攻略
「はぁ!」
鞭の様にうねる雷が、デスアモルを焼き切る。そして空いた手で炎を生み出し、その豪華で焼き殺していく。
ハロルドの襲撃からだいぶ時間が経った。数多くいたデスアモルもだいぶ数は減った。このままいけば制圧することもできるだろう。
だが、やはりレイラの方にも疲労の色が見えた。ここまで魔力をフル使用してきた。あまり体力に自信がないのも相まって、疲れが隠せない。
その成果、横から襲いかかるデスアモルに反応が遅れてしまった。
「!」
間に合わない。レイラはすぐに理解した。
思わず目を瞑る。それしかできなかった。
だが、レイラが想定した最悪の事態は訪れなかった。襲いかかったデスアモルはすでに絶命していた。
一体誰が?という疑問が生まれたがすぐに解決した。デスアモルの死体にある傷は、銃で傷つけられたものだ。それにもかかわらず、その傷口は大きく、そして何より銃弾がなかった。
「おまたせしましたレイラさん」
そこに現れたのはリクだ。
「リク。戻ったのですか」
「ええ。力をつけて戻ってきました。足手まといにならない程度にはね!」
リクは、そう言いながら左指を弾く。その瞬間大きな風がリクの周りに集まり、その後ろに大きな獣の姿が現れる。
「アストラ・インクリナント・ノン・オブリガント」
「こ。これは。アウレア・アニムス!あなたもうこれを使える様に!」
驚きを隠せないレイラ。その顔に、リクは少し自慢げな表情であった。そして己の力を見せつける様に、レイラたちを襲うデスアモルたちを一掃するために、ストラ・インクリナント・ノン・オブリガントを向かわせた。
勝負は一瞬でついた。ただストラ・インクリナント・ノン・オブリガントが突撃するだけで、残りわずかとなったデスアモルは、瞬く間に消滅した。一切抵抗する間も無く、討ち滅ぼされたのだ。
「とまぁ。こんなかんじです」
「お見事です」
それはレイラの率直な感想であった。まだまだ力不足であったリクが、ここまで成長を遂げたことに喜びが隠せない。
アウレア・アイムス。この世界において、魔法を使用できる人間は、限りなく少ない。しかし、アウレア・アニムスを使用できる人間はさらにぐっと減る。魔法が使用できなければ使えないというものではない。だが、強大な力を抑えるために、人間の内に秘めた力。精神力。いや、正確にはこの表現は正しくないが、それに近しいものが必要となる。普通の人間であればまず抑えきれず、人間として活動することはできなくなるだろう。
だが、リクは、この世界に来て数日という短い期間で、それを扱える様になった。これは驚いて当然である。
「約束しましたからね。この世界を救うという非常に大きな約束。デストヒュヌスを倒すという約束を。こいつは、その約束のための一歩ですよ」
「はい」
天には曇りがなく、太陽がリクたちを暖かく包み込む。これからの歩む道が正しいものであると力強く肯定できる暖かさだ。
「あの〜。よろしいですか」
そこに今の雰囲気にまるで合わない、気の抜けた。しかしどこか申し訳なさそうな感情が含まれている様に思える。
「なぜ今割り込んでくる?空気というものが読めないのか?」
「それに関してはあなたに言われたくありません。これまで空気をぶち壊して、人間関係悪かったくせに」
「なぜ出会って数日で俺の過去の人間関係を完璧に当てるの?」
リクは、不思議そうな表情をするが。そんなことは、これまでの振る舞いから容易に想像できることだ。それゆえ、後ろにいるレイラも苦笑いだ。
「それで何の様だ?」
リクの問いかけに、クレアは右指をさす。
「?」
リクは、その指差す先に、視線を向ける。
そこにあったのは、半壊した屋敷であった。具体的にいえば、リクの攻撃により半壊してしまった屋敷だ。
「……」
「……」
視線が痛い。クレアのニコニコとしかしその中には『喜』とは、まるで違う表情が読み取れてくる。
リクは、その視線から逃げるように、レイラの方を見るが、残念。レイラも遠くを見ていた。助け舟はない。
「俺の力が強力であることが証明されたな。これからの戦いにおいて、プラスの材料だな」
「これからのことより、今現在のことに目を向けてください。現実逃避している奴が語る将来ほど安っぽいものはないですよ」
「……確かに」
クレアの言葉に、心底同意する。それを同意した場合は、自分が不利になることは理解しているが、残念ながら否定する材料がない。
「それならば。まずはアレを何とかしましょう!」
にこやかにクレアは、非常に酷な宣言を行う。
「あのクレア。アレは、非常辞退だったし、屋敷はしょうがないじゃない?」
此処でレイラが、リクの援護に回る。
「それはそれ。これはこれです。何せあの数のデスアモル。リクさんの持っている銃で対応可能だったじゃないですか?それなのに、見せつけるかの様にアウレア・アニムスを使って……。そんなに自慢したかったのですか?」
クレアは、にやにやとしながらリクの方を見る。しかしその指摘に関していえば、まさにその通り。という感じのため、反論できなかった。
そのため、リクは罰が悪そうに顔をそらす。
「それなら。みんなでお片づけね」
レイラはにこやかに伝える。
「これを片付けるのは骨が折れそうですね」
「ぶつぶつ言わずさぁやりましょう」
先程までデスアモルとの死闘を繰り広げていたリクたちは、今度は片付けという強敵と戦うことになるようだ。




