セバスチャン
ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー。セバスチャンの魂のエネルギーを具現した姿。全身に雷を纏った黄金の龍。
クレアの防御力を持ってしても、完全に防ぐことができないほど破壊力を誇る。
今、クレアはもろに攻撃を受けてしまったが故、次の攻撃を防ぎ切る自信はなかった。
(ですが……やらなければ!)
クレアは、大剣を構えながら、前屈みの姿勢をとる。
「ほう、この状況で、逃げずに前進を選ぶとは勇敢だ。それでこそ、私の戦いに、私が勝利を味合うにふさわしいスパイスだ」
「あなたの勝利なんてものはないですよ。そんなの死んでも嫌です」
「嫌かどうかなんて関係ない!時に嫌であろうとも、運命を受け入れなければならない時がある。そうだろう?そして今回がそれだ」
左指を鳴らす。それが攻撃の合図であった。
クレアは構える。だがその顔には冷や汗があった。本能的に、
切り抜けるのは難しいと理解しているからであろう。
だが、それでも引くわけにはいかなかった。後ろでは、リクがこの世界を救うために世界を救うために動いてくれている。自分がこの場で逃げるというのはあまりに不誠実に思えたのだ。
クレアは、前進する。雷の龍を、切り倒しにかかろうとする。
だが―――
「ぬぅ!」
「なんなの!」
光の柱が天高く貫いていくその様子に二人とも、手を止める。
「まさか……リクさん!」
クレアは、叫ぶ。
「正解」
その叫びに、たった一言、シンプルな言葉が投げかける。
それと同時に数発の銃弾が、セバスチャンを襲う。
「なに!」
予想外の攻撃、セバスチャンは対応が遅れてしまう。そのせいか、左手に深い傷を負う。
「確かに言われた通り、力をつけてきた」
「ええ。そのようですね。本当に力をつけたのがわかります。本当に頑張りましたね」
優しげにクレアは、微笑む。それをみてリクも、少しばかり笑みが溢れる
「……二人で楽しそうに話しているではないか。なかなかに美しい雰囲気。だが、その雰囲気はやめてくれないか?私を輝かせるためにいる装飾品が、そのような雰囲気を出されては、私が輝かない」
セバスチャンは、呆れたように二人を嗜める。その内容は、やはり自分のことしかなかった。
「知るか。輝きたいなら、自分でどうにかして輝けよ。俺たちが悪いみたいにいうな。お前は、文句だけは一丁前の、馬鹿野郎なのか?少なくともそいつらとは違うだろ?」
「……ふむ。確かに、それを言われるとそうだ。私が、輝くには、私自身がなんとかせねばならない。確かにその通りだ。君のいう通りだ。それならば、そうしよう」
その言葉が、戦闘開始の合図であった。リクとセバスチャン。
二人は、時計回りに回り込みながら、お互いの様子を見る。
「さて、見せてもらおうか。救世主と呼ばれる男の実力とやら。その上で、倒す。それがもっとも私を輝かせる一戦だ!」
セバスチャンは、嬉しそうに叫ぶ。
そこに、リクは銃の引き金を引く。それを、セバスチャンは、かわしていく。
そして攻守が交代。セバスチャンがもつ、投剣が2本、3本……いや6本。リクに向かって投げられる。
それを、リクは撃ち抜いていく。最後の2本は、撃ち抜くことができないと判断するや否や、すぐに回避行動に出る。そのまま、特殊装弾プレケスを装填、セバスチャンに放つ。
「こんのぉ!」
その銃弾から生まれた巨大な炎を、セバスチャンは、雷の塊をぶつけることにより相殺する。
だが、その時、既にリクは横から再度、セバスチャンに銃口を向けていた。
そして、セバスチャンの腹を撃ち抜く。
「うごぉ!」
セバスチャンは襲いかかる痛みに思わず悲鳴をあげる。
「……なるほど。やるな。なかなかにやる。そして本当に私という男は、学習が足りない。ほとんど完璧な存在であるがゆえ、失敗などほとんどないがゆえ、そこから学ぶという姿勢が足りない。これが私の数少ない欠点だ。また、私としたことが、余裕をこいて戦ってしまった。本当に情けない」
「確かに情けないな。学ぶ姿勢がない時点で、あんたは欠点だらけの人間さ。人間とは、学ぶことができるからここまで前に進んだのだから」
「……だとしたら問題ない。私は人間ではないからね。私は、デスアモルだ。人間に当てはまることは、私には当てはまらない。だが、失敗から学ぶべしということは、我々もその通りだ」
セバスチャンから、無数の雷が溢れ出る。
「だから、私の最大火力を持って倒すとしよう」
「気をつけて!そいつは、とんでもない力を持っています」
クレアは、リクに警告する。それをうけて、リクの顔が少し険しくなる。
「ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー。私の黄金の魂が具現化した力を見せてやろう!」
「……それは凄い。それでそいつで俺をどうするのだ?」
リクは、少し笑いながら問いかける。
「もちろん。雷に焼き尽くされ、灰になるのだ」
「リクさん。あの男の言う通りです!あれは恐ろしいほどの力です」
「わかってる。だが、俺は大丈夫だ」
雷の龍が、リクを襲いかかる。クレアに襲いかかった時と同じ様に、恐ろしい衝撃が生まれ、あたりの木々も焼き尽くされ、その衝撃により薙ぎ倒されていく。
生身の人間がこの中に巻き込まれたら、生きていると考える方がおかしい。
だが―――
その力を、リクはかき消した。
「何ぃ!」
セバスチャンは、驚きを隠せなかった。
「アストラ・インクリナント・ノン・オブリガント(星は私たちの気を惹くが、私たちを束縛することはない)」
青白く輝く巨大な狼が、リクを守ったのだ。
「……なるほど。君も『アウレア・アニムス』を扱えると言うことか。これはなかなかだ」
「お前だけが使えるとは限らない。相手も使えることを考慮しておくべきだな」
リクは、そう言いながら、セバスチャンに向かって、引き金を引く。
だが、セバスチャンはそれを涼しい顔でかわす。そしてリクを馬鹿にした様な顔をする。
その顔の意味は、己の足を見たら理解できた。リクの左足には、剣が突き刺さっていた。セバスチャンの剣だ。気がついたら刺さっていた。
(いつの間に)
リクは慌てて、剣を引き抜く。一瞬鋭い痛みが襲いかかるが、声を上げるまでもない。今までの痛みに比べればまだまだ大したことない。
「少し驚いたぞ。アウレア・アニムスを使うことができるとは……。しかし!まだまだ爪が甘い!それでは私に勝てん。子供が与えられたおもちゃの銃を嬉しそうに振り回し、プロに喧嘩を売っているに久しい」
「……」
「私のウェーニー・ウィーディー・ウィーキーの猛攻を止めたのは素晴らしい。だが、それだけだ。私と君が、長期戦に持ち込めばまず私の勝ちだろうな?」
セバスチャンは自分が有利な立ち位置にいることを確認し、それを楽しそうに伝える。
「リクさん。どうします?」
クレアがリクに近づき問いかける。その顔には冷や汗がある。まだ事態を打破できていないことを理解し、険しい顔が消えない。
「いや。策はある」
「というと?」
「あの男と長期でやり合えば確かに負ける。だが、短期ならなんとかなる。一撃だ。今までは、遠くから離れてちまちま攻撃をしていた。だからいつまで経っても倒せない。ならば一気に近づき、きつい一撃を喰らわす」
その言葉に、クレアは少し苦笑いする。
「それができるなら苦労はありませんよ。馬鹿ですか?近づく力がないから困っているのでしょう?」
「まぁそうだけど。最後まで話聞いてくれません?一応あるんだよ。それにはクレア。力を貸してくれないか?」
「……もちろんです」
リクは、クレアにいう。それに少しばかり驚いた顔を見せるが、クレアは笑顔で了承する。




