第8話 甘えんぼう
昨日は食事もせずに寝てしまったため、空腹で目が覚めた。まぶたを開けると、窓から朝日が差し込んでいた。チッチッという鳥の鳴き声も聞こえる。
私はユーユの右腕を枕にして寝ていた。着た覚えのない薄い白布のローブを身につけている。対してユーユは下着姿。もしかすると、このローブはユーユのものなのかもしれない。
ユーユの細い腕から頭を上げ、私の小さな胸に密着した豊満な胸から距離を取ろうとする。
しかし、身動きが出来ない。
強引に彼女を引きはがせば離れられると思う。でも、気持ちよさそうに寝ている彼女を起こすのもどうだろう。
「……白くてすべすべの肌……若いっていいなあ……」
ユーユが寝言を言いながら、私の顔に頬をくっつけ、すりすりと動かしながら、にやついている。
この感じは、当分起きない。と、ひとまず諦めることにした。
彼女の体には、複数の切り傷の痕があった。癒えてるのだろうけど、消えていないものもある。冒険者という仕事は、いろいろな、大変なこともあるのかもしれない。
うつら、うつらとしてるうちに、ユーユが目を開けた。
「レェナ、おはよう」
「おはよう。……ユーユが体とか拭いてくれたり着替えさせたりしてくれたの?」
「そうねぇ」
「大変だったよね。ありがとう」
「ふふふ。楽しかった!」
「う、うん。それと、あの、この体勢は?」
「つい……疲れたしい」
ついって。全然理由になっていない。もしかして彼女は、こうやって誰かに抱きついて寝るのが、好きなんだろうか。
「こうやって一緒に寝るのが好きなの?」と聞く。すると、彼女はすこし考えるような素振りをした後、申し訳なさそうに話し始めた。
「ウチはね……一人で寝るのが苦手なのぉ」
そういって私の胸に顔を埋める。相変わらずくすぐったい。そして、子供の頃に経験した出来事を話してくれた。奴隷狩りに村が襲われ、両親を殺されたときの話を。奴隷に身を落とした話を。
「だから……もう少しぃ」
「もう、しょうがないなぁユーユは……」
一通り話すと彼女はお母さんに甘える子供のように、私の胸に顔を埋めてきた。そっと腕を回して、彼女の頭を撫でる。すると、彼女は本当に気持ちよさそうに「んー」と言ってすりすりと頬ずりする。
こんなユーユの様子は、歳上には見えなくて、ちょっとおかしかった。
しばらくしたあと、とりとめのない話をしていると突然、ユーユの声が急に少し低いものに変わった。
「さらわれて、何か酷いことされなかった?」
私の背中に回されたユーユの腕に、力が入り、さらに強く抱きしめられる。
もしかして、昨日の夜からの彼女の行動は、全てこの質問のためだったのかな。
「うん、怪我もないし、大丈夫だよ」
「でも、右胸の上の痣は?」
に回っていたはずの手は、胸の上をさするように少し動き出す。ちょっとくすぐったい。
「昔からあって、最近色が濃くなったけど、よく分からないんだよね」
彼女は、さりげなく私の部屋着をめくると痣を見つけ、それに顔を近づけた。ちょっと恥ずかしいし、息も当たってこそばゆい。
「ふうぅう、くすぐったいよ」
私は彼女の息に我慢できず、抗議する。
「かわいい」
恥ずかしくてわざと頬を膨らませた。ユーユは、そんな私を見て楽しそうに笑って、私もそれにつられた。
オニのセイランとのことをユーユに伝えた。彼が私を指導者とか言って守ろうとしてくれたこと。
「御影さんにも言わない方がいいのかな?」
「うーん、旅を一緒に続けるのなら、伝えておいた方がいいと思うよお」
「うん、色々ありがとう」
その後、やっと起き上がり、ユーユの抱きつき攻撃から解放された。彼女はとても、名残惜しそうだったけどね。
私たちは着替えて、男性達との集合場所へと向かった。はやく朝食を食べたいな。




