラたちが住む屋敷に到着した。到着したのだが、エレノアは困惑を隠せなかった。
何せ自分の記憶にある屋敷と、今目の前にある屋敷が異なっているのだから無理はない。
自分の記憶にある屋敷とは、装飾品などいかにも金持ちであるというものは一切ないものの、広く、そして立派であるという印象を与えるものであった。しかし今目の前にあるものはどうだ?見事に屋敷の半分ほどが破壊されており、夜その屋敷に行けば幽霊たちと楽しい鬼ごっこができそうな雰囲気のある状態であった。
いうまでもなく、一見から得られる印象がまるで違う。
「どうなってるのよーーーーーーーーーーーーーーーー!」
エレノアの悲痛な叫び声が響き渡った。
その声は、屋敷内にも聞こえていたため、その声を聞いて中から人が出てきた。
「あっ!エレノアじゃない。よく休めた?」
まず初めに反応したのはレイラであった。
「!レイラ様。これは何事ですか!まさか敵に」
エレノアは慌ててレイラの元へ駆け寄る。
「えぇ。実は数日前、デスアモルに襲われて、屋敷はこの有様。でも安心して、私たちには何ら被害はないから」
「……そうですか。それなら一安心です。しかしこれほどの惨状……。レイラ様やカーティス様。それにクレアもいるのに屋敷がこんなになってしまうなんて、デスアモルはやはり恐ろしいですね」
「……そうね」
エレノアは、改めてデスアモルの危険性を再認識する。しかしその言葉にレイラは苦笑いであった。
この惨状を作り出したのは、デスアモルではないのだから仕方のないことであった。
「レイラさん。その人は?」
後ろから声が聞こえる。
その人物は、この惨状を作り出した張本人リクである。
「リク。この人は、エレノア。私の元で働いてくれてるメイドなの。クレアと同じね」
「エレノアと申します。あなたがクレアから聞いた救世主様ということでよろしいですか?」
「朱廉律玖です。一応その救世主だそうです。知らんが」
「なるほどリク様ですね。時期を考慮すると、デスアモルの襲撃をリク様も加勢したということでしょうか?」
「そうだな」
「いきなりデスアモルとの戦闘を行い、そして撃退したとはさすが救世主様です。しかもデスアモルは、屋敷の現状を見る限り、上位に属すると見受けられます。それを跳ね返すとは」
「………そうだな」
先程と言葉は、まるで同じなのにそこに含まれる感情がまるで異なるのが不思議だ。
「レイラ様。もしかしてですけど、あの屋敷を見る限り私の部屋と書斎は……」
「残念ながら……」
「そ。そんな……」
エレノアに対する質問のレイラの返答が、彼女にとってよろしくない回答であるがゆえ、崩れ落ちて悲しんでしまう。
「あそこには、私が集めた書籍の数々が……」
その様子をみて、リクは冷や汗がすごいことになる。もちろん後ろめたいことがあるからである。
「みなさんどうしたのですか?あっ!エレノア帰ってきたんだ」
そこにクレアが姿を表した。
「ク.クレア……」
「どうしたの?」
「私の部屋が、書斎が……デスアモルに……」
「あぁ。なるほど。屋敷が壊れて、エレノアの部屋と書斎がなくなったということね。でも一応言っとくけど、それデスアモルのせいじゃないよ?」
「そうなの?」
(あっ!まずい)
リクは、自分に自信があるものがある。それは危機管理能力、危機察知能力である。
その能力が今、生かされている。逃げた方が良いという脳指令が降りている。この様な場合、リクはその指令に従うと決めている。よって脳の指令に従い、逃走行動に出る。
ザッ!←リクが全力で逃げる音
ガッ!←リクの腕をクレアが掴む音
「何逃げてるのですか?エレノアが悲しんでいる元凶さん?」
「元凶とは、俺はそこまで存在感がある人間ではない」
「存在感だけでしたらあなたは超一級品ですよ」
「……もしかして私の部屋と書斎が破壊された原因って」
「リクさんが壊しました」
「あなたか!」
クレアの言葉を聞いた瞬間。エレノアは、リクの胸元を掴みながらゆさゆさと揺らす。
「待て。待ってください。大変気分がよろしくない」
「気分が良くないのはこっちよ!よくも!よくも!」
そこから数分間。荒れに荒れたエレノアの行動がしばらく収まることはなかった。
「力を身につけたから、それを使ってデスアモルを倒したついでに、屋敷を半壊させたということ?」
「そう……だな……」
「そんな掠れた声をしているの?もう少しはっきり喋れないの?」
「是非数分前の行動を思い出してほしい。後。先程口調が異なっているのは気のせいか?後先ほどまで言葉の中にあった敬意が、埃の様に風によって舞い。消え失せているのは気のせいか?」
「正解よ。あなたに対して敬意を持つ必要がないじゃない」
それはもう冷たい目であった。先程のあれは夢であったのではないかと疑いたくなる。
「こんなのが救世主って……本当に大丈夫なの?」
エレノアは、心底リクの素質に対して疑問を抱く。
「失礼な」
「エレノア。リクは頼りになります」
「……はぁ。わかりました」
レイラは、リクの肩を持つ。自分の主人がそう言う以上、何か言い返すこともできなくなったエレノアは、不服そうに引き下がっていった。
「エレノアとの第一印象は最悪な形となりましたね」
クレアは、やれやれと言った表情で言う。
「第一印象が良かった方が少ないからそれは問題ない」
「少ないことに問題意識を持っていない方が問題だと思いますよ」
クレアとのやり取りも随分と慣れてきた。




