↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/70

第9話 討伐隊の出発

 宿舎の一階にある食堂に行くと、御影さん、クレフさんにモランディさんがいて遅めの朝食をとっていた。


「おはよう」

「おはよう!」


 みんなが声をかけてくれる。


 久々のおいしそうな食事のにおいに心が弾む。ここでは、パンに野菜やソーセージが挟まれたものが出てきた。スープもある。

 さっそく頬張ると、幸せな味が口いっぱいに広がる。たった一日食べられなかっただけなのに、温かい食事ってこんなに美味しかったのか……。感極まって、うるうるしてしまった。

 涙がこぼれそうになったので上を向こうとしたとき、クレフさんが私とユーユに、交互に目を向けていることに気付いた。


「クレフさん……何か?」

「……夜にユーユが……その……変なこと……ご迷惑をおかけしませんでしたか?」


 そう言うと、私から目を逸らす。心なしか、顔が赤くなっているような気がする。


「気がついたら一緒に寝てました」


 私がニコニコと答えると、ユーユが、気まずそうな表情を浮かべる。クレフさんは溜息をつくとユーユを睨んだ。


「……すみません……本当に……可愛い女の子と一緒だと、やってしまうみたいで。それが原因で離脱してしまった子もいたんですよ……」


 彼はそう言って頭を下げた。額にかなり汗をかいている。大げさだし……。


「可愛いってそんな……だったら嬉しいかな……」

「レェナさんだったら、誰だって喜んで……痛っ」


 急にクレフさんの顔が歪む。


「何鼻の下伸ばしてるのぉ?」

「あ、いや……すまん」

「このむっつりがぁ。レェナはウチだけのものなのぉ」


 この二人は一体何を話しているのか……。とりあえずフォローしておくことにする。


「私は気にしなかったし、むしろよく寝られたので良かったですよ」

「レェナー、ありがとおぉ」

「ユーユ! レェナさん、そんな、無理して庇(かば)わなくてもいいですよ。涙目になっているじゃないですか……」


 涙は食事の美味しさに感動したからなんだけど、言い出す雰囲気ではなかった。しばらく、ユーユとクレフさんが口論を続ける。険悪なものでもないし、なんだかんだ言っても仲が良さそう。

 少し羨ましい。

 一方、私の目の前に座っている御影さんは、上の空のようだ。


「御影さん?」


 声をかけると、何か誤魔化すような顔をして、視線を合わせなかった。ちょっと赤い顔をしているような気がするけど、結局のところは分からずじまいだった。


「討伐隊の人員を募集しているようだなぁ」


 酒場の掲示板に気付いたモランディさんが声を上げた。

 街の近郊に現れた、ゴブリンやオニを討伐する冒険者を探しているようだ。この街の駐屯部隊の代表者が募集をしており、報酬もあるとのこと。


「冒険者を雇うってのは変だな……妙に衛兵も少ない気がするし……」


 モランディさんがそう言って首をかしげる。


「参加するんですか?」

「うーん、しばらく退屈だし……情報収集にはいいんじゃないか?」


 そう言って彼はクレフさんに目配せをした。

 商隊は、この街で仕入れを行うため、数日間滞在する。それに魔物に襲われたことを警戒をしており、討伐の結果を確認したいとのことだ。


「そうなんですか……セイラ——オニは分からないけどゴブリンはもういないかもしれない」

「ふむ。楽な仕事なら、参加しない手はなさそうだな。さ、そろそろ詰め所に行こうか。レェナさん達はどうする?」

「私も話を聞きたいので詰め所まで行きます」


 クレフさんの言葉に、みんなが席を立った。



 討伐へはユーユとクレフさんの二人が参加することになった。募集していた人員もすぐに集まり、すぐに出発する運びとなった。

 街の入り口に向かうと、既に馬車が数台あって、冒険者達が乗り込んでいる。


「ユーユ、気を付けてね」

「うん。任しておいてよお。モランディ置いていくから。また帰ってきたら同じ部屋で寝ようね」

「うーん、それはどうかなあ?」

「ええええぇぇー」


 ユーユが頬を膨らます。わざとなのは分かっているけど、おかしくてつい笑ってしまう。それだけだと怒られそうなので、最高の笑顔を作って彼女に向けた。


「なんてね、いいよ!」

「約束だよお。レェナ大好き!」


 ぱっと顔を明るくした彼女は、私の両手を握ったと思ったら、強く抱き締めてきた。胸にすりすりと頬ずりをして……しかも、なかなか離してくれない。

 周りの人たちの視線を感じる。


「あーいいにおい……やわらかい……」

「ちょ……くすぐったい……ユーユ? そろそろ……」

「えーもっと……」


 なんとか引き剥がして、周りを見渡すと、私達を見ていた男の人たちが一斉に目を逸らした。ずいぶん注目を浴びてしまったようだ。

 それからユーユは、ぶんぶんと手を振って馬車に乗り込んでいく。また明日すぐ会えるのに、随分大げさに感じた。



 討伐隊が出発した。

 私は無事に帰ってきますようにと祈りながら、その姿が見えなくなるまで、ずっと見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=oncont_access.php?citi_cont_id=122268010&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。