アウレア・アニムス
クレアの言葉に、セバスチャンは口元を大きく歪ませ笑う。
「結構。それは楽しみだ。見たところなかなかの腕なのだろうからな。強敵とカッコよく戦うのもまた私を輝かせる素晴らしいひと時だ。だが……、私はなかなかに強いぞ?」
その瞬間、無数の刃がクレアを襲う。
いわゆる投剣というやつだろう。
だがクレアは大きく右に飛びそれを回避する。
「まだまだ!」
だがセバスチャンは気にすることなく、さらに剣を投げつける。
クレアは、今度は自分の大剣でそれらを弾いていく。軌道を変える程度、たいして力もいらない。そして捌ききれないと判断したものは軽くその場を動きかわしていく。
「この程度では私を倒せませんよ?私もなかなかに強いのですよ?」
煽るようにクレアはセバスチャンに言葉を投げかける。
だがセバスチャンはまるで心外だと言わんばかりの表情だ。
「まさか。この程度で私の強さが示されると思わないでくれ。君は私を過小評価しすぎではないか?この私に対し、その程度の評価とは無礼にも程がある」
「あなたは、あなた自身に対して過剰評価ですけどね」
「いやいや。君が過小評価しすぎなのだよ。それを証明してやろう」
セバスチャンが指を鳴らす。
その瞬間あたりに電流が流れる。その電気は、先程セバスチャンが投げた剣から剣へと伝わり、クレアの周辺は1秒に満たない間に、電気に支配された。クレアに逃げる場所などなかった。
「どうだ?私は電気に関する魔法が得意なのだよ。これで大概皆、みっともない姿になり朽ち果ててしまう。君も同様の運命を―――」
セバスチャンは言葉を続けることはできなかった。話し続けるわけにはいかなかったのだ。
先程強烈な電流を浴びていたはずのクレアが、セバスチャンに向かって大剣を振りかざしていたからだ。
「ぬぅ!」
セバスチャンは、クレアの攻撃をなんとか交わす。だが対応が遅れてしまったおかげで、完璧に交わすことはできなかった。事実右脇腹に無視できない程度の切り傷が生まれてしまった。
「やっぱり自分のことを過大評価してたじゃないですか。この程度で自分がすごいなんて公言するなんてバカのやることですよ?」
クレアは勝ち誇った表情で告げる。
クレアは己の体を硬化魔法により、強化していた。そのために、生身では生きていなかったであろう状況下で彼女は、反撃することができた。
「……いや、ちがうね。そいつは違う。私が君を過小評価しすぎていたのだ。君の力を見誤っていたのだ。だからこの様だ。反省しなくてはな。一流の男は、反省ができる男なのだからね。反省して、余裕ある男を演じるのではなく、強敵と本気で戦いカッコ良い自分を出すことにシフトしよう。そうしよう。それが良い」
セバスチャンの雰囲気が変わる。相変わらずナルシズムは健在であるが、先程はあまり怖さというものがなかった。しかし今はどうだ。あたりの空気がピリついている。セバスチャンの目は鋭い。目の前にいる敵を確実に倒すという意志が感じられた。
「さて。次の攻撃はかなりきついぜ?私の魂が具現化された力だからね」
「魂の具現化?」
クレアは何を言っているのかいまいち理解できなかった。セバスチャンはその様子に少しばかり驚いた様子を見せる。
「なんだ知らないのか。黄金の魂。『アウレア・アニムス』と呼ばれる力だよ。魂のエネルギーを具現化されたものだ。……まぁ。一度見てみたらわかるだろう?」
その瞬間あたりに強力な雷が出現する。
クレアは思わず顔を庇う。
「これがアウレア・アニムス?」
「いや、ちがうね。それは違う。よくみたまえ!これが私のアウレア・アニムスだ!」
「!」
目の前に龍がいた。いや実体としては存在しないかもしれない。その龍は電気により生み出されたように思えた。
全身が雷であり、色も統一であった。
ニヤリと自慢げに、セバスチャンは笑った。
「ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー。私のアウレア・アニムスだ。受けてみるが良い!」
雷の龍の咆哮が周囲に響き渡る。その力を示すような咆哮だ。
「くっ!」
やばい。クレアは己の生存本能によってそれを感じ取った。だが、逃げるにも距離が近すぎる。とても避けることはできない。
(覚悟を決めるしかないですね!)
雷の龍は、クレアに襲いかかる。
攻撃は至ってシンプル。ただただ己の巨大な体をクレアにぶつけにいく。ただそれだけである。
だがそれだけで、恐ろしい力を発揮する。
周囲に電気が溢れ出し、木々を焼き尽くしていく。
瞬く間に炎に支配される。
そしてクレアは、恐ろしいほどの爆発に巻き込まれる。
「素晴らしい。これも耐えてしまうのか。だが。結構ギリギリのようだな」
セバスチャンのいう通りであった。クレアはセバスチャンの攻撃を耐えてみせた。己の得意な硬化魔法、その力をフルパワーで使うことにより、耐えた。
だが、魔力を一気に使ってしまい、クレアは急激な疲労に襲われていた。
「……」
言い返せなかった。それよりも次にセバスチャンの攻撃に神経を使わざるを得ない状況なのだ。
「……ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー」
再び現れる雷の龍。
どうやら容赦はないようだ。
「さて君は、この追撃をどう耐える?」
セバスチャンは、勝ち誇った笑みでクレアに問いかけた。




