ハロルド
一方そのころ、レイラはカーティスとともに、今後のことについて考えていた。
「カーティス。今のうちに、ウァリエタースの人間と連絡を取れないかしら?デスアモルが集団で行動したと言うことなら何かしら目撃情報があるかもしれない。なんでもいいから情報を集めて。今回の件。裏で何者かが手を回しているかもしれない。もちろん簡単ではないけど、そのようにしか思えないの。怪しい人物がいたら即伝えるようお願い」
「承知しました。では、そのように―――」
「その必要はないよ。お嬢さん」
突如この屋敷には、存在しない声がした。
「何者!」
カーティスはレイラを庇うように前に出てその声の主を睨みつける。
「そんな怖い目で見ないでくれ。つい殺してしまいたくなる。それにトップ同士の会話に、従者が入り込むと言うのは些か非常識とは思わないかね?」
「……私に何かようかしら?どちらにせよ、まずは何者か明かしなさい」
レイラは睨みつけながら告げる。
「ハロルド。それが私の名前だ。君たちの敵となろう名前だ。よく覚えておくと良い。そして、昨晩君たちのところへデスアモルを解き放った張本人だ」
「なんですって!」
レイラは驚いた顔をする。まさかいきなり、調査対象としていた人物が現れたのだ無理もなかった。
「私は、『ウォルプタース』というデスアモルたちによって組織されたリーダーだ。今日は君たちに宣戦布告をしに来たのだよ」
ハロルドはにこやかにそう告げた。
「宣戦布告ですって?」
「そうだ。私は、今日、三つの目的を持って来たのだよお嬢さん。あなたに挨拶をすることがまず一つ目の目的、そして二つ目は、君たちと敵となり、戦うこととなるから正々堂々やり合おうじゃないかと言う宣言。そして最後の三つ目は、私たちが本気であると言うことを示す手土産をわたすことだ!」
その瞬間、屋敷の窓から数匹、いや数十匹のデスアモルたちが入り込んできた。
「なんと!」
「素敵だろ?これが私たちの兵だ!」
「これ程のデスアモルを使役させるなんてあなた何者なの」
「話を聞かないお嬢さんだ。先ほども言ったろ?私はデスアモルたちのリーダーだ。だからみんな私の命令を聞くのだよ。そして―――私もまた、デスアモルだ!」
誇らしげにハロルドは語る。それをレイラは不愉快そうな目で見る。
「もういいわ。とりあえずあなたが敵であることは分かったわ。ならばこの場であなたを倒す!」
そこには明確な殺意があった。その殺意を受けて、ハロルドは少しばかり驚いたような嬉しいようなよくわからない表情であった。
「想像以上に好戦的なお嬢さんだ。てっきり、後ろで救世主が無事でいることを祈るヒロインかと思っていたが。これはこれは大変嬉しい誤算だ」
「リクに大変な使命を負わせているにもかかわらず、自分は後ろでのうのうと待っているわけにはいきません。私も戦える以上、共に戦わねばならない。それが最低限度の使命。ひとまずあなたたちは私たちだけで倒します」
「素敵だ。だが、それは少し難しいな。何せ私たちの中でも実力者を一人向かわせているからね」
「なんですって」
「今向かわせている男もまたデスアモル。そう簡単には倒せないぜ?」
―――
「何者ですか?」
クレアは警戒心を高めながら、遠からゆったりと迫る人物に対して、睨みつける。
「これはこれは。はじめまして。私、セバスチャンと申します。どうぞよろしくお嬢さん」
軽くウィンクをしながら、にこやかに、自分に自信があることを隠す様子もない。
その様子にクレアは不愉快そうに眉を顰める。
「随分と自分に自信がある人のようですね。それもリクさんとは別のベクトルで。正直タイプではありません」
「くっ!は、はははは!私がタイプではないとは!それはそれはなんとも残念な美的センスをしている。なんとも可哀想に」
「……なぜ私が哀れに思われているのですか」
「??私をタイプではないと言っているからだろ?」
さも当然のようにセバスチャンをいう。その様子を見てクレアは、このセバスチャンという男は、女性は皆自分に惚れて当然、惚れていない方が異常であるというなんとも自己中心的な価値観を有している男であるということを理解した。そのせいでさらにこの男に対する嫌悪感が増してきた。
「それでなんのようですか?ここは私有地。誰の許可をもって入ってきているのですか?」
「それは失敬。確かに私有地に許可なく入るのは問題だな。人間ならばな?」
何か含めた物言いであった。
「何が言いたいのです」
「いや。簡単な話だ。法律というものは人の秩序を守るために作られたもの。虎などの動物には適用されまい。そしてデスアモルにもまた人のルールなど縛られぬ!」
「あなたは!」
クレアの顔色が変わる。大剣を手にし、目の前にいる男、いや人間の形をした化け物を前に戦闘体制に入る。
「お察しの通り、私はデスアモルだ。なんと素晴らしい。強大な力を手に入れ、優雅に!美しく!目の前にいる生命を!握り潰すことができるのだから!そして握りつぶしている瞬間の私はなんと美しい……」
「握り潰されるのはあなたの方です。その気持ち悪いナルシズムごとあなたを潰して差し上げます」
クレアはそう言って己の大剣を構える。セバスチャンはそれを不敵に向かい受ける。




